入出庫管理のやり方|記録の付け方と締め
目次
入出庫管理は、倉庫の記録のいちばん下にある土台です。ここが正確なら、在庫数も棚卸の突き合わせも、保管料の検算も、すべてここから出せます。逆に、入出庫の記録が翌日や翌週に回っていると、上に乗っているものが全部ずれます。在庫が合わない倉庫のかなりの部分は、数え方ではなく記録の時刻の問題です。
この記事では、入出庫管理を、何を記録するか、いつ入れるか、締めの決め方、入出庫管理簿の作り方、続けるための手当ての順に整理します。扱う品目と体制で最適な形は変わるため、自社の規模に置き換えて読んでください。
入出庫管理とは何か
入出庫管理は、倉庫に入ってきたものと出ていったものを、日付と数量で残していくことです。残高を持つ在庫管理表とは役割が違い、こちらは動きそのものを記録します。
在庫数は、この記録の積み上げで出せます。前の残高に入庫を足し、出庫を引く。この計算が成り立っているかどうかが、在庫の数字を信用できるかどうかの分かれ目になります。在庫管理表の作り方は在庫管理表の作り方にまとめています。
記録には、もうひとつ役割があります。差が出たときに、どこでずれたかをたどる手がかりになることです。棚卸で10個足りないと分かったとき、入出庫の記録が日付順に並んでいれば、締めの前後の伝票や、同じ日の出荷を追いかけられます。記録が無ければ、そこで調査が終わります。
何を記録するか
列は少ないほど続きます。最小はこの6つです。
| 列 | 中身 |
|---|---|
| 日付 | 実際に物が動いた日 |
| 区分 | 入庫か出庫か |
| 品番・品名 | 現品表示と同じ書き方 |
| 数量・単位 | ケースとバラを分ける |
| 相手先 | 仕入先、出荷先 |
| 伝票番号 | 納品書や出荷指示の番号 |
日付は「伝票の日付」ではなく「物が動いた日」にします。ここを伝票の日付にすると、月をまたぐ荷物で在庫と合わなくなります。伝票の日付も残したいなら、列を分けて両方持ちます。
相手先と伝票番号は、差が出たときに効きます。この2つがあれば、相手に問い合わせて数量を確かめられます。逆にこれが無いと、記録はあっても裏が取れません。
棚番も入れておくと使い道が増える
入庫のときに棚番を書いておくと、どの棚に何が入ったかが記録から追えます。場所違いの差が出たときに、直近の入庫の棚番を見れば当たりが付きます。棚番の付け方はロケーション管理のやり方にまとめています。
その日のうちに入れる
入出庫管理でいちばん大事なのは、列の設計でも様式でもなく、入力のタイミングです。
物が動いた日と記録の日がずれると、その差はあとから見分けられません。朝の在庫数を見て受注に答え、実は昨日の出荷が入っていなかった、という形が起きます。棚卸のときも、締めの前後の判断ができなくなります。
現実には、忙しい日ほど後回しになります。だからこそ、入力の時間を1日の中に固定します。出荷が終わったあとの10分でも、翌朝の始業前でも構いません。決まった時間に、決まった人が入れる形にします。
紙で受けて、まとめて入れてもよい
その場で端末に入力できない現場では、伝票に書いて箱に入れ、決まった時間にまとめて入力する形で足ります。大事なのは、その日のうちに片づくことです。箱に伝票が残ったまま翌日を迎えないことを、1つのルールにします。
締めを決める
月末や棚卸のときに必ず問題になるのが、どこまでを今月に入れるかです。
- 月末の夕方に届いた荷物は、今月の入庫か、翌月か
- 出荷の指示は出したが、まだ積んでいない荷物はどちらか
- 検品が終わっていない入荷はどう扱うか
これらは正解が1つに決まっているものではなく、自社で決めて、決めたとおりに続けることが要点になります。決めたら紙に書いて、入力する人が迷わないようにします。
多くの倉庫では、入庫は検品が終わって棚に入れた時点、出庫は車に積んで出た時点にしています。この形にすると、現物の動きと記録が一致します。伝票の発行日を基準にすると、物が動く前に記録が進むことがあります。
入荷のときの流れ
入庫の記録は、荷物が届いた瞬間に書くものではありません。検品が終わって、数が確定してから書きます。ここを逆にすると、伝票の数をそのまま写すことになり、数量違いがそのまま在庫に入ります。
実務の順番は、荷物を入荷待ちの置き場に降ろし、納品書と発注の控えを照らし、品番と数量を数え、外観と期限を見て、そこで初めて記録します。棚に入れるのはそのあとで、入れた棚番を記録に足します。数が伝票と違ったときは、受け取った実際の数を書き、差を備考に残して相手先へ連絡します。伝票の数を書いてしまうと、その差は棚卸まで見つかりません。検品の組み方は検品のやり方にまとめています。
入荷待ちの置き場を決めておくことも、記録の精度に効きます。置き場が無いと、誰かが親切で棚に入れてしまい、既存の在庫と混ざって数えられなくなります。床にテープで枠を引くだけでも変わります。
分納と過納の扱い
発注した数の一部だけが届く分納は、届いた数だけを入庫として記録し、残りを発注残として持ちます。多く届いた過納は、受け入れるかどうかを決めてから記録します。受け入れないなら在庫に入れず、返送の記録を残します。どちらも、その場で決めずに保留にすると、置き場に残ったまま数だけが宙に浮きます。発注残の持ち方は発注残の管理にまとめています。
出荷のときの流れ
出庫の記録は、車に積んで出た時点で確定させます。ピッキングした時点や、梱包した時点で記録すると、出荷が翌日に回ったときに在庫だけが先に減ります。
実務では、出荷の指示が出た時点で「引き当て」として数を押さえ、実際に出たときに在庫から引く、という2段階にしている現場が多くあります。引き当ての数を持っておくと、受注に即答できる数が分かります。品目が少ないうちは、この2段階を持たずに、出た時点で引くだけでも回ります。
出荷のキャンセルや、積み残しが出たときの戻し入れも忘れずに記録します。車に積まなかったぶんを戻していないと、帳簿だけが減ったままになります。出荷前の確認の組み方は出荷検品のやり方にまとめています。
記録する人を決める
入出庫の記録は、書く人が多いほど書き方が揃わなくなります。現場の全員が端末に入力する形にすると、単位の書き方も、相手先の名前も、人によって変わります。集計のときに名寄せが必要になり、その手間で集計をやめることになります。
入力する人を1人か2人に決めて、現場からは紙かメモで渡す形にすると、書き方がそろいます。人数が増えて1人では回らなくなったら、入力の画面側で選ぶ形(品番も相手先も一覧から選ぶ)にして、自由入力を減らします。
代わりの人を決めておく
入力する人が休んだ日に止まるのが、この形の弱点です。代わりの人を決めて、月に1回は実際に入れてもらいます。手順書があっても、一度も触っていない人は当日に動けません。
保管料の検算にも使う
営業倉庫に預けている場合、入出庫の記録はそのまま請求書の検算に使えます。3期制の保管料は「前期末の在庫数+当期の入庫数」で積数を出すので、自社側で入庫の数を期ごとに合計できれば、届いた請求書と突き合わせられます。
ここで効いてくるのが日付です。自社が発注日や出荷日で記録していて、倉庫側が荷物を受け取った日で計上していると、10日や20日をまたいだときに1期ぶんの差になります。物が動いた日で記録していれば、この食い違いが起きません。しくみは倉庫の保管料と3期制にまとめています。
請求書の内訳をもらって自社の記録と突き合わせる作業は、毎月やる必要はありません。最初の2、3か月だけ丁寧に合わせて、ずれる原因を潰しておけば、以降は合計だけ見ていれば足ります。
棚卸の日の入出庫をどうするか
棚卸の当日は、入出庫を止めるのが原則です。数えている最中に物が動くと、どの時点の在庫を数えたのかが分からなくなります。それでも荷物は届きますし、どうしても出さなければならない出荷も出ます。
止められない場合は、当日の入荷を「棚卸対象外」の置き場に固めて、棚卸が終わってから受け入れの処理をします。どうしても出す出荷は、出した数量と時刻を紙に書いて、棚卸の集計に必ず反映させます。口頭で伝えると、ほぼ確実に抜けます。
棚卸の締めの時刻を決めて、その前後で伝票を分けて置くところまでやっておくと、差が出たときに原因をすぐ特定できます。差の数量が、締め前後の伝票の数量とぴったり一致していれば、それは計上のタイミングのずれです。詳しくは棚卸のやり方にまとめています。
続けるための手当て
記録が止まるのは、書く人の意識ではなく、書きにくさが原因になっていることがほとんどです。手を入れるところは決まっています。
まず、書く場所を作業の動線に置きます。入荷の置き場に用紙とペンを置く、端末を荷受けの近くに置く。事務所まで歩く形だと、まとめて後回しになります。
次に、書く項目を減らします。入力する人が10項目を埋める形だと、忙しい日に飛ばされます。最小の6列に絞って、あとから必要になったときに足します。
そして、入れた記録が使われていることを見せます。月に1回、入出庫の件数や、差異の調査に役立った例を現場に返すだけで、書く意味が伝わります。誰にも見られない記録は、書き方が雑になっていきます。
記録から見えること
入出庫の記録が1年ぶん溜まると、在庫の数字以外にも使い道が出てきます。
品目ごとの出庫の回数を数えれば、動きの多い品目が分かります。その上位20品目を取りやすい場所へ移すだけで、ピッキングの歩行距離が縮みます。日ごとの入出庫件数を並べれば、忙しい曜日と時間帯が見えて、人の配置を寄せられます。
入庫の間隔を見れば、発注の頻度が適切かどうかも分かります。同じ品目を月に8回入れているなら、まとめて4回にできないか。逆に月1回でいつも欠品しているなら、回数を増やせないか。安全在庫の計算に使う出庫のばらつきも、この記録から出します。計算のしかたは安全在庫の計算にまとめています。
よくある質問
入出庫管理簿は法律で義務づけられていますか
一般の倉庫では、様式や保存年数を一律に定めた規定があるわけではありません。ただし、営業倉庫(倉庫業の登録を受けた倉庫)では帳簿を備えることが求められており、寄託物の入出庫の記録がその中心になります。自社に何が求められるかは、倉庫業の登録の有無や取引の内容で変わるため、所轄の運輸局や顧問の税理士に確認してください。
記録はどのくらい残しますか
棚卸の差異を調べるときに1年前まで見ることがあるため、実務では1年から3年残している現場が多くあります。税務や契約で保存の条件が定められている場合は、そちらが優先されます。月ごとにシートを分けて1年で1ファイルにしておくと、探すのも保存するのも楽になります。
入庫と出庫を別の表にすべきですか
1つの表に区分の列を作って混ぜるほうが、残高の計算が簡単になります。別々にすると、突き合わせのたびに2つの表を見ることになります。印刷や報告のときだけ、区分で絞り込んで出す形にします。
同じ日に何度も出入りがある品目はどう書きますか
1回の動きを1行にします。まとめて1行にすると、時刻が分からなくなり、締めの前後の判断ができません。行数が増えることを嫌ってまとめると、調べたいときに使えない記録になります。
訂正はどう書きますか
元の行を消さずに、訂正の行を足す形にします。消して書き直すと、いつ何を直したかが残りません。数量を5から3に直すなら、マイナス2の行を理由つきで足します。棚卸の差異を調べるときに、訂正の履歴が手がかりになります。
在庫がゼロの品目も記録に残しますか
動きが無い期間は行が増えないので、そのままで構いません。ただし、在庫がゼロになったタイミングは、記録と現物を突き合わせる好機です。帳簿がゼロになったときに棚を見て、現物も空なら一致、残っていれば差が出ています。費用をかけずにできる確認なので、ピッキングの担当に「最後の1つを取ったら棚を見る」と伝えておくと効きます。
倉庫の中で棚から棚へ移したときも記録しますか
在庫の総数は変わらないので、入出庫としては記録しません。棚番だけを直します。ただし、移動の履歴を残しておくと、場所違いの差が出たときに追えます。移した日・品番・元の棚番・新しい棚番の4つで足ります。移動の途中で止めないこと、その場で直すことが要点です。
手書きの用紙と表計算を併用してもよいですか
現場で紙に書いて、その日のうちに表計算へ入れる形は、実務でよく使われています。紙を原本として残すか、入力後に捨てるかだけ決めておきます。両方が原本だと、食い違ったときにどちらが正しいか分からなくなります。
委託している倉庫からの報告と自社の記録が合いません
多くは日付のずれです。自社は出荷指示を出した日、倉庫は実際に出した日で記録していると、月末をまたぐぶんが食い違います。まず、お互いがどの時点で計上しているかを確かめます。そのうえで、どちらかに合わせるか、両方の日付を持つかを決めます。合わない件数が毎月同じくらいなら、原因は1つに絞れます。
バーコードを読む形にすると何が変わりますか
品番の取り違えと数量の打ち間違いが大きく減ります。一方で、現品にラベルが貼られていないと読むものがありません。先に品番の表示と棚番を整えるところからになります。導入したあとも、破損や廃棄のように機械が読まない動きは人が入れることになるので、その手順は残ります。
まとめ
入出庫管理は、倉庫の記録の土台です。在庫数も、棚卸の突き合わせも、保管料の検算も、すべてこの記録から出せます。
列は、日付・区分・品番・数量・相手先・伝票番号の6つで足ります。日付は伝票の日付ではなく、物が実際に動いた日にそろえます。ここをそろえておくと、締めのずれと請求の食い違いが同時に減ります。
そして、その日のうちに入れることです。書く場所を動線に置き、項目を減らし、入れた記録が使われていることを見せる。この3つで、記録は続くようになります。