在庫を合わせる実務2026.09.16 公開OK-04

在庫の廃棄と記録|捨てる前に1行書く

目次

在庫の廃棄は、記録されずに現物だけが消えることがいちばん多い作業です。割れた、濡れた、期限が切れた。その場で捨ててしまうと、帳簿には数が残り、棚卸のときに原因不明の差として出てきます。

この記事では、在庫の廃棄を、記録が要る理由捨てる前の手順判断する人と線処分の方法減らすための見方の順に整理します。金額の処理と廃棄物の手続きは会社と地域で変わるため、経理部門と、自治体や処理業者に確認してください。

廃棄の予定と実績を1枚で残せる様式が配られています。

記録が要る理由

廃棄を記録する理由は3つあります。

1つ目は、在庫の数を合わせるためです。現物を捨てたのに帳簿の数が減っていなければ、そのぶんがずれます。棚卸のときに「帳簿より現物が少ない」という形で出てきますが、原因が分からないまま処理されます。棚卸差異の調べ方は棚卸差異の原因と対策にまとめています。

2つ目は、なぜ捨てることになったかを見るためです。期限切れが多いのか、破損が多いのか、仕様変更で使えなくなったのか。理由ごとに手当てが違います。記録が無ければ、毎年同じ理由で捨て続けます。

3つ目は、金額として説明するためです。捨てたぶんは損失になります。経理が処理するには、何を、いくつ、いつ、なぜ捨てたかが要ります。現場が渡すのは、この4つです。

記録が要る3つの理由在庫の数を合わせる原因を見る金額として説明する廃棄の記録
記録が要る3つの理由

捨てる前の手順

手順は単純です。捨てる前に1行書く。これだけで、上の3つが満たせます。

書くのは、日付、品番と品名、数量、理由、判断した人です。理由は、期限切れ、破損、汚損、仕様変更、不良、その他に分けておくと、あとで集計できます。紙でも表計算でも構いません。

現物は、捨てる前に廃棄の置き場へ移します。棚に残したまま「廃棄予定」の札を貼ると、出荷のときに間違って出ます。置き場を1か所決めて、そこに集めます。

そして、在庫から数を引きます。この更新が、いちばん抜けます。現物を移した時点で引くか、実際に処分した時点で引くかは、どちらでも構いませんが、決めておきます。

捨てる前に1行書く1書く品番・数・理由2移す廃棄の置き3引く在庫から4処分記録に日付
捨てる前に1行書く

判断する人と線を決める

誰が捨ててよいかを決めておかないと、2つの問題が起きます。現場が勝手に捨てるか、誰も決めずに溜まるかのどちらかです。

金額で線を引くのが分かりやすい形です。「1万円までは現場の判断、それを超えたら上長へ」という決めです。線があると、ほとんどの廃棄はその場で片づきます。線が無いまま「全部報告」にすると、報告されないまま処分される形が生まれます。

線の金額は、扱う品物の単価で決めます。単価の低い消耗品が中心なら低く、高額品を扱うなら高くします。迷ったら、まず低めに決めて、報告が多すぎるようなら上げます。

判断する日も決めます。週に1回、廃棄の置き場を見て決める。現場に来て、現物を見ながら決めるのが要点です。書類だけを回すと、状態が分からないまま判断することになります。

処分のしかた

捨て方は、品物によって変わります。一般のごみとして出せるものと、産業廃棄物として処理が必要なものがあります。

自社から出る廃棄物の種類と、処理の方法は、自治体や処理業者の案内で確認します。産業廃棄物は、許可を持った業者に委託し、管理票などの手続きが必要になることがあります。扱いを誤ると、法令上の問題になります。判断に迷うものは、処理業者か自治体に確認してください。

そのまま捨てずに済む方法もあります。社内で別の用途に使う、値引きして販売する、仕入先に引き取ってもらう、リサイクルに回す。捨てる前に、この4つを一度見るだけで、処分の費用と損失が減ることがあります。処分の判断の順番は不動在庫の見つけ方にまとめています。

情報や個人の情報が含まれるもの、ブランドの表示があるものは、そのまま捨てられないことがあります。細断や、確実な処分の証明が求められる場合もあるため、扱いを確認します。

捨てる前に4つを見る社内で使う買わずに済む分が浮く値引きして売る同業や仕入先へ捨てる場所と手間が戻るリサイクル処理の費用を抑える価値が残る ↑価値が残らない ↓← 社内で完結社外へ出す →
捨てる前に4つを見る

誰が現物を運ぶか

廃棄が進まない理由に、現物を運ぶ人がいないということがあります。判断は済んでいるのに、置き場から出す作業が誰の仕事でもない状態です。

運ぶ日を決めます。処理業者の回収の日に合わせるか、月に1回の決まった日に出す。日が決まっていれば、その日までに置き場から出せばよいので、判断も前倒しになります。

大きなものや重いものは、フォークリフトと人が要ります。出荷の忙しい日を避けて、荷役の手が空く日に回します。当日に「今から出す」となると、他の作業が止まります。

社内で処分できないものは、業者の手配が要ります。費用と日程を先に確かめておくと、判断のときに「捨てるといくらかかるか」が分かります。費用が分かっていないと、判断が先送りされます。

出す日を決めておく1判断週1回の日2集める置き場へ3出す日月1回に固4記録処分した日
出す日を決めておく

棚卸の前に済ませる

廃棄の判断は、棚卸の前に済ませておくと、当日が軽くなります。

数えなくてよいものが減り、棚卸表の行数も減ります。置き場に残ったままだと、それも数えるのか数えないのかで迷います。棚卸の1か月前に、廃棄の一覧を出して判断する日を作ると、両方が片づきます。

判断が間に合わなかった分は、棚卸のときにどう扱うかを決めておきます。数えるが在庫には含めない、別の集計にする、といった形です。決めていないと、毎年扱いが変わって比べられなくなります。

棚卸で見つかった破損品や期限切れも、その場で廃棄の対象として記録します。数えながら見つけたものを、その場で判断するのが、いちばん手戻りがありません。棚卸の進め方は棚卸のやり方にまとめています。

点検表テンプレート
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実際に使える様式が必要な方へ

『廃棄予定在庫一覧』の様式が、点検板グループの在庫板で配られています。そのまま使えるExcelです。

この様式をひらく

廃棄の理由を集計する

記録が溜まったら、理由ごとに集計します。これが、廃棄を減らすための出発点になります。

期限切れが多いなら、先入れ先出しの運用か、発注の量に原因があります。破損が多いなら、置き方か荷役の扱いです。仕様変更が多いなら、切り替えのときに旧版の在庫を確認する手順が抜けています。理由ごとに、直す場所が違います。

品目別にも並べます。特定の品目ばかり捨てているなら、その品目の持ち方そのものを見直します。発注の単位が大きすぎて使い切れないという形がよくあります。

金額でも並べます。件数が少なくても金額の大きいものから手を付けるほうが、効果が大きくなります。年間の廃棄の金額を出しておくと、対策にかける費用の目安にもなります。

廃棄と在庫の数字がずれる形

廃棄にまつわる記録漏れは、2つの方向でずれを生みます。

現物を捨てたのに帳簿を減らしていなければ、帳簿のほうが多くなります。逆に、帳簿を減らしたのに現物が置き場に残っていれば、現物のほうが多くなります。どちらも、判断から処分までの間に起きます。

これを避けるには、在庫から引くタイミングを1つに決めます。廃棄の置き場へ移した時点で引くなら、置き場にあるものは在庫ではありません。実際に処分した時点で引くなら、置き場にあるものは在庫として数えます。どちらでもよいので、決めて紙に書きます。

決めた扱いは、棚卸のときにも効きます。廃棄の置き場を数えるのか数えないのかが、毎年同じになります。扱いが年ごとに変わると、差の比較ができません。

引くタイミングを決める置き場へ移した時点置き場は在庫ではない棚卸で数えないどちらでもよい処分した時点置き場も在庫に数える棚卸の対象に入れる決めて紙に書く
引くタイミングを決める

減らすための見方

廃棄は、後始末です。減らすには、その前の段階に手を入れます。

期限のある品物は、先入れ先出しを置き方で守ります。手前から取る形にして、期限の近いものを一覧で出す。期限の30日前に知らせる形にしておくと、値引きや優先出荷の判断ができます。やり方は先入れ先出しのやり方にまとめています。

発注の量も見ます。まとめ買いの割引と、使い切るまでの期間を並べます。1年で使い切れない量を買っているなら、単価が安くても割に合いません。安全在庫の設定も同じで、勘で多めに持っていると、動きの鈍い品目ほど積み上がります。

仕様変更のときは、旧版の在庫数と使い切る計画を必ず確認します。切り替えの会議で1行入れるだけで、そのたびに発生する廃棄が減ります。

破損は、置き方と荷役の扱いです。重い物を下に、高い段に重い物を置かない、段積みの上限を決める。倉庫の中で壊れているぶんは、置き方でかなり減ります。

理由ごとに直す場所が違う理由直すところ期限切れ先入れ先出しと発注量破損置き方と荷役の扱い仕様変更切り替え時の在庫確認不良入荷検品と仕入先
理由ごとに直す場所が違う

現場から声が上がる形にする

傷んでいる在庫にいちばん早く気づくのは、毎日棚を見ている人です。気づいたことを書く紙を、倉庫に置いておきます。

書くのは、品番、棚番、気づいたこと(濡れている、包装が破れている、期限が近い)の3つで足ります。判断を求めるのではなく、知らせるだけの紙にすると、書きやすくなります。

集まったものを、週に1回まとめて見ます。まだ使えるものは手当てをして、使えないものは廃棄の判断に回します。早く気づけば、値引き販売や社内利用の選択肢が残ります。期限が切れてからでは、捨てるしかありません。

書いた結果が何かにつながることも見せます。1件でも処分や手当てまで進んだら、その結果を現場に戻します。何も起きないと分かると、次から誰も書きません。

委託倉庫に預けている在庫の廃棄

営業倉庫に預けている在庫を処分するときは、倉庫会社との段取りが加わります。

まず、処分する対象と数量を倉庫会社に伝えます。引き取りに来てもらうのか、倉庫会社に廃棄まで頼めるのか、費用はいくらか。契約の範囲外の作業になることもあるので、先に確認します。

廃棄が済んだら、倉庫会社の在庫の記録からも外してもらいます。ここが抜けると、置いていない在庫に保管料がかかり続けます。自社の記録と、倉庫会社の報告の両方を突き合わせて確認します。

保管料の面でも、処分の効果は大きくなります。3期制では、動かない在庫にも毎期の積数がかかっています。「置いているだけ」の費用が毎月出ていくので、処分の判断が早いほど得になります。しくみは倉庫の保管料と3期制にまとめています。

廃棄の判断を早くする

同じ品物でも、判断が早いほど選べる道が多く残ります。期限の30日前なら値引き販売や優先出荷ができ、切れてからは捨てるしかありません。

早く判断するには、気づく仕組みが要ります。期限の一覧を週に1回出す、最終出庫日で並べた一覧を月に1回出す、現場からの気づきを拾う紙を置く。どれも手間は小さく、判断の選択肢を広げます。

判断する人が忙しくて来られない、という理由で遅れることもあります。その場合は、金額の線を上げて、現場で決められる範囲を広げるほうが実務的です。少額の判断で上長を待つ時間のほうが、捨てる金額より大きいことがあります。

判断が遅れて捨てるしかなくなった件数を数えておくと、遅れが生んでいる損失が見えます。この数字が出ると、判断の仕組みを変える話がしやすくなります。

よくある質問

廃棄の金額はどう処理しますか

評価損として計上するのか、廃棄損とするのか、原価に含めるのかは、会社の経理方針と税務の判断によります。経理部門か顧問の税理士に確認してください。現場が渡すのは、品番・数量・理由・日付の4つです。ここが正確なら、処理の判断ができます。

現場が勝手に捨ててしまいます

捨てる手順が無いことがほとんどです。「捨てる前に1行書く」と「廃棄の置き場に移す」の2つを決めて、紙を置き場に貼ります。金額の線も決めて、その範囲なら現場の判断でよいと伝えます。判断してよい範囲がはっきりすると、隠れて捨てる形が減ります。

廃棄の置き場が満杯になります

判断する日が決まっていないためです。週に1回、決まった曜日に見る形にします。判断する人が来られない週が続くと溜まるので、代わりの人も決めておきます。置き場を広げると、溜まる量が増えるだけで解決しません。

廃棄する前に売ることはできますか

品物と契約によります。値引き販売、社内での利用、仕入先への引き取り、リサイクルのいずれかが成り立つことがあります。ブランドや品質の面で、値引き販売ができない取り決めがある場合もあるため、条件を確認してから進めます。

廃棄を報告すると怒られるので、報告されません

報告を責める運用になっていると、隠れて捨てるか、置きっぱなしになります。廃棄は、起きたことを数える対象であって、人を評価する対象ではないという扱いにします。報告された件数が増えたときに「出してくれてよかった」と返すところから変わります。数字が悪く見えても、見えているほうが直せます。

廃棄の費用がかさみます

処分の費用そのものより、捨てることになった原因に手を入れるほうが効きます。理由ごとに集計して、いちばん多い理由から直します。あわせて、そのまま捨てずに済む方法(社内利用、値引き販売、引き取り)を一度見る習慣を作ると、処分に回る量が減ります。

記録はどのくらい残しますか

税務や契約で保存の条件が定められている場合は、それに従います。実務では、棚卸の差異を説明するために、少なくとも次の棚卸までは必ず残します。年間の廃棄の金額を出すためにも、年度ごとにまとめておくと使いやすくなります。

期限切れが毎年同じ品目で出ます

その品目の発注の量か、置き方に原因があります。年間の使用量と、1回の発注量を並べてみます。1回で1年ぶんを買っていれば、期限内に使い切れません。仕入先に、小分けでの納品ができるかを相談する価値があります。

少額の廃棄まで記録するのは手間ではありませんか

1行なので、手間は数秒です。少額の廃棄が積み上がって、棚卸の差になります。金額が小さいものほど、記録されずに消えやすく、原因も分からないままになります。記録する項目を5つに絞って、置き場のそばに紙を置けば続きます。集計は月に1回で足ります。

まとめ

在庫の廃棄でいちばん大事なのは、捨てる前に1行書くことです。日付、品番、数量、理由、判断した人。これだけで、在庫の数も、原因の分析も、経理への引き渡しも成り立ちます。

判断する人と、金額の線を決めておきます。線があれば、ほとんどの廃棄はその場で片づきます。判断する日を週に1回決めて、現物を見ながら決めます。

そして、記録が溜まったら理由ごとに集計します。期限切れ、破損、仕様変更。理由ごとに直す場所が違うので、集計しないと次の手が決まりません。

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