倉庫の運営改善2026.09.16 公開RU-05

倉庫の生産性を測る|まず見る4つの数字

目次

倉庫の改善は、測っていないと効いたかどうかが分かりません。棚を移した、リストを並べ替えた、検品を厚くした。どれも良さそうに見えますが、何が変わったかを数字で言えないと、次の判断ができません。

この記事では、倉庫の生産性を、まず見る4つの数字測り方使い方現場への返し方増やしすぎない線の順に整理します。扱う品物と体制で見るべき数字は変わるため、自社に合うものを選んでください。

作業の実績を残す在庫管理表の様式が配られています。

まず見る4つ

たくさん測っても続きません。この4つから始めます。

1つ目は、1時間あたりの処理行数です。ピッキングや検品で、1人が1時間に何行こなせたか。作業の速さを表す、いちばん基本の数字になります。

2つ目は、誤出荷の率です。出荷件数に対する誤出荷の件数。品質を表します。速さだけを追うと、ここが悪くなります。速さと品質はセットで見るのが要点です。

3つ目は、棚卸の差異率です。数えた棚のうち、帳簿と合わなかった割合。在庫の数字がどれだけ信用できるかを表します。

4つ目は、在庫の回転です。在庫がどれだけ動いているか。動いていない在庫が増えると、場所も費用も食います。

この4つで、速さ、品質、正確さ、量の4面が見られます。どれか1つだけを追うと、他が悪くなります。

速さ・品質・正確さ・量1時間の処理行数作業の速さ誤出荷の率出荷の品質棚卸の差異率数字の正確さ在庫の回転持っている量作業を見る ↑在庫を見る ↓← 量で見る率で見る →
速さ・品質・正確さ・量

測り方

特別な仕組みは要りません。いまある記録から出せます。

1時間あたりの処理行数は、1日の作業時間と、その日に処理した行数から出します。出荷指示の行数を数えて、作業に使った人時で割ります。人時は、その作業に関わった人数×時間です。休憩や他の作業に回った時間は引きます。

誤出荷の率は、誤出荷の件数を出荷件数で割ります。出る前に止めた件数は別に数えます。止めた件数が多いのは、検品が働いている証拠です。誤出荷の数え方は誤出荷の原因と対策にまとめています。

棚卸の差異率は、循環棚卸の結果から出ます。数えた棚のうち、合わなかった棚の割合です。品目数ではなく棚数で見ると、現場の感覚に近くなります。

在庫の回転は、一定期間の出庫金額を平均の在庫金額で割ります。金額が分からなければ、動いていない品目の数で代用できます。最終出庫日から日数を数えれば出せます。

いまある記録から出せる数字出し方1時間の処理行数処理した行数 ÷ 人時誤出荷の率誤出荷の件数 ÷ 出荷件数棚卸の差異率合わない棚 ÷ 数えた棚在庫の回転出庫金額 ÷ 平均在庫金額
いまある記録から出せる

作業の時間を測る

処理行数を出すには、作業に使った時間が要ります。タイムカードの時間ではなく、その作業に使った時間です。

厳密に測る必要はありません。1日の中で、ピッキングに何時間、検品と梱包に何時間、入荷に何時間。おおよその配分を、1週間だけ記録してみると、見当が付きます。毎日測る必要はなく、季節ごとに1週間測れば足ります。

測ってみると、思っていたのと違う配分になっていることがあります。出荷に時間を使っていると思っていたら、入荷と棚入れのほうが長かったという形はよくあります。手を入れる場所が変わります。

人ごとの時間ではなく、工程ごとの時間で出します。誰が何時間ではなく、どの工程に何時間です。この形にしておくと、現場に返すときにも使えます。

工程ごとに時間を測る思っていた配分ピッキングと出荷入荷と棚入れその他測ってみた配分ピッキングと出荷入荷と棚入れその他手を入れる場所が変わる。1週間だけ測れば見当が付く
工程ごとに時間を測る

数字が悪くなったとき

改善したのに数字が悪くなることがあります。そのときこそ、記録が役に立ちます。

まず、条件が変わっていないかを見ます。出荷の量が増えた、新しい人が入った、扱う品目が増えた、繁忙期に入った。条件が違えば、数字が動くのは当然です。条件をそろえて比べます。

次に、手を入れたことが原因になっていないかを見ます。検品を厚くしたら処理行数が下がった、というのは当然の結果です。そのぶん誤出荷が減っていれば、狙いどおりです。1つの数字だけを見て失敗と決めないところが大事になります。

それでも説明が付かないときは、現場に聞きます。数字に出ない事情が必ずあります。設備の不調、通路の仮置き、他部署からの割り込み。現場が知っていることを拾うと、次の手が見つかります。

使い方

数字は、他社と比べるためではなく、自社の前月と比べるために出します。扱う品物と工程が違えば、水準はまったく変わります。

まず、いまの数字を出します。これが出発点です。そのうえで、手を入れたら、翌月に同じ数字を出して比べます。棚を移した月に処理行数が上がっていれば、置き場所の見直しが効いたということです。

数字が動かないときは、手を入れた場所が違います。ピッキングの並びを直しても処理行数が上がらないなら、時間を使っているのは歩く距離ではなく、探す時間かもしれません。測ることで、次にどこを見るかが決まります。

1つの数字だけを目標にしないところも大事です。処理行数だけを追うと、確認が飛んで誤出荷が増えます。2つ以上を並べて見ることで、片方を犠牲にしていないかが分かります。

現場への返し方

数字は、出して終わりにすると、測るための仕事になります。現場に返して、初めて意味が出ます。

返すときは、人ではなく工程の数字として返します。「誰が遅い」ではなく「この工程で時間がかかっている」という形です。人の比較にすると、数字を良く見せるための行動が始まります。

月に1回、A4の1枚で足ります。4つの数字と、前月との比較、手を入れたこと、次に見る場所。壁に貼るだけでも、続けているうちに変化が見えます。

良くなったときに伝えるのが、いちばん効きます。「先月より誤出荷が減りました」と共有するだけで、検品の丁寧さが続きます。悪くなったときだけ数字を出すと、数字が嫌われます。

人ではなく工程で見る人で比べる誰が遅いという話に数字を良く見せる行動報告されなくなる工程で見るどこで時間がかかるか良くなったら伝える手を入れる場所が決まる
人ではなく工程で見る
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実際に使える様式が必要な方へ

『在庫管理表』の様式が、点検板グループの在庫板で配られています。そのまま使えるExcelです。

この様式をひらく

改善と数字をつなげる

手を入れたことと、数字の動きを並べて記録します。いつ、何を変えたかを、数字の表に線として書き込みます。

「4月:ピッキングリストを棚番順にした」「6月:上位20品目を入口側へ移した」「9月:出荷検品の対象を絞った」。この線があると、どの手当てで数字が動いたかが後から読めます。

効かなかった手当ても記録に残します。やってみて効かなかったことが分かるのも成果です。記録が無いと、数年後に同じことをもう一度試すことになります。

手当ての費用も書いておくと、次の判断に使えます。費用をかけずに効いたもの、費用をかけたが効かなかったもの。この対比が、投資の判断の材料になります。

手当てと数字を並べる処理行数誤出荷4月3月手当てを入れた月に線を引くと、効いたかどうかが読める
手当てと数字を並べる

小さく始める

最初から全部を測ろうとすると、集計の作業が仕事になります。1つの数字を1か月測るところから始めます。

いちばん困っていることに近い数字を1つ選びます。出せば、いまの水準が分かります。それを見て何かを変えて、翌月にまた測る。このひと回りを1回やると、測る意味が分かります。

意味が分かってから、2つ目を足します。数字が増えるのは、必要になったときだけです。人から言われて増やした数字は、たいてい見られなくなります。

そして、続けることがいちばん効きます。3か月続けた4つの数字は、1回だけ出した10個の数字より役に立ちます。並べたときに、動きが読めるからです。

増やしすぎない

測る数字は、増やすほど管理が重くなります。10個の数字を毎月出すより、4つを1年続けるほうが役に立ちます。

増やすのは、それを見て行動が変わるときだけです。数字を見ても何もしないなら、その数字は要りません。逆に、いま見ている数字で判断できないことがあるなら、1つ足します。

数字を出すのにかかる時間も見ます。毎月半日かかる集計は続きません。いまある記録から、30分で出せる形にしておきます。表計算の集計を作っておけば、翌月からは数分で終わります。

年に1回は、見ている数字そのものを見直します。去年は要ったが、今年は見なくてよい数字が出てきます。減らすことも、見直しの一部です。

他の数字を足すなら

4つで足りなくなったら、次の候補があります。いま困っていることに合うものを1つ選びます。

出荷の遅れが問題なら、締め時刻までに出荷できた率を見ます。人の入れ替わりが問題なら、新しい人が一人前になるまでの日数です。場所が足りないなら、保管の充填率を見ます。

費用の面を見るなら、1行あたりの物流コストがあります。人件費、資材費、保管料、配送費を足して、処理行数で割ります。費用の内訳が分かると、どこに手を入れるかが決まります。

どれを足す場合も、測る手間と、それで変わる行動を天秤にかけます。出すのに時間がかかる数字は、たいてい続きません。

困っていることに合う数字を1つ足す困っていること足す数字出荷が遅れる締めまでに出せた率人が続かない一人前までの日数場所が足りない保管の充填率費用が見えない1行あたりの物流コスト
困っていることに合う数字を1つ足す

経営に伝えるとき

倉庫の数字を経営に伝えるときは、費用と売上につながる形に言い換えます。

処理行数が上がったなら、同じ人数で何件多く出せるようになったか。誤出荷が減ったなら、その対応にかかっていた時間と費用がどれだけ減ったか。在庫の回転が良くなったなら、減った在庫の金額と、保管料の差。倉庫の中の言葉のままでは、判断の材料になりません。

投資をお願いするときも同じです。「棚を入れたい」ではなく、「棚を入れると1日30分の探す時間が消えて、年間で何時間になる」という形にします。効果が数字で言えると、判断が進みます。

効果が出なかったときも報告します。効かなかったことが分かるのも、次の判断に要る情報です。隠すと、同じ投資を繰り返すことになります。

委託している倉庫の数字を見る

自社で倉庫を持たず、営業倉庫に委託している場合も、数字は要ります。見る場所が、自社の現場から報告に変わるだけです。

倉庫会社から受け取れるのは、入出庫の件数、在庫の残高、誤出荷や破損の件数、棚卸の結果です。契約で報告の頻度と項目が決まっていることもあるので、まず何がもらえるかを確かめます。

自社で持っている数字と突き合わせます。発注した数と入荷の報告、出荷の指示と出荷の実績。食い違いが続く項目があれば、そこに原因があります。日付のずれか、記録の漏れかで、話す相手が変わります。

費用の面も同じ形で見られます。保管料、入出庫料、配送料を、出荷の件数で割れば、1件あたりの費用が出ます。この数字が上がっているなら、量が減ったのか、単価が上がったのかを分けて見ます。保管料のしくみは倉庫の保管料と3期制にまとめています。

誰が数字を出すか

集計する人を1人決めます。現場の作業をしながら片手間に出す形だと、忙しい月に飛びます。月末に30分取れる人を決めて、その時間を業務として確保します。

出す人と、使う人が違ってもかまいません。出すのは事務の担当、使うのは現場の責任者、という形でも回ります。大事なのは、出した数字が見られる場所に届くことです。ファイルの奥にあると、誰も開きません。

数字の定義も、決めた人が管理します。「処理行数」に入荷の行を含めるのか、返品の処理を含めるのか。定義が月ごとに変わると、比べられなくなります。最初に決めて、紙に書いておきます。

担当が代わるときは、定義と集計の手順を引き継ぎます。式が入った表計算のファイルを渡すだけでは足りません。何をどこから取っているかを1枚にしておくと、続きます。

よくある質問

他社の水準を知りたいのですが

扱う品物、荷姿、工程の自動化の度合いで大きく変わるため、他社の数字はあまり参考になりません。同じ「1時間あたり100行」でも、ケース単位とバラ単位では意味が違います。自社の前月と比べるのが、いちばん確かな見方になります。

数字を出す時間がありません

いまある記録から、30分で出せる形にします。出荷指示の行数と、作業時間と、誤出荷の件数。この3つだけなら、月末に集計するだけで出ます。表計算の式を一度作っておけば、翌月からは数分です。全部を一度に始めず、1つずつ足します。

現場が数字を嫌がります

人の評価に使われると思われているためです。工程の数字として返す、良くなったときに伝えるの2つで変わります。悪い月に犯人を探す使い方をすると、その場で信頼が切れます。数字は、どこに手を入れるかを決めるためのものだと、最初に伝えます。

季節で数字が大きく動きます

繁忙期と閑散期を分けて見ます。前月と比べるより、前年の同じ月と比べるほうが実態に近くなることがあります。両方を並べて見られる形にしておくと、季節の波と、手当ての効果を分けて読めます。

どの数字から始めればよいですか

いちばん困っていることに近いものから選びます。誤出荷で困っているなら誤出荷の率、在庫が合わないなら差異率、作業が終わらないなら処理行数。1つ測り始めて、それで足りなければ次を足します。4つを一度に始めると、集計が重くて続きません。

人によって処理行数の差が大きいです

まず、経路と置き場所を見ます。速い人がどう回っているかを1回見てみると、リストの並びや置き場所の問題が見つかることがあります。個人の速さの差として扱う前に、条件をそろえます。条件をそろえても差が残るなら、やり方を共有する場を作ります。数字で人を比べるのではなく、速いやり方を全員のものにする形にします。

記録が無くて測れません

まず記録から始めます。出荷の行数、作業の時間、誤出荷の件数。どれも、毎日1行書けば溜まります。1か月ぶん溜まれば、最初の数字が出ます。測るために新しい仕組みを入れる必要はなく、いまの作業に1行足すところから始められます。

目標の数字は誰が決めますか

現場と一緒に決めるほうが守られます。上から与えられた目標は、達成のための工夫ではなく、数字を良く見せる工夫を生みます。いまの水準を出して、次の3か月でどこまで、という刻み方にすると現実的になります。到達できなかったときに、原因を一緒に見る場があることのほうが大事です。

まとめ

倉庫の生産性は、1時間あたりの処理行数、誤出荷の率、棚卸の差異率、在庫の回転の4つから始めます。速さ、品質、正確さ、量の4面が見られます。

数字は、他社ではなく自社の前月と比べます。手を入れた月に動いていれば効いていて、動かなければ見る場所が違ったということです。

そして、現場には工程の数字として返します。人の比較にすると、数字を良く見せる行動が始まります。良くなったときに伝えることを続けると、数字が嫌われずに定着します。

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