在庫管理表の作り方|エクセルで回す最小の形
目次
在庫管理表は、作り込むほど使われなくなる書類です。列を増やして関数を入れ、誰も更新しなくなって、結局は現物を数えに行く。続く在庫管理表には共通の形があって、それは「列が少ない」ことです。
この記事では、在庫管理表を、最小の列、入出庫との関係、更新のタイミング、表計算での作り方、続かなくなる理由の順に整理します。扱う品目数と人数で最適な形は変わるため、自社の規模に置き換えて読んでください。
在庫管理表は何のための表か
在庫管理表は、いま何がいくつあるかを、現物を見ずに分かるようにする表です。目的はこれだけです。ここがぶれると列が増えます。
在庫管理表があると、次のことができます。
| できること | 使う場面 |
|---|---|
| 在庫の数が分かる | 受注のときに出せるか答える |
| 置き場所が分かる | 取りに行く人が迷わない |
| 発注のタイミングが分かる | 発注点まで減ったら発注する |
| 棚卸の土台になる | 帳簿の数として突き合わせる |
「金額を出す」「原価を管理する」は、別の表の仕事です。在庫管理表に金額の列を足した瞬間に、経理の承認が要る表になり、現場が触れなくなります。
最小の列
まず、この5列だけで始めます。足すのは、無くて困ったときだけにします。
| 列 | 中身 |
|---|---|
| 品番 | 現品表示と同じ書き方にそろえる |
| 品名 | 人が読んで分かる名前 |
| 棚番 | どこにあるか。歩く順に並べ替えられる形で |
| 在庫数 | いまの数 |
| 単位 | 個・ケース・箱。入数も書く |
この5列があれば、取りに行けて、数が答えられて、棚卸に使えます。
よく足す列
困ったときに足す候補です。全部を最初から入れないのが要点です。
| 列 | 足す理由 |
|---|---|
| 発注点 | 発注のタイミングを人に頼らない |
| 安全在庫 | 欠品を減らす。計算は別の表で |
| 仕入先 | 発注のときに探さずに済む |
| 期限・ロット | 期限のある品物だけ |
| 最終出庫日 | 動いていない品目を見つける |
| 備考 | 代替品、注意点 |
最終出庫日は、費用をかけずに効きます。この列があるだけで、半年動いていない品目を並べ替えで見つけられます。
入出庫の記録と分ける
在庫管理表と入出庫の記録は、別の表にします。1枚にまとめると、行が増え続けて重くなります。
| 表 | 持つもの | 行の増え方 |
|---|---|---|
| 在庫管理表 | いまの数 | 品目の数だけ。増えない |
| 入出庫の記録 | 動いた履歴 | 毎日増える |
在庫数は、入出庫の記録から計算で出すか、動くたびに書き換えるかのどちらかです。品目数が少なければ書き換えで足り、多ければ記録から集計する形になります。入出庫の記録の付け方は入出庫管理のやり方にまとめています。
どちらにするかの目安
| 状況 | 向いている形 |
|---|---|
| 品目が数十、動きが1日数件 | 在庫管理表を直接書き換える |
| 品目が数百、動きが1日数十件 | 入出庫の記録から集計する |
| 複数人が同時に触る | 記録から集計する。上書きの事故が減る |
直接書き換える形は、2人が同時に開くと片方の入力が消えます。人数が増えたら、記録を足していく形に切り替えます。
いつ更新するか
その日のうちに入れる。これが守れるかどうかで、表の値打ちが決まります。
| タイミング | やること |
|---|---|
| 入荷したとき | 検品が終わってから数を足す |
| 出荷したとき | 出した数を引く |
| 棚を移したとき | 棚番を直す |
| 廃棄・破損のとき | 数を引いて、理由を備考に書く |
| 棚卸のあと | 現物に合わせる |
4つ目が抜けやすいところです。割れた、濡れた、期限が切れた。その場で捨ててしまうと、帳簿だけが残ります。「捨てる前に1行書く」を作業に入れると、原因不明の差が減ります。
翌日に回すと合わなくなる
記録が1日遅れると、朝の時点の数が現物と違う状態になります。受注の返事も、棚卸の突き合わせも、そこからずれます。入力の時間を1日の終わりに固定して、10分取るだけで変わります。
表計算での作り方
特別な関数は要りません。並べ替えとフィルタが効く形にしておくのが要点です。
| やること | 方法 |
|---|---|
| 1行目を見出しにする | ウィンドウ枠の固定をかける |
| 表をテーブルにする | 行を足しても書式と数式が伸びる |
| 棚番で並べ替える | 歩く順に並ぶ。棚卸表にそのまま使える |
| 発注点を下回った行に色 | 条件付き書式。発注の判断が要らなくなる |
| 最終出庫日で絞る | 動いていない品目を抜き出す |
発注点を下回った行に色を付けるのがいちばん効きます。数字を見比べる作業が消えて、色の付いた行だけ見れば済みます。
セルを結合しない
見た目をそろえるためにセルを結合すると、並べ替えもフィルタも効かなくなります。表計算の表は、1行1件、1セル1値にしておきます。印刷のときだけ体裁を整えます。
続かなくなる理由
途中で更新が止まる表には、理由があります。
| 止まる理由 | 手当て |
|---|---|
| 列が多くて埋められない | 使っていない列を消す |
| 入力する場所が遠い | 現場にも入力できる形にする |
| 2人で開くと壊れる | 記録を足す形に変える |
| 現物と合わないので信用されない | 循環棚卸で合わせ直す |
| 誰が直すか決まっていない | 担当を1人決める |
「現物と合わないので誰も見ない」が、いちばん多い終わり方です。一度ずれると、確かめるために現物を見に行くようになり、表を見る理由が無くなります。合わせ直す方法は循環棚卸のやり方にまとめています。
システムに移すかどうか
表計算で回らなくなる境目は、品目数ではなく、同時に触る人数で来ます。
| 状況 | 判断 |
|---|---|
| 1人か2人が更新している | 表計算で足りる |
| 3人以上が同時に触る | 共有できる形かシステムを検討 |
| 拠点が分かれている | 同上 |
| 入出庫が1日100件を超える | 入力の手間で検討 |
表計算を悪者にしないのが要点です。品目が少なく、触る人が限られているなら、表計算のほうが速く、費用もかかりません。切り替えるのは、上の表に当てはまってからで間に合います。
現場が見る形にする
事務所の表計算だけにあると、現場は結局現物を見に行きます。現場が見られる形を1つ用意します。
| 形 | 向いている場面 |
|---|---|
| 棚のラベルに発注点を書く | 数字を見なくても判断できる |
| 印刷して倉庫に貼る | 毎日は変わらない品目 |
| 端末で共有のファイルを開く | 数が頻繁に動く |
棚に線を引くやり方がいちばん強いです。「ここまで減ったら知らせる」の位置に札を挟んでおけば、表を開かずに発注の合図が出せます。安全在庫と発注点の出し方は安全在庫の計算にまとめています。
品目を絞ってから始める
いまゼロから作るなら、全品目をそろえてから始めようとしないことです。
- 動きの多い品目を20だけ選ぶ
- 5列で表を作る
- 1か月、その20品目だけ運用する
- 困ったところだけ列を足す
- 品目を広げる
3の1か月が判断の材料になります。更新が続いたなら形が合っています。止まったなら、列か入力の場所に無理があります。全品目で始めると、どこに無理があったのかが分からないまま止まります。
品番の付け方でつまずかない
在庫管理表が使われなくなる原因のうち、意外に多いのが品番です。仕入先の品番をそのまま使っている品目と、社内で付けた品番の品目が混ざっていると、同じ物が2行に分かれます。片方に在庫があるのに、もう片方を見て「在庫なし」と答えてしまう形が起きます。
社内で1つの品番に決めて、仕入先の品番は別の列に持つのが扱いやすい形です。仕入先が変わっても社内の品番は変わらないので、過去の記録がつながります。現品の表示、棚のラベル、在庫管理表の3か所で同じ書き方にそろえるところまでが1組です。ハイフンの有無や英字の大小が混ざるだけで、照合のときに人の目に頼ることになります。
品番に意味を持たせすぎるのも、あとで効いてきます。仕入先や置き場を品番に埋め込むと、仕入先が変わったときに品番を変えることになり、過去の記録と切れてしまいます。意味は列で持ち、品番は変わらない番号にしておくほうが長く使えます。棚番の付け方はロケーション管理のやり方にまとめています。
数が合わなくなったときに戻る場所
在庫管理表の数が現物と合わなくなったら、表を直す前に、どこでずれたのかを見ます。入荷の計上漏れ、出荷の記録漏れ、棚を移したときの書き換え漏れ、破損や廃棄の記録漏れ。この4つで大半が説明できます。順番に見ていって見つからなければ、原因不明として記録に残したうえで、現物に合わせます。
大事なのは、合わせた事実と、そのとき分かっていたことを残しておくことです。合わせるだけで何も残さないと、翌月に同じ品目でまたずれたときに、前回と比べられません。品目と棚番と差の向きだけでも1行残しておけば、偏りが見えてきます。調べ方は棚卸差異の原因と対策にまとめています。
現物合わせを繰り返す品目は、置き方を疑う
毎月のように合わなくなる品目があるなら、その品目だけ運用に無理があります。同じ品番が2か所の棚に分かれている、ケースとバラが混ざっている、期限で抜き取りが起きている、といった形です。表の使い方ではなく、置き方を直すほうが早く収まります。
受注のときに即答できる状態をつくる
在庫管理表がいちばん役に立つのは、営業や受注の担当から「これ、いくつ出せますか」と聞かれたときです。ここで即答できないと、折り返しの電話が増え、その間に他社に決まってしまうこともあります。数字の精度より、その場で答えられることのほうが商売には効きます。
即答するために要るのは、在庫数そのものではなく、引き当ての考え方です。棚にある100個のうち、すでに受注が入っていて出ていくぶんが40個あるなら、いま新しく約束できるのは60個になります。この「約束できる数」を持っていないと、在庫はあるのに二重に約束してしまう形が起きます。品目が少ないうちは、受注済みの数を1列足すだけで足ります。
さらに、入荷の予定が分かっていれば、いま無くても「来週なら出せます」と答えられます。発注して入ってくる数と入荷の予定日を持っておくと、答えられる幅が広がります。発注したものが届いていない状態の管理は、発注残の管理にまとめています。
棚卸の前に表を整える
年に1回の棚卸の直前は、在庫管理表を見直すのに向いた時期です。使っていない品目の行、もう扱わなくなった品番、名前だけ残って在庫がゼロのまま何年も動いていない行。こうしたものが溜まっていると、数える対象が増え、棚卸そのものが重くなります。
棚卸の1か月前に、最終出庫日で並べ替えて、1年以上動いていない品目を一覧にします。処分するか、残すか、別の場所へ移すかを決めておけば、当日に数える行数が減ります。表を軽くすることが、そのまま当日の人数と時間の削減になります。棚卸の進め方は棚卸のやり方にまとめています。
よくある質問
在庫管理表と棚卸表は同じものですか
別のものです。在庫管理表は日々の数を持つ表、棚卸表は数えるための用紙です。ただし、在庫管理表を棚番の順に並べ替えれば、そのまま棚卸表として印刷できます。同じデータから2つの用途を出す形にしておくと、二重に管理せずに済みます。
在庫数がマイナスになります
出庫の記録が入荷より先に入っているか、入荷の計上が漏れています。マイナスが出た時点で止めて、その品目の直近の記録をたどります。マイナスのまま放置すると、その品目の数はもう信用できません。入力の順番を「入荷を先に入れる」と決めておくと減ります。
複数の倉庫がある場合はどう持ちますか
倉庫ごとに行を分けるのが扱いやすい形です。同じ品番が2行になりますが、どこに何があるかが分かります。合計だけを見たいときは、集計で足せます。1行にまとめて合計だけを持つと、取りに行く場所が分からなくなります。
単位が混ざる品目はどう書きますか
ケースとバラを別の列に分けます。「12入りケース3箱+バラ5個」を1つの数字にまとめると、数えるときに戻せません。入数の列を作って、合計は計算で出す形にします。
履歴はどのくらい残しますか
入出庫の記録は、棚卸の差異を調べるときに1年前まで見ることがあります。月ごとにシートを分けて1年分を1ファイルにし、年が変わったら別ファイルにする形がよく使われます。在庫管理表そのものは最新だけで足ります。
在庫管理表を紙で運用していますが、変えるべきですか
品目が少なく、動きも1日数件なら、紙のままでも実務は回ります。変えるかどうかは、探す時間と、聞かれてから答えるまでの時間で決めます。紙を見ながら電話で即答できているなら、無理に変える必要はありません。並べ替えや絞り込みをしたくなった時点が、表計算へ移る合図になります。
表計算のファイルが重くなってきました
入出庫の履歴を同じファイルに溜めていることがほとんどです。履歴は年ごとに別ファイルへ移し、在庫管理表には最新の数だけを残します。画像やセルの結合、使っていない範囲の書式も重さの原因になります。行を足すたびに重くなる場合は、テーブルの範囲が余分に広がっていないかを見ます。
誰が更新しますか
1人決めます。全員が触る形にすると、書き方が揃わず、上書きの事故も起きます。入力する人を決めて、現場からは紙かメモで渡す形にすると、精度が保てます。人数が増えたら、記録を足す形に変えます。
まとめ
在庫管理表は、いま何がいくつあるかを現物を見ずに分かるようにする表です。金額や原価は別の表の仕事なので、ここには入れません。
始めるときは、品番・品名・棚番・在庫数・単位の5列だけにします。足すのは、無くて困ったときだけです。最終出庫日の列は費用をかけずに効くので、早めに足す候補になります。
そして、その日のうちに入れることです。1日遅れると現物とずれ、ずれた表は見られなくなります。動きの多い20品目から始めて、1か月続くかを見てから広げます。