在庫を合わせる実務2026.09.16 公開ZS-04

発注残の管理|届いていない分を見える形に

目次

発注残は、発注したのにまだ届いていない数のことです。倉庫の棚には無いけれど、もう買うことは決まっている在庫、という位置づけになります。この数が見えていないと、同じ品目を二重に発注したり、在庫がゼロなのに「明日入ります」と答えられなかったりします。

この記事では、発注残を、何を指すか持つ列二重発注の防ぎ方遅れの追いかけ方在庫との関係の順に整理します。発注の流れは会社によって違うため、自社の手順に置き換えて読んでください。

発注した分と届いた分を1枚で追う様式が配られています。

発注残とは何か

発注残は、発注した数から、すでに入荷した数を引いた残りです。注文残と呼ぶ会社もあります。

倉庫の在庫と合わせて見ると、全体像がつかめます。棚にある在庫が20個、発注残が50個、そのうち来週入るのが30個。この形が分かっていれば、「いま出せるのは20個、来週なら50個まで出せます」と答えられます。在庫の数だけを見ていると、この答え方ができません。

発注残は、在庫管理表とは別の表で持ちます。在庫管理表は「棚にあるもの」、発注残の表は「これから来るもの」です。混ぜると、現物と帳簿の突き合わせができなくなります。在庫管理表の作り方は在庫管理表の作り方にまとめています。

棚にあるものと、これから来るもの在庫管理表棚にある数現物と突き合わせる棚卸の対象発注残の表まだ届いていない数納期と状態を持つ棚卸の対象にはならない
棚にあるものと、これから来るもの

持つ列

必要なのは、次の列です。

中身
発注日いつ発注したか
発注番号問い合わせのときに使う
仕入先どこに頼んだか
品番・品名現品表示と同じ書き方
発注数頼んだ数
入荷済み数すでに届いた数
発注残発注数から入荷済みを引いた数
納期いつ届く予定か
状態手配中、回答待ち、遅延

発注残の列は計算で出します。手で書き換えると、入荷のたびに直し忘れが起きます。入荷済み数を更新すれば残が自動で減る形にしておきます。

納期の列は、仕入先から回答をもらった日付を入れます。発注時の希望納期と、仕入先の回答が違うことがあるので、回答が来たら書き換えます。回答の管理は納期回答の管理にまとめています。

発注残は計算で出す注文残管理表発注日発注番号も仕入先担当と連絡先発注数頼んだ数入荷済届いた数発注残差を計算で出す手で書くと直し忘れ納期は回答が来たら直す状態の列で絞り込む
発注残は計算で出す

二重発注を防ぐ

発注残の表がいちばん効くのは、ここです。在庫がゼロになっているのを見て発注したが、実は3日前に別の人が発注していた。この形は、品目が多い倉庫では珍しくありません。

防ぐには、発注する前に発注残を見る手順にします。在庫管理表と発注残の表を、品番でつなげておけば、在庫の一覧に「発注残」の列が並びます。在庫がゼロでも発注残が50個あれば、発注しないという判断ができます。

発注する人が複数いる場合は、発注した瞬間に表へ入れる形にします。あとでまとめて入力すると、その間に別の人が同じものを発注します。紙の控えを回すだけでも、入れる前に気づけます。

発注の権限を決めておく

品目ごとに発注する人を決めておくと、二重発注はほとんど起きません。誰でも発注できる形にする場合は、発注残の表を見てから発注するという手順を必ず通します。表が最新でなければ意味がないので、入力のタイミングも合わせて決めます。

遅れを追いかける

発注残の表は、遅れを見つける道具でもあります。納期を過ぎているのに入荷済み数が増えていない行が、遅れている発注です。

表計算なら、今日の日付と納期を比べて色を付けるだけで見つかります。毎朝その色の行だけを見て、仕入先に確認の連絡を入れます。遅れていることに気づくのが早いほど、代わりの手当てを打てます。別の仕入先から手配する、出荷の順番を変える、相手先に事情を伝える。どれも、当日に気づいたのでは間に合いません。

遅れが特定の仕入先に偏っていれば、それも記録から分かります。回数を数えて、相手先と話すときの材料にします。感覚で「最近よく遅れる」と伝えるより、件数で伝えるほうが話が進みます。

納期を過ぎた行に色を付ける毎朝見るのはここだけ遅延回答待ち予定どおり(見なくてよい)全部を毎日見ようとすると続かない
納期を過ぎた行に色を付ける

分納のときの扱い

発注した数の一部だけが届く分納は、入荷済み数を足して、残りを発注残として残します。全部届くまで行を閉じないのが要点です。1回目の入荷で行を消してしまうと、残りが宙に浮きます。

何回かに分けて届くことが分かっている場合は、予定の日付を備考に書いておきます。入荷のたびに、いつ何個届いたかが分かる形にしておくと、仕入先への問い合わせが正確になります。

発注してから届くまでの時間を測る

発注残の表を1年ぶん溜めると、副産物としてリードタイムの実績が手に入ります。発注日と実際の入荷日の差を品目ごとに並べれば、その仕入先が実際に何日かかっているかが分かります。

これが効くのは、安全在庫を計算するときです。仕入先が「3日で納品します」と言っていても、実績の平均が7日で、最大が14日なら、3日で計算した安全在庫は足りません。言われた日数ではなく、実績の日数を使うところが要点になります。計算のしかたは安全在庫の計算にまとめています。

実績を見ると、季節で変わる品目も見つかります。年末や連休の前後だけ倍の日数がかかっているなら、その時期だけ発注を早めます。同じ品目でも、時期によってリードタイムが違うことは珍しくありません。

ばらつきの大きさも見ておきます。平均は5日でも、3日のときと12日のときが混ざっているなら、その品目は安全在庫を厚めに持つ必要があります。平均だけを見て決めると、遅れた回にそのまま欠品します。

仕入先と話す材料になる

実績の数字は、仕入先と納期の話をするときの材料になります。「最近遅いですね」ではなく、「直近6か月で平均9日、最大15日でした。5日で安定させられませんか」と言えれば、相手も具体的に返せます。改善を頼むときは、こちらの記録を先に出すほうが早く進みます。

実績の日数で見る発注記録する回答納期を書く入荷実績の日集計平均と最大言われた日数ではなく、実績の平均と最大で安全在庫を決める
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実際に使える様式が必要な方へ

『注文残管理表』の様式が、点検板グループの在庫板で配られています。そのまま使えるExcelです。

この様式をひらく

表を軽く保つ

発注残の表は、閉じた行を残したままにすると、どんどん重くなります。全部届いて完了した行は、別のシートへ移します。手元に残すのは、まだ届いていない行だけにしておくと、毎朝見るときに目に入る量が減ります。

移した行は捨てません。リードタイムの実績と、遅れの回数を集計する元になります。年度ごとにファイルを分けておけば、必要なときに取り出せます。

行が増えすぎる原因が、発注の回数そのものにあることもあります。同じ品目を月に8回発注しているなら、まとめて4回にできないかを見ます。発注1回ごとに、表の行と、確認の手間と、受け入れの作業が発生します。単価だけでなく、この手間も含めて発注の回数を決めます。

状態の列を活かす

「手配中」「回答待ち」「納期確定」「遅延」「取消」と状態を分けておくと、絞り込みで必要な行だけを見られます。毎朝見るのは「遅延」と「回答待ち」だけで足ります。全部の行を毎日見ようとすると、続きません。

在庫との合わせ方

発注残の表と在庫管理表を、品番でつないで1枚の画面にすると、受注のときに即答できるようになります。

見るのは3つです。いま棚にある数、すでに約束している数、これから来る数。棚に100個あっても、40個は受注済みなら、新しく約束できるのは60個です。そこに発注残の50個を足せば、納期しだいで110個まで答えられます。

品目が少ないうちは、この3つを紙に並べるだけでも回ります。大事なのは、数字が3つそろっていることです。在庫の数だけを見て答えると、二重に約束するか、出せるのに断るかのどちらかになります。

現場に置き場を用意しておく

発注残が見えていると、入ってくる荷物の量が事前に分かります。来週50個入ると分かっていれば、その置き場を空けておけます。当日になって「置く場所が無い」となり、通路に仮置きするのがいちばん困る形です。

大きな入荷が重なる日を先に知るには、納期の列で並べ替えて、週ごとの入荷予定を見ます。同じ週に大口が3件重なっているなら、どれかを翌週にずらせないか仕入先に相談できます。平準化は、届いてからでは手が打てません。

置き場を空ける作業は、入荷の前日までに済ませます。入荷待ちの置き場に前回の荷物が残っていると、新しい荷物と混ざって検品ができなくなります。入荷の流れは検品のやり方にまとめています。

大口の入荷は人も要る

パレット20枚が届く日は、フォークリフトも人も要ります。発注残の表から入荷の予定が見えていれば、シフトを合わせられます。荷役の人数が足りない日に大口を受けると、その日の出荷まで遅れます。入荷と出荷は同じ人が回していることが多いので、予定を先に並べる価値があります。

入荷したときにやること

発注残の行を更新するのは、検品が終わってからです。届いた時点で更新すると、数量違いがそのまま残ります。

検品で数が確定したら、入荷済み数に足します。全部届いたら行を閉じます。数が足りなければ、残りを発注残として残し、仕入先へ連絡します。多く届いた場合は、受け入れるかどうかを決めてから処理します。検品の組み方は検品のやり方にまとめています。

入荷の記録と、発注残の更新は同じタイミングで行います。別々にすると、片方だけ更新された状態が生まれます。入出庫の記録の付け方は入出庫管理のやり方にまとめています。

検品が終わってから更新する1到着入荷待ちへ2検品数を確定3更新入荷済に足40なら行を閉じる
検品が終わってから更新する

委託倉庫に預けている場合

自社に倉庫が無く、営業倉庫に預けている場合も、発注残は自社で持ちます。倉庫会社が持っているのは「預かっている在庫」だけで、これから届く分は発注した側にしか分かりません。

入荷の予定を倉庫会社へ事前に伝えておくと、受け入れの段取りが組めます。パレット何枚、いつ、どの運送会社で。伝えていないと、当日に受け入れられないことがあります。保管の場所にも限りがあるので、大口が入る前の連絡は実務上ほぼ必須になります。

倉庫会社からの入荷報告と、自社の発注残の突き合わせは、月に1回で足ります。発注したのに入荷報告が無い行が残っていれば、届いていないか、報告が漏れているかのどちらかです。どちらであっても、早く気づくほど調べやすくなります。保管料の計算にも入庫の数が効くので、突き合わせは請求の確認とまとめて行うと手間が減ります。しくみは倉庫の保管料と3期制にまとめています。

これから届く分は自社しか知らない倉庫会社は知らない預かっている在庫だけ入荷予定を伝え受け入れの段取発注残
これから届く分は自社しか知らない

よくある質問

発注残の表は誰が持ちますか

発注する人が持ちます。倉庫の担当が別にいる場合は、入荷の情報が発注側にすぐ届く形にしておきます。届いたことが発注側に伝わらないと、表が減りません。入荷の記録をそのまま共有する形が、いちばん手間がかかりません。

発注書を出しっぱなしで、控えが残っていません

発注番号と日付、品番、数量、仕入先の5つが残っていれば表は作れます。メールで発注しているなら、送信済みのフォルダから拾えます。電話やファクスで発注している場合は、その場で1行書く手順を先に作ります。控えが無いと、遅れの確認も二重発注の防止もできません。

納期の回答が来ない仕入先があります

回答待ちの状態を表に持っておきます。「手配中」「回答待ち」「納期確定」と状態を分けておけば、回答が来ていない発注が何件あるかが分かります。件数で見えると、催促の優先順位も決めやすくなります。

発注残が在庫として数えられてしまいます

棚卸のときに、発注残を在庫に含めてしまう間違いです。発注残は自社の棚に無いものなので、実地棚卸の対象にはなりません。帳簿上の扱いは会計の方針によるため、経理部門に確認してください。表を分けておけば、この混同は起きません。

発注残が多すぎると何が問題ですか

先の在庫を買い込んでいる状態なので、入ってきたときに置き場が足りなくなります。保管料も上がります。発注残の合計金額を月に1回見ておくと、買い込みすぎに気づけます。不動在庫になる前に手を打てる段階です。

緊急の手配をしたときの記録はどうしますか

通常の発注と同じ表に、状態を「緊急」として入れます。緊急の手配が月に何件あるかを数えておくと、安全在庫や発注点の設定が合っていないことに気づけます。件数が多い品目は、発注点を上げるか、リードタイムを測り直すかのどちらかが要ります。緊急の手配は送料も割高になることが多いので、金額でも効いてきます。

発注残を見る習慣が付きません

毎朝、遅延の行だけを見る形から始めます。全部の行を見ようとすると続きません。表計算で納期を過ぎた行に色が付くようにしておけば、開いて色を見るだけで終わります。1分で済む形にしておくと習慣になります。

キャンセルした発注はどう記録しますか

行を消さずに、状態を「取消」にして残します。消してしまうと、発注した事実と、なぜ取り消したかが分からなくなります。仕入先との行き違いがあったときに、記録が残っていれば確認できます。

発注の担当が辞めることになりました

発注残の表が最新なら、引き継ぎはその表1枚で済みます。頭の中にしかない「あれは来週来るはず」が、いちばん引き継げません。辞めることが決まった時点で、未完了の行をすべて最新の状態にしてもらいます。仕入先の担当者名と連絡先も、表に列を足して残しておくと、後任が最初の1本を掛けやすくなります。

在庫がゼロで、発注残もゼロなのに注文が来ました

発注点の設定が無いか、機能していない状態です。その品目を、発注点を決める対象に入れます。過去の出庫のばらつきとリードタイムの実績から発注点を出して、在庫管理表に列を足します。緊急で手配したときの費用と納期を記録しておくと、発注点を決めるときの材料になります。

複数の仕入先に同じ品目を頼んでいます

品番が同じでも、仕入先ごとに行を分けて持ちます。どちらから何個来るのかが分からないと、遅れたときの手当てができません。仕入先ごとのリードタイムの実績も別に溜まるので、どちらが安定しているかの判断にも使えます。片方が遅れたときに、もう片方へ振り替えられるかも見えます。

まとめ

発注残は、発注したのにまだ届いていない数です。棚にある在庫とは別に持って、品番でつないでおくと、受注のときに即答できるようになります。

持つ列は、発注日・発注番号・仕入先・品番・発注数・入荷済み数・発注残・納期・状態です。発注残は計算で出して、入荷済み数を更新すれば自動で減る形にします。

そして、納期を過ぎた行に色を付けることです。遅れに早く気づけば、代わりの手当てが打てます。遅れの回数を仕入先ごとに数えておくと、話をするときの材料にもなります。

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