期末在庫の出し方|経理へ渡すものと手順
目次
期末在庫は、倉庫の仕事が会計とつながる場所です。現場が数えた数が、そのまま決算の数字の一部になります。だからこそ、数え方と渡し方に決まりがあり、あとから説明できる形が求められます。
この記事では、期末在庫を、何を求められるか、数える前の準備、渡すものの形、差が出たときの扱い、次の期に向けた記録の順に整理します。会計と税務の判断は会社の方針によります。金額の処理は経理部門か顧問の税理士に確認してください。
現場に求められること
期末に現場が求められるのは、その時点で何が、いくつ、どこにあるかを確定させることです。金額を計算するのは経理の仕事で、現場が渡すのは数量と品目の情報になります。
求められる形は、品番、品名、数量、単位、保管の場所です。これに加えて、扱いの区分が要ります。自社の在庫か、預り品か、支給品か。不良品か、良品か。同じ棚にあっても、区分が違えば扱いが変わります。
また、いつの時点の数字かがはっきりしている必要があります。期末の日をまたぐ入出庫をどちらに含めるかで、数が変わります。ここが曖昧だと、あとから説明できません。
数える前の準備
期末の棚卸は、当日の作業より準備で決まります。次の4つを、前もって決めて紙にします。
締めの時刻を決めます。何時時点の在庫を数えるのか。当日の入荷は別の場所に固めて、棚卸が終わるまで受け入れの処理をしない形にします。この置き場に「棚卸対象外」の紙を貼っておくと、数える人が迷いません。
数えない物の扱いを決めます。預り品、支給品、不良品、返品の判断待ち、廃棄予定。どれを数えて、どの集計に入れるかを決めます。数えるがマークを付ける形にしておくと、あとから分けられます。
単位を決めます。ケースとバラが混ざる品目は、入数の一覧を棚卸表と一緒に配ります。そして、記入のしかたを決めます。空欄が「ゼロ」なのか「未確認」なのかを、はっきりさせておきます。
事前にやっておくと軽くなること
期末の1か月前にやっておくと、当日が大きく軽くなる作業があります。
不動在庫の判断です。1年以上動いていない品目を一覧にして、処分するか残すかを決めておきます。処分が済んでいれば、数える行数が減ります。判断が間に合わなくても、扱いだけ決めておけば当日に迷いません。見つけ方は不動在庫の見つけ方にまとめています。
廃棄の処理も済ませます。破損や期限切れで使えないものを、期末の前に処理しておきます。置き場に残ったままだと、数えるかどうかで毎回止まります。進め方は在庫の廃棄と記録にまとめています。
返品の判断待ちも片づけます。在庫に戻すもの、廃棄するもの、返送するもの。判断が済んでいれば、当日は通常の在庫として数えられます。
そして、棚の整理です。同じ品番が複数の棚に散っていれば、1か所にまとめます。現品表示が読めない品物は、貼り直します。数える速さは、探す時間で決まります。
数え方の決まりをそろえる
期末の棚卸は、数える人が多いほど、数え方の差が出ます。事前に形をそろえます。
2人1組にできるなら、1人が数えて1人が書く形にします。数を声に出すぶん間違いが減り、書き写しのミスも見つかります。人数が足りないときは、1人で数えたあとに別の人が抜き取りで再確認します。
数え終わった棚には印を残します。マグネットや札を使って、「数えたかどうか」が見て分かる状態にします。二重に数えた棚と、まだの棚が混ざるのを防げます。
帳簿の数を見せるかどうかも決めます。見えていると、無意識にその数に合わせてしまうことがあります。1回目は伏せて数え、差が出た棚だけ帳簿数を見ながら数え直すという組み方が、精度と時間の両方に収まります。
棚卸表は棚番の順に並べます。品番順の表を持って倉庫を歩くと、人が棚の間を何度も往復することになります。在庫管理表から棚番順に出力する形にしておけば、二重に管理せずに済みます。
人と時間の見積り
期末の棚卸は、人も時間もまとまって要ります。前回の実績から見積もるのがいちばん確実です。
前回の「何行を何人で何時間」が残っていれば、今回の行数から必要な人時が出ます。記録が無い場合は、1人が1時間で数えられる行数を仮に置いて計算し、当日に実績を測ります。次回からは、その実績を使います。
棚番が振ってあり、現品表示が読め、1品番が1か所にまとまっている倉庫ほど速く進みます。逆に、探す時間が長い倉庫は、人数を増やしても比例して速くはなりません。通路で人が渋滞します。
日程は、入出荷のいちばん少ない日に置きます。そして、社外への連絡を忘れないようにします。荷主や運送会社に、入出荷を止める時間帯を事前に伝えます。連絡が抜けると、棚卸の最中にトラックが来ます。
渡すものの形
経理へ渡すのは、品目ごとの数量の一覧です。在庫管理表から、期末時点の数字を出す形が基本になります。
列は、品番、品名、数量、単位、保管の場所、区分、備考です。区分の列で、自社在庫・預り品・支給品・不良品を分けます。経理は、この区分ごとに扱いを変えます。
金額の欄は、経理が入れることが多くなります。現場が単価を持っていない場合もあるためです。現場は数量を、経理は金額をという分担にしておくと、責任の所在がはっきりします。
渡すときに、数えた日と時刻、締めの扱い、数えた人も添えます。あとから「この数字は何時時点か」と聞かれたときに答えられます。差があった品目については、その旨も添えます。
差が出たときの扱い
期末の棚卸で差が出るのは珍しくありません。大事なのは、差を消すことではなく、どう扱ったかを残すことです。
まず、数え直します。次に、近くの棚を見ます。ここまでで多くが片づきます。それでも合わなければ、締めの前後の伝票を見て、計上のタイミングのずれを疑います。差の数量が伝票の数量と一致すれば、それは計上のずれです。調べ方は棚卸差異の原因と対策にまとめています。
見つからなかったものは、原因不明として記録に残したうえで、現物に合わせます。無理に理由を付けないところが要点です。翌年に同じ品目で差が出たときに、比べられなくなります。
差の一覧は、経理にも渡します。品番、数量、向き、推定の原因。金額としての処理(棚卸減耗として費用にするかなど)は経理と税務の判断になるので、現場は数量と理由を正確に渡します。
棚卸の直前1週間
直前の1週間にやっておくと効くことを、順に並べます。
入荷の予定を確認します。大口の入荷が棚卸の直前に重なっていれば、日程をずらせないか相談します。受け入れたばかりの荷物は、棚入れと記録が追いついていないことがあります。
置き場を片づけます。通路の仮置き、判断待ちの返品、廃棄予定の品物。数える対象かどうかが曖昧なものを、先に片づけておきます。
棚卸表を印刷して、区画ごとに分けます。担当を割り当てて、名前を書いておきます。当日の朝に割り当てを決めると、そこで時間を使います。
入数の一覧と、記入のしかたの例を用意します。応援の人が入る場合は、この2枚を当日に渡せる形にしておきます。品物を知らない人でも、棚番で仕事を渡せば数えられます。
そして、前日の出荷が終わった時点で締めます。締めた時刻を記録して、それ以降の入出庫は別の扱いにします。この時刻が、あとで差を調べるときの基準になります。
監査や税務で聞かれること
期末の在庫は、外から確認されることがあります。聞かれるのは、数え方と、記録の一貫性です。
どういう手順で数えたか、誰が数えたか、いつの時点か、差が出たときにどう扱ったか。手順を紙にして、そのとおりに行った記録が残っていれば、答えられます。口頭の説明だけだと、毎回同じことを説明することになります。
立ち会いを求められることもあります。その場合は、当日の段取りを事前に伝えます。開始の時刻、数える順路、休憩、終わりの見込み。立ち会う側も準備ができます。
区分の扱いも聞かれます。預り品を自社の在庫に含めていないか、不良品をどう扱ったか、廃棄予定のものをどうしたか。区分の列が記録にあれば、そのまま示せます。判断に迷った点は、経理部門と事前に相談しておきます。
次の期に向けて残すこと
期末の棚卸が終わったら、次回のための記録を残します。これがあると、来年の計画がそのまま作れます。
残すのは、数えた行数、人数、所要時間、区画ごとの差異の件数、当日に困ったことです。「何行を何人で何時間」が残っていれば、次回の人員の相談が数字でできます。
差異の多かった区画と品目も残します。来年はそこを重点的に見る、あるいはその前に手を打つ、という判断ができます。同じ区画で毎年差が出るなら、置き方か記録の手順に原因があります。
そして、当日に困ったことを書き出します。入数の一覧が無かった、置き場が分からなかった、締めの扱いで迷った。この一覧が、来年の準備の項目になります。
循環棚卸との組み合わせ
日ごろから循環棚卸を回していると、期末の負担が下がります。差が出る品目があらかじめ分かっているので、当日はそこを重点的に見ればよくなります。
循環棚卸で1年を通して精度を保っておけば、期末に出る差も小さくなります。差が小さければ、調査の時間も短くなり、当日の終わりが早くなります。回し方は循環棚卸のやり方にまとめています。
ただし、循環棚卸をやっているから期末の実地棚卸を省略できるかどうかは、別の話になります。会計と税務の要件は会社ごとに違うため、経理部門や顧問の税理士と先に相談してください。現場の判断だけで決められるものではありません。
現場と経理の受け渡し
期末の在庫は、現場と経理の受け渡しで止まることがあります。お互いが求めているものを、事前にすり合わせておきます。
経理が知りたいのは、区分ごとの数量と、いつの時点かです。現場が知りたいのは、いつまでに、どの形で渡せばよいかです。この2つを、期末の1か月前に確認するだけで、当日以降のやり取りが減ります。
様式も先に決めます。表計算のファイルで渡すのか、紙で渡すのか。列の並びと、単位の書き方。毎年同じ形にしておくと、経理側の作業も速くなります。
差が出た品目の扱いも、事前に決めておきます。どの程度の差までは現場で処理して、どこから経理に相談するか。線が決まっていれば、当日に判断で止まりません。
渡したあとに質問が来ることもあります。数えた記録の原本を、すぐ出せる場所に置いておきます。棚卸表と、差異の調査の記録。この2つがあれば、たいていの質問に答えられます。
よくある質問
期末の日に入荷した荷物はどちらに入れますか
締めの扱いを、先に決めておきます。多くの倉庫では、検品が終わって棚に入れた時点を入庫としています。その形なら、当日に届いて検品が終わっていない荷物は、翌期の扱いになります。決めた扱いを毎年同じにすることが大事です。経理の方針と合わせて決めてください。
預り品も数えますか
現物を確かめる作業としては数えます。ただし、自社の在庫としては合算しません。集計を分けて出せる形にしておきます。会計上の扱いは経理部門に確認してください。区分の列があれば、この分けは簡単にできます。
不良品はどう扱いますか
良品とは分けて数えます。区分の列で分けておけば、経理が扱いを判断できます。使えないと分かっているものは、期末の前に廃棄の処理を済ませておくほうが、当日も翌期も軽くなります。
数えている最中に出荷が発生しました
出した数量と時刻を紙に書いて、棚卸の集計に必ず反映させます。口頭で伝えると、ほぼ確実に抜けます。原則は棚卸が終わるまで出さない形にして、やむを得ない場合の手順を決めておきます。
棚卸表はどのくらい保管しますか
税法などで帳簿書類の保存期間が定められており、棚卸表もその対象に含まれるとされています。年数は会社の区分によって変わるため、経理部門か顧問の税理士に確認してください。少なくとも、次の期末と比べられる形で残しておきます。
委託している倉庫の在庫はどう確認しますか
倉庫会社から在庫の報告を受け取り、自社の記録と突き合わせます。期末の時点で立ち会って数えるかどうかは、契約と会社の方針によります。立ち会えない場合も、報告の数字と自社の入出庫の記録が合っているかは確かめられます。食い違いが出たときは、日付のずれをまず疑います。
在庫管理表と棚卸の結果が大きく違います
日ごろの記録が追いついていない状態です。期末だけを直しても、翌期に同じことが起きます。入出庫の記録をその日のうちに入れる形と、循環棚卸で合わせ続ける形の2つで、翌期の差は小さくなります。今期は現物に合わせたうえで、差の大きかった品目を記録に残しておきます。
当日の人手が足りません
金額の小さい品目と、動いていない品目の精度を落として、主力の品目に人を集めます。全品目を同じ精度で数えようとすると、いちばん大事な品目の精度が落ちます。事前に不動在庫の処理を済ませておくと、数える行数そのものが減ります。
棚卸の当日に応援を頼むときの注意は
棚番で範囲を渡します。「A-03-2の棚からA-03-5の棚まで、書いてある品番と数を書き写す」という形にすれば、品物を知らなくても数えられます。単位の一覧と記入例を1枚渡しておくと、書き方がそろいます。品名で頼むと、探す時間で終わります。
まとめ
期末在庫で現場が渡すのは、品目ごとの数量と区分です。金額の計算は経理の仕事なので、現場は数量と、いつの時点の数字かを正確に伝えます。
当日の混乱は、準備で決まります。締めの時刻、数えない物の扱い、単位、記入のしかた。この4つを紙にして配るだけで、数え直しの回数が減ります。
そして、期末の1か月前に、不動在庫の判断、廃棄の処理、返品の判断を済ませておきます。数える行数が減り、当日に迷う場面も減ります。