在庫を合わせる実務2026.09.16 公開TZ-03

循環棚卸のやり方|倉庫を止めずに合わせる

目次

循環棚卸は、倉庫を止めずに在庫を合わせていくやり方です。年に1回の一斉棚卸と違い、毎日または毎週、決めた範囲だけを数えます。いちばん大きな利点は、差が出たときに原因をたどれることです。3か月前の伝票は誰も覚えていませんが、先週の出荷なら追いかけられます。

この記事では、循環棚卸を、一斉棚卸との違い回す順番の決め方1日あたりの量差が出たときの扱い続けるための手当ての順に整理します。品目数と人数で最適な形は変わるため、自社の規模に置き換えて読んでください。

循環棚卸の計画と進捗を1枚で管理する様式が配られています。

循環棚卸とは何か

循環棚卸は、棚や品目を区切って、少しずつ数え続けるやり方です。サイクルカウントと呼ばれることもあります。1日に数える量を小さくして、1年かけて全体を回します。動きの多い品目は年に何回も回り、動かない品目は年に1回だけ回る、という形にするのが一般的です。

一斉棚卸は、決めた日に倉庫を止めて全品目を一度に数えます。ある一時点の在庫がそろって確定するので、会計の数字と合わせやすいという利点があります。その代わり、入出荷を止める必要があり、人数と時間がまとまって要ります。

どちらか一方を選ぶものではありません。出荷を止められない倉庫では、循環棚卸を軸にして、期末だけ一斉棚卸を行うという組み方が扱いやすくなります。日々の精度を循環棚卸で保っておけば、期末の一斉棚卸で出る差が小さくなり、当日の調査も軽くなります。一斉棚卸の進め方は棚卸のやり方にまとめています。

一斉棚卸と循環棚卸の役割一斉棚卸期末に全品目一時点でそろう倉庫を止める会計の数字と合わせやすい循環棚卸毎日少しずつ止めずに回せる差の範囲が絞れる原因をたどれるのが利点
一斉棚卸と循環棚卸の役割

回す順番を決める

全品目を同じ頻度で回すと、動かない品目に時間を取られます。金額と動きで品目を分けて、頻度を変えます。

分け方の目安は次のとおりです。動きが多くて単価も高い品目は月に1回、動きは多いが単価が低い品目は3か月に1回、ほとんど動かない品目は年に1回。年1回の品目は、期末の一斉棚卸で数えれば足りるので、循環の対象から外しても構いません。

この分け方は、発注の頻度や、置き場所の決め方にもそのまま使えます。動きの多い品目を取りやすい場所へ寄せる、安全在庫を細かく見直す、といった判断に同じ区分を使えば、管理の手間がまとまります。品目の分け方はABC分析の使い方にまとめています。

棚の順に回す方法もある

品目で分けるのが難しい場合は、棚を順に回す方法でも構いません。A通路から順に、毎日2連ずつ数えていく形です。品目の区分を作る手間が要らず、歩く順路もそのままなので、始めやすいやり方になります。

この場合も、動きの多い品目が集まっている通路は、年に何度か余分に回すようにします。棚番が歩く順に振ってあれば、範囲の指定が「A-01からA-04まで」と1行で済みます。棚番の付け方はロケーション管理のやり方にまとめています。

頻度は金額と動きで変える区分回す頻度動きが多く単価も高い月に1回動きが多く単価が低い3か月に1回動かない年に1回。期末で足りる
頻度は金額と動きで変える

1日にどれだけ数えるか

続けられる量にすることが、いちばん大事です。1日30行を20営業日で600行になります。品目数が600なら、1か月で1周する計算です。

最初は少なめに設定します。1日10行でも、始めて続くほうが、1日50行で3週間でやめるより結果が出ます。慣れてきて、時間が余るようになってから増やします。

時間帯も決めます。出荷が落ち着いた午後、または朝の始業直後など、毎日同じ時間にします。時間が決まっていないと、忙しい日から順に飛びます。1日15分で終わる量にしておくと、飛ばす理由が無くなります。

誰が数えるか

ピッキングの担当が、自分の受け持ちの棚を数える形が回りやすくなります。移動が要らず、棚の状態も分かっているためです。ただし、自分が扱っている品目だけを数え続けると、思い込みが入ります。月に1回は別の人が同じ範囲を数える日を作ると、精度が保てます。

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実際に使える様式が必要な方へ

循環棚卸の計画表と棚卸表が、点検板グループの在庫板で配られています。分担と進捗を1枚で管理できます。

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始めるときの手順

いまゼロから始めるなら、次の順で進めます。計画を作り込んでから始めようとすると、いつまでも始まりません。

最初に、在庫管理表を棚番の順に並べ替えて印刷します。次に、1日に数える範囲を決めます。棚で区切るなら「A通路の01連から04連まで」、品目で区切るなら「動きの多い20品目」です。そして、数える時間帯と担当を決めます。ここまでで準備は終わりです。

1週間やってみて、時間が足りなければ範囲を減らし、余るようなら増やします。1か月続いた形が、その倉庫に合った量になります。最初から1年ぶんの計画表を作っても、量が合っていなければ2週間で崩れます。

始めてすぐは、差がたくさん出ます。長く数えていなかった棚ほど、ずれが溜まっているためです。ここで「うちは在庫管理ができていない」と落ち込む必要はありません。最初の1周は、溜まっていたずれを吐き出す期間と考えて、原因の分類だけ丁寧に残します。2周目から、本当の差の件数が見えてきます。

最初の1周は溜まった差が出る差の件数1周目4周目最初は溜まっていたずれを吐き出す期間。2周目から本当の差が見える
最初の1周は溜まった差が出る

数えるときのやり方

数え方そのものは、一斉棚卸と同じです。2人1組にできるなら、1人が数えて1人が書く形にすると精度が上がります。1人で数える場合は、数えたあとにもう一度、別の順番で数え直すと見落としが減ります。

帳簿の数を見ながら数えるかどうかは、精度と時間のどちらを取るかで変わります。数が見えていると、無意識にその数に合わせてしまうことがあります。1回目は伏せて数え、差が出たときだけ帳簿数を見ながら数え直すという組み方にすると、両方が収まります。

数え終わった棚には印を残します。マグネットや札を使って、「今週数えた棚」が見て分かる状態にしておくと、二重に数えたり、飛ばしたりすることが減ります。

ついでに見ておくこと

棚の前に立っているので、数える以外のことも一緒に見られます。現品表示が読めるか、期限の近いものが奥に残っていないか、棚のラベルが剥がれていないか。気づいたことを備考に1行書いておくだけで、棚の状態が少しずつ良くなります。期限の管理は先入れ先出しのやり方にまとめています。

差が出たときの扱い

循環棚卸の値打ちは、ここにあります。差が見つかったその日のうちに、原因をたどれます。

まず、もう一度数えます。数え間違いが最も多いためです。次に、近くの棚と、同じ品番が置かれている別の場所を見ます。ここまでで半分以上が片づきます。それでも合わなければ、直近の入出庫の記録をたどります。循環棚卸なら、前回数えた日から今日までの範囲だけを見れば済むので、1か月ぶんの記録を追えば足ります。年1回の一斉棚卸だと、この範囲が1年になります。

見つからなかったものは、原因不明として記録に残します。無理に理由を付けないのが実務のコツです。品番と棚番と差の向きだけでも残しておけば、同じ品目で繰り返し出ているかどうかが見えてきます。調べ方は棚卸差異の原因と対策にまとめています。

帳簿を直す権限を決めておく

差が出るたびに上長の承認を待つ形にすると、数えた人が止まります。一定の金額や数量までは現場で直してよい、それを超えたら報告するという線を決めておくと回ります。線を決めずに「全部報告」にすると、報告しないまま直す形が生まれます。

差はその日のうちに調べる1数え直す最も多い2近くの棚場所違い3記録前回から今4打ち切る不明と書く
差はその日のうちに調べる

進捗を見えるようにする

循環棚卸は、始めるのは簡単で、続けるのが難しい仕組みです。やった範囲と、やっていない範囲が見える形にしておきます。

計画表に、棚番の範囲と予定日、実施日、数えた人、差の件数を並べます。予定日だけが並んでいて実施日が空欄のまま続いていれば、無理のある計画です。量を減らすか、時間帯を変えます。

1周したら、その周で出た差の件数と、原因の内訳を1枚にまとめます。差が減っているかどうかが、この仕組みの効果になります。減っていなければ、数え方ではなく、入出庫の記録や置き方に原因があります。

計画表で進捗を見る循環棚卸計画表範囲棚番か品目予定日回す日実施日空欄なら未実施担当数えた人差の件数合わなかった数実施日の空欄が続け量に無理がある壁に貼ると続く
計画表で進捗を見る

効果をどう測るか

続けるかどうかを判断するには、数字が要ります。循環棚卸で見るのは3つです。

1つ目は、差が出た棚の割合です。数えた棚のうち、帳簿と合わなかった棚が何パーセントか。周を重ねるごとに下がっていれば効いています。2つ目は、原因の内訳です。数え間違いが減っているのか、場所違いが減っているのか、記録漏れが減っているのかで、次に手を入れる場所が変わります。3つ目は、期末の一斉棚卸で出る差の大きさです。循環棚卸を始めた年と前の年で比べると、効果がはっきり出ます。

数字が下がらない場合、数え方の問題ではありません。入出庫の記録が翌日に回っている、破損や廃棄が記録されていない、同じ品番が複数の棚に散っている。原因は棚卸の外側にあります。そこを直さないまま回数だけ増やしても、同じ差を毎回見つけるだけになります。記録の付け方は入出庫管理のやり方にまとめています。

人手をかけた価値を示す

循環棚卸は、毎日少しずつ人の時間を使う仕組みです。続けるには、その時間に見合うものが出ていることを示せたほうがよくなります。差の件数が減ったこと、期末の棚卸が短く終わったこと、欠品が減ったこと。現場と経営の両方に効いた点を、1年に1回でよいので並べます。

期末の一斉棚卸との関係

循環棚卸を回していても、期末の実地棚卸を省略できるかどうかは別の話になります。会計や税務の面で、期末時点の在庫をどう確定させるかは会社の方針と監査の要件によります。省略を検討する場合は、経理部門や顧問の税理士と先に相談してください。

実務としては、循環棚卸で日々の精度を上げておくと、期末の一斉棚卸が軽くなります。差が出る品目があらかじめ分かっているので、当日はそこを重点的に見ればよく、調査の時間も短くなります。

続けるための手当て

止まる理由は、だいたい次のどれかです。量が多すぎる、時間が決まっていない、差が出ても何も起きない、進捗が見えない。

量は、1日15分で終わる範囲まで落とします。時間は、毎日同じ時刻に固定します。差については、原因をたどって手当てまで進めた例を、月に1回でよいので現場に返します。数えても何も変わらないと分かると、数字だけを合わせて済ませるようになります。

進捗は、計画表を壁に貼るのがいちばん簡単です。今週の範囲に印が付いていくだけで、続けられます。

よくある質問

循環棚卸だけで一斉棚卸をやめられますか

会計と税務の扱いによるため、経理部門や顧問の税理士に確認してください。循環棚卸の範囲と精度が、期末時点の在庫を説明できる水準にあることが前提になります。現場の判断だけで決められるものではありません。

1日にどのくらい時間がかかりますか

数える行数と、探す時間で決まります。棚番が振ってあって現品表示が読める倉庫なら、1行あたり数十秒で進みます。自社の実績を1回測っておくと、次から量の相談が数字でできます。前回の「何行を何分で」を記録しておきます。

動きの多い品目は、数えた直後に動いてしまいます

数えた時刻を記録して、その時刻の帳簿残と突き合わせます。数えている最中に出荷が起きる品目は、出荷の少ない時間帯に回すようにします。それでも動く品目は、出荷の担当と時間を合わせて、その品目だけ先に数えます。

差が出た品目は、次回も早く回すべきですか

そのほうが効きます。差が出た品目を「要注意」として、次の周では早めに回すようにすると、原因が続いているかどうかが早く分かります。2周続けて差が出るなら、置き方か記録の手順に原因があります。

誰が計画を作りますか

在庫の全体が見える立場の人が作り、現場の担当と量を相談して決めます。現場が「無理だ」と言う量で始めると、必ず止まります。最初の1か月は少なめにして、続いたら増やす順にします。

派遣やアルバイトの方に任せてよいですか

任せられます。棚番で範囲を渡すと、品物を知らなくても数えられます。「A-03-2の棚から、A-03-5の棚まで、書いてある品番と数を書き写す」という形にすれば、当日から動けます。単位の一覧(1ケース何本か)と記入例を1枚渡しておくと、書き方が揃います。

冷蔵・冷凍の倉庫でも同じやり方でよいですか

考え方は同じですが、中にいられる時間が限られるので、1回の範囲をさらに小さくします。入る前に数える範囲を決めて、用紙も先に準備しておきます。手袋をしたまま書ける用紙やペンにしておくと、扉の開け閉めが減ります。

差が大きい品目ばかり先に回してよいですか

構いません。むしろ効率が良くなります。過去に差の出た品目を優先する形にすると、同じ人手でより多くの差を早く見つけられます。ただし、差の出ない品目を何年も数えないままにすると、そこにずれが溜まります。年に1回は全体が回るように組みます。

棚卸表は循環棚卸でも同じものを使えますか

同じもので構いません。範囲を絞って印刷するだけです。棚番の順に並べ替えられる形にしておくと、循環にも一斉にも使い回せます。在庫管理表から出力する形にしておけば、二重に管理せずに済みます。

システムが無いと循環棚卸はできませんか

できます。必要なのは、棚番の順に並べ替えられる在庫の一覧と、数える範囲を書いた計画表の2つだけです。表計算でも紙でも回ります。システムがあると、数えた結果の入力と差の集計が楽になりますが、始めるための条件ではありません。まず紙で1か月回してみて、続く形が分かってから道具を考えます。

数えた記録はどのくらい残しますか

その周が終わるまでは必ず残し、実務では1年ぶんを保管している現場が多くあります。前の周の結果と比べられることに意味があるので、少なくとも1周ぶんは手元に置きます。期末の一斉棚卸の記録とあわせて保管すると、年をまたいだ比較ができます。

まとめ

循環棚卸は、倉庫を止めずに少しずつ数えて、在庫を合わせ続けるやり方です。いちばんの利点は、差が出たときに調べる範囲が前回から今日までに絞られることです。

回す順番は、金額と動きで品目を分けて頻度を変えます。棚の順に回す方法でも構いません。1日の量は、15分で終わる範囲から始めて、続いてから増やします。

そして、差が出たらその日のうちに調べて、記録に残すことです。数えるだけで手当てにつながらない仕組みは、数字を合わせるだけの作業になって続きません。

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