在庫を合わせる改善2026.09.16 公開OK-02

在庫のABC分析|品目を分けて手間を配る

目次

在庫の管理でいちばん多い失敗は、全品目を同じ濃さで管理しようとすることです。品目が数百を超えると、全部を毎月見直すのは物理的に無理になります。無理をすると、いちばん大事な品目の管理まで薄くなります。ABC分析は、品目を分けて、手間の配り方を変えるための道具です。

この記事では、ABC分析を、考え方作り方区分ごとの扱い置き場所への使い方やりすぎないための線の順に整理します。分け方の基準は扱う品物で変わるため、自社の数字に置き換えて読んでください。

品目ごとの動きと金額を並べる在庫管理表の様式が配られています。

ABC分析とは何か

ABC分析は、品目を金額や出荷回数の大きい順に並べて、上位からA・B・Cに分けるやり方です。上位の少数の品目が、全体の大部分を占めるという傾向を使います。

倉庫では、こういう形で現れます。全品目の2割が、出荷回数の7割を占める。全品目の1割が、在庫金額の6割を占める。この偏りがあるから、全部を同じように扱う必要が無くなります。

分ける基準は1つではありません。出荷回数で分ければ「よく取りに行く品目」が見え、在庫金額で分ければ「お金が寝ている品目」が見えます。何を良くしたいかで、基準を選びます。歩く距離を減らしたいなら出荷回数、在庫を減らしたいなら金額です。

上位2割が7割を占める累計の比率品目(多い順)全品目急に立ち上がる形なら偏りがある。直線に近ければこの道具は効かない
上位2割が7割を占める

作り方

特別な道具は要りません。表計算で15分ほどで作れます。

まず、集計する期間を決めます。3か月から1年が扱いやすい範囲です。次に、品目ごとの合計を出します。出荷回数で分けるなら出庫の行数、金額で分けるなら数量×単価です。出したら大きい順に並べ替えます。

そのあと、累計の比率を出します。上から順に足していって、全体の何パーセントに達したかを計算します。累計70パーセントまでをA、90パーセントまでをB、残りをCとするのが、よく使われる区切りです。この線は自社で変えて構いません。品目数が少なければ、もっと粗い区切りでも足ります。

集計の元になるのは、入出庫の記録です。記録が日付と品番で残っていれば、そのまま集計できます。記録の付け方は入出庫管理のやり方にまとめています。

累計の比率で線を引く1期間3か月から12集計回数か金額3並べる大きい順470と90で
累計の比率で線を引く

実際に作ってみる

数字で追いかけます。品目が200ある倉庫で、直近6か月の出庫の行数を集計したとします。

上から並べると、最初の30品目で出庫行数の70パーセントに達しました。次の50品目を足すと90パーセントになり、残りの120品目で残りの10パーセントです。この場合、A=30品目、B=50品目、C=120品目になります。

ここから分かるのは、120品目は年に数回しか取りに行かないということです。その120品目が取りやすい場所を占めていたら、毎日の作業が遠回りになります。逆に、30品目を入口の近くにまとめれば、1日のピッキングのかなりの部分が短い距離で終わります。

この計算は、頭で考えても出てきません。実際に並べると、思っていた品目と違うものが上位に来ることがよくあります。担当者の印象と、実際の行数はずれるためです。

金額でも作ってみる

同じ品目を、今度は在庫金額で並べ替えます。出荷回数で上位だった品目が、金額では下位に来ることがあります。この2つのずれが、手当ての違いになります。よく出るが安い品目は多めに持てばよく、めったに出ないが高い品目は持ち方を見直すことになります。

回数と金額で順位が入れ替わる出荷回数で並べるよく取りに行く品目歩く距離に効く置き場所の見直しに使う在庫金額で並べるお金が寝ている品目在庫を減らすときに2つのずれが手当ての違い
回数と金額で順位が入れ替わる

誰が作って、誰が使うか

集計そのものは事務作業なので、在庫の数字を持っている人が作ります。使うのは現場です。作った一覧を事務所に置いたままにすると、置き場所も棚卸の頻度も変わりません。

現場に渡すときは、区分そのものではなく、やることの形にして渡します。「この20品目を、入口側の棚に移してください」「この品目は毎月数えてください」という形です。AとかCという記号だけを渡しても、何をすればよいか伝わりません。

区分を在庫管理表の列に持っておくと、並べ替えで必要な品目だけを抜き出せます。棚卸表を作るとき、置き場所を見直すとき、発注点を見直すときに、同じ列が使えます。在庫管理表の作り方は在庫管理表の作り方にまとめています。

半年に1回、見直す日を決める

作りっぱなしにすると、実態とずれていきます。半年に1回、集計をやり直す日を決めます。棚卸や期末と同じ時期にまとめると、忘れにくくなります。やり直したら、区分が変わった品目だけを一覧にして、棚の移動と頻度の変更を行います。

区分ごとに扱いを変える

分けただけでは何も起きません。区分ごとに、何をどう変えるかを決めます。

Aの品目は、欠品が出ると業務が止まるものです。安全在庫を計算で出し、発注点を設定し、毎月見直します。棚卸は月に1回回します。置き場所は、入口に近く、腰から目の高さにします。Bの品目は、半年に1回の見直しで足ります。棚卸は3か月に1回。Cの品目は、年1回の見直しと棚卸で回します。多めに持って手間を省くという判断も、この区分なら成り立ちます。

Cの品目に細かい計算をしても、下がる在庫はわずかです。そのぶんの時間をAに使うほうが、全体の在庫は減ります。これがABC分析の使いどころになります。安全在庫の出し方は安全在庫の計算にまとめています。

棚卸の頻度に使う

循環棚卸を回すときの順番も、この区分をそのまま使えます。Aは月1回、Bは3か月に1回、Cは年1回。品目を分ける作業を1回やれば、在庫・棚卸・置き場所の3つに同じ区分が使えます。循環棚卸の回し方は循環棚卸のやり方にまとめています。

区分ごとに頻度を変える区分棚卸安全在庫A月1回毎月見直すB3か月に1回半年に1回C年1回年1回。多めに持つ
区分ごとに頻度を変える
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実際に使える様式が必要な方へ

『在庫管理表』の様式が、点検板グループの在庫板で配られています。そのまま使えるExcelです。

この様式をひらく

発注の頻度にも使う

区分は、発注のしかたにも効きます。Aの品目は発注点を決めて、減ったら発注する形にします。Bは決まった日にまとめて発注する形で足ります。Cは年に1回か2回、使う見込みを見て発注します。

Aを定量発注にすると、守る期間がリードタイムだけになり、必要な在庫が小さくなります。逆にCを毎週見に行っても、動きが無いので判断することがありません。発注の手間も、区分に合わせて配ります。

仕入先が同じ品目をまとめて発注する場合は、区分をまたいで同じ日に出すことになります。その場合も、Aの品目だけは発注点を別に見ておくと、まとめ発注の谷間で欠品することを防げます。発注の方式については安全在庫の計算にまとめています。

置き場所に使う

出荷回数で分けたABCは、置き場所の見直しにそのまま効きます。

Aの品目を、入口に近く、手が届きやすい高さに移します。Bはその周り、Cは奥や上の段に置きます。ピッキングの時間の大半は歩いている時間なので、よく取りに行く品目が近くにあるだけで、1日の処理数が変わります。

見直しは3か月に1回で足ります。全品目を並べ替える必要はなく、上位20品目が取りやすい場所にあるかだけを確かめます。季節で動きが変わる商材は、シーズンの前に入れ替えます。棚番の付け方はロケーション管理のやり方にまとめています。

重さも一緒に見る

出荷回数だけで決めると、重い品目が上の段に行くことがあります。回数と重さの2つで場所を決めます。重い品目は、回数が多くても下の段です。腰への負担と、落下の危険の両方が減ります。

2つの軸で分ける

出荷回数と在庫金額の2つで分けると、手当ての種類が見えてきます。

出荷回数が多くて金額も大きい品目は、管理の中心です。安全在庫を細かく見て、欠品も過剰も防ぎます。出荷回数は多いが金額が小さい品目は、多めに持って手間を省くほうが合理的です。回数が少ないのに金額が大きい品目が、いちばん危ない区分になります。ここに不動在庫の予備軍が集まります。回数も金額も小さい品目は、まとめて扱って構いません。

この4つの区分で並べると、「在庫を減らせ」と言われたときに見る場所がはっきりします。減らすのは、回数が少なくて金額の大きい区分からです。よく出る品目を削ると欠品が出ます。不動在庫の見つけ方は不動在庫の見つけ方にまとめています。

回数と金額の2軸で分ける管理の中心欠品も過剰も防ぐいちばん危ない不動在庫の予備軍多めに持つ手間を省くほうが得まとめて扱う年1回で足りる金額が大きい ↑金額が小さい ↓← 出荷回数が少ない出荷回数が多い →
回数と金額の2軸で分ける

分けたあとに起きる変化

区分を使い始めると、日々の判断が軽くなります。「この品目、発注していいですか」と聞かれたときに、Aなら発注点を見て即答でき、Cなら年1回の見直しに回せます。判断のたびに一から考えなくて済むのが、いちばん大きな効果です。

新しく入った人への説明も短くなります。「入口側の棚がよく出る品目です」「奥の棚は年に数回です」と言えば、倉庫の地図が頭に入ります。棚番と区分が対応していれば、探す時間も減ります。

一方で、区分に頼りすぎると見落としが出ます。Cに入った品目でも、止まると業務が止まるものがあります。「出荷回数は少ないが、欠品すると困る」品目は、区分とは別に印を付けておきます。機械の予備部品や、法令で備えておくものがこれに当たります。

区分と別に「止まると困る」印区分だけで見るCに入ると年1回欠品に気づくのが遅い予備部品が落ちる別の印を付ける止まると業務が止まる品目法令で備えるもの回数が少なくても別扱い
区分と別に「止まると困る」印

数字が偏らない倉庫もある

すべての倉庫で上位2割が7割を占めるわけではありません。品目ごとの出荷が平らな倉庫もあります。その場合、ABCに分けても扱いを変える理由が出てきません。

まず並べてみて、偏りがあるかどうかを見ます。累計のグラフを描いて、急に立ち上がる形なら偏りがあります。なだらかな直線に近ければ、この道具は効きません。その場合は、金額や期限といった別の軸で分けるほうが役に立ちます。

偏りが無いこと自体は問題ではありません。分けても効果が出ないと分かったら、そこに時間を使わないのが正しい判断になります。

やりすぎない

ABC分析は、作り込むと目的から外れていきます。区分を5段階、7段階と細かくしても、扱いを変えられるのは実際には2つか3つです。扱いを変えられる数だけ区分を作るのが正しい粒度になります。

集計の期間も、毎月やり直す必要はありません。3か月から半年に1回で足ります。毎月やり直すと、区分が頻繁に入れ替わって、置き場所の移動が追いつきません。区分が変わったら棚を移すという運用にしておくと、頻度は自然に決まります。

そして、区分は目的ではありません。Aに入った品目の欠品が減ったか、Cの在庫金額が下がったか。効果が出ていなければ、分け方ではなく手当てのほうを見直します。

よくある質問

品目数が少なくてもやる意味はありますか

50品目を下回るなら、全部を同じ濃さで見ても回ります。100を超えたあたりから、分ける効果が出てきます。ただし、品目数が少なくても、金額の偏りが大きい場合は分ける価値があります。1品目で在庫金額の半分を占めているなら、そこだけ別扱いにします。

新しく扱い始めた品目はどこに入れますか

実績が無いので、集計では下位に出ます。当面はAに準じた扱いにして、実績が溜まってから区分を決めるのが安全です。新商品が欠品すると、立ち上がりの機会を逃します。半年ほど様子を見てから、実際の区分に落とします。

季節商品はどう扱いますか

年間で集計すると、動きが平らに見えて実態と合いません。シーズンだけを切り出して集計するか、季節品を別の区分として分けます。シーズン中はA、シーズン外はCという扱いにして、切り替えの日をカレンダーに入れておきます。

出荷回数と出荷数量のどちらで分けますか

作業の手間を減らしたいなら回数です。1回の出荷が1個でも100個でも、取りに行く手間はそれほど変わりません。在庫の量を減らしたいなら数量や金額で分けます。目的によって基準を選び、両方を作って見比べても構いません。

区分が変わったら棚も移しますか

移すことで効果が出るので、移します。ただし、毎月入れ替えると移動そのものが手間になります。3か月から半年に1回、上位だけを入れ替える形にすると、労力と効果が釣り合います。移動の記録を残すことも忘れないようにします。

分析した結果を経営に報告するには

区分そのものではなく、変わった数字を報告します。「Aの品目の欠品が月8件から2件に減った」「Cの在庫金額を120万円減らした」「ピッキング1件あたりの時間が20秒縮んだ」という形です。分け方の説明は前置きにして、効果を先に出します。

数字が出ていない段階では、手当ての予定を出します。上位30品目を入口側へ移す、Cの120品目の棚卸を年1回に落とす、といった内容です。実行したあとで、もう一度測って比べます。

社内に在庫の単価データがありません

出荷回数だけで分けても、置き場所と棚卸の頻度は決められます。金額が要るのは、在庫を減らす判断のときです。単価が分からない品目は、仕入先の見積りや直近の発注書から拾えます。全品目をそろえる必要はなく、上位30品目だけ分かれば判断できます。

区分の線は何パーセントにすべきですか

累計70パーセントと90パーセントがよく使われますが、決まりではありません。自社の品目数と、扱いを変えられる数で決めます。Aが100品目になると毎月見直せないので、Aが20から30品目に収まる線に引き直す、という決め方でも構いません。

在庫管理のシステムに区分の機能がありません

表計算の列で持てば足ります。在庫管理表に「区分」の列を1つ足して、A・B・Cを入れるだけです。システム側に機能が無くても、並べ替えと絞り込みができれば運用できます。棚卸表を出すとき、置き場所を見直すとき、発注点を見直すときに、その列で絞ります。

分析のあと、何も変わりませんでした

区分を作っただけで止まっている状態です。ABC分析は分けることが目的ではないので、分けたあとに「置き場所」「棚卸の頻度」「安全在庫」のどれか1つを実際に変えるところまでを1回の作業にします。3つ全部でなくて構いません。上位20品目を取りやすい場所へ移すだけでも、翌週から作業の時間が変わります。

まとめ

ABC分析は、品目を大きい順に並べて区分に分け、手間の配り方を変えるための道具です。全品目を同じ濃さで管理しようとすると、いちばん大事な品目の管理まで薄くなります。

作り方は、期間を決めて品目ごとに集計し、大きい順に並べて累計の比率で線を引くだけです。表計算で15分ほどで作れます。基準は、歩く距離を減らしたいなら出荷回数、在庫を減らしたいなら金額を使います。

そして、分けたあとに扱いを変えるところまでが1組です。安全在庫の見直し、棚卸の頻度、置き場所。同じ区分を3つに使えるので、1回作れば長く効きます。

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