納期回答の管理|いつ出せるかを即答する
目次
納期回答は、注文を受けたときに「いつ出せるか」を答えることです。ここで即答できるかどうかで、受注そのものが決まることがあります。折り返しの電話をしている間に他社に決まる、という形は珍しくありません。
この記事では、納期回答を、即答するために要るもの、回答の作り方、約束したあとの追いかけ方、遅れそうなときの動き、記録の残し方の順に整理します。取引の形で最適な運用は変わるため、自社の受注の流れに置き換えて読んでください。
即答するために要る3つ
その場で答えるには、次の3つが見えている必要があります。棚にある数、すでに約束している数、これから入ってくる数。
棚にある数だけを見て答えると、二重に約束することになります。100個あっても、40個が受注済みなら、新しく約束できるのは60個です。この「約束できる数」を持っていないと、出せない約束をしてしまいます。
これから入ってくる数も要ります。いま無くても、来週入る予定があれば「来週なら出せます」と答えられます。発注したものが届いていない分の管理は発注残の管理にまとめています。
この3つがそろっていれば、在庫が無くても答えられます。答えられないのは、数字が無いときです。在庫管理表の作り方は在庫管理表の作り方にまとめています。
回答の作り方
回答は、数量と日付の組み合わせで作ります。「10個は明日、残り20個は来週金曜」という形です。全部そろってからでないと出せない、という前提を外すと、答えられる幅が広がります。
日付は、余裕を見た日を答えます。ぎりぎりの日を答えて遅れるより、少し先の日を答えて早く届けるほうが、相手の信用は上がります。ただし、余裕を取りすぎると受注そのものを失います。実績から、どのくらいの余裕が要るかを決めます。
条件も添えます。「本日15時までのご注文なら明日着」といった形です。締めの時刻を伝えておくと、相手も注文の出し方を合わせてくれます。
回答は記録に残します。誰に、いつ、何を、いくつ、いつまでと答えたか。口頭だけで答えた回答は、忘れます。出荷のときに約束を守れているかを確かめるためにも、記録が要ります。
品目ごとに答え方を決める
すべての品目を同じように答える必要はありません。動きの多い品目と、受注生産の品目では、答え方が違います。
常に在庫を持っている品目は、在庫の数で即答できます。動きが少なく在庫を持たない品目は、仕入先のリードタイムを足して答えます。品目の一覧に「標準の納期」の列を1つ作っておくと、在庫が無いときの答えがその場で出ます。
受注してから作る品目や、取り寄せになる品目は、仕入先に確認してから答えることになります。この場合も、「確認して30分以内に折り返します」と答えるだけで、相手の印象が変わります。いつ答えるかを答える形です。
品目の区分は、ABC分析の区分がそのまま使えます。動きの多い品目ほど、即答できる形を整える価値があります。区分の作り方はABC分析の使い方にまとめています。
相手先ごとの条件も持つ
同じ品目でも、相手先によって納期の条件が違うことがあります。配送の距離、締めの時刻、指定の運送会社、納品できる曜日と時間帯。
相手先ごとの条件を1枚の表にまとめておくと、回答のときに迷いません。「本日出荷で翌日着」が通る相手先と、中1日かかる相手先が混ざっていると、同じ答え方はできません。
指定の納品日がある取引もあります。決まった曜日にしか受け取らない相手先には、その曜日に合わせて逆算します。受け取れない日に届けても、待たされるか、持ち帰りになります。
この表は、出荷の現場でも使います。積み込みの順序や、便の選び方にも効きます。受注と倉庫が同じ表を見ている状態にしておくと、答えと実際がずれません。
約束したあとの追いかけ
回答したら、その約束を守るところまでが仕事です。回答の記録を、出荷の予定として使います。
回答の一覧を日付順に並べて、今日と明日の分を見ます。準備ができているか、在庫は押さえてあるか、入荷待ちなら届く見込みはあるか。前日に見ておけば、間に合わないことに前日に気づけます。
在庫を押さえる仕組みも要ります。回答した分を「引き当て済み」として、他の注文に使えないようにします。押さえていないと、先に来た別の注文で出てしまいます。品目が少ないうちは、在庫管理表に引当の列を1つ足すだけで足ります。
入荷待ちの分は、発注残の管理とつなげます。納期回答の根拠になっている入荷が遅れたら、回答も守れません。遅れが分かった時点で、相手先に連絡する準備に入ります。
分納で答えるという手
全数がそろわないと出せない、という前提を外すと、答えられる幅が広がります。「10個は明日、残り20個は来週」という分納の提案です。
相手先にとっても、全部を待つより一部が早く届くほうが助かる場面があります。特に、すぐ使う分と、後で使う分に分かれている注文では、分けて出す価値があります。聞いてみないと分からないので、選択肢として出します。
分納にすると、出荷の回数と送料が増えます。費用の負担をどうするかを先に決めておくと、その場で提案できます。「送料はこちらで持ちます」と言えるかどうかで、提案のしやすさが変わります。
分納した場合は、残りの出荷を忘れないよう記録に残します。1回目を出して安心して、2回目が抜けるという形が起きます。回答の一覧で、残りの数量と予定日を追える形にしておきます。
遅れそうなときの動き
守れないと分かったら、分かった時点で連絡します。当日まで黙っているのが、いちばん信用を失う形です。
連絡するのは、遅れること、いつになるか、その理由です。「調整中です」ではなく、新しい日付を伝えます。日付が出せないなら、いつまでに日付を伝えられるかを言います。
そのうえで、代わりの手当てを提案します。一部だけ先に出す、代替品を出す、別の拠点から回す、急ぎで手配する。選択肢を用意して連絡すると、相手も対応できます。
遅れた件は記録に残します。件数と理由を数えておくと、どこに原因があるかが見えます。在庫の切れ、入荷の遅れ、出荷の詰まり、回答そのものの無理。原因ごとに手当てが違います。
答えられなかった件を数える
受注の現場では、答えられずに失った注文が記録に残りません。「在庫が無いので出せません」と答えた件数を数えておくと、在庫の持ち方を見直す材料になります。
数えるのは、品番、日付、求められた数量、答えられなかった理由の4つで足ります。理由は、在庫切れ、納期が合わない、扱っていない、の3つに分ければ十分です。
この記録が溜まると、在庫を持っていれば取れた注文が見えてきます。金額を掛ければ、機会を逃した規模も分かります。安全在庫を厚くするかどうかの判断が、感覚ではなく数字でできるようになります。
逆に、「扱っていない」が多い品目は、取り扱いを増やす検討の材料になります。倉庫の側から営業に返せる数字として、価値があります。
記録から見えること
納期回答の記録が溜まると、受注と在庫の実態が見えてきます。
回答から出荷までの実績の日数が分かります。答えている日数と、実際にかかっている日数がずれていれば、回答の仕方を見直します。実績より短く答えていれば、遅れが続きます。長く答えすぎていれば、受注を逃しています。
在庫が無くて答えられなかった件数も数えられます。この件数が多い品目は、安全在庫か発注点の設定が合っていません。計算のしかたは安全在庫の計算にまとめています。
遅れた件数と理由の内訳から、手当ての場所が決まります。入荷の遅れが多いなら仕入先との話、出荷の詰まりが多いなら人と作業の組み方です。
数字が無いと、「最近、納期が厳しい」という感覚の話で終わります。記録があると、どこを直すかが決まります。
出荷の予定表として使う
回答の記録は、そのまま出荷の予定表になります。日付順に並べれば、その日に何を出すかが分かります。
前日に、翌日の出荷の一覧を出します。品目、数量、相手先、便。これがあれば、前日のうちにピッキングと梱包まで進められます。当日の朝に初めて量が分かる形だと、人の配置が組めません。
週の単位でも見ます。山になる日が分かっていれば、人を厚くする、前倒しで作る、といった手が打てます。出荷の山は、受注の段階で分かっていることが多く、倉庫がそれを見られるかどうかだけの問題です。
入荷の予定と並べると、さらに使えます。大口の入荷と大口の出荷が同じ日に重なっていれば、片方をずらす相談ができます。荷役の人とフォークリフトは共通なので、重なると両方が遅れます。積み込みの段取りは積み込みの順序にまとめています。
現場と受注をつなぐ
納期回答は、受注の担当が行うことが多い仕事ですが、答えの根拠は倉庫にあります。ここがつながっていないと、答えられません。
倉庫の側でやることは、在庫の数字をその日のうちに正しくしておくことです。入出庫の記録が翌日に回っていると、朝の時点の在庫が実態と違います。その数字を見て答えた回答は、最初からずれています。記録の付け方は入出庫管理のやり方にまとめています。
出荷の能力も伝えておきます。1日に出せる件数、締めの時刻、繁忙期の状況。「在庫はあるが、その日には出せない」という制約は、倉庫にしか分かりません。
受注の担当が倉庫に聞かなくても答えられる状態が、いちばん速く回ります。そのためには、倉庫の数字が共有されていることが条件になります。
答えを速くする準備
即答できる状態は、当日の努力ではなく、前の準備でできています。次の3つがそろっていれば、たいていの問い合わせに答えられます。
1つ目は、在庫の数字が当日中に正しくなっていること。2つ目は、品目ごとの標準の納期が一覧にあること。3つ目は、相手先ごとの条件が1枚にまとまっていること。どれも、聞かれてから作るものではありません。
この3つを作るのに、特別な道具は要りません。表計算の3つのシートで足ります。作るのに1日、維持するのに週に15分というくらいの手間です。
作ったら、受注の担当が自分で見られる場所に置きます。倉庫に電話して確かめる形だと、答えるまでに時間がかかります。見る人が自分で見られる形にしておくのが、速さの条件になります。
よくある質問
在庫があるのに出荷が翌々日になります
出荷の能力か、締めの時刻が原因です。1日に出せる件数と、何時までの注文をその日に出せるかを確かめます。受注の担当がこれを知らずに「明日出せます」と答えていると、守れない約束が生まれます。倉庫の条件を共有するところから直します。
引き当ての管理が難しいです
品目が少なければ、在庫管理表に「受注済み」の列を1つ足すだけで足ります。受注が入ったら足して、出荷したら引く。これだけで、約束できる数が分かります。品目が増えて手で追えなくなったら、道具の検討に入ります。
答えた納期を誰が管理しますか
答えた人が記録し、出荷の担当が日付順に見る形が回りやすくなります。回答の一覧が1つあって、そこを両方が見るのが要点です。人ごとにメモを持っていると、抜けが出ます。
遅れの連絡を誰がしますか
決めておきます。受注の担当が窓口になっている場合は、倉庫から受注へ、受注から相手先へという経路にします。経路が決まっていないと、誰も連絡しないまま当日を迎えます。遅れが分かった時点で、倉庫から受注へ伝える約束にしておきます。
繁忙期は回答の日数を延ばすべきですか
実績から決めます。繁忙期の出荷の能力が分かっていれば、その期間だけ日数を長く答える形が合理的です。同じ日数で答えて遅れるより、最初から長めに答えるほうが信用は保てます。期間と日数を、受注の担当と先に決めておきます。
在庫の数字が信用できず、結局現物を見に行きます
そこを直すのが先になります。入出庫の記録をその日のうちに入れる、循環棚卸で合わせ続ける。この2つで数字が信用できるようになると、確認の電話も現物を見に行く時間も消えます。合わせ方は循環棚卸のやり方にまとめています。
受注の担当と倉庫で、言っていることが違います
見ている数字が別のものになっていることがほとんどです。同じ表を見る形にするのが根本の解決になります。それが難しい場合は、朝に1回、その日に出せる状況を共有する時間を作ります。5分で足ります。
記録はどのくらい残しますか
実績の日数を出したり、遅れの原因を見たりするには、1年ぶんあると傾向が読めます。取引先とのやり取りの経緯として求められることもあるため、年度ごとにまとめておくと探しやすくなります。
電話で聞かれた納期を記録する時間がありません
回答の一覧に、1行書くだけの形にします。日付、相手先、品番、数量、答えた納期。5項目なら15秒で済みます。書かないと、翌日には忘れています。忘れた回答は守れないので、結局その対応に時間がかかります。書くほうが早く終わります。
納期を短く答えすぎて、いつも追われています
実績の日数を測って、そこに少し余裕を足した日数を標準にします。答えた日数と、実際にかかった日数を並べると、無理をしている幅が分かります。短く答えて遅れるより、少し長く答えて早く届けるほうが、相手の信用は上がります。品目ごとに標準の納期を決めておくと、その場の判断で短く答えてしまうことが減ります。
まとめ
納期回答は、棚にある数、すでに約束している数、これから入ってくる数の3つが見えていれば即答できます。在庫が無くても、入荷の予定が分かっていれば答えられます。
回答は、数量と日付を分けて作ります。全部そろってからでないと出せない、という前提を外すと、答えられる幅が広がります。答えた内容は必ず記録に残します。
そして、守れないと分かったら、その時点で連絡します。新しい日付と、代わりの手当てを添えて伝える。当日まで黙っているのが、いちばん信用を失う形です。