ピッキングのやり方|種類と歩く距離の減らし方
目次
ピッキングは、倉庫の作業時間のなかでいちばん大きな割合を占めます。そして、その時間の大半は取る動作ではなく歩いている時間です。1回の取り出しにかかる数秒に対して、そこまで歩く時間が数十秒かかっている、という形が普通に起きます。
この記事では、ピッキングを、やり方の種類、リストの作り方、歩く距離の減らし方、間違いを減らす形、測り方の順に整理します。倉庫の広さと注文の形で最適なやり方は変わるため、自社の出荷に置き換えて読んでください。
ピッキングの2つのやり方
ピッキングには、大きく2つのやり方があります。注文ごとに集めるか、品目ごとに集めるかの違いです。
注文ごとに回るやり方は、1件の注文に必要なものを1人が集めて回ります。集め終わればそのまま梱包に進めるので、流れが単純です。注文の数が少なく、1件あたりの品目数が多い倉庫に向いています。
品目ごとに集めるやり方は、複数の注文をまとめて、同じ品目をいっぺんに取ります。そのあと、注文ごとに仕分けます。同じ棚に何度も行かずに済むので、歩く距離が大きく減ります。注文の数が多く、1件あたりの品目数が少ない倉庫に向いています。
どちらが良いというより、注文の形で決まります。1日の注文件数と、1件あたりの行数を数えてみると、どちらが合うかの見当が付きます。仕分けの手間が増えても、歩く距離が減るほうが得になる境目があります。
リストの並びが距離を決める
やり方より先に効くのが、リストの並びです。棚番の順に並んでいれば、入口から奥へ1回通るだけで済みます。
受注の入力順に並んだリストは、倉庫の中を行ったり来たりすることになります。品番順のリストも、品番と置き場所が一致していなければ同じことになります。棚番順に並べ替えるのは、表計算の並べ替え1回で済みます。費用に対する効き方が、倉庫の改善のなかでいちばん大きい部類に入ります。
そのためには、棚番が歩く順に増えている必要があります。通路はアルファベット、連は歩く向きに01から、段は下から。この形になっていれば、棚番で並べ替えるだけで歩く順になります。棚番の付け方はロケーション管理のやり方にまとめています。
歩く距離を減らす
リストの並びを直したら、次は置き場所です。よく取りに行く品目を、入口に近く、腰から目の高さに集めます。
どの品目がよく出るかは、出庫の記録から出せます。直近3か月の出庫の行数を品目ごとに数えて、多い順に並べるだけです。上位20品目を取りやすい場所に移すだけで、1日の歩行距離がはっきり変わります。全品目を並べ替える必要はありません。品目の分け方はABC分析の使い方にまとめています。
次に効くのが、一緒に出る品目を近くに置くことです。同じ注文によく入る組み合わせがあるなら、その2つを隣の棚にします。出庫の記録から、同じ注文番号に現れる組み合わせを数えれば見つかります。
通路の設計も効きます。片側からしか取れない棚が並んでいる倉庫では、行き止まりの通路に入って戻る動きが積み上がります。一方通行にできる形にすると、戻る動きが消えます。棚番が歩く順に振ってあれば、リストの順に進むだけで自然に一方通行になります。
台車とかごを使い分ける
歩く距離が同じでも、運ぶ量で往復の回数が変わります。1件ずつ手で運んでいるなら、台車にかごを載せて複数の注文を一度に回れないかを見ます。かごを注文ごとに分けておけば、まとめて回っても混ざりません。混ざらない形を先に作ってから、まとめる量を増やします。
補充のしかたで速さが変わる
ピッキングの棚が空になると、その場で保管の棚へ取りに行くことになります。これが1日に何度も起きると、歩く距離がまとまって増えます。取りに行く棚と、ためておく棚を分けて、補充は別の作業として回すと、ピッキングの流れが切れなくなります。
ピッキングの棚には、1日から数日ぶんだけ置きます。残りは上の段やパレット置き場に置きます。補充する人は、決まった時間に一度だけ回って、減っている棚を埋めます。補充のタイミングは、棚に線を引いておくと分かります。ここまで減ったら補充、という位置に札を挟んでおけば、通りかかった人が気づけます。
補充のときに古いロットから降ろすようにすれば、先入れ先出しも同時に守れます。ピッキングの棚には古いものだけが並ぶので、取る人は考えずに手前から取れます。詳しくは先入れ先出しのやり方にまとめています。
補充の量を決める
多く補充しすぎると、ピッキングの棚が満杯になって取りにくくなります。少なすぎると補充の回数が増えます。1日の出荷数から、2日ぶんから3日ぶんを目安に置くと、どちらの無駄も小さくなります。動きの多い品目ほど、この調整が効きます。
まとめて取るときの仕分け
品目ごとにまとめて取るやり方では、そのあとの仕分けが要ります。ここで間違えると、せっかく歩く距離を減らしても誤出荷が増えます。
仕分けの場所は、注文ごとに区画を決めて番号を振ります。棚でも、床にテープを引いた区画でも構いません。かごに注文番号を付けて、区画の番号と合わせます。取ってきた品目を、リストの順に配っていきます。
配り終わったら、注文ごとに行数を確かめます。リストの行数と、かごに入っている品目の数が合っているかを数えるだけです。ここで合っていれば、そのあとの出荷検品が軽くなります。出荷検品の組み方は出荷検品のやり方にまとめています。
間違いを減らす形
ピッキングの間違いは、そのまま誤出荷につながります。検品で止められればよいのですが、そもそも取り違えない形にするほうが確実です。
いちばん効くのが、現品に品番を貼ることです。棚のラベルだけだと、1つ隣の間口に置かれていても気づけません。現品に品番があれば、取るときに違和感が出ます。
似た品番を離して置くのも効きます。取り違えの多い組み合わせを一覧にして、わざと別の通路に分けます。色の違うラベルを貼る方法もあります。過去の誤出荷の記録があれば、そこから危ない組み合わせを拾えます。誤出荷の型は誤出荷の原因と対策にまとめています。
数量の間違いは、ケースとバラが混ざる品目で起きます。ケースの入数をリストに印字しておく、バラだけ別に数える、といった手当てで減ります。「3ケースと5個」を「3」と「5」だけ書いたリストは、読む人によって解釈が変わります。
取ったら印を付ける
リストの行に印を付けながら進みます。途中で呼ばれても、どこまで取ったかが分かります。印の無い行が残っていれば、取り忘れです。最後に印の数と行数を合わせるだけで、取り忘れが見つかります。
経路を1回歩いて測る
改善の前に、いまどれだけ歩いているかを1回測っておくと、効果が数字で出せます。難しい道具は要りません。1件の注文をピッキングするあいだ、歩数計を持って歩くだけで足ります。
測ると、思っていたのと違う場所で時間を使っていることが分かります。棚と棚の間ではなく、出発点と倉庫の入口の往復で歩数を稼いでいることもあります。かごを置く場所を変えるだけで縮む距離が見つかることもあります。
同じ注文を、リストの並びを変えて2回測ると、並べ替えの効果がはっきり出ます。「棚番順にしたら歩数が3割減った」と数字で言えれば、現場も納得して続けてくれます。感覚で「楽になった気がする」と言うより、ずっと説得力があります。
測る日は、忙しい日を選ばないほうが実態に近くなります。普段どおりの日に、代表的な注文を3件ほど測れば見当が付きます。
探している時間を分けて数える
歩いている時間のなかには、「場所が分からずに探している時間」が混ざっています。これは置き場所の問題ではなく、表示と記録の問題です。探す時間が長いなら、棚番と現品表示から手を付けます。ロケーション管理が効いていれば、探す時間はほぼゼロになります。
測る
改善したかどうかは、数字で見ます。ピッキングで見るのは3つです。
1つ目は、1行あたりの時間です。1日の作業時間を、取った行数で割ります。2つ目は、1件あたりの行数です。注文の形が変わっていないかを見るための数字になります。3つ目は、取り違えの件数です。検品で止まった数と、外に出てしまった数を分けて数えます。
この3つを月ごとに並べると、手当ての効果が見えます。棚を移した月に1行あたりの時間が下がっていれば、置き場所の見直しが効いたということです。何も測らずに改善を続けると、効いたかどうかが分からないまま次の手を打つことになります。
体への負担も見る
ピッキングは1日中歩いて、しゃがんで、持ち上げる作業です。負担が集中すると、人が続きません。速さだけを追うと、腰を痛める人が出て、結果として人手が減ります。
重い品目を下の段に置くのは、安全のためだけでなく、取りやすさのためでもあります。床から持ち上げる動作は腰への負担が大きいので、重い品目こそ、床ではなく腰の高さに置けないかを見ます。パレットや台の上に置くだけで姿勢が変わります。
上の段に手を伸ばす動作も、繰り返すと肩に来ます。頻度の高い品目を上の段に置かないのは、時間の面でも体の面でも同じ結論になります。倉庫の災害と体への負担は倉庫の安全対策にまとめています。
台車の押しやすさ、床の段差、通路の幅も効きます。段差を1つ無くすだけで、1日に何十回の持ち上げが消えることがあります。改善の候補を探すときは、速さだけでなく、同じ動作を何回くり返しているかも見ます。
人の配置
ピッキングは、注文の入り方によって波があります。午前は少なく、午後の締め前に集中する、という形が多くあります。人を平らに配置すると、午前は手が空き、午後は足りなくなります。
前日に確定している注文があるなら、前倒しで作っておけば波がならせます。難しい場合は、時間帯によって人を動かします。午前は入荷と棚入れ、午後はピッキングと出荷、という組み方です。
新しく入った人には、棚番で仕事を渡します。「この棚からこの棚まで」という形なら、品物を知らなくても取れます。品名で頼むと、探す時間で終わります。慣れてきたら範囲を広げます。
リストを紙で渡すか、端末で渡すか
紙のリストは、書き込めること、電池が切れないこと、複数枚を並べて見られることが利点です。端末は、取った結果をその場で記録できること、品番をバーコードで照合できることが利点になります。
どちらが優れているというより、品目の似方と件数で決まります。品番が似ていて取り違えが多い倉庫では、照合できる端末が効きます。品目が少なく、人が覚えている倉庫では、紙のほうが速いこともあります。
紙のまま続けるなら、印刷の質を上げるほうが先です。品番を大きく、行間を広く、棚番順に。端末を入れる前に、この3つで取り違えがどこまで減るかを見ておくと、導入の判断がしやすくなります。
よくある質問
ハンディ端末を入れるべきですか
品番の取り違えと数量の誤りは大きく減ります。ただし、現品と棚にラベルが貼られていないと、読むものがありません。先に棚番の整備と現品表示から始めます。紙のままでも、リストを棚番順にする、現品に品番を貼る、といった手当てで取り違えはかなり減ります。
注文ごとと品目ごと、どちらに変えるべきですか
1日の注文件数と、1件あたりの行数を数えて決めます。注文が多くて1件の行数が少ないなら、品目ごとに集めて仕分けるほうが歩く距離が減ります。逆に、1件で20行を取るような注文なら、注文ごとに回るほうが単純です。両方を試して、1行あたりの時間を比べるのが確実です。
仕分けの場所が取れません
品目ごとに集めるやり方は、仕分けの場所が要ります。場所が無い場合は、注文ごとに回るやり方のまま、置き場所の見直しで距離を減らすほうが現実的です。仕分け用の棚を入れる前に、床の区画をテープで区切って試してみると、必要な広さが分かります。
繁忙期だけ人を増やしています
短期の人が入るほど、棚番で仕事を渡す形が効きます。事前に、棚番の一覧と、単位の書き方を1枚にまとめておきます。繁忙期が始まってから作ると間に合いません。よく出る品目を取りやすい場所に移すのも、繁忙期の前が効果的です。
ピッキングの時間が人によって大きく違います
歩く経路と、探す時間の差が出ています。速い人がどう回っているかを1回見てみると、リストの並びや置き場所の問題が見つかることがあります。個人の速さの問題にする前に、経路と置き場所を見ます。
品目が多すぎて、よく出る品目が分かりません
出庫の記録から集計すれば出ます。直近3か月の出庫の行数を品番ごとに数えて、多い順に並べるだけです。表計算の集計機能で数分で終わります。記録が無い場合は、1か月だけ「取った品番」を紙に書き溜める形でも見当が付きます。上位20品目が分かれば、そこから始められます。
1人で回している倉庫でも効果はありますか
あります。むしろ1人のときほど、歩く距離がそのまま1日の処理量になります。リストを棚番順にする、上位品目を入口側に移すの2つは、1人でも今日からできます。仕分けや補充の分業は人数が要りますが、この2つは人数に関係なく効きます。
出荷が集中する時間に間違いが増えます
急いでいることが原因なので、注意では直りません。前日に作れるぶんを前倒しする、割り込みの出荷を分けて扱う、締めの時刻を前倒しするといった形で、時間の余裕を作ります。集中している時間帯が分かっているなら、その時間だけ人を厚くする手もあります。
まとめ
ピッキングの時間は、その大半が歩く時間です。取る速さより、歩く距離を減らすほうが効きます。
いちばん費用がかからず効くのが、リストを棚番順に並べることです。次に、よく出る上位20品目を入口に近い取りやすい場所へ移すこと。この2つで、1行あたりの時間が変わります。
そして、取り違えは検品で止める前に、取り違えない形にします。現品に品番を貼る、似た品番を離す、ケースとバラを分けて書く。どれも今日から始められます。