荷役と安全改善2026.09.16 公開NY-02

倉庫の安全対策-災害の型ごとに手順化する

目次

倉庫の安全対策は、「気をつけましょう」の掲示だけで終わっていることがあります。掲示そのものは悪くないのですが、掲示は人の注意に働きかけるものなので、忙しい日には効きません。効かせるには、起きている災害の型ごとに、置き方と手順を変えていくことになります。

この記事では、倉庫の安全対策を、起きやすい災害の型型ごとの手当て熱中症への備えヒヤリハットの集め方教え方の順に整理します。適用される規定や必要な措置は作業の内容で変わります。最終的には所轄の労働基準監督署にご確認ください。

フォークリフトの点検表など、点検の様式が配られています。

倉庫で起きやすい災害の型

災害は、原因ごとに型があります。型ごとに手当てが違うので、まず分けます。

倉庫で起きる場面
はさまれ・巻き込まれフォークリフトと荷、機械の可動部
激突されフォークリフトや台車と人の接触
墜落・転落荷台、プラットホーム、脚立、高所のラック
飛来・落下高い場所の荷、積み上げた荷の崩れ
転倒濡れた床、段差、通路の荷物、コード
動作の反動・無理な動作重い荷の持ち上げによる腰痛

自社でどの型が多いかは、過去のヒヤリハットと事故の記録から分かります。型が分かれば、どこに手を入れるかが決まります。記録が無い場合は、まず集めるところから始めます。

倉庫で起きやすい災害の型はさまれ激突され墜落・転落飛来・落下転倒無理な動作倉庫の災害
倉庫で起きやすい災害の型

フォークリフトと人を分ける

倉庫の重い災害の多くは、フォークリフトと人が同じ場所にいることから起きます。手当ては、分けることが基本になります。

やること効き方
通路を線で分ける歩く場所と走る場所を分ける
交差点にミラーと一時停止を置く出会い頭を防ぐ
作業エリアに立入禁止の時間を作る荷役中は人を入れない
バックの警報とパトライトを使う接近が分かる
速度の上限を決める急に止まれる速さにする

線を引くだけでも効きます。床にテープや塗装で歩行者用の通路を作り、そこを歩く決まりにします。線が無いと、人は最短距離を歩きます。

フォークリフトの点検表そのものを探している場合は、点検板の様式一覧で配られています。

積荷で前が見えないとき

視界が塞がるときは、後進で走行するか、誘導者を付けるのが一般的な扱いです。「ゆっくり行けば大丈夫」は、見えていないことの手当てになっていません。フォークリフトの点検の話はフォークリフトの点検義務にまとめています。

人と車の通路を分ける分けていない人が最短を歩く出会い頭が起きる声かけでは止まらない線で分けた歩く場所が決まる交差点にミラー床のテープでできる
人と車の通路を分ける

荷崩れと落下を防ぐ

高い場所の荷が落ちると、下にいる人に当たります。積み方と、置く高さの決めごとで防ぎます。

決めること中身
積み上げてよい高さ品物ごとに上限を決める
積み方交互に積む、ずらさない、はみ出さない
ラップ・バンドの使用パレット上の荷をまとめる
落下防止のバー・ネット高い段のラックに付ける
高い段に置くもの軽いもの。重いものは下へ

「重いものは下、軽いものは上」は、安全と作業のどちらにも効きます。取り出しやすさの面でも同じ結論になるので、置き場所を決めるときの基本にできます。置き方の決め方はロケーション管理のやり方にまとめています。

ラックの点検

ラックそのものも傷みます。フォークリフトがぶつかった支柱は、見た目より弱くなっています。

  • 支柱の曲がり、へこみ
  • ボルトのゆるみ、脱落
  • 棚板のたわみ
  • 基礎のアンカーの浮き

月に1回、通路を歩きながら見るだけでも違います。ぶつけたときにその場で報告する決まりにしておくと、見落としが減ります。

墜落・転落を防ぐ

高さのあるところでの作業は、一度の事故が重くなります。

場面手当て
トラックの荷台の上昇降設備を使う。飛び降りない
プラットホームの端手すり、車止め、開口部の表示
高所のラックから荷を取る脚立ではなく昇降設備を使う
フォークのパレットに人が乗る原則として行わない

フォークのパレットに人を乗せて上げるのは、重大な災害につながる形として繰り返し注意されています。高いところの荷を扱うなら、そのための設備を使います。

点検表テンプレート
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転倒を防ぐ

件数としていちばん多いのが転倒です。倉庫では、床と通路の状態がそのまま件数に出ます。

  • 濡れ、油、粉を放置しない(こぼしたら拭く道具を近くに置く)
  • 通路に物を置かない(仮置き場を決める)
  • コードやホースを横断させない
  • 段差に色を付ける
  • 靴の指定をする

「通路に物を置かない」は、置き場を作らないと守れません。仮置きが必要なら、場所を決めて番号を振ります。仮置き場の作り方は、ロケーションの記事に書いています。

腰痛を防ぐ

腰痛は、災害として数えられにくいわりに、人が辞める理由になるものです。重い荷を扱う職場では、対策が定められた指針も示されています。

やること中身
重量の上限を決める1人で持つ重さの目安を決めて掲示する
台車・リフターを使う持ち上げずに動かす
作業の高さを変える床から持ち上げない。腰の高さに置く
姿勢を教える膝を使う、ひねらない
交代する同じ姿勢を続けない

いちばん効くのは、床に置かないことです。床からの持ち上げは腰への負担が大きくなります。パレットや台の上に置くだけで、姿勢が変わります。

熱中症への備え

倉庫は、屋根の下でも夏はかなりの温度になります。2025年6月から、労働安全衛生規則の改正により、熱中症のおそれのある作業について、事業者に体制の整備などが求められています。

求められている内容は、大きく次の3つとされています。

項目中身
報告の体制具合が悪くなった人を見つけたときの連絡先を決めて周知する
対応の手順作業からの離脱、身体の冷却、医療機関への搬送の手順を決める
周知決めた内容を関係する人に知らせる

適用される作業の範囲や具体的な内容は、作業の環境によって変わります。所轄の労働基準監督署に確認してください。

現場でできる備えは、次のようなものになります。

  • 温度計と暑さ指数の表示を、作業する場所に置く
  • 水と塩分を、取りに行かなくてよい場所に置く
  • 休憩の場所を涼しくする(スポットクーラー、送風機)
  • 単独での作業を減らす。声を掛け合う
  • 体調の確認を朝と午後に行う
熱中症で決めておく3つ1報告の体制連絡先を決める2対応の手順離脱・冷却・搬送3周知関係する人へ
熱中症で決めておく3つ

ヒヤリハットを集める

事故になる前の「ひやり」は、現場にたくさんあります。集まらない理由は、たいてい書きにくさです。

集まらない理由手当て
用紙が事務所にある現場に置く。1枚に3行だけ書く形にする
書くと叱られる書いた人を責めない。件数が増えたら良い状態と扱う
書いても何も変わらない月1回、手当てした内容を貼り出す
何を書けばよいか分からない例を貼る。過去のものを見せる

「書いても何も変わらない」がいちばん効きます。1件でよいので、出された内容に手を打って、それを見せます。1回それをやると、翌月から集まり方が変わります。

ヒヤリハットの用紙は3行で足りるヒヤリハットいつ日付と時間帯どこで場所・棚番何がひやりとした事3行で足りる用紙は現場に置く書いた人を責めない
ヒヤリハットの用紙は3行で足りる

集めたあとの並べ方

集まったものは、場所と型で並べます。同じ場所で複数出ていれば、そこに手を入れます。人の名前で並べると、報告が止まります。

新しく来た人に教える

倉庫は、応援や短期の人が入る職場です。説明だけで伝えようとすると、その日のうちに忘れられます。

  • 最初に、立ち入ってはいけない場所を歩いて見せる
  • 通路の線の意味を、その場で説明する
  • 重い物の持ち方は、実際に持ってもらう
  • 止めてよい、聞いてよい、と最初に伝える
  • 最初の数日は、1人で高所と機械の近くの作業をさせない

「止めてよい」と伝えておくのは、検品でも安全でも同じです。迷ったときに止められるかどうかで、事故になるかどうかが分かれます。

安全のルールを作るときの形

決めごとを増やすほど守られなくなります。守られるルールには、共通した形があります。

守られる形守られない形
数が少ない(5つ以内)一覧が2枚にわたる
判断が要らない(全員・常に)「必要に応じて」「原則として」が付く
破ると物理的に進めない声かけだけで止める
守る人が決めるのに関わった上から配られた

「必要に応じて」を入れた瞬間に、忙しい日は必要ではなくなります。例外を作るなら、例外の条件まで書き切ります。

現場が決めたルールは守られる

同じ内容でも、現場の人が話し合って決めたものは守られやすくなります。月に1つずつ決めるくらいの速さで十分です。決めたら、紙にして貼り、1か月後に守れているかを見ます。守れていないなら、内容ではなく形に無理があります。

守られるルールの形守られる5つ以内判断が要らない破ると進めない現場が決めた紙1枚に収まる守られない一覧が2枚必要に応じて声かけだけ上から配られた忙しい日に消える
守られるルールの形

倉庫の中を歩いて見る

机の上では見つかりません。月に1回、決まった順路で歩くだけで、かなりのことが分かります。

見るところを、あらかじめ決めておきます。

場所見るところ
通路物が置かれていないか。線が消えていないか
ラック支柱の曲がり、ボルト、荷のはみ出し
出入口・交差点ミラーの角度、一時停止の表示
荷役の場所車止め、昇降設備、開口部
消火設備・避難経路前に物が無いか、表示が見えるか
休憩・給水の場所水の補充、温度

消火器や避難経路の前に荷物が置かれているのは、倉庫でよく見つかる形です。その場で動かせるものは、その場で動かします。

見つけたことを写真で残す

直す前と直した後を撮っておくと、手を打った実績が残ります。安全の活動は成果が見えにくいので、写真の前後が並んでいると続けやすくなります。

荷役の場所(プラットホーム)を見る

倉庫の中でも、トラックが着ける場所は事故が集中します。人、車、荷が同じ場所に集まるためです。

危ないところ手当て
荷役中に車が動く車止めを置く。鍵を預かる
ホームの端から落ちる端に色を付ける。手すり、開口部の柵
荷台とホームの隙間渡し板を使う。固定する
後退してくる車に気づかない誘導者を置く。立入禁止の線を引く
雨で床が濡れる屋根、吸水マット、拭く道具を近くに

鍵を預かる方法は、費用がかからずに効きます。運転者から鍵を受け取り、荷役が終わったら返す。これだけで、荷役中に車が動く事故が防げます。

運送会社の方にも同じ説明をする

自社の人だけに説明しても、その場にいる人の半分は外部の方ということがあります。荷役の場所のルールを1枚にして、受付で渡す形にすると伝わります。分かりやすい図と、守ってほしいことを3つまでに絞ります。

荷役の場所で決めておくこと危ないところ手当て荷役中に車が動く車止め。鍵を預かるホームの端色を付ける。柵荷台との隙間渡し板を固定する後退してくる車誘導者と立入禁止
荷役の場所で決めておくこと

事故が起きてしまったとき

起きたときの手順を決めておかないと、現場が止まります。掲示するのは、次の順番だけで足ります。

  1. まず人を助ける。無理に動かさない
  2. 決めた連絡先に知らせる(内線、携帯の番号を掲示する)
  3. 救急に連絡する(迷ったら呼ぶ)
  4. 現場をそのままにする(写真を撮る)
  5. 責任者へ報告する
  6. 記録に残す

「迷ったら呼ぶ」と書いておくことが大事です。呼ぶかどうかを現場に判断させると、判断に時間がかかります。

労働災害が起きたときの手続き

労働災害が発生した場合、休業の日数などに応じて、事業者が所轄の労働基準監督署へ報告することが定められています。報告の要否や期限は事案によって変わるため、発生した時点で労働基準監督署に確認してください。

社内では、再発を防ぐための調査も行います。このときも、人の不注意で終わらせないのが要点です。同じ状況で同じことが起きないように、置き方か、手順か、設備を変えたかで確かめます。

よくある質問

安全対策は、何から始めればよいですか

過去のヒヤリハットと事故の記録を、場所で並べるところから始めます。倉庫全体を一度に良くしようとすると続きません。件数の多い場所が1つか2つ見つかるので、そこに絞って手を入れます。記録が無い場合は、まずヒヤリハットを集める形を作ります。

掲示やスローガンは意味がありませんか

意味はありますが、それだけでは足りません。置き方や手順を変える手当てと組み合わせると効きます。掲示だけが増えていくと、風景になって読まれなくなるので、数を絞って、内容を入れ替えるほうが目に入ります。

安全のための投資は、どこから優先しますか

重い災害につながる型からです。倉庫では、フォークリフトとの接触、高所からの落下、荷崩れが該当します。転倒や腰痛は件数が多いのですが、床の清掃や台車の追加など、費用の小さい手当てで下がることがあります。

パートや派遣の方にも同じ教育が要りますか

雇用の形にかかわらず、その場所で働く人には危険を伝える必要があります。短期の人ほど、その現場の危ないところを知りません。立入禁止、通路、機械の近くの3つだけでも、最初に歩いて見せておきます。

夜間や少人数の時間帯はどうしますか

人が少ない時間ほど、倒れたときに気づかれるまでが長くなります。単独での高所作業と機械の操作を避ける、定時の連絡を決める、といった形で手当てします。連絡が取れなかったときに誰が見に行くかまで決めておくと、実際に動けます。

安全の記録は何を残しておけばよいですか

ヒヤリハット、安全の見回りの結果、教育を行った記録、事故が起きたときの報告。この4つがそろっていると、あとで振り返れます。教育の記録は、いつ・誰に・何を伝えたかが分かる形にしておきます。人が入れ替わる職場では、ここが特に効きます。

安全パトロールは誰が行いますか

決まりはありませんが、普段その場所で作業していない人が入ると、見えていなかったものが見つかります。他の部署の人や、別の棟の担当と交代で回る形にしている現場もあります。見つけたことをその場で直せる権限を持たせておくと、指摘だけが残る状態になりません。

まとめ

倉庫の安全対策は、災害の型ごとに手当てが違います。まず自社でどの型が多いかを、ヒヤリハットと事故の記録から並べます。

重い災害につながるのは、フォークリフトと人の接触、高所からの落下、荷崩れです。ここは分ける、囲う、落ちない形にする、という物の手当てで防ぎます。件数の多い転倒と腰痛は、床の状態と、床から持ち上げない置き方で下がります。

そして、ヒヤリハットが集まる状態を作ることです。集まらないのは書きにくいからで、書いても何も変わらないと思われているからです。1件手を打って、それを見せる。そこから変わり始めます。

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