倉庫管理主任者とは?選任の条件と講習
目次
倉庫管理主任者は、名前から「資格試験に合格した人」と思われがちですが、実際は倉庫業者が倉庫ごとに選んで置く役割のことです。試験はなく、一定の経験か、登録された講習の修了で要件を満たす形になっています。
この記事では、倉庫管理主任者を、どの倉庫に必要か、何をする役割か、選任の要件、講習の受け方、選任したあとの実務の順に整理します。要件や手続きは法令で定められており、個別の判断が必要になることがあります。最終的には所轄の地方運輸局にご確認ください。
倉庫管理主任者とは何か
倉庫管理主任者は、倉庫業法にもとづいて、倉庫業者が倉庫ごとに選任する役割です。倉庫の施設と、預かっている荷物を適切に管理するために置かれます。
大事なのはここです。個人が取る免許ではなく、会社が人を選んで置くものになります。「倉庫管理主任者の資格を持っている」という言い方がされることもありますが、正確には要件を満たしている人、という意味になります。
| よくある理解 | 実際 |
|---|---|
| 試験に合格して取る国家資格 | 試験は無い。経験か講習の修了で要件を満たす |
| 持っていると就職に有利な免許 | 会社が選任して初めて役割になる |
| 倉庫で働く人が全員取るもの | 倉庫ごとに選ばれた人が務める |
どの倉庫に必要か
必要になるのは、倉庫業の登録を受けて営業している倉庫です。他人の荷物を預かって保管料をもらう、いわゆる営業倉庫が対象になります。
| 倉庫の種類 | 倉庫管理主任者 |
|---|---|
| 営業倉庫(倉庫業の登録を受けた倉庫) | 選任が必要 |
| 自家用倉庫(自社の荷物だけを置く倉庫) | 倉庫業法の対象外 |
自社の製品や資材だけを置いている倉庫は、倉庫業の登録そのものが要りません。この場合、倉庫管理主任者の選任も求められません。ただし、労働安全衛生法などの他の規定は別に適用されます。
迷いやすいところ
自社の荷物のつもりでも、他社の荷物を預かって料金を受け取っている場合は、倉庫業に当たる可能性があります。グループ会社の荷物、取引先からの預かり品など、判断に迷う形があります。該当するかどうかは地方運輸局に確認してください。
何をする役割か
倉庫管理主任者の業務は、法令で示されています。大きく4つです。
| 業務 | 中身 |
|---|---|
| 火災の防止など、施設の管理 | 消防設備、火気の管理、電気設備 |
| 労働災害の防止 | 荷役の安全、通路、機械の管理 |
| 倉庫寄託物の管理 | 預かっている荷物の保管状態、在庫の記録 |
| 施設の管理の改善 | 見つかった問題への手当て、教育 |
4つ目の「改善」が入っているのが特徴です。現状を守るだけでなく、良くしていくところまでが役割になっています。
実務に落とすと
役割の名前だけでは動けないので、日々の仕事に置き換えます。
- 月1回、倉庫の中を決まった順路で見て回る
- 消防設備、通路、ラック、荷の積み方を確かめる
- 荷役の事故とヒヤリハットを集めて、手当てを決める
- 在庫の記録と現物が合っているかを見る(棚卸)
- 新しく来た人に、危ないところを説明する
- 見たこと、決めたこと、直したことを記録に残す
倉庫の安全の見方は倉庫の安全対策に、在庫の合わせ方は棚卸のやり方にまとめています。
実際に使える様式が必要な方へ
在庫管理表や棚卸表を一から作ると手間がかかります。既成の様式でよければ、点検板の姉妹サイトである在庫板に無料のExcelがそろっています。
在庫板で様式をさがす選任の要件
選任できるのは、次のいずれかに当たる人とされています。
| 要件 | 中身 |
|---|---|
| 指導監督的な実務の経験 | 倉庫の管理の業務について、一定年数の指導監督的な実務経験がある |
| 実務の経験 | 倉庫の管理の業務について、一定年数の実務経験がある |
| 講習の修了 | 国土交通大臣の登録を受けた倉庫管理主任者講習を修了している |
| 同等と認められた者 | 上記と同等以上の知識と経験があると認められた場合 |
必要な年数や、経験として認められる業務の範囲には細かい定めがあります。自社の候補者が当てはまるかどうかは、地方運輸局に確認するのが確実です。
講習で要件を満たすのが一般的
実務経験の年数が足りない場合でも、講習を修了すれば要件を満たせます。新しく倉庫業を始めるときや、担当者が交代するときに、この方法が使われます。
講習の受け方
倉庫管理主任者講習は、国土交通大臣の登録を受けた機関が実施しています。倉庫業の団体などが開催しています。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 日数 | 1日程度 |
| 内容 | 倉庫業法、施設の管理、労働安全、荷物の管理など |
| 修了の判定 | 講義の受講による。合否を争う試験の形ではないことが一般的 |
| 修了後 | 修了証が交付される |
日程と開催地は限られます。担当者の交代が決まっているなら、早めに日程を押さえておくほうが安全です。オンラインで受けられる形が用意されていることもあります。
修了証の保管
修了証は、要件を満たしていることを示す書類になります。本人が持っているものですが、会社としても写しを残しておくと、確認を求められたときにすぐ出せます。再発行の手続きは実施機関によって違うため、紛失しないよう保管します。
選任するときの手続き
選任は社内で決めるものですが、行政への手続きが関わることがあります。
- 倉庫業の登録を受けるときの申請書に、倉庫管理主任者に関する事項を記載する
- 選任した人が変わったときに、届出が必要になる場合がある
- 倉庫を増やしたときに、その倉庫についても選任が要る
手続きの要否と期限は、地方運輸局に確認してください。担当者が交代したのに何年も届け出ていない、という状態にならないよう、人事の異動と合わせて確認する流れにしておくと確実です。
何人置くか
原則として、倉庫ごとに選任します。ただし、同一の敷地内にある複数の倉庫や、一体として管理できる範囲については、まとめて1人が務められる場合があります。どこまでを1人で務められるかは個別の判断になるため、拠点が分かれている場合は事前に相談しておきます。
選任したあとに用意するもの
役割を置くだけでは動きません。記録の形を先に作っておくと、引き継ぎのときにも困りません。
| 用意するもの | 中身 |
|---|---|
| 巡回の記録 | いつ、どこを見て、何が見つかったか |
| 事故・ヒヤリハットの記録 | 何が起きたか、どう手当てしたか |
| 教育の記録 | 誰に、いつ、何を伝えたか |
| 設備の点検の記録 | 消防設備、機械、ラック |
| 在庫の記録 | 寄託物の入出庫と残高、棚卸の結果 |
この5つがそろっていると、行政の確認にも、荷主への説明にも使えます。役割の人が代わっても、記録が残っていれば続きます。
引き継ぎで落ちやすいもの
担当者が交代するときに落ちやすいのは、期限のあるものです。消防設備の点検、機械の検査、講習の修了状況。期限の一覧を1枚にして引き継ぐ形にしておくと、抜けません。機械の点検の期限はフォークリフトの点検義務にもまとめています。
1年の仕事として並べる
役割を置いたら、1年のうちに何をするかを先に並べておくと、担当が代わっても同じ形で回ります。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 毎月 | 倉庫の巡回。ヒヤリハットの集約と手当て |
| 毎月 | 在庫の記録と現物の確認(循環棚卸) |
| 半年に1回 | 消防設備の点検(実施と報告の周期は建物による) |
| 年1回 | 機械の年次検査。期限の一覧を更新する |
| 年1回 | 一斉棚卸。寄託物の残高を確定する |
| 随時 | 新しく入った人への説明。事故が起きたときの対応 |
この表を1枚にして掲示しておくと、何をする役割なのかが周囲にも伝わります。1人で全部を抱える必要はなく、実施する人を決めて、まとまっているかを見る立場になります。
選ばれた人が最初にやること
新しく倉庫管理主任者になった人が、いきなり全部を見るのは難しいものです。最初の1か月でやることを絞ります。
- 倉庫の図面を手に入れて、通路・出入口・消防設備の位置を確かめる
- 期限のあるものを一覧にする(消防設備、機械、契約)
- 過去1年の事故とヒヤリハットの記録を読む
- 現場を1周歩いて、気になったところを写真に撮る
- 見つけたことのうち、その場で直せるものを直す
4と5を最初にやっておくと、周囲に「見る人が来た」と伝わります。指摘を並べるより、1つ直すほうが早く伝わります。
記録が何も無いとき
引き継ぎの記録が残っていないことがあります。その場合は、今日から作り始めます。過去を復元しようとすると止まってしまうので、巡回の記録から1枚目を作ります。1年続けば、次の人に渡せる形になります。
荷主への説明に使う
営業倉庫では、荷主から保管の状態について説明を求められることがあります。倉庫管理主任者が集めている記録は、そのまま説明の材料になります。
| 聞かれること | 出せる記録 |
|---|---|
| 火災や水濡れへの備え | 消防設備の点検記録、巡回の記録 |
| 荷物が傷まないか | 温度や湿度の記録、積み方の決めごと |
| 在庫が合っているか | 棚卸の結果、差異の調査の記録 |
| 事故が起きていないか | 事故とヒヤリハットの記録 |
記録が出てこないと、口頭で説明することになります。新しい荷主との商談でも、これらがそろっていることは判断の材料になります。差異の記録は隠すものではなく、調べて手を打っている証拠として使えます。棚卸差異の扱いは棚卸差異の原因と対策にまとめています。
倉庫業法で求められる他のこと
倉庫管理主任者の選任は、倉庫業に関わる決まりごとの1つです。営業倉庫では、他にも次のようなことが定められています。
- 倉庫業の登録を受けること
- 倉庫の施設・設備が基準に適合していること
- 倉庫寄託約款を定めて届け出ること
- 料金を掲示すること
- 帳簿を備えること
倉庫管理主任者だけを押さえても、全体は満たせません。新しく倉庫業を始める場合や、施設を増やす場合は、登録の要件と手続きを地方運輸局に確認してから進めます。建物の構造や消防の要件が関わるため、建てる前の相談が必要になることがあります。
帳簿と記録の関係
倉庫業では帳簿を備えることが求められており、寄託物の入出庫の記録がその中心になります。日々の在庫の記録をきちんと残しておけば、この求めにも応えられます。記録の作り方はロケーション管理のやり方と棚卸のやり方にまとめています。
よくある質問
倉庫管理主任者は国家資格ですか
試験に合格して得る資格ではありません。倉庫業法にもとづいて、倉庫業者が選任する役割です。講習を修了すると要件を満たせますが、それ自体が免許として独立しているものではありません。履歴書に書く場合は、講習を修了した旨を書く形が実態に合います。
自社の荷物だけを置く倉庫にも必要ですか
倉庫業の登録を受けていない自家用の倉庫は、倉庫業法の対象外とされています。ただし、他社の荷物を有償で預かっている場合は判断が変わります。該当するかどうかは、地方運輸局に確認してください。
講習には誰でも申し込めますか
実施機関によって、申し込みの条件や優先の扱いが異なることがあります。開催の案内で条件を確認してから申し込むのが確実です。定員があるため、日程が公表されたら早めに動くほうが確実に受けられます。
倉庫管理主任者が辞めた場合はどうなりますか
選任が必要な倉庫では、後任を選ぶ必要があります。要件を満たす人が社内にいない場合、講習の日程を待つことになるため、交代の予定が分かった時点で動き始めます。届出の要否も含めて、地方運輸局に確認します。
実務経験は他社での経験も含まれますか
経験として認められる範囲には定めがあります。在籍していた会社が違っても、業務の内容が該当すれば認められることがあります。証明の方法を含めて、地方運輸局に確認してください。
講習を受ければ、すぐに選任できますか
要件を満たす人になる、というところまでが講習です。実際に選任するのは会社で、どの倉庫の担当にするかを決めて、必要な手続きを行います。修了証が届くまでに時間がかかる場合もあるため、交代の予定があるなら余裕をみて受講します。
倉庫管理主任者に手当を付けるべきですか
法令で定められているものではありません。役割として時間を使うことになるため、社内の扱いを決めておくと引き受けやすくなります。巡回や記録の時間を業務として確保しておかないと、名前だけの選任になりやすい部分です。
複数の拠点を1人で兼ねられますか
同一の敷地内や、一体として管理できる範囲であれば認められる場合があります。距離が離れた拠点を兼ねられるかどうかは個別の判断になるため、地方運輸局に確認してください。実務の面でも、月1回の巡回が回るかどうかで考えます。
倉庫管理主任者と防火管理者は別ですか
別の制度です。防火管理者は消防法にもとづくもので、建物の用途と規模によって選任が求められます。倉庫では両方が必要になることがあります。同じ人が兼ねている現場もありますが、根拠となる法令が違うため、それぞれの要件を満たす必要があります。
倉庫の増設や移転をするときは何をしますか
営業倉庫では、施設の基準や登録の内容に関わるため、建てる前・借りる前に地方運輸局へ相談するのが確実です。工事が終わってから基準を満たしていないと分かると、費用も期間も大きく膨らみます。新しい倉庫についても、倉庫管理主任者の選任が必要になります。
まとめ
倉庫管理主任者は、倉庫業法にもとづいて、倉庫業者が倉庫ごとに選任する役割です。試験はなく、実務の経験か、登録を受けた講習の修了で要件を満たします。
必要になるのは営業倉庫で、自社の荷物だけを置く倉庫は倉庫業法の対象外とされています。ただし、他社の荷物を預かって料金を受け取っている場合は判断が変わるため、地方運輸局に確認します。
役割の中身は、火災の防止、労働災害の防止、預かっている荷物の管理、そして施設の改善の4つです。置くだけでは動かないので、巡回・事故・教育・点検・在庫の5つの記録の形を先に作っておくと、担当が代わっても続きます。