フォークリフトの点検義務は3種類-記録は3年
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フォークリフトの点検は、「年に1回、業者に見てもらっている」で止まっている現場が少なくありません。実際には毎日・毎月・毎年の3種類が労働安全衛生規則で定められていて、それぞれ実施する人も記録の扱いも違います。
この記事では、フォークリフトの点検を、3種類の分け方、それぞれの中身、実施できる人、記録の保存、不具合が見つかったときの動きの順に整理します。自社のフォークリフトに何が適用されるかは、機械の種類や使用の状況で変わります。最終的には所轄の労働基準監督署、メーカー、検査業者に確認してください。
フォークリフトの点検は3種類ある
労働安全衛生規則では、フォークリフトについて次の3つが定められています。周期も、実施できる人も、記録の扱いも別々です。
| 種類 | 周期 | 根拠(労働安全衛生規則) |
|---|---|---|
| 作業開始前点検 | その日の作業を始める前 | 第151条の25 |
| 定期自主検査(月次) | 1月を超えない期間ごとに1回 | 第151条の22 |
| 特定自主検査(年次) | 1年を超えない期間ごとに1回 | 第151条の21・第151条の24 |
「点検している」と言われるときの中身は、だいたい年次だけです。毎日と毎月が抜けていると、法令の面でも、故障を早く見つけるという面でも穴になります。
作業開始前点検(毎日)
その日の作業を始める前に行う点検です。資格は要りません。運転する人が自分で行います。
規則で示されている項目は次の4つです。
| 項目 | 見るところ |
|---|---|
| 制動装置・操縦装置の機能 | ブレーキの効き、ハンドル、レバーの動き |
| 荷役装置・油圧装置の機能 | フォークの上下、マストの傾き、油漏れ |
| 車輪の異常の有無 | 摩耗、空気圧、傷、異物 |
| 前照灯・後照灯・方向指示器・警報装置の機能 | 点灯、バックブザー、ホーン |
記録の義務は無いが、残したほうがよい
作業開始前点検については、記録の保存が規則で定められているわけではありません。それでも多くの現場が記録を残しています。理由は3つあります。
- 異常が出たときに、いつから出ていたかをたどれる
- 誰が乗ったかが分かる
- 毎日やっていることを示せる
1枚の紙に1か月ぶんを並べる形が扱いやすく、運転者が乗る前に印を付けるだけで済みます。
定期自主検査(月次)
1月を超えない期間ごとに1回、行う検査です。こちらは記録を3年間保存することが定められています(第151条の23)。
規則で示されている主な項目は次のとおりです。
| 区分 | 見るところ |
|---|---|
| 制動装置・クラッチ・操縦装置 | 異常の有無 |
| 荷役装置・油圧装置 | フォーク、マスト、チェーン、シリンダ |
| ヘッドガード・バックレスト | 損傷、変形 |
エンジン式とバッテリー式で、見るところが一部変わります。バッテリー式では液量や端子、エンジン式では原動機まわりが対象になります。
誰が行うか
月次の定期自主検査には、特定自主検査のような資格の定めはありません。社内の整備担当や、機械に詳しい人が行っている現場が多くあります。ただし、判断できる知識は必要なので、メーカーの講習を受けている人を充てるのが安心です。
特定自主検査(年次)
1年を超えない期間ごとに1回、行う検査です。フォークリフトは特定自主検査の対象とされており、実施できる人が定められています。
| 実施できる人 | 中身 |
|---|---|
| 検査業者 | 労働局に登録している業者に依頼する |
| 事業内検査者 | 一定の研修を修了するなど、資格の要件を満たす自社の人 |
検査が終わると、検査標章を機械の見やすい場所に貼ります。標章には検査を行った年月が示されるため、次の期限がひと目で分かります。記録の保存は月次と同じく3年間です。
記録の保存は3年
定期自主検査(月次・年次)の記録は、3年間保存することが定められています。保存する内容は規則で示されており、実務では次の項目を1枚に入れておくと足ります。
| 項目 | 中身 |
|---|---|
| 検査年月日 | いつ行ったか |
| 検査方法 | 目視、作動、測定など |
| 検査箇所 | どこを見たか |
| 検査の結果 | 良否 |
| 検査を実施した者の氏名 | 誰が行ったか |
| 補修等の措置 | 不良があったときに何をしたか |
最後の「補修等の措置」が空欄のままになりやすいところです。不良を見つけたのに、直した記録が無いと、見つけて放置したという形になります。
点検表の作り方
3種類を別々の紙で管理すると、どれが最新か分からなくなります。1つのファイルに、毎日・毎月・毎年をまとめるのが扱いやすい形です。
| 分け方 | 中身 |
|---|---|
| シート1 | 作業開始前点検(1か月ぶんを1枚に) |
| シート2 | 定期自主検査(月次)。12か月ぶん |
| シート3 | 特定自主検査(年次)の記録と、標章の貼付日 |
| シート4 | 機械の一覧(車両番号、型式、製造番号、稼働時間) |
機械の一覧を1枚持っておくと、複数台ある現場で期限の管理が楽になります。次回の期限を計算式で出しておけば、切れる前に気づけます。
3種類を1つのファイルにまとめた様式は、点検板のフォークリフト点検表で配られています。作業開始前・月例・年次を1ファイルで記録できる形になっています。
現場に置く場所を決める
点検表は、機械のそばに置くのが原則です。事務所のファイルに綴じてしまうと、乗る前に書けません。クリップボードを機械ごとに用意して、月が終わったらファイルに移す運用がよく使われます。
使わない期間があるとき
規則では、1年(または1月)を超える期間、使用しない場合の扱いが定められています。使用しない期間については検査を行わなくてよいとされ、使用を再開するときに検査を行うという形です。
- 長期間止めるときは、止めた日を記録に残す
- 再開する前に検査を行い、その記録を残す
- 「止めていた」ことを示せるようにしておく
止めていたつもりでも、その間に一度でも動かしていれば話が変わります。鍵の管理を含めて、動かせない状態にしておくのが確実です。
不具合が見つかったときの動き
点検で異常が見つかったときは、次の順で動きます。見つけた人がその場で止められる形にしておくのが要点です。
- 使用を止める。鍵を抜いて、使用禁止の札を掛ける
- 上長へ報告する
- 内容を記録に書く(どこが、どう異常か)
- 修理を手配する
- 直ったことを確認して、記録に補修の内容を書く
- 使用を再開する
1を飛ばして「気をつけて使う」にすると、事故になったときに説明ができません。ブレーキ、フォーク、マスト、ヘッドガードに関わる異常は、特にその場で止めます。
点検を続けるためのしくみ
3種類の点検は、どれも「忘れる」ことで止まります。期限を人の記憶に置かない形にします。
| やること | 効き方 |
|---|---|
| 機械ごとに次回の期限を一覧にする | 複数台でも切れない |
| 標章の貼付日を写真で残す | 現物を見に行かずに確認できる |
| 月次の検査日を毎月同じ日に固定する | 予定に入れられる |
| 点検表を機械のそばに置く | 乗る前に書ける |
年次の検査は、期限の1か月前に手配を始めます。検査業者の予約が取れないことがあるためです。期限を過ぎてから慌てると、その間は使えない状態になります。
1年の流れで見る
3種類の点検を別々に覚えようとすると抜けます。1年のカレンダーに置いてみると、やることの量が見えます。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 毎日(作業前) | 作業開始前点検。4項目を見て印を付ける |
| 毎月(同じ日) | 定期自主検査。記録を3年保存 |
| 年1回 | 特定自主検査。検査業者または事業内検査者。標章を貼る |
| 年次の1か月前 | 検査業者へ連絡。日程を押さえる |
| 異常が出たとき | その場で止める。記録と補修まで |
毎月の検査日を「毎月第1営業日」のように固定すると、予定に組み込めます。日付が毎月変わると、忙しい月に落ちます。
複数台あるときの管理
台数が増えると、期限の管理そのものが仕事になります。機械の一覧を1枚作って、そこで期限を見る形にします。
一覧に持つ列は次のとおりです。
| 列 | 中身 |
|---|---|
| 管理番号・機種・型式 | どの機械か |
| 製造番号・年式 | 同型がある場合の区別 |
| 前回の月次検査日 | 次回の期限を計算する元 |
| 前回の特定自主検査日 | 標章の貼付日と合わせる |
| 次回の期限 | 計算式で出す |
| 記録の保存期限 | 検査日から3年 |
次回の期限を計算式で出しておくと、更新のたびに手で直さずに済みます。期限の近い順に並べ替えれば、その月に手配すべき機械が分かります。
使っていない機械も一覧に残す
長期間止めている機械を一覧から消すと、再開したときに検査を忘れます。「休止中」の欄を作って残しておくほうが安全です。再開の予定が立った時点で、検査の手配に入れます。
点検と安全教育のつながり
点検は、機械の状態を見るしくみです。一方で、フォークリフトの事故は、機械の故障よりも運転と周囲の状況で起きることが多くあります。
- 積荷で前が見えないまま前進する
- 急旋回して荷が落ちる
- 人と同じ通路を走る
- フォークを上げたまま走行する
点検表が完璧でも、これらは防げません。通路の分離、走行の速度、フォークの高さといった運用の決めごとが要ります。倉庫の災害の型と手当ては倉庫の安全対策にまとめています。
運転できる人を確認しておく
フォークリフトの運転には、最大荷重によって技能講習や特別教育が必要とされています。誰がどの資格を持っているかを一覧にしておくと、応援の人が来たときに迷いません。資格の要件や対象は法令で定められているため、詳しくは所轄の労働基準監督署や講習機関に確認してください。
点検表が形だけになるとき
毎日の点検表に、同じ印だけが並んでいる状態になっていないかを見ます。異常が1件も出ない点検表は、見ていない点検表と区別がつきません。
形だけになりやすい理由と手当ては次のとおりです。
| 起きていること | 手当て |
|---|---|
| 項目が多すぎる | 規則で定められた4項目に絞る |
| 書く場所が遠い | 機械のそばにクリップボードを置く |
| 異常を書くと面倒が増える | 書いた人を責めない。止めた判断を評価する |
| 誰も見返していない | 月末に1回、上長が目を通して印を押す |
「異常を書くと自分の作業が増える」と思われている状態が、いちばん危ない形です。止めた判断を現場で認める運用にしておかないと、小さな異常が報告されなくなります。
月に1度、記録をまとめて見る
同じ機械で同じ箇所の異常が続いていないかを見ます。続いているなら、修理ではなく更新の検討に入る時期かもしれません。記録は、買い替えの判断材料にもなります。
よくある質問
作業開始前点検は、乗る人が毎回やるのですか
その日の作業を開始する前に行うものとされています。同じ機械を1日に複数人が乗る場合は、その日の最初に1回行い、交代のときに異常の有無を引き継ぐ形にしている現場が多くあります。運用の決め方は、現場の体制に合わせて先に決めておきます。
点検をしていないと罰則はありますか
労働安全衛生法では、定期自主検査などについて事業者の義務が定められており、違反には罰則の定めがあります。具体的な適用や金額は事案によって変わるため、所轄の労働基準監督署に確認してください。罰則の有無より、故障による事故の責任のほうが実務では重く効きます。
特定自主検査は、社内でやってもよいですか
一定の要件を満たす事業内検査者であれば、社内で実施できるとされています。要件を満たしているかどうかの確認が必要なので、該当しそうな人がいる場合は、研修の修了の状況を確かめたうえで、労働基準監督署や検査業者に相談してください。多くの現場は検査業者に依頼しています。
構内専用で公道を走らないフォークリフトも対象ですか
労働安全衛生規則の点検・検査の規定は、事業場で使用するフォークリフトを対象としています。公道を走るかどうかとは別の話になります。公道を走る場合は、別に自動車としての登録や検査の話が加わります。
レンタルで借りているフォークリフトはどうなりますか
契約によって、点検や検査を誰が行うかの取り決めが異なります。契約書を確認するのが先です。作業開始前点検は使用している側が行うのが通常の形ですが、月次・年次の扱いは契約で決まります。
中古で買った機械の前の記録はどうしますか
前の所有者の記録を引き継げるとは限りません。取得した時点で検査を行い、そこから自社の記録を始めるのが確実です。年式と稼働時間を控えておくと、消耗部品の見当が付きます。購入時に検査済みかどうか、標章の有無も合わせて確認します。
屋外で使っている機械は点検を増やすべきですか
規則で定められた周期は変わりませんが、屋外は錆、雨、粉じんの影響を受けます。作業開始前点検のときに、車輪、油圧のホース、電気の端子を意識して見るようにしておくと、故障を早く見つけられます。気になる箇所は、月次の検査で重点的に見る項目に足しておきます。
記録は紙と表計算のどちらがよいですか
どちらでも構いません。3年間、探せる形で残っていることが要点です。紙の場合は機械ごとにファイルを分け、表計算の場合はバックアップを取っておきます。標章の写真を一緒に保存しておくと、期限の確認が早くなります。
作業開始前点検の用紙は、どのくらいの期間残しますか
規則で保存が定められているのは定期自主検査の記録のほうですが、実務では月次・年次にそろえて3年残している現場が多くあります。異常の履歴をたどるときに、毎日の記録があると助かります。保管の場所を取るようであれば、異常の記載があった月だけを残すという分け方もあります。
まとめ
フォークリフトの点検は、作業開始前点検、定期自主検査(月次)、特定自主検査(年次)の3種類です。周期も、実施できる人も、記録の扱いも違います。
作業開始前点検は資格が要らず、運転する人が毎日行います。記録の保存が定められているのは月次と年次で、いずれも3年間です。特定自主検査は検査業者か、要件を満たす事業内検査者が行い、終わると検査標章を貼ります。
そして、異常が見つかったときはその場で止めることです。使用禁止の札を掛け、記録に残し、直したことまで書く。「補修等の措置」の欄が埋まっている記録が、点検が働いている証拠になります。