誤出荷の原因と対策は?現場で減らす手順
目次
誤出荷を調べると、たいてい「システムを導入しましょう」という話に行き着きます。たしかにバーコードを読む形にすれば取り違えは減りますが、入れるまでの数か月も出荷は続きます。しかも、システムを入れても残る型の誤出荷があります。
この記事では、誤出荷を、種類の分け方、起きる工程、費用をかけずに減らす手順、起きたあとの対応、再発防止の書き方の順に整理します。現場によって工程の並びは違うので、自社の出荷の流れに置き換えて読んでください。
誤出荷とは何か
誤出荷は、注文された内容と違うものを出してしまうことの総称です。まとめて1つに数えていると、原因の違うものが混ざって対策がぼやけます。実務では4つに分けます。
| 型 | 中身 | 相手が気づくか |
|---|---|---|
| 誤品 | 違う品物を送った | すぐ気づかれる |
| 誤数量 | 数が多い・少ない | 少ないときだけ連絡が来る |
| 誤送先 | 別の相手に送った | 気づかれる。情報の流出にもなる |
| 欠品出荷 | 入れ忘れた | 連絡が来る |
数が多いほうの誤数量は、連絡が来ません。相手は黙って使うか、返してくれるかのどちらかです。在庫だけが静かに減り、棚卸のときに差として出てきます。誤出荷の件数を数えるときに、ここが抜けやすい部分になります。
誤出荷率の測り方
減らすには、まず測ります。件数だけだと、出荷量が増えたときに比べられません。
| 指標 | 出し方 |
|---|---|
| 誤出荷率 | 誤出荷の件数 ÷ 出荷件数 |
| ppm(百万分率) | 誤出荷の件数 ÷ 出荷件数 × 1,000,000 |
物流の現場では、誤出荷率が小さい数字になるため、ppmで表すことがよくあります。1万件に1件なら100ppmです。
大事なのは、自社の前月と比べることです。他社の数字は、扱う品物と工程が違うので、そのまま比べても判断できません。まず今月を測り、翌月に下がっているかを見ます。
数える対象を決めておく
社内で見つけて出荷前に直したものを数えるかどうかで、数字は大きく変わります。「相手に届いてしまったもの」と「出る前に止めたもの」を分けて数えるのがおすすめです。止めた件数が多いのは、検品が効いている証拠になります。
どの工程で起きているか
誤出荷は、出荷の最後だけで起きるわけではありません。上流から順に見ます。
| 工程 | 起きること |
|---|---|
| 受注の入力 | 品番の写し間違い、数量の桁違い |
| 在庫の引当 | 別ロット・別倉庫の在庫を当ててしまう |
| ピッキング | 似た品番を取る、隣の棚から取る、数え違い |
| 検品 | 見ているようで見ていない、伝票と現物を照らしていない |
| 梱包 | 複数の注文が混ざる、入れ忘れ |
| 送り状 | 貼り間違い、前の注文の伝票が残っている |
| 積み込み | 別の車に載せる |
現場の感覚では、ピッキングと梱包・送り状に集中します。特に送り状の貼り間違いは、品物が正しいだけに、出てしまうと止められません。
今日から費用をかけずに減らす
システムの検討は並行して進めるとして、明日の出荷から効く手当てを先に入れます。効く順に並べます。
1オーダー1かごにする
複数の注文を1つの台車やかごで進めると、混ざります。かごを注文ごとに分け、かごに注文番号を付けます。台車が足りないときは、かごの中を仕切るだけでも効きます。
品番の表示をそろえる
現品の表示、棚のラベル、ピッキングリストの3つで、品番の書き方をそろえます。片方が「ABC-100」で、もう片方が「ABC100」だと、照合が目視の勘になります。棚番の振り方はロケーション管理のやり方にまとめています。
似た品番を離して置く
隣に置くから間違えます。取り違えの多い組み合わせを一覧にして、棚を離す。色の違うラベルを貼るのも効きます。過去の誤出荷の記録があれば、そこから組み合わせを拾えます。
声に出して指差す
検品のときに、品番の下3桁と数量を声に出します。黙って目で追うより、間違いに気づく確率が上がります。1件あたり数秒しか増えません。
送り状は梱包の直後に1枚ずつ貼る
まとめて印刷して、あとから貼るのが最も危ない形です。梱包が終わった箱に、その場で1枚貼る。貼ったら次の箱に進む。印刷済みの束を作らないだけで、貼り間違いは大きく減ります。
実際に使える様式が必要な方へ
検品記録表や出荷の記録様式を一から作ると手間がかかります。既成の様式でよければ、点検板の姉妹サイトである在庫板に無料のExcelがそろっています。
在庫板で様式をさがすダブルチェックが効かないとき
「2人で確認する」は、よく出る対策ですが、そのままでは効かないことが知られています。理由は単純で、相手が見ているから大丈夫だと思うためです。
効く形にするには、条件があります。
| 効かない形 | 効く形 |
|---|---|
| 2人が同じものを同じ方法で見る | 1人目は現物、2人目は伝票から逆に見る |
| 同時に見る | 時間を空ける。工程を分ける |
| 責任があいまい | それぞれの確認欄に印を残す |
| 全件を2人で見る | 高額品・初回取引・大量出荷だけに絞る |
全件ダブルチェックは、続きません。人手が2倍かかるため、忙しい日から順に省かれます。絞ったほうが結果として守られます。
誤出荷が起きたあとの動き方
起きたときは、次の順で動きます。相手への連絡を後回しにしないのが第一です。
- 相手に連絡する(謝罪と、いま分かっている事実)
- 正しい品物の手配(いつ届くかを伝える)
- 誤って送ったものの回収方法を決める
- 自社の在庫を修正する(誤って出たぶん、戻るぶん)
- 記録に残す
- 原因を調べ、手当てを決める
在庫の修正を忘れない
現場は1と2に集中するため、4が抜けます。誤って出た品物と、本来出るはずだった品物の両方で在庫がずれます。戻ってきたときにも、もう一度動きます。この記録漏れが、後日の棚卸差異として出てきます。
誤出荷報告書に何を書くか
相手先に出す報告書と、社内に残す記録は、中身が少し違います。社内の記録には、原因をたどれる情報を残します。
| 項目 | 書くこと |
|---|---|
| 発生日・出荷日・気づいた日 | 気づくまでの日数が分かる |
| 相手先・注文番号・品番・数量 | どの出荷か |
| 何が違ったか | 誤品・誤数量・誤送先・入れ忘れのどれか |
| どの工程で起きたか | ピッキング・検品・梱包・送り状 |
| そのときの状況 | 時間帯、担当人数、急ぎだったか |
| 手当て | その場の対応と、これからの対策 |
「そのときの状況」を書く欄を作っておくのが要点です。同じ時間帯に集中している、人数が少ない日に多い、といった傾向は、状況を書いていないと見えません。
再発防止を「注意します」で終わらせない
報告書の再発防止欄が「以後注意します」「ダブルチェックを徹底します」で埋まっている場合、次も同じことが起きます。人の気をつけ方は、対策として続かないためです。
続く対策は、次のどれかの形になります。
| 型 | 例 |
|---|---|
| 物を変える | 似た品番の棚を離す。かごを注文ごとに分ける |
| 順番を変える | 送り状を梱包の直後に貼る |
| 見えるようにする | 現品に品番を貼る。数量をリストに大きく出す |
| 対象を絞る | 高額品だけ2人で見る |
「注意する」は、物・順番・見え方のどれも変えていません。報告書を書くときは、この4つのどれに当たるかを確かめると、効く対策になったかが分かります。
なぜを繰り返すと止まる場所
原因をたどっていくと、「急いでいたから」「人が足りないから」に行き着くことがあります。ここで止まると対策が書けません。「急いでいても間違えない形にするには何を変えるか」まで進めます。急ぐことは前提として変わらないためです。
システムを入れるときの順番
バーコードやハンディを入れる判断をしたときも、順番があります。
- 品番の表示と棚番を整える(読む対象が無いと始まらない)
- 入荷の検品から入れる(品目数が少なく、慣れやすい)
- ピッキングと出荷の検品に広げる
1を飛ばすと、システムが読むものが無いという状態になります。ラベルの貼られていない現品が残っていると、そこだけ手作業になり、結局そこで誤出荷が出ます。
システムが効くのは、誤品と誤数量です。送り状の貼り間違いと、複数注文の混ざりは、作業の組み方でしか防げません。ここを先に直しておくと、導入後の効果がはっきり出ます。
誤出荷が集中する日と時間を見る
記録が20件ほどたまったら、日付と時刻で並べ替えてみます。原因の分類より先に、こちらのほうが手当てにつながることがあります。
見えやすいのは次の3つです。
| 集中している場所 | 疑うこと |
|---|---|
| 特定の曜日・月末 | 出荷量の山。人が足りていない |
| 夕方の締め間際 | 急いでいる。確認が飛んでいる |
| 特定の商品群 | 品番が似ている。棚が隣り合っている |
「月末の夕方に、この商品群だけ」まで絞れれば、対策は具体的になります。その時間帯だけ検品の人を1人増やす、その商品群だけ棚を離す、という形で、全体に負担をかけずに効かせられます。
出荷量と誤出荷の関係を並べる
日ごとの出荷件数と誤出荷の件数を並べると、量に比例しているのか、ある量を超えると跳ねるのかが見えます。跳ねる点があるなら、そこが今の工程の限界です。人を増やすか、前倒しで出すかの判断材料になります。
出荷量が多い日は、前日のうちに作れないか
当日の山をならせると、急ぎによる誤りが減ります。出荷先と品目が前日に確定しているぶんだけ、先にピッキングと梱包まで進めて、確認済みの置き場に置いておくという組み方ができます。当日は行き先の確認と積み込みだけになるので、締め間際の混雑が小さくなります。
前倒しできる条件は、注文の締め時刻が早いことと、置いておく場所があることの2つです。どちらも無い場合は、人の配置を時間帯でずらすほうが現実的です。
相手先ごとの決まりを1枚にまとめる
誤出荷の一部は、こちらの作業ミスではなく、相手先ごとの決まりを知らなかったために起きます。
- 納品書を箱の外側に入れる相手と、中に入れる相手
- パレットの高さや積み方の指定
- 指定の運送会社、指定の時間帯
- 個口ごとにラベルを貼る、通し番号を振る
これらは人の記憶に置かれやすく、担当が変わると落ちます。相手先ごとに1枚の表にして、ピッキングリストと一緒に出るようにしておくと、初めての人でも同じ形で出せます。
新しい取引先の1回目は必ず確認する
初回の出荷は、決まりが分からないまま出すことになります。1回目だけは、出荷の前に写真を撮って相手に見てもらうという手当てをしている現場もあります。手間はかかりますが、最初に形を決めておくと、2回目以降が楽になります。
出荷の前に止める場所を1つ作る
工程のどこかに、出荷を1回止める場所を置きます。多くの倉庫では、梱包が終わってトラックに積むまでの間です。
止める場所でやることは3つだけにします。
- 送り状の相手先と、納品書の相手先が同じか
- 個口の数が、伝票の個口数と同じか
- 指定の運送会社・便になっているか
品番や数量は見ません。そこは前の工程で見ています。この場所では、中身ではなく行き先だけを見ます。見るものを絞ると、数秒で終わり、しかも誤送先が止まります。
止める場所には線を引く
床にテープで枠を作り、「確認前」「確認済」に分けます。確認していない箱が、物理的に車へ行けない形にするのが要点です。声かけの運用にすると、忙しい日に飛びます。
ゼロを掲げるかどうか
「誤出荷ゼロ」は目標として分かりやすい一方で、達成できない月が続くと形だけになります。今月の率を出して、来月はここまで、という刻み方のほうが続きます。ゼロは到達点として置き、月々の目標は自社の実績から決めるのが扱いやすいです。
よくある質問
誤出荷率はどのくらいが目標になりますか
扱う品目数、出荷の形(ケース単位かバラか)、人の入れ替わりで大きく変わるため、他社の数字は目標になりません。まず自社の今月を測り、半年で半分にする、といった形で自社の中に線を引きます。
検品を増やしたら出荷が遅くなりました
全件を同じ濃さで見ているとそうなります。品目・金額・相手先で濃さを変えます。初回の取引先、高額品、数量の多い出荷だけを2人で見る形にすると、時間を増やさずに危ないところだけ守れます。
派遣の方が多い現場で、どう教えますか
口で教えず、置き方で伝えます。かごを注文ごとに分ける、リストを棚番順にする、現品に品番を貼る。これらは説明しなくても、その形にしか作業できません。教育で埋めようとするほど、人が入れ替わるたびに戻ります。
誤出荷の記録は、どのくらい残せばよいですか
社内の改善に使うだけなら1年から3年、同じ品番の取り違えが繰り返されていないかを見るには、長いほうが役に立ちます。取引先との契約で報告や保管の取り決めがある場合は、その条件が優先されます。契約書を確認してください。
誤出荷を報告しない雰囲気があります
件数を人の評価に結びつけていると、報告されなくなります。報告された件数が増えたときに、まず「出してくれてよかった」と返すところから変わります。数えているのは人ではなく工程だ、という扱いにしておくと、記録が集まるようになります。
記録が集まらない現場では、改善の当たりが付けられません。数字が悪く見えても、見えているほうが直せます。
出荷の写真を残すべきですか
高額品や、過去にやり取りのあった相手先では、梱包前の状態を1枚撮っておくと話が早くなります。全件を撮ると手間が増えるので、金額や過去の経緯で対象を絞るのが実務的です。撮った写真は注文番号で探せる形にしておかないと、必要なときに出てきません。
相手に届いたあと、こちらから連絡すべきですか
気づいた時点で連絡するのが基本です。黙っていて後から発覚すると、誤出荷そのものより信用の面で問題が大きくなります。いま分かっている事実と、正しい品物がいつ届くかを、まず伝えます。原因の説明は、調べてからで構いません。
まとめ
誤出荷は、誤品・誤数量・誤送先・入れ忘れの4つに分けて数えるところから始まります。数が多い誤数量は連絡が来ないため、棚卸の差として出てきます。
費用をかけずに効くのは、1オーダー1かご、品番の表示をそろえる、似た品番を離す、声に出して指差す、送り状を梱包の直後に貼る、の5つです。どれも明日の出荷から始められます。
そして、再発防止を「注意します」で終わらせないことです。物を変えたか、順番を変えたか、見えるようにしたか、対象を絞ったか。このどれにも当てはまらない対策は、次の繁忙期に消えます。