返品の処理手順|戻し忘れが在庫を狂わせる
目次
返品は、件数が少ないぶん手順が決まっていないことが多く、在庫を狂わせる原因としてはかなり上位にあります。戻ってきた品物が置き場に残ったまま、在庫にも戻らず、棚卸のときに「帳簿より現物が多い」という形で出てきます。
この記事では、返品を、起きる理由の分け方、受け取ったときの手順、戻すか戻さないかの判断、記録の残し方、減らすための手当ての順に整理します。契約や取引の条件で扱いが変わるため、費用の負担は契約書で確認してください。
返品が起きる理由を分ける
返品はまとめて1つに数えず、理由で分けます。手当ての場所が、理由ごとにまったく違うためです。
こちらの間違いによるものが1つ目です。品番違い、数量違い、送り先違い。これは誤出荷なので、出荷の工程を見直します。品物の不具合が2つ目です。破損、汚れ、期限切れ。輸送中の破損なのか、出す前からだったのかで、見る場所が変わります。
相手先の都合が3つ目です。注文の間違い、不要になった、多く頼みすぎた。こちらの作業に問題はありませんが、受けるかどうかと、費用を誰が持つかは契約の話になります。そして、季節商品の残りが戻ってくるような、取引の条件として決まっている返品が4つ目です。
理由ごとに件数を数えておくと、どこに手を入れるべきかが分かります。こちらの間違いが多いなら出荷の工程、破損が多いなら梱包、相手先の都合が多いなら受注の確認です。誤出荷の型は誤出荷の原因と対策にまとめています。
受け取ったときの手順
返品が届いたら、普通の入荷とは別の場所に降ろします。通常の入荷置き場に混ぜると、そのまま棚に入ってしまいます。
手順は、返品の置き場に降ろし、送り状と中身を確かめ、返品管理表に記録し、状態を見て、戻すか戻さないかを決め、決まったとおりに処理する、という流れです。このうち、記録と判断が抜けやすいところです。降ろして終わりにすると、置き場に品物が溜まります。
中身を確かめるときは、こちらが出したものと同じかを見ます。別の品物が入っていることがあります。相手先が取り違えて返してくることも、こちらの出荷が間違っていたことも、どちらもあります。数量も数えます。
戻すか、戻さないか
判断は、そのまま次の出荷に使えるかどうかで決まります。
未開封で外装もきれいなら、在庫に戻します。開封されているが中身に問題が無いものは、包装を替えれば戻せることがあります。汚れ、破損、期限が近いものは戻せません。この線は品目ごとに決めておきます。現場が毎回迷うと、判断が人によって変わり、戻してはいけないものが在庫に混ざります。
戻せないものは、廃棄か、値引き販売か、仕入先への返品かに分かれます。判断する人と、金額の線を決めておきます。決める人がいないと、保留の置き場に溜まり続けます。処分の進め方は在庫の廃棄と記録にまとめています。
食品や医薬品など、戻せる範囲が法令や取引の条件で決まっている品物もあります。その場合は、条件に従います。判断に迷うものは、戻さない側に倒すほうが安全です。
戻すときは検品と同じ扱いにする
在庫に戻す品物は、新しく入ってきたものと同じように検品します。品番、数量、外観、期限。「うちが出したものだから」で省くと、別の品物や、数量の違うものが在庫に入ります。検品の組み方は検品のやり方にまとめています。
記録に残す
返品管理表に残すのは、受け取った日、相手先、出荷したときの注文番号、品番と数量、返品の理由、状態、処理(在庫へ戻す・廃棄・仕入先へ返送)、処理した日です。
「処理した日」の欄が空いている行が、置き場に残っている品物です。この欄を見れば、溜まっているものが一覧になります。週に1回、空欄の行を見る日を決めておけば、置き場が満杯になることはありません。
在庫に戻したときは、入庫として記録します。ここが抜けると、現物は棚にあるのに帳簿にない状態になり、棚卸で「帳簿より多い」差として出ます。返品の戻し漏れは、この形の差のいちばん多い原因です。差の調べ方は棚卸差異の原因と対策にまとめています。
返品の置き場を決める
返品は、置き場が決まっていないところから崩れます。通路の端、事務所の隅、空いている棚。場所が決まっていないと、誰の担当かも決まりません。
床にテープで枠を引いて、「返品・判断待ち」と書いた紙を貼ります。判断が済んだものは、そこから「在庫へ戻す」「廃棄」「仕入先へ返送」の3つに分けて移します。判断待ちの枠を狭く作るのが要点で、広いといつまでも溜まります。
置き場に棚番を振っておくと、記録とつながります。返品管理表に「いまどこにあるか」が書けるので、探す時間が消えます。判断が済むまでの間、この品物は在庫に数えるのか数えないのかも決めておきます。どちらでもよいので、決めて紙に書きます。決めていないと、棚卸のたびに扱いが変わります。
判断する日を決める
毎日やる必要はありません。週に1回、決まった曜日に判断する形で足ります。その日に判断する人が現場に来ることが条件です。書類だけを回して判断すると、現物の状態が分からないまま「戻す」と決まってしまいます。
数字で見る
返品は、件数と金額の両方で見ます。件数だけだと、小さな返品がたくさん起きているのか、大きな返品が1件あるのかが分かりません。
見るのは3つです。出荷件数に対する返品の率、理由ごとの内訳、判断待ちの滞留件数。率は、出荷が増えれば返品も増えるので、件数だけを見ていると評価を誤ります。理由ごとの内訳は、手当ての場所を決めるための数字です。滞留件数は、処理が回っているかどうかを示します。
滞留件数がいちばん早く異常を示します。先週まで5件だった判断待ちが20件になっていれば、判断する人が来られていないか、判断の基準が曖昧になっています。件数を毎週数えるだけで気づけます。
相手先への連絡
返品を受けたら、受け取ったことと、どう処理するかを相手先に伝えます。連絡が無いと、相手先は届いたかどうかも分かりません。
伝えるのは、受け取った日、品番と数量、こちらの判断(交換、返金、代替品の手配)、いつまでに対応するかです。判断に時間がかかる場合も、受け取った事実だけは先に伝えます。沈黙がいちばん不信を招きます。
費用の負担は、返品の理由によって変わります。こちらの誤出荷なら通常はこちら持ち、相手先の都合なら相手持ち、というのが一般的な形ですが、契約や取引の条件で決まっているため、契約書を確認します。その場の判断で決めると、次回から基準が変わります。
不良品を分けて置く
返品のなかで、不良として扱うものは、合格品と物理的に分けます。同じ棚に「不良」と書いた札を貼るだけでは、忙しい日に出荷されます。
不良品の置き場を別に作り、そこに入れたものは出荷の対象から外れる形にします。在庫管理表でも、不良として別の行か別の区分で持ちます。数量だけを減らして、現物の行き先を書かないと、棚卸のときに合いません。
不良の原因が仕入先にある場合は、仕入先へ返送するか、値引きの交渉に入ります。ここでも記録が要ります。いつ、何を、いくつ、どの理由で返したか。同じ仕入先で同じ不良が繰り返されているかどうかは、記録が無いと分かりません。検品の記録と合わせて見ると、入荷の時点で見つけられたかどうかも分かります。
回収が必要になったとき
品質の問題で、出荷したものを回収することがあります。このときに要るのは、どの相手先に、いつ、どのロットを出したかの記録です。ロット管理をしていないと、全部の相手先に連絡することになります。期限とロットの管理は先入れ先出しのやり方にまとめています。
返品を減らす
処理の手順を整えるのと並行して、そもそも起きないようにします。
こちらの間違いによる返品は、出荷検品を濃くする、似た品番を離す、送り状を梱包の直後に貼る、といった手当てで減ります。破損による返品は、梱包の見直しです。壊れ方を写真で残しておけば、どこを直せばよいかが分かります。梱包のやり方は梱包のやり方にまとめています。
相手先の都合による返品は、受注の段階で減らせることがあります。数量の確認、品番の読み合わせ、納期の確認。注文を受けたときに1回確かめるだけで、出荷して戻ってくる手間が消えます。
季節商品の返品が契約で決まっている場合は、減らすというより、戻ってくる前提で置き場と処理の段取りを組みます。時期が分かっているので、人と場所を先に確保できます。
交換で出す品物の扱い
返品と同時に、代わりの品物を出すことがあります。このとき、出す側と戻る側を別々に記録します。1件の交換を1行でまとめて書くと、在庫の動きが追えなくなります。
出荷は通常どおり出庫として記録し、返品は受け取った時点で入庫として記録します。時期がずれるのが普通なので、まとめて相殺すると、その間の在庫数が実態と合いません。急ぎで代替品を先に出して、返品は1週間後に届く、という形はよくあります。
交換の理由がこちらの誤出荷なら、誤出荷の記録にも1件として残します。返品の記録と誤出荷の記録が別々にあると、同じ事象が2か所に分かれますが、見る目的が違うので両方に残すほうが後から使えます。誤出荷の記録の項目は誤出荷の原因と対策にまとめています。
送料や手数料の負担も、交換のたびに決めるのではなく、理由ごとの原則を決めておきます。その場で決めると、担当者によって扱いが変わります。
返品が起きる前に止める
出荷したあとに戻ってくる荷物は、往復の運賃と、受け入れの手間と、判断の時間がかかります。出す前に1回確かめるほうが、はるかに安く済みます。
受注の段階で効くのは、数量の単位の確認です。「10」と言われたときに、10個なのか10ケースなのか。ここがずれると、届いてから返品になります。品番も、読み合わせをすると取り違えが減ります。初めての取引先と、久しぶりの注文は、特に確かめる価値があります。
納期と届け先も同じです。届け先が本社なのか現場なのか、受け取れる時間帯はいつか。相手先の都合による返品のうち、かなりの部分が受注時の確認で防げます。
出荷側では、出荷検品を濃く見る対象を決めておきます。初回の相手先、高額品、数量の多い出荷。この3つを厚く見るだけで、こちらの間違いによる返品が減ります。
よくある質問
返品の置き場が満杯になります
処理した日が空欄の行が溜まっている状態です。週に1回、判断する日を決めます。判断する人が決まっていない場合は、そこを先に決めます。置き場を広げると、溜まる量が増えるだけで解決しません。狭いまま、あふれたら困る形にしておくほうが処理が進みます。
返品された品物を再出荷してよいですか
未開封で外装に問題が無く、期限にも余裕があれば、再出荷している現場が多くあります。ただし、食品、医薬品、化粧品などは、法令や取引の条件で再出荷の可否が決まっていることがあります。扱う品物の規定を確認してください。迷う場合は再出荷しない側に倒します。
返品の送料は誰が負担しますか
返品の理由と契約によります。契約書に取り決めが無い場合は、その都度の交渉になります。同じような返品が繰り返し起きる相手先とは、先に取り決めておくと毎回の交渉が減ります。
返品の記録はどのくらい残しますか
社内の改善に使うだけなら1年から3年です。品質の問題で回収が起きたときには、さかのぼって追えることが求められます。扱う品物によって求められる期間が違うため、契約と業界の慣行を確認してください。
相手先から返品が多く、業務を圧迫しています
理由ごとの件数を数えて、相手先と話す材料にします。「返品が多い」ではなく「3か月で18件、うち14件が注文数量の間違い」と言えれば、相手先も手を打てます。受注のときの確認方法を一緒に決めると、双方の手間が減ります。
返品の判断を現場でしてよいですか
金額の線を決めておけば、現場で判断できます。「1万円までは現場で判断、それを超えたら報告」という形にすると、ほとんどの返品はその場で片づきます。線が無いまま「全部報告」にすると、報告されないまま処理される形が生まれます。線の金額は、扱う品物の単価に合わせて決めます。
判断待ちの品物は在庫に数えますか
どちらでも構いませんが、決めて紙に書きます。数えないと決めたなら、判断待ちの置き場のぶんだけ帳簿から外れている状態になります。棚卸のときに、その置き場を数えるかどうかで毎回迷わないようにしておきます。判断が済むまでの期間が短ければ、影響も小さくなります。
返品の品物が、出荷した記録と合いません
出荷そのものが間違っていた可能性があります。出荷検品の記録を確認します。記録が残っていれば、出るときに何を入れたかが分かります。記録が無い場合は、今後のために出荷検品の記録を始める合図として扱います。
返品を受け付けない方針にできますか
契約と商習慣によります。受け付ける範囲と期限を、取引の条件として先に決めておくと、そのつどの交渉が減ります。「出荷から7日以内、未開封のものに限る」といった形です。条件を決めずに個別に判断していると、相手先ごとに扱いが変わり、あとで説明できなくなります。決めた条件は、注文の確認書や納品書に書いておきます。
まとめ
返品は、理由で分けるところから始めます。こちらの間違い、品物の不具合、相手先の都合、契約上の返品。手当ての場所が理由ごとに違うためです。
受け取ったら、通常の入荷とは別の場所に降ろし、記録して、戻すか戻さないかを判断します。判断の線を品目ごとに決めておかないと、現場が毎回迷い、戻してはいけないものが在庫に混ざります。
そして、在庫に戻したときは必ず入庫として記録します。この戻し漏れが、「帳簿より現物が多い」という棚卸差異のいちばん多い原因になっています。