預り品の管理|自社の在庫と分けて持つ
目次
預り品は、自社のものではない在庫です。荷主から預かっている商品、取引先から届いた支給品、修理のために預かった品物。どれも棚にありますが、自社の資産ではありません。ここを混ぜて管理すると、棚卸の数字も、責任の所在も曖昧になります。
この記事では、預り品を、自社の在庫との違い、分けて持つ方法、記録の残し方、報告のしかた、返すときの手順の順に整理します。責任や費用の扱いは契約で決まるため、契約書の内容を確認してください。
自社の在庫との違い
いちばん大きな違いは、所有者が違うことです。棚にあっても、自社が売ることも、捨てることもできません。
このため、扱いが変わる点がいくつかあります。棚卸では、自社の在庫として数えません。会計上の扱いも別になります。処分や移動を勝手に決められません。破損や紛失が起きたときの責任も、契約の内容によって変わります。
一方で、保管の責任は預かった側にあります。適切に保管する義務があるので、置き方、温度、湿度、防犯といった条件は、自社の在庫と同じかそれ以上に気を配ることになります。
営業倉庫では、この預り品の管理が業務の中心です。倉庫管理主任者の業務にも、倉庫寄託物の管理が含まれています。役割と記録の持ち方は倉庫管理主任者の仕事にまとめています。
分けて持つ
管理の基本は、場所と記録の両方で分けることです。
場所は、区画を分けます。同じ棚に混ぜると、出荷のときに間違って出ます。区画に棚番を振って、預り品であることを表示します。荷主が複数あるなら、荷主ごとに分けます。
記録も分けます。自社の在庫管理表とは別の表にするか、同じ表で区分の列を持ちます。別の表にするほうが、集計のときに混ざりません。どちらにしても、自社の在庫と合算した数字が出ない形にします。
現品にも表示します。荷主の名前、預かった日、品番。現品を見て預り品だと分かる状態にしておくと、新しい人でも間違えません。棚番の付け方はロケーション管理のやり方にまとめています。
受け入れのときに確かめる
預り品は、受け入れの時点でほとんどが決まります。ここで数と状態を確かめておかないと、あとから何も言えません。
確かめるのは、品番と数量、外装の状態、期限やロット、指定された保管の条件です。伝票と現物が合っているかを見て、違いがあればその場で連絡します。「あとで数える」にすると、他の在庫と混ざって分けられなくなります。
受け入れの記録には、確かめた人の名前も残します。あとから問い合わせがあったときに、誰が見たかが分かると、確認が早く進みます。写真を1枚撮っておくと、状態の記録としてそのまま使えます。
保管の条件が指定されている場合は、その条件を満たす場所に入れます。温度帯、直射日光、湿度、積み重ねの可否。指定を読まずに一般の棚に入れてしまうのが、よくある失敗の形です。受け入れの用紙に、条件を書く欄を作っておくと見落としません。検品の組み方は検品のやり方にまとめています。
契約で先に決めておくこと
預り品をめぐる揉めごとの多くは、決めていなかったことから起きます。契約の段階で、次の点を確かめます。
保管の条件と場所、報告の頻度と様式、破損や紛失が起きたときの負担、保管の費用と計算の方法、返却の手順と期限、長期に残った場合の扱い。「長期に残った場合」を決めている契約は少ないのですが、実際にはいちばん困る場面になります。
保険をかけるかどうかも決めます。預かっている品物の金額が大きい場合、事故が起きたときの負担も大きくなります。契約の中で、どちらがどこまで負うかをはっきりさせておきます。
こうした条件は、現場が知っていないと守れません。契約書は事務所にあっても、現場の担当が保管の条件を知らなければ意味がありません。荷主ごとの条件を1枚の表にして、現場に置きます。
記録に残すこと
預り品の記録は、自社の在庫より項目が増えます。所有者と、いつ預かって、いつ返すかが加わるためです。
持つのは、預かった日、荷主または預けた相手、品番と品名、数量と単位、保管の場所(棚番)、状態、返却の予定、実際に返した日、備考です。入出庫のたびに記録するのは自社の在庫と同じですが、残高は荷主ごとに出せる形にします。
状態の欄は大事です。預かったときに既に傷があった、包装が破れていた、といったことを記録しておかないと、返すときに「預けたときは無かった」となります。受け取った時点で写真を撮っておく現場もあります。
温度や湿度の条件がある品物は、その記録も残します。契約で報告が求められていることもあります。求められていなくても、問題が起きたときに適切に保管していたことを示せます。
報告のしかた
荷主や預けた相手には、定期的に在庫の状況を報告するのが一般的な形です。契約で頻度と様式が決まっていることもあります。
報告するのは、期間の初めの残高、入庫、出庫、期末の残高です。荷主の記録と突き合わせられる形にしておくと、食い違いが早く見つかります。品番ごとに出すのか、合計で出すのかは、相手の求めに合わせます。
食い違いが出たときは、日付のずれをまず疑います。こちらが受け取った日と、相手が出荷した日が違うと、月をまたぐ分がずれます。どちらの時点で計上しているかを確かめれば、原因が分かります。
破損や紛失が分かったときは、見つけた時点で報告します。月次の報告まで待たないほうが、対応の選択肢が残ります。報告を遅らせると、それ自体が問題になります。
荷主ごとの一覧を現場に置く
預り品の管理でいちばん効くのは、荷主ごとの条件を1枚にまとめて現場に置くことです。
書くのは、荷主の名前、保管する区画、保管の条件(温度、積み重ね、直射日光)、入出庫の連絡先、報告の頻度、返却の手順、注意点です。現場が判断に迷ったときに見る紙として作ります。
この紙があると、担当が休んだ日でも同じ扱いができます。新しく入った人にも渡せます。条件が契約書の中だけにある状態だと、現場には届きません。
荷主が増えたときに1行足し、条件が変わったら直します。改訂の日付を入れておくと、古い版が現場に残っているかどうかが分かります。年に1回は、契約と照らして内容が合っているかを確かめます。
返すときの手順
返却は、預かったときと同じ丁寧さで行います。数と状態を確かめて、記録を残します。
手順は、返却の指示を受ける、対象の品物を集める、数と状態を確かめる、出荷する、記録に返した日を書く、相手に連絡する、という流れです。記録の更新が抜けると、返したのに預かったままの数字が残ります。
一部だけ返す場合は、残りの数量を記録に残します。全部返し終わるまで、行を閉じません。発注残の管理と同じ考え方です。
返したあと、その区画を空けます。空いた区画を次の預り品に使える形にしておくと、場所の管理が回ります。返却が済んだのに区画が塞がったままだと、実際より場所が足りなく見えます。
自社の支給品との違い
取引先から材料や部品を支給されて、それを使って作業する形もあります。これも預り品の一種ですが、使って減っていくという点が違います。
預かって返すものは、預かったときと同じ数を返します。支給されて使うものは、使ったぶんが減り、残りを返すか、次の支給を受けます。受け払いの記録が要るのはこのためです。支給品の扱いは支給品の受払にまとめています。
どちらも自社のものではない、という点は同じです。混ぜずに、自社の在庫とは別に管理するところは共通します。区画も記録も分けます。
種類が増えると管理が重くなるので、区分の付け方を先に決めます。自社在庫、預り品、支給品。この3つが記録の上で分かれていれば、集計も棚卸も迷いません。
長期に残っているもの
返す予定が決まらないまま、長く置かれている預り品が出てきます。場所を使い続けているので、費用がかかっています。
半年に1回、預かってからの日数で並べて、長いものを一覧にします。相手に連絡して、返すか、引き続き預かるかを確かめます。連絡した記録も残しておきます。
保管の費用を請求している場合は、そのまま続きますが、無償で預かっている場合は、費用が見えないまま積み上がります。置いている場所の坪数から、おおよその費用を出してみると、話をする材料になります。
相手の会社が無くなっている、担当者が誰も分からない、という品物が出ることもあります。勝手に処分できないので、扱いは慎重に進めます。契約の条項と、法的な扱いを確認したうえで判断します。判断に迷う場合は、専門家に相談してください。
防犯と保管の環境
預り品は、他人の財産を預かっている状態です。自社の在庫より、防犯と環境に気を配る必要があります。
施錠できる場所に置く、防犯カメラの範囲に入れる、出入りを記録する。高額な品物や、小さくて持ち出しやすい品物では、こうした手当てが要ります。契約で条件が指定されていることもあるので、確認します。
環境も同じです。雨漏り、結露、直射日光、虫や鼠。倉庫の弱いところは、たいてい決まっています。預り品は、その弱いところを避けて置きます。定期の巡回で、置いている区画の状態も見ます。
火災や水害への備えも、預り品では重く効きます。消防設備の点検、避難経路の確保、水の入る場所の確認。倉庫管理主任者の業務にも、火災の防止と施設の管理が含まれています。倉庫の安全の見方は倉庫の安全対策にまとめています。
引き継ぎと担当の交代
預り品の管理は、担当が代わるときに情報が落ちやすい部分です。荷主ごとの条件と、いま預かっている数は、必ず引き継ぎます。
引き継ぎのときは、記録だけでなく現物も一緒に見ます。区画を回りながら、荷主ごとに数と状態を確かめる。紙の上で引き継いで、実際とずれていたというのがいちばん困る形です。
長期に残っている品物についても、経緯を引き継ぎます。いつから、なぜ残っているのか、相手先とどこまで話しているのか。この経緯が残っていないと、後任は何も判断できません。連絡した記録を残しておく理由はここにあります。
新しい担当が決まったら、荷主にも伝えます。連絡先が変わることを知らせておくだけで、入出庫や返却の連絡がスムーズに届きます。
よくある質問
預り品は棚卸の対象になりますか
自社の在庫としては数えません。ただし、預かっているものが記録どおりにあるかを確かめる作業は必要です。自社の棚卸と同じ日に、別の集計として数える形が実務的です。会計上の扱いは経理部門や顧問の税理士に確認してください。
預り品が破損したときはどうしますか
見つけた時点で、相手に連絡します。写真と、いつ気づいたか、どういう状態かを記録します。費用の負担は契約によって変わるため、契約書を確認します。原因が保管の方法にあるなら、同じことが起きないよう置き方を見直します。
荷主が複数ある場合の分け方は
区画を荷主ごとに分けて、記録も分けます。同じ品番でも、荷主が違えば別の在庫です。混ざると、返すときにどちらのものか分からなくなります。現品の表示にも荷主の名前を入れます。
保管の費用はどう決めますか
契約で決まります。方式は、月極め、3期制、坪単位などがあります。入出庫の多い荷物では、方式によって金額が大きく変わります。しくみは倉庫の保管料と3期制にまとめています。無償で預かる場合も、場所の費用は発生していることを意識しておきます。
記録はどのくらい残しますか
契約や法令で保存の条件が定められている場合は、それに従います。営業倉庫では帳簿を備えることが求められており、寄託物の記録がその中心になります。返却が済んだあとも、一定期間は残しておくほうが、あとから問い合わせがあったときに答えられます。
預り品を自社の在庫と同じ棚に置いてしまっています
場所を分けるところから直します。区画を1つ決めて、そこへ集めます。一度に全部を移せない場合は、荷主ごとに順に移します。移すときに数と状態を確かめれば、棚卸を兼ねられます。現品の表示も、移すついでに貼ります。
相手先から突然の返却の依頼が来ます
返却の連絡を受けてから出荷するまでの時間を、契約で決めておくと段取りが組めます。「連絡から3営業日以内」といった形です。決めが無いと、当日の出荷を求められて、他の作業が止まります。場所と数を記録で持っていれば、集めるまでの時間は短くなります。
預かっている品物を動かしてよいですか
倉庫の中での移動は、通常は問題ありませんが、記録の棚番を必ず更新します。別の倉庫や拠点へ移す場合は、契約で認められているかを確認します。保管の場所が契約で指定されていることもあります。
預り品の数が相手先の記録と合いません
まず、お互いがどの時点で計上しているかを確かめます。こちらが受け取った日と、相手が出した日が違うと、月をまたぐぶんがずれます。次に、返却の記録を突き合わせます。返したのに相手の記録に反映されていないこともあります。件数が毎月同じくらいなら、原因は1つに絞れます。
預かった品物の期限が切れそうです
期限のある品物は、預かった時点で期限を記録し、近づいたら相手先に連絡します。期限が切れてから連絡すると、対応の選択肢が無くなります。30日前に知らせる形にしておくと、返却や入れ替えの相談ができます。期限の一覧は、自社の在庫と同じ方法で出せます。管理のしかたは先入れ先出しのやり方にまとめています。
まとめ
預り品は、棚にあっても自社のものではありません。売ることも捨てることもできず、保管の責任だけがあります。
管理の基本は、場所と記録の両方で分けることです。区画を分けて表示し、記録も自社の在庫と混ぜません。預かったときの状態を記録しておくと、返すときの行き違いを防げます。
そして、長く残っているものを半年に1回洗い出します。場所は使い続けているので、費用は発生しています。相手に連絡して、返すか続けるかを確かめるだけで、場所が空くことがあります。