出荷を間違えない実務2026.09.16 公開SA-04

輸送中の破損|記録と切り分けの手順

目次

輸送中の破損は、どこで壊れたかが分かりにくいところが厄介です。倉庫で梱包する前から傷んでいたのか、積み方が悪かったのか、輸送中の揺れなのか、降ろすときに落としたのか。切り分けができないと、対策も打てず、費用の負担の話も進みません。

この記事では、輸送中の破損を、起きる場所の分け方連絡を受けたときの動き記録の残し方切り分けのしかた減らす手当ての順に整理します。費用の負担は契約によって変わるため、運送の契約書で確認してください。

破損の状況を記録して残す様式が配られています。

どこで壊れるか

破損が起きる場所は、大きく5つに分かれます。保管中、ピッキングと梱包、積み込み、輸送中、降ろすときです。

保管中の破損は、棚から落ちた、フォークリフトが当たった、水濡れ、といった形です。倉庫の中で起きているので、気づけば出荷前に止められます。梱包の工程では、無理に箱へ入れた、緩衝材が足りない、といった原因があります。

積み込みでは、重い荷物を上に乗せた、隙間があって動いた、といった形です。輸送中は、振動と急ブレーキが主な原因になります。降ろすときは、落とした、引きずった、といった扱いの問題です。

同じ「輸送中の破損」という言葉でも、原因の場所が違えば手当てが違います。梱包を厚くしても、積み方が原因なら減りません。切り分けが先になります。

破損が起きる5つの場所保管中梱包のとき積み込み輸送中降ろすとき破損
破損が起きる5つの場所

連絡を受けたときの動き

相手先から破損の連絡が来たら、順番があります。まず、事実の確認と、代わりの品物の手配です。原因の追及はそのあとです。

聞くのは、どの品番がいくつ、どういう壊れ方か、外装に傷はあるか、送り状の番号は何か。外装に傷があるかどうかが、切り分けのいちばん大きな手がかりになります。外装が無傷で中身だけが壊れているなら、梱包の問題か、出す前から壊れていた可能性があります。

写真を送ってもらいます。外装、中身、送り状のラベル。この3枚があれば、あとから検証できます。相手先に「捨てずに置いておいてください」と伝えるのも忘れないようにします。処分されたあとでは、運送会社への申し出ができないことがあります。

そのうえで、代わりの品物をいつ届けられるかを伝えます。相手先が知りたいのは、原因より先に、いつ使えるようになるかです。

外装に傷があるかで切り分ける外装が潰れている輸送中か積み込み上に重い荷物が乗った同じ便の他の荷物も見る外装は無傷箱の中で動いた出す前から壊れていた梱包か保管を疑う
外装に傷があるかで切り分ける

記録に残す

破損の記録は、1件ごとに残します。件数が少ないうちは大した手間ではなく、溜まると原因の偏りが見えてきます。

残すのは、連絡を受けた日、出荷日と送り状の番号、相手先、品番と数量、壊れ方、外装の状態、写真、こちらの対応、費用の負担、推定した原因です。推定の原因は「不明」でも構いません。無理に埋めるより、分からなかったことを残すほうが後で役に立ちます。

この記録が溜まると、特定の品目、特定の配送先、特定の便に偏っているかどうかが分かります。偏りがあれば、そこが手当ての場所です。偏りが無く全体に散っているなら、梱包そのものの見直しになります。

記録は、返品の記録と分けて持ちます。破損は返品になることが多いので混ざりやすいのですが、見る目的が違います。返品は処理の進み具合を見るため、破損は原因の偏りを見るためです。返品の扱いは返品の処理手順にまとめています。

破損の記録に残す項目輸送破損記録表連絡日出荷日と送り状相手先品番と数量壊れ方外装の状態も写真外装・中身・伝票対応手配と費用の負担原因は不明でもよい偏りが手がかりにな捨てずに置いてもら
破損の記録に残す項目

切り分けのしかた

原因の場所を絞るには、いくつかの手がかりを組み合わせます。

外装の状態がいちばん大きな手がかりです。外装が潰れているなら、輸送中か積み込みです。外装が無傷で中身だけなら、梱包の中で動いたか、出す前から壊れていた可能性があります。

壊れ方の向きも見ます。角がつぶれているなら落下か衝突、全体が押しつぶされているなら上から重いものが乗った、片側だけなら横倒しです。写真があれば、あとからでも判断できます。

同じ便の他の荷物も見ます。1件だけなら扱いの問題、同じ便の複数が壊れていれば積み方か輸送の問題です。同じ品目が繰り返し壊れるなら、梱包の問題です。

出荷時の写真があれば、出る時点で無傷だったことが示せます。高額品や、過去にやり取りのあった相手先だけでも撮っておくと、切り分けが早く終わります。積み込みの記録の残し方は積み込みの順序にまとめています。

運送会社に伝えるとき

運送中の破損として申し出る場合、期限が決まっていることがあります。荷物を受け取ってから何日以内、という条件です。契約や約款で違うので、先に確認しておきます。連絡が遅れると、申し出そのものができなくなります。

倉庫の中で壊さない

輸送中の破損に目が行きますが、倉庫の中で壊れているぶんも少なくありません。出荷の直前に見つかれば止められますが、気づかずに出すと輸送中の破損として扱われます。

倉庫内で起きやすいのは、棚からの落下、フォークリフトの接触、段積みの潰れ、水濡れです。高い段に置いた荷物が落ちる、通路の角で爪が当たる、下の箱が重さで潰れる、雨の吹き込む場所に置いていた。どれも、置き方と動線の問題です。

手当ては決まっています。重い荷物を下の段に置く、落下防止のバーやネットを付ける、通路の角にミラーと徐行の表示を置く、段積みの上限を品目ごとに決める、水の入る場所に荷物を置かない。どれも費用がかからないか、かかっても一度で済みます。倉庫の安全と置き方は倉庫の安全対策にまとめています。

ラックにフォークリフトが当たったときは、荷物だけでなく棚そのものも傷んでいます。支柱の曲がりは見た目より強度に効くので、当たったらその場で報告する決まりにします。

倉庫の中で壊れる場所場所手当て棚からの落下重い物を下に。落下防止バーフォークの接触通路の角にミラーと徐行段積みの潰れ品目ごとに段数の上限水濡れ水の入る場所に置かない
倉庫の中で壊れる場所
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実際に使える様式が必要な方へ

『輸送破損記録表』の様式が、点検板グループの在庫板で配られています。そのまま使えるExcelです。

この様式をひらく

出す前に見つける

出荷検品で外観を見る項目を入れておくと、倉庫内で壊れたものを外に出さずに済みます。見るのは、潰れ、濡れ、破れの3つで足ります。開梱せずに分かる範囲です。

異常が見つかったら、その場で止めて、代わりの在庫に差し替えます。止めた件数を数えておくと、倉庫内で壊れている量が分かります。この数が多いなら、保管の置き方に手を入れる合図です。

出荷の直前ではなく、棚から取った時点で気づくほうが早く済みます。ピッキングの人に「おかしいと思ったら別のものを取る」と伝えておけば、そこで止まります。取り替えた現物を、判断のための置き場に集めるところまで決めておくと、記録につながります。

減らす手当て

切り分けができたら、その場所に手を入れます。

梱包が原因なら、その品目の緩衝材を見直します。角の保護を足す、隙間を埋める、箱のサイズを変える。全品目を厚くするのではなく、壊れた品目だけを直します。梱包のやり方は梱包のやり方にまとめています。

積み方が原因なら、重い荷物を下に、隙間を作らない、という基本に戻ります。段積みの上限を品目ごとに決めて掲示します。荷崩れの防ぎ方は荷崩れを防ぐにまとめています。

輸送中の振動が原因なら、パレットへの固定を強くする、緩衝材を足す、といった手当てになります。路面の状態や距離は変えられないので、荷物の側で守ることになります。

降ろすときの扱いが原因なら、相手先や運送会社と話す必要があります。記録と写真があれば、話が具体的になります。「丁寧に扱ってほしい」ではなく、「この3か月で同じ配送先から4件、すべて角の潰れです」と言えれば、相手も手を打てます。

原因の場所ごとに手当てが違う原因直すところ梱包その品目の緩衝材と箱積み方重い荷物を下。隙間を埋める輸送中の振動パレットへの固定降ろすとき相手先や運送会社と話す
原因の場所ごとに手当てが違う

破損した在庫の処理

壊れた品物は、在庫から抜きます。ここが抜けると、帳簿に残ったまま現物が無い状態になり、棚卸で差として出ます。

処理の順番は、破損の置き場に移す、記録する、在庫から数を引く、処分または修理の判断、処分した記録を残す、という流れです。「捨てる前に1行書く」を作業に入れるだけで、原因不明の減耗が目に見えて減ります。棚卸差異の調べ方は棚卸差異の原因と対策にまとめています。

破損の程度によっては、値引きして販売できることもあります。外装だけが潰れて中身に問題が無い場合です。判断する人と金額の線を決めておくと、現場が迷わずに進められます。判断が遅れると、置き場に残ったまま時間だけが経ちます。

仕入先から届いた時点で壊れていた場合は、入荷検品で見つけて、その場で連絡します。棚に入れてしまうと、どの段階で壊れたか分からなくなります。検品の組み方は検品のやり方にまとめています。

壊れたら在庫から抜く1移す破損の置き2記録品番と数と理由3引く在庫から4判断処分か値引きか
壊れたら在庫から抜く

費用の負担

破損の費用を誰が持つかは、契約と原因によって変わります。運送の契約書と約款を先に確認します。

倉庫での梱包に原因があればこちら、輸送中の事故なら運送会社、といった切り分けが一般的ですが、約款には限度額や免責の条件が定められていることが多く、全額が補償されるとは限りません。高額品を送るときは、事前に条件を確かめておきます。

保険をかける選択もあります。かける範囲と金額は、扱う品物の単価と、破損の頻度で決めます。記録から年間の破損金額を出しておくと、保険料と比べられます。

相手先との関係では、原因がどちらであっても、まず代わりの品物を届けるのが実務の形になります。費用の話は、そのあとに落ち着いて進めます。

破損の件数を月ごとに見る

1件ずつの対応に追われていると、全体が良くなっているのかが分かりません。月ごとの件数と金額を並べます。

件数だけだと、出荷が増えれば破損も増えるので、出荷件数に対する率でも見ます。金額は、1件の高額品で跳ねることがあるので、件数と両方を見ます。梱包を変えた月、積み方を変えた月に線を入れておくと、手当ての効果が読み取れます。

原因の内訳も並べます。梱包が原因、積み方が原因、輸送中、不明。不明の割合が高いなら、記録の取り方が足りていません。写真を残す、外装の状態を必ず聞く、といった形で、切り分けに使える情報を増やします。

数字は現場にも返します。「今月は破損ゼロでした」と共有するだけで、梱包の丁寧さが続きます。逆に、増えた月にその原因を一緒に見ると、次の手が現場から出てきます。

相手先ごとの受け取り方を知っておく

同じ荷物でも、届いた先の扱いで破損の起きやすさが変わります。フォークリフトがある倉庫と、手降ろしの現場では、荷物にかかる力がまったく違います。

相手先の受け取りの条件を、1枚の表にまとめておきます。荷降ろしの設備があるか、パレットで受けられるか、時間帯、置き場所。設備が無い相手先にパレットで出すと、その場で手降ろしになり、扱いが荒くなります。

この表は、梱包の決めごとにも使えます。手降ろしになる相手先には、1箱の重さを抑える、持ち手を作る、といった手当てが効きます。「相手先ごとに梱包を変える」と聞くと大変そうですが、条件の違う相手先は数えるほどしかないことがほとんどです。

新しい取引先の1回目は、届いたあとに状態を聞いておくと、次から合わせられます。

よくある質問

相手先が荷物を捨ててしまいました

破損の証拠が無くなるため、運送会社への申し出が難しくなることがあります。連絡を受けた最初の時点で、「捨てずに置いておいてください」と伝えることが大事です。写真だけでも残っていれば、社内の原因究明には使えます。

破損の連絡が出荷から何日も経って来ました

受け取ってすぐに開梱しない相手先では、発覚が遅れます。約款の申し出の期限を過ぎていることがあるので、まず契約と約款を確認します。今後のために、納品後すぐに開梱して確認してもらえるよう、相手先に依頼しておくという手もあります。

同じ品目ばかり壊れます

梱包か、その品目の置き方に原因があります。壊れ方の写真を並べて、同じ場所が壊れているかを見ます。同じ場所なら、そこを守る形に梱包を変えます。1品目だけの見直しなので、資材費への影響も小さく済みます。

出荷時の写真は全件撮るべきですか

全件は手間がかかりすぎます。高額品、初回の相手先、過去にやり取りのあった相手先に絞れば、実務が回る量になります。撮った写真は、出荷の番号で探せる形にしておかないと、必要なときに出てきません。

運送会社を変えれば減りますか

原因が輸送中にあると分かってから検討します。切り分けをせずに変えると、原因が倉庫側にあった場合は何も変わりません。記録で、特定の便や区間に偏っているかを確かめてからにします。

破損が起きたとき、まず誰に連絡しますか

社内では、出荷を担当した人と、責任者に伝えます。相手先への一次回答は、事実と代替品の手配だけにして、原因の説明は調べてからにします。その場で原因を推測して伝えると、あとで違っていたときに訂正することになります。運送会社への連絡は、約款の期限があるため、外装に傷がある場合は早めに入れます。

破損の記録はどのくらい残しますか

原因の偏りを見るには、1年から3年あると判断しやすくなります。運送会社や保険との話が続いている案件は、それが終わるまで残します。年間の破損金額を出すためにも、年度ごとにまとめておくと使いやすくなります。

破損の連絡が来たとき、謝るべきですか

原因が分からない段階でも、不便をかけたことへのお詫びと、代わりの手配は先に伝えます。原因の説明と、費用の負担の話は、調べたあとで構いません。この2つを混ぜると、原因がこちらに無かったときに話がこじれます。事実の確認、代替の手配、原因の調査、費用の話、という順に分けて進めます。

出荷前の外観の確認は、どこまで見ますか

開梱せずに分かる範囲で足ります。箱の潰れ、濡れた跡、破れ、テープの浮き。この4つを、棚から取るときと梱包の前に見ます。時間はほとんどかかりません。中身まで確かめるのは、過去に問題のあった品目や、高額品に絞ります。全品目を開けて確かめるのは、現実には続きません。

まとめ

輸送中の破損は、保管中、梱包、積み込み、輸送中、降ろすときの5つに分けて原因を探します。場所が違えば手当ても違うので、切り分けが先になります。

連絡を受けたら、事実の確認と代わりの品物の手配が先です。外装に傷があるか、壊れ方の向き、同じ便の他の荷物。この3つで、原因の場所をかなり絞れます。写真は必ず残してもらいます。

そして、記録を溜めることです。品目、配送先、便のどこかに偏りがあれば、そこが手当ての場所になります。偏りが見えれば、相手先や運送会社との話も具体的に進みます。

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