荷崩れを防ぐ|積み方と高さの決め方
目次
荷崩れは、倉庫のなかで起きれば人に当たり、輸送中に起きれば荷物が壊れます。どちらも重い結果につながるので、積み方の決めごとは、安全と品質の両方に効きます。
この記事では、荷崩れを、起きる場面、積み方の基本、高さの決め方、固定のしかた、気づいたときの動きの順に整理します。荷物の形と設備で最適な積み方は変わるため、自社の荷物に置き換えて読んでください。
荷崩れが起きる場面
荷崩れは、4つの場面で起きます。棚の上、パレットの上、輸送中、そして積み降ろしの最中です。
棚の上では、奥から押し出された荷物が落ちる、高い段の荷物が前へ滑る、という形があります。パレットの上では、段積みした荷物が横へ崩れます。輸送中は、急ブレーキとカーブで動きます。積み降ろしの最中は、フォークリフトの爪が当たる、急に持ち上げた、といった扱いが原因になります。
場面ごとに手当てが違うので、自社でどこが多いかを先に見ます。ヒヤリハットの記録があれば、そこから拾えます。無ければ、しばらく「崩れかけた」を紙に書き溜めると傾向が出ます。
積み方の基本
崩れない積み方には、共通する形があります。
重いものを下、軽いものを上にします。軽い箱の上に重い箱を乗せると、下が潰れて傾き、そこから崩れます。大きさの違う箱を混ぜるときも、大きいものを下にします。
段ごとに向きを変えて組むと、噛み合って安定します。同じ向きにそろえて積むと、面で滑ります。ただし、箱の強度によっては、向きを変えると角に荷重がかかることがあります。品目ごとに、どちらが安定するかを1回試して決めます。
パレットからはみ出さないことも大事です。はみ出した部分は支えが無く、ぶつかりやすく、そこから崩れます。箱のサイズを選ぶ段階で、パレットに収まる組み合わせを決めておくと、積むたびに考えずに済みます。
倉庫の棚での荷崩れ
棚に置いた荷物が崩れる形は、いくつかに分かれます。手前に滑り出る、奥から押し出される、段の途中が潰れて傾く、棚そのものが歪む。
手前に滑り出るのは、棚板が水平でない場合や、荷物が滑りやすい場合に起きます。滑り止めのシートを敷く、落下防止のバーを付けるといった手当てが効きます。奥から押し出されるのは、補充のときに奥へ押し込みすぎている形です。奥に仕切りを立てておけば、押し出されません。
段の途中が潰れるのは、下の箱が耐えられる重さを超えているためです。段数を減らすか、下に強い箱を置きます。棚そのものの歪みは、フォークリフトが当たったか、耐荷重を超えているかのどちらかです。支柱が曲がっている棚は、見た目より強度が落ちています。
棚の点検を月に1回入れておくと、これらは早く見つかります。支柱の曲がり、ボルトの緩み、棚板のたわみ、アンカーの浮き。通路を歩きながら見るだけで、5分で終わります。
フォークリフトの操作と荷崩れ
荷崩れの原因として見落とされやすいのが、機械の操作です。急な発進と停止、急旋回、フォークを上げたままの走行。どれも荷物に大きな力がかかります。
走行中はフォークを下げます。上げたまま走ると、重心が高くなって荷物が揺れます。旋回は減速してから行います。荷物を持ち上げるときと降ろすときは、ゆっくり動かします。「急がない」を決めごとにするのではなく、速度の上限と、フォークの高さを数字で決めます。
こうした決めごとは、作業計画に書き込んでおきます。法令で作成が求められる書類なので、そこに1行入れておけば、周知の形も整います。書き方はフォークリフトの作業計画にまとめています。
床の段差や傾斜も効きます。段差を越えるときの衝撃で荷物がずれます。直せる段差は直し、直せない場所は速度を落とすという手当てになります。
高さを決める
積み上げる高さは、品目ごとに上限を決めて、現場に掲示します。「安全な範囲で」という決め方は、忙しい日に守られません。
高さを決める材料は3つです。1つ目は、いちばん下の箱が耐えられる重さです。段ボールには強度の等級があり、上に乗る重さで潰れます。2つ目は、作業する人の手が届く範囲です。3つ目は、フォークリフトで運ぶときの視界と安定です。
上限は、数字で決めます。「5段まで」「1.5メートルまで」という形です。棚の柱に線を引いて、そこを超えないようにしている現場もあります。目で見て分かる形にすると、守られる率が上がります。
保管の棚に置く場合は、棚の耐荷重も見ます。棚板がたわんでいれば、すでに超えています。ラックの点検と合わせて見るのが効率的です。倉庫の安全の全体像は倉庫の安全対策にまとめています。
高く積むほど効率が良い、とは限らない
高く積めば場所は節約できますが、崩れる危険と、取り出しにくさが増えます。上の段から取るたびに脚立や機械が要るなら、その時間も費用です。保管の効率と、作業の効率の両方で見ます。
固定のしかた
積んだあとに動かないようにする方法は、いくつかあります。荷物の性格と、輸送の距離で選びます。
ストレッチフィルムで巻くのは、いちばん手軽な方法です。巻く回数と、上下の締め方で効き方が変わります。下のパレットまで一緒に巻き込むと、荷物とパレットが一体になって安定します。
バンドで締める方法は、重い荷物や、硬い荷物に向きます。締めすぎると箱が潰れるので、角当てを入れます。天面に板を乗せてから締めると、力が分散します。
滑り止めのシートを段の間に挟む方法もあります。フィルムやバンドを使わずに、摩擦だけで止める形です。繰り返し使えるので、費用は長い目で見ると下がります。
輸送中の固定は、荷台の中でも要ります。隙間を埋める、ベルトで固定する、仕切りを使う。荷台の中で動かない状態を作るのが目的です。積み込みの順序と方法は積み込みの順序にまとめています。
品目ごとの決めごとを1枚にする
積み方の決めごとは、品目ごとに違います。すべてを覚えるのは無理なので、1枚の表にして、作業する場所に貼ります。
書くのは、品番と品名、1パレットあたりの入り数、段数の上限、向きの組み方、固定の方法、注意点です。注意点の欄には、「上に他の荷物を乗せない」「立てて置かない」といった、その品目だけの決まりを書きます。
表は、扱う品目が多いほど価値が出ます。全品目を載せる必要はなく、よく出る20品目と、過去に崩れたことのある品目から始めます。新しい品目が増えたときに1行足していけば、自然に埋まります。
写真を併せて貼ると、さらに伝わります。文字で「3段、交互に組む」と書くより、正しく積んだ状態の写真1枚のほうが早く正確です。
記録して、繰り返しを見つける
荷崩れが起きたら、記録します。日付、場所、品目、どのくらいの高さから、原因の見立て、けがの有無。崩れかけを見つけて直した場合も、同じ紙に残します。
溜まると、偏りが見えます。同じ品目、同じ棚、同じ時間帯。偏りがあれば、そこが手当ての場所です。全体に散っているなら、積み方の決めごとそのものが現場に合っていません。
けがが無かった場合でも記録します。けがの有無ではなく、起きた事実を数えることが大事です。けがが出てから対策を始めると、その1件が重いものになります。
記録を現場に返すのも忘れないようにします。月に1回、件数と、手を打った内容を共有します。書いても何も起きないと分かると、次から誰も書きません。
崩れかけているのを見つける
完全に崩れる前に、兆しが出ていることがあります。傾いている、段がずれている、下の箱が潰れている、フィルムがたるんでいる。
倉庫を歩くときに、この4つを見る癖を付けます。見つけたら、その場で直すか、直せないなら周りに人を近づけないようにして、直せる人を呼びます。「危ないと思ったが、そのままにした」が事故につながります。
高い段のものが傾いている場合は、下から直そうとしないようにします。引き出した瞬間に落ちてきます。フォークリフトで一度降ろしてから直すのが安全です。降ろす前に、周りの人を離します。
見つけたことを記録しておくと、同じ場所や同じ品目で繰り返しているかが分かります。繰り返している場所は、積み方か、その棚の構造に原因があります。ヒヤリハットの集め方は倉庫の安全対策にまとめています。
誰でも同じ積み方になる形
積み方を人の技量に任せると、担当が変わった日に崩れます。写真を1枚貼るのが、いちばん早く伝わります。
品目ごとに、正しく積んだ状態の写真を撮って、作業する場所に貼ります。段数、向き、フィルムの巻き方が写っていれば、文字の説明より正確に伝わります。新しく入った人には、この写真を見せて1回やってもらいます。
パレット単位で出荷する品目は、1パレットあたりの入り数も決めておきます。半端な数のときにどう積むかも決めておくと、迷いません。半端な段は上に置いて、フィルムで多めに巻くという形が扱いやすくなります。
人の配置と荷崩れ
急いでいるときほど、積み方が雑になります。荷崩れが特定の時間帯に集中しているなら、原因は積み方ではなく人の配置です。
出荷が集中する夕方に、1人で積んでいれば、確認の余裕がありません。2人で積める時間帯には2人で、難しければ、その時間の荷物を前倒しして作っておきます。前日に積める便から前倒しするだけで、当日の圧が下がります。
新しく入った人に積ませるときは、最初の数回は経験のある人が見ます。「なんとなく安定しているように見える」状態と、実際に安定している状態は違います。フィルムの巻き方、向きの組み方は、見て覚えるほうが早く身に付きます。
体への負担も見ます。高い位置に重い箱を持ち上げる作業が続くと、姿勢が崩れ、積み方も雑になります。重い荷物は下の段に置く、リフターを使うといった手当ては、安全と品質の両方に効きます。
よくある質問
段ボールの強度はどう確かめますか
箱に表示がある場合は、そこから分かります。無ければ、仕入先に耐えられる重さを聞くのが確実です。実際に積んで、下の段が潰れないかを見る方法もあります。潰れ始めたら、その1つ下が上限です。
荷崩れが起きたときの対応は
まず人の安全を確保します。近づかない、下敷きになっていないかを確かめる、周りに知らせる。片づけは、荷物が安定してからです。急いで片づけようとして、二次災害が起きることがあります。片づけたあと、原因を記録に残します。
高さの上限を決めても守られません
数字だけを掲示しても、作業中に数えません。棚の柱に線を引く、床に印を付ける、そこまでの高さの治具を置くといった形で、見て分かるようにします。判断を要らなくするのが、守られる決めごとの条件になります。
フィルムを巻く回数はどう決めますか
輸送の距離と、荷物の重さで変わります。まず回数を決めて、その回数で崩れが起きないかを見ます。崩れが起きたら増やし、起きないまま続くようなら減らして試します。資材費と破損の両方で、つり合う点を探します。
パレットからはみ出す荷物があります
箱のサイズとパレットのサイズが合っていません。箱のサイズを変えるか、パレットのサイズを変えるか、積み方を変えるかの3つです。すぐに変えられない場合は、はみ出した面を通路側に向けない、角当てを付ける、といった手当てで当面をしのぎます。
荷崩れの多い品目があります
その品目だけを見直します。箱の強度、パレットへの収まり、段数、固定の方法。4つのうちどれか1つを変えて、1か月試します。一度に全部変えると、何が効いたか分かりません。仕入先に相談して、箱のサイズや強度を変えてもらえることもあります。
混載でいろいろな箱を積むときは
大きさの違う箱が混ざると、段が組めず、隙間もできます。大きい箱を下、小さい箱を上にして、隙間は緩衝材や空の箱で埋めます。種類が多い便では、パレットに載せずに手積みするほうが安定することもあります。荷姿ごとに積み方を決めておくと、その場で迷いません。
棚に置く荷物も同じ考え方でよいですか
基本は同じですが、棚では落下防止のバーやネットが使えます。奥から押し出される形を防ぐには、奥に仕切りを立てます。高い段ほど、落ちたときの被害が大きくなるので、軽いものを置くという原則を守ります。
荷崩れと保険・責任
荷崩れで荷物が壊れたとき、費用を誰が持つかは、起きた場所と契約で変わります。倉庫内なら自社、輸送中なら運送の契約、相手先の構内なら相手先との取り決めが関わります。
はっきりさせるには、記録が要ります。積んだ時点の写真、積み方の決めごと、誰が積んだか。決めごとどおりに積んだ記録があるかどうかで、話の進み方が変わります。
保険をかけている場合も、免責の条件や限度額が定められていることがあります。約款を確認しておくと、事故が起きたときに慌てません。高額な荷物を扱うときは、事前に条件を確かめます。
人が巻き込まれた場合は、費用の話より先に、労働災害としての対応が要ります。報告の要否と期限は事案によって変わるため、所轄の労働基準監督署に確認してください。
荷崩れ防止の道具はどれから入れますか
費用のかからない順に、滑り止めシート、角当て、ストレッチフィルムの巻き方の見直し、落下防止のバー、という順で試します。まず、いま使っている資材の使い方を変えるところからです。巻き方を変えるだけで止まることもあります。道具を買う前に、積み方の決めごとと高さの上限を先に決めます。決めごとが無いまま道具を入れても、守られ方がそろいません。
まとめ
荷崩れは、棚の上、パレットの上、輸送中、積み降ろしの最中の4つの場面で起きます。場面ごとに手当てが違うので、自社でどこが多いかを先に見ます。
積み方の基本は、重いものを下に、段ごとに向きを変えて組み、パレットからはみ出さないことです。高さは品目ごとに数字で決めて、柱の線や床の印で見えるようにします。
そして、崩れかけている兆しを見つけたら、その場で手を打つことです。傾き、段のずれ、下の箱の潰れ、フィルムのたるみ。この4つを見る癖が付くと、完全に崩れる前に止められます。