フォークリフトの作業計画|作り方と周知の手順
目次
フォークリフトの作業計画は、作っていない倉庫が多いのに、法令では作ることが求められている書類です。毎日同じ場所で同じ荷を扱っていると、「計画を立てるようなことは何もしていない」と感じますが、求められているのは工程表ではなく、走る道と作業のやり方を紙に決めておくことです。
この記事では、フォークリフトの作業計画を、何を示す書類か、中身の4つ、作り方、関係する人への周知、見直すきっかけの順に整理します。自社の作業に何が適用されるかは、機械と作業の内容で変わります。最終的には所轄の労働基準監督署にご確認ください。
フォークリフトの作業計画とは
労働安全衛生規則では、フォークリフトなどの車両系荷役運搬機械等を用いて作業を行うときについて、あらかじめ作業計画を定め、その計画に基づいて作業を行うことが求められています(第151条の3)。
計画は、その場所の状況、機械の種類と能力、荷の種類と形状などに適応したものであることが必要です。ひな形をそのまま使って中身が現場と合っていないと、適応していないことになります。
計画に示すもの
規則では、計画に示すものとして次の2つが挙げられています。
| 示すもの | 中身 |
|---|---|
| 運行経路 | どこを走るか。人の通る場所との関係 |
| 作業の方法 | 荷の積み降ろし、合図、速度、立入禁止の場所 |
そして、定めた計画は関係する労働者に周知することが求められています。作って引き出しにしまっただけでは、周知したことになりません。
中身は4つを押さえる
実務では、次の4つを埋めると形になります。どれも、その倉庫を見ないと書けないものです。
| 要素 | 書くこと |
|---|---|
| 作業場所の環境 | 広さ、通路の幅、床の状態、段差、照明、屋外か屋内か |
| 機械の仕様 | 機種(カウンター式・リーチ式)、最大荷重、動力 |
| 荷 | 種類、形状、重さ、パレットの大きさ、段積みの高さ |
| 運行経路と作業方法 | 走る道、速度、合図、立入禁止、荷の置き場 |
いちばん効くのは、平面図を1枚付けることです。通路、棚、出入口、人の歩く場所、フォークリフトの走る道を線で引きます。文字だけで「A通路を通ってB区画へ」と書いても、新しく入った人には伝わりません。
作り方
ゼロから作るときは、次の順で進めます。先に現場を歩いて、あとから紙にします。
- 平面図を用意する(手書きでよい。通路と棚の位置が分かれば足りる)
- フォークリフトが走る道を線で引く
- 人が歩く場所を別の線で引き、交わる場所に印を付ける
- 交わる場所の決めごとを書く(一時停止、ミラー、徐行)
- 荷の置き場と、荷役をする場所を書き入れる
- 機械と荷の条件を表にする
- 関係する人に説明して、掲示する
3と4がこの書類の中心です。フォークリフトと人が同じ場所にいることが、倉庫の重い災害のいちばん多い形なので、そこをどう分けるかを決めるのが計画の目的になります。安全の全体像は倉庫の安全対策にまとめています。
参考様式が公開されている
厚生労働省が、作業計画を作るときの参考書式を公開しています。ゼロから項目を考える必要はありません。参考書式をたたき台にして、自社の平面図と条件に差し替えるのが早道です。
経路を決めるときに見るところ
線を引く前に、倉庫を1周歩いて、危ないところに印を付けます。机の上では見つかりません。
| 見るところ | 何を決めるか |
|---|---|
| 出入口・シャッター | 内と外で見通しが変わる。一時停止にするか |
| 曲がり角 | ミラーを付けるか。徐行の表示を出すか |
| 人の作業台の近く | 通らない経路にできるか。柵で分けられるか |
| 通路の幅 | すれ違えるか。一方通行にするか |
| 床の段差・傾斜 | 荷を積んだまま通ってよいか |
| 屋外との境 | 雨で濡れる範囲。滑りやすい場所 |
すれ違えない幅の通路は、一方通行にすると決めごとが1つで済みます。棚番が歩く順に振ってあれば、リストの順に進むだけで自然に一方通行になります。棚番の付け方はロケーション管理のやり方にまとめています。
人の動線から先に引く
フォークリフトの経路から引くと、人の通る場所が残りものになります。先に人の道を決めて、そのあとに機械の道を引くと、交わる場所が少なくなります。倉庫のレイアウトを変えられるときは、この順で考えます。
荷の条件を書き入れる
同じ倉庫でも、荷によって危なさが変わります。扱う荷の条件を表にしておくと、新しい荷が入ったときに判断できます。
| 条件 | 書くこと |
|---|---|
| 重さ | いちばん重い荷。機械の最大荷重との関係 |
| 大きさ | パレットからはみ出すか。視界を塞ぐか |
| 高さ | 段積みの上限。走行時にマストを上げないこと |
| 形 | 丸物、長物、不定形。荷崩れのしやすさ |
| 中身 | 危険物、液体、割れ物 |
「視界を塞ぐ荷」は、その荷の名前まで書いておきます。後進で走行するか誘導者を付けるかを、その場で判断せずに済みます。
最大荷重との関係を書く
機械の最大荷重と、扱う荷の重さを並べて書きます。荷重の中心(荷を持つ位置)によって、実際に持てる重さは変わります。メーカーの示す荷重の表を計画に添えておくと、現場で確かめられます。
作業指揮者を決める
規則では、作業計画に基づいて作業の指揮を行う者を定めることが求められています。計画を作る人と、その日に指揮する人は別でも構いません。
作業指揮者がその場で見るのは、次のようなことです。
- 計画どおりの経路を走っているか
- 立入禁止にした場所に人が入っていないか
- 荷の積み方が決めた範囲に収まっているか
- 合図が決めたとおりに使われているか
「誰が止める人か」を決めておくのが要点です。危ないと思っても、止めてよい立場の人がいないと、誰も止められません。
周知のしかた
作った計画は、関係する人に伝わって初めて機能します。紙を配るだけでは読まれないので、形を決めます。
| 方法 | 向いている場面 |
|---|---|
| 通路の見える場所に掲示する | 常時。図があると効く |
| 朝礼で読み合わせる | 変更したとき |
| 新しく入った人に説明する | 入場のとき。歩いて見せる |
| 運送会社など外部の人に渡す | 出入りがある場所 |
外部の人への周知が抜けやすいところです。荷役の場所には運送会社の運転者が来ます。自社の人だけが知っている決めごとは、その場では守られません。1枚の図にして、受付で渡す形にすると伝わります。
掲示は図を大きく
文字を小さく詰めた計画書を貼っても読まれません。平面図を大きくして、決めごとは3つか4つに絞って書きます。詳しい条件は本体の書類に置いておき、掲示は図と要点だけにします。
見直すきっかけ
一度作って終わりにすると、現場と合わなくなります。次のときに見直します。
| きっかけ | 何が変わるか |
|---|---|
| 棚のレイアウトを変えた | 経路が変わる |
| 機械を入れ替えた | 能力と大きさが変わる |
| 扱う荷が変わった | 重さ、高さ、荷崩れのしやすさ |
| 人の動線が変わった | 交わる場所が変わる |
| 災害やヒヤリハットが起きた | その場所の決めごとを足す |
| 出入りする業者が変わった | 周知のやり直し |
ヒヤリハットが出た場所は、計画のどこかが現場と合っていないことが多くあります。報告が上がったら、計画の図にその場所を印で入れて、決めごとを1つ足します。
計画と一緒に効いてくる決まり
作業計画のほかにも、フォークリフトの作業については規則でいくつかの定めがあります。計画に書き込んでおくと、現場で1か所を見れば済みます。
| 内容 | 計画に書くこと |
|---|---|
| 制限速度 | 構内の速度を決めて書く |
| 転落・転倒の防止 | 路肩、段差、傾斜のある場所での決めごと |
| 立入禁止 | 荷役をしている範囲に人を入れない |
| 荷の積載 | 最大荷重を超えない。視界を塞がない積み方 |
| 運転位置から離れるとき | フォークを下ろし、原動機を止め、ブレーキをかける |
| 主たる用途以外の使用 | 人を乗せる、人をつり上げるといった使い方をしない |
最後の1つは、実際の災害でくり返し出てくる形です。パレットに人を乗せて高いところの作業をする、という使い方をしないことを、計画にも1行入れておきます。
守られる計画にする
計画は、書いた量ではなく守られた量で効きます。現場で残る形には共通点があります。
| 守られる | 守られない |
|---|---|
| 決めごとが5つ以内 | 項目が2枚にわたる |
| 図で示してある | 文字だけで経路を説明している |
| 判断が要らない(常に・全員) | 「必要に応じて」が付く |
| 現場の人が作成に関わった | 上から配られた |
| 守れない場所は先に直した | 守れない前提のまま貼ってある |
「必要に応じて徐行」と書いた瞬間に、忙しい日は必要ではなくなります。例外を作るなら、例外の条件まで書き切ります。
守れない決めごとを貼らない
通路の幅が足りないのに「すれ違うときは徐行」と書いても守れません。先に置き場を移す、一方通行にする、時間帯を分けるといった手当てをして、そのうえで計画に書きます。守れない決めごとが1つあると、他の決めごとも軽く扱われます。
監督署や荷主に見せる場面
作業計画は、外から確認を求められることがある書類です。そのときに出せる形にしておきます。
- 本体(条件の表と平面図)
- 周知の記録(説明した日と参加者)
- 改訂の履歴(いつ、何を変えたか)
改訂の履歴が1行ずつ残っている計画は、運用されていることがそのまま伝わります。逆に、作成日が3年前のまま1度も直っていない計画は、現場と合っているかを疑われます。
倉庫管理主任者の仕事とも重なる
営業倉庫では、労働災害の防止が倉庫管理主任者の業務に含まれています。作業計画は、その仕事の中身そのものになります。役割と記録の持ち方は倉庫管理主任者の仕事にまとめています。
よくある質問
毎日同じ作業でも、作業計画は要りますか
作業のたびに書き直す必要は無く、定常の作業については1つ作って、変わったときに見直すという運用にしている現場が一般的です。ただし、扱う荷や場所がその日だけ変わる作業(大きな荷が入る、屋外で荷役する等)は、その条件に合うものが要ります。判断に迷う場合は、所轄の労働基準監督署に確認してください。
誰が作るのですか
法令上は事業者が定めるものです。実務では、その倉庫の作業を分かっている人(現場責任者や倉庫管理主任者)が作り、上長が確認する形が多くなります。現場を知らない人が作ると、経路が現実と合わず、守られない計画になります。
様式に決まった形はありますか
法令で様式そのものが定められているわけではありません。厚生労働省が参考書式を公開しているので、それをたたき台にできます。大事なのは、運行経路と作業の方法が示されていること、そして自社の条件に適応していることです。
平面図が無い場合はどうしますか
手書きで十分です。通路、棚、出入口、荷役の場所が分かる程度の図があれば使えます。方眼紙に書いて写真を撮り、印刷して掲示している現場もあります。きれいな図面を作ろうとして着手が遅れるより、手書きで1枚作るほうが先に進みます。
作業指揮者は資格が要りますか
作業指揮者そのものに講習の修了が求められているわけではありませんが、作業と機械を分かっている人を選ぶことが前提になります。運転する資格とは別の役割なので、指揮者がフォークリフトに乗る必要はありません。人選と役割は社内で決めておきます。
構内に複数の建物がある場合は1つにまとめますか
建物ごと、区画ごとに条件が違うなら、分けたほうが現場で使えます。1枚にまとめると図が小さくなり、掲示しても読めません。共通の決めごと(速度、合図、立入禁止の考え方)を1枚にして、平面図だけを建物ごとに分ける、という組み方が扱いやすくなります。
荷主の倉庫で作業する場合はどちらが作りますか
その場所の状況を知っている側と、作業を行う側の両方が関わります。契約や現場の取り決めによって役割が変わるため、着手の前に確認します。少なくとも、自社の作業者に周知する部分は自社の責任として残ります。判断に迷う場合は、所轄の労働基準監督署に確認してください。
夜間や少人数の時間帯も同じ計画でよいですか
人が少ない時間は、見ている人がいないという点で条件が変わります。誘導者を付けられない、倒れても気づかれない、といった違いが出るので、その時間帯の決めごとを別に1行足しておくと実態に合います。単独での荷役を避ける、高い段の作業をしない、といった形です。
周知したことを、どう残しますか
朝礼や説明の日付と、参加した人の名前を残しておきます。掲示した日、改訂した日も書いておくと、いつの版が現場に貼られているかが分かります。改訂のたびに古い掲示を回収しないと、2つの版が同時に貼られている状態になります。
計画を作ったら、点検表はもう要りませんか
別のものです。作業計画は「どう作業するか」、点検表は「機械が使える状態か」を見ています。どちらが欠けても、もう一方では埋められません。作業開始前の点検と作業計画は、朝の同じ流れの中に置くと両方が回ります。点検の種類はフォークリフトの点検義務は3種類にまとめています。
作業計画は何年残しますか
規則で保存の年数が定められているものではありませんが、現に使っている版が現場にあることと、改訂の履歴が残っていることが実務では大事になります。事故が起きたときに、その時点でどう定めていたかを示せる形にしておきます。改訂のたびに古い版を1部残しておく運用が扱いやすいです。
まとめ
フォークリフトの作業計画は、運行経路と作業の方法を、その倉庫の条件に合わせて定めておく書類です。工程表ではなく、走る道と、やり方の決めごとを紙にするものです。
中身は、作業場所の環境、機械の仕様、荷、運行経路と作業方法の4つです。平面図を1枚付けて、フォークリフトの道と人の歩く道を線で分け、交わる場所の決めごとを書くところが中心になります。
そして、作ったら周知するところまでが1組です。外部から来る運転者にも渡し、レイアウトや荷が変わったら見直す。ヒヤリハットが出た場所は、計画のどこかが現場と合っていない合図として扱います。