工具の貸出管理|戻らない分を無くす台帳
目次
工具や備品の貸出は、「誰かが持っている」で終わりやすい管理です。必要になったときに見つからず、探す時間がかかり、見つからないまま買い足す。これを繰り返すと、同じ工具が何本もあるのに、いつも足りないという状態になります。
この記事では、工具の貸出を、管理が必要な理由、台帳の作り方、返却を促す形、紛失と破損の扱い、定期の棚卸の順に整理します。扱う工具と人数で最適な形は変わるため、自社の規模に置き換えて読んでください。
なぜ管理が要るか
工具の貸出を管理する理由は、3つあります。
1つ目は、探す時間を無くすことです。どこにあるか分かっていれば、借りに行くか、持っている人に声をかけるだけで済みます。分からないと、倉庫中を探すことになります。この時間は、毎回は短くても、積み上がります。
2つ目は、買い足しを減らすことです。見つからないから買う、を繰り返すと、同じものが増えます。台帳があれば、本当に足りないのか、どこかにあるのかが分かります。
3つ目は、点検の必要なものを追えることです。電動工具や、測定器のように、点検や校正が要るものがあります。誰が持っているか分からないと、点検の対象を集められません。
台帳の作り方
台帳は、貸したときと返ったときに1行ずつ書く形が基本です。
持つ列は、管理番号、工具の名前、貸した日、借りた人、使う場所や用途、返却の予定日、返った日、状態です。管理番号を付けておくと、同じ種類の工具が複数あっても区別できます。番号は、工具本体にも刻印かシールで貼ります。
返った日の欄が空いている行が、いま外に出ているものです。この欄を見れば、貸出中の一覧がそのまま出ます。予定日を過ぎている行に色を付けておくと、催促の対象が分かります。
工具そのものの一覧も、別に持ちます。管理番号、名前、購入日、点検の周期、前回の点検日、保管の場所。貸出の記録と、工具の台帳は分けて持つと、それぞれが見やすくなります。
置き場の作り方
工具の管理は、台帳より先に置き場で決まります。戻す場所が決まっていて、見て分かるなら、記録が無くてもかなり回ります。
壁に板を掛けて、工具の形を描いておく方法があります。戻す位置が絵で分かるので、迷いません。空いている形を見れば、何が出ているかも分かります。棚に入れる場合は、区画を仕切って名前を貼ります。
よく使うものを手前に、たまに使うものを奥に置きます。在庫の置き方と同じ考え方です。使う頻度で場所を決めると、取り出しも戻しも速くなります。
工具の置き場は、作業する場所の近くに作ります。遠いと、借りに行くのも戻すのも面倒になり、手元に置きっぱなしになります。複数の場所で使うなら、小分けの置き場を作る形もあります。その場合は、どこに何があるかを台帳に持ちます。
置き場の鍵をどうするかも決めます。高価な工具は施錠し、日常的に使うものは開けておくという分け方が実用的です。全部を施錠すると、鍵を持っている人が休んだ日に作業が止まります。
消耗品と工具を分ける
刃、砥石、テープ、電池のような消耗品は、工具とは別に管理します。貸し借りではなく、減っていくものだからです。
消耗品は、在庫として持ちます。数を数えて、発注点を決めて、減ったら補充する。工具の台帳に混ぜると、貸出の記録が消耗品で埋まります。在庫の管理のしかたは在庫管理表の作り方にまとめています。
消耗品が切れると、工具があっても作業ができません。切れやすいものの発注点だけは、必ず決めておきます。電池のように、使うまで残量が分からないものは、予備を決めた数だけ常に置いておく形にします。
返却を促す形
台帳を作っても、返ってこなければ意味がありません。返しやすい形を作るのが、催促より効きます。
置き場を、作業の動線に置きます。返すために事務所まで戻る形だと、後回しになります。工具の置き場を、出入口の近くか、作業する場所の近くに作ります。
置き場に、何がどこに戻るかを表示します。壁に工具の形を描いておく、棚に名前を貼る。戻す場所が見て分かると、戻す動作が迷いません。空いている場所があれば、何が出ているかも見て分かります。
返却の予定日を決めます。「終わったら返す」ではなく、「今日中」「今週中」と決めておくと、催促の基準ができます。長く借りるものは、期限を延ばす手続きを作ります。延長を申し出る形にしておけば、忘れているのか使っているのかが分かります。
そして、返ってこない状態が続いたら、個人を責める前に形を見ます。戻す場所が遠い、表示が無い、そもそも借りた記録が無い。このどれかが原因になっていることがほとんどです。
現場へ持ち出すとき
倉庫の中だけでなく、現場や別の拠点へ工具を持ち出すことがあります。持ち出しは、貸出よりも戻りにくくなります。
持ち出す先と、戻す予定日を台帳に書きます。行き先が書いてあれば、戻らないときに連絡できます。持ち出す人が複数の現場を回る場合は、最終的に戻る日を書きます。
持ち出しの多い現場では、現場ごとに常備するほうが結果として早いこともあります。毎回持ち出しているものは、その現場に置いてしまい、台帳では「その現場に常備」として持ちます。持ち出しの記録を集計すると、常備すべきものが見つかります。
車に積みっぱなしになるものも出ます。車ごとに、積んでいる工具の一覧を1枚持つと、車を見ればそろっているかが分かります。車が変わるときや、人が変わるときに、この一覧で引き継ぎます。
点検が要る工具
電動工具や、脚立、測定器のように、点検や定期の確認が要るものがあります。貸出の管理と点検の管理は、つなげておきます。
電動工具は、使う前にコードの傷み、プラグの状態、回転部の異常を見ます。貸し出すときに、その場で一緒に見る形にすると、点検の頻度が上がります。返ってきたときにも見れば、使用中の破損に気づけます。
点検の周期があるものは、工具の台帳に前回の点検日と次回の期限を持ちます。期限の近いものを貸し出さないか、貸し出す前に点検する形にします。期限切れのまま外に出ていると、点検の対象を集められません。
脚立やはしごも、倉庫でよく使う道具です。ぐらつき、開き止めの状態、脚のゴムの摩耗。高いところで使うものなので、点検の抜けが重い結果につながります。
紛失と破損の扱い
無くなったり壊れたりしたときの扱いを、先に決めておきます。そのつど決めると、人によって扱いが変わります。
壊れた場合は、まず報告してもらう形にします。報告すると怒られると思われると、黙って戻されます。壊れたまま戻された工具を、次の人が使うのがいちばん危険な形です。報告を責めない運用にします。
紛失した場合は、台帳から最後に借りた人と日付をたどります。その人を責めるためではなく、どこで無くなったかを追うためです。現場に置き忘れている、他の荷物に紛れている、といったことがよくあります。
弁償の扱いは、社内の取り決めによります。決めが無いと、そのつど揉めます。高額な工具については、扱いを先に決めておくほうが、借りる側も安心して使えます。
壊れた工具は、修理するか処分するかを決めて、台帳から外します。使えないものが置き場に残っていると、誰かが持ち出します。
買うか、借りるか
年に数回しか使わない工具は、買わずに借りるという選択もあります。使う頻度と、買った場合の保管の手間で決めます。
貸出の記録があると、この判断ができます。1年でその工具が何回借りられたかを数えれば、必要性が数字で分かります。年に1回しか使われていない工具が、置き場の一等地を占めていることがあります。
逆に、いつも取り合いになっている工具は、買い足す価値があります。借りようとして貸出中だった回数を記録しておくと、足りていないことが示せます。「無かったから他の作業をした」という時間も、実は費用です。
高価な工具は、リースやレンタルの条件も比べます。点検や修理が含まれるかどうかで、総額が変わります。比べ方は見積比較表の作り方にまとめています。
定期の棚卸
貸出の台帳があっても、記録に残らない持ち出しは起きます。年に1回か半年に1回、実物を数えます。
台帳の「返った日が空の行」と、実際に置き場にあるものを突き合わせます。合わない分が、記録されずに持ち出されたものです。どの工具が合わないかが分かれば、その工具の管理を厚くできます。
棚卸のついでに、状態も見ます。刃こぼれ、摩耗、電池の劣化。使わないまま置いてあるものが、いざというときに使えないという形を防げます。
在庫の棚卸と同じ日にやると、忘れずに回せます。工具も在庫の一種として扱えば、管理の仕組みを別に作らずに済みます。棚卸の進め方は棚卸のやり方にまとめています。
引き継ぎのときに効く
担当が代わるとき、工具の管理は引き継ぎの中でも落ちやすい部分です。「あの工具はあの人が持っている」が、頭の中にしかないためです。
台帳があれば、引き継ぎはその1枚で済みます。いま外に出ているもの、点検の期限が近いもの、修理に出しているもの。現物を一緒に確かめながら渡すと、抜けが出ません。
辞める人が持っている工具も、台帳から分かります。返却の対象を一覧にして、最終日までに戻してもらいます。辞めたあとに気づくと、連絡しづらくなります。
人が変わったあとの最初の棚卸は、少し丁寧にやります。引き継ぎの時点で合っていたかを確かめておけば、そのあとに出た差の原因が絞れます。
誰が管理するか
工具の管理は、使う人と管理する人が同じだと続きません。使う人は使うことに集中していて、記録は後回しになります。
管理する人を1人決めます。専任である必要はなく、週に15分、台帳を見て、期限切れと未返却を確認するだけで足ります。この15分があるかどうかで、1年後の状態が変わります。
現場からの申し出を受ける口も、その人にします。壊れた、無くなった、足りない。言いに行く先が決まっていると、報告が上がります。誰に言えばよいか分からない状態だと、黙って済ませる形になります。
管理する人が休むこともあるので、代わりの人も決めておきます。台帳の場所と見方だけ共有しておけば、その日の貸出は回ります。
よくある質問
管理番号はどう振りますか
種類ごとに記号を決めて、通し番号を足す形が分かりやすくなります。工具の本体に、消えにくい方法で表示します。刻印、耐久性のあるシール、色のテープなど、使う環境に合わせて選びます。屋外で使うものは、シールが剥がれやすいので注意します。
全部の工具を管理する必要がありますか
金額の大きいもの、点検が要るもの、無くなると作業が止まるものから始めます。ドライバー1本まで台帳に載せると、管理そのものが仕事になります。まず10点から20点に絞って始めて、必要に応じて広げます。
貸出の記録を書いてくれません
書く場所が遠い、書く項目が多い、というのが理由になっていることが多くあります。置き場に用紙とペンを置いて、3項目だけ書く形にすると続きます。日付、名前、工具の番号。これで足ります。
個人の工具と会社の工具が混ざります
管理番号や色で見分けが付く形にします。個人の工具に会社の番号を付けない、会社のものには必ず番号を付ける。混ざると、持ち帰りと紛失の区別が付かなくなります。個人の工具を業務で使う場合の扱いも、社内で決めておきます。
電動工具の点検は誰が行いますか
日常の確認は、使う人が使う前に行います。定期の点検は、担当を決めて台帳と一緒に回します。点検の内容と周期は、製品の説明やメーカーの案内を確認してください。作業によっては、法令で定められた点検が必要なものもあります。
工具が壊れて作業が止まりました
よく使う工具は、予備を1つ持っておくと止まりません。全部に予備を持つ必要はなく、止まると困るものだけです。どれが該当するかは、壊れたときに作業が止まった経験から選べます。修理に出している間の代替も、同じ考え方で用意します。
貸出の管理をシステムにすべきですか
点数が数十なら、紙か表計算で足ります。数百点を超えて、複数の拠点で貸し借りするようになると、道具の検討に入ります。まず紙で1年運用してみて、どこが重いかを見てから決めると、選ぶ基準がはっきりします。
台帳を作る時間がありません
いま置き場にある工具を、1回書き出すところから始めます。30分もあれば、主なものは書き出せます。貸出の記録は、そのあと借りるときに1行ずつ増えていくので、まとめて作業する必要はありません。
工具が壊れたまま戻ってきます
報告しにくい空気があると、黙って戻されます。返すときに一緒に状態を見る形にすると、その場で分かります。返却の受付を1か所にして、受け取る人が見る。手間は数秒です。壊れた報告を責めない運用にしておくことが、いちばん効きます。
工具の点検の記録は何年残しますか
法令で点検や記録が定められている機器については、その定めに従います。それ以外は、社内で決めて構いません。実務では、次の点検と比べられるよう1年から3年残している現場が多くあります。事故が起きたときに、点検していたことを示せる形にしておきます。
拠点が複数あって、工具を融通し合っています
拠点ごとに台帳を持ち、移動したときに「どの拠点へ」を書きます。移動の記録が無いと、どちらの拠点にもあるはずのものが、どちらにも無いという状態になります。年に1回は、拠点をまたいで突き合わせる日を作ると、迷子になっている工具が見つかります。
まとめ
工具の貸出を管理する理由は、探す時間を無くすこと、無駄な買い足しを減らすこと、点検が要るものを追えることの3つです。
台帳は、貸したときと返ったときに1行ずつ書く形で足ります。返った日の欄が空いている行が、いま外に出ているものです。これが見えるだけで、探す時間がほとんど消えます。
そして、返ってこないときは、個人を責める前に形を見ます。戻す場所が遠い、表示が無い、借りた記録が無い。このどれかを直すほうが、催促より早く効きます。