見積比較表の作り方|倉庫と物流の相見積
目次
見積比較表は、3社から見積りを取ったあとに作るものだと思われがちですが、効き方が大きいのは取る前です。渡す条件がそろっていないと、返ってきた金額はそもそも比べられません。安い見積りが安いのではなく、入っていない項目があるという形が、倉庫と物流ではよく起きます。
この記事では、見積比較表を、取る前にそろえること、比べる項目、表の作り方、金額以外の見方、選んだ理由の残し方の順に整理します。契約の条件は取引によって変わるため、最終的な判断は契約書の内容で確認してください。
見積比較表とは何か
見積比較表は、複数の相手から取った見積りを、同じ項目で横に並べた表です。目的は安いところを選ぶことではなく、同じものを比べている状態を作ることにあります。
比較表が無いと、次のことが起きます。
- 合計金額だけを見て選び、あとから追加の費用が出る
- 相手ごとに項目の粒度が違い、何が入っているか分からない
- 社内で説明できず、決めるまでに時間がかかる
「一式」と書かれた見積りが1社でもあると、その時点で比べられません。内訳を出してもらうところからが比較の始まりです。
取る前に条件をそろえる
いちばん効くのはここです。同じ条件を書いた紙を、全社に同じものとして渡します。
| 渡すもの | 中身 |
|---|---|
| 扱う量 | 品目数、在庫量、入出庫の回数と行数 |
| 荷姿 | パレット、ケース、バラ。1箱の大きさと重さ |
| 温度帯 | 常温、冷蔵、冷凍 |
| 作業の範囲 | 入荷検品、棚入れ、ピッキング、梱包、出荷、返品対応 |
| 波の大きさ | 繁忙期の倍率と時期 |
| 求める納期 | 当日出荷の締め時刻 |
| 見積りの期限 | いつまでに返してほしいか |
繁忙期の倍率を伝えていないと、平常時の金額だけが返ってきます。11月から12月が2倍になる荷物なら、そう書きます。あとから「その量は入らない」となると、契約し直しになります。
同じ紙を渡すのが要点
口頭で説明すると、相手ごとに聞き取った内容が変わります。1枚の紙にして同じものを渡すと、返ってくる見積りの前提がそろいます。この紙は、次に取るときにもそのまま使えます。
倉庫と物流で比べる項目
倉庫の委託先を比べるときは、費目が多いので取りこぼしやすくなります。次の項目を表の左の列に並べておきます。
| 費目 | 見るところ |
|---|---|
| 保管料 | 方式(3期制か月極か)、単位(個・パレット・坪) |
| 最低保管料 | 在庫が少ない月でもかかる下限 |
| 入庫料・荷役料 | 荷降ろしと棚入れ |
| 出庫料・ピッキング料 | 行数あたりか、個数あたりか |
| 梱包・資材費 | 段ボールやテープを誰が用意するか |
| 流通加工 | ラベル貼り、詰め合わせ、値札 |
| 配送料 | 地域別。個口あたりか、重量か |
| システム利用料 | 在庫を見る画面の料金。初期費用と月額 |
| 初期費用 | 立ち上げ、マスタ登録、棚の準備 |
| 契約の条件 | 期間、解約の申し出の期限、値上げの扱い |
保管料の方式がそろっていないと、合計だけでは判断できません。3期制は入出庫が多いほど積数が増えるため、動きの速い荷物では月極より高くなることがあります。しくみは倉庫の保管料と3期制にまとめています。
1か月の見込み金額に換算する
単価を並べても比べられません。自社の実績を当てはめて、1か月いくらになるかを計算してもらいます。
- 直近3か月の実績を出す(在庫量、入庫の回数と量、出庫の行数)
- その数字を条件の紙に書いて渡す
- 各社に「この条件なら1か月いくらか」を出してもらう
- 比較表には、単価と月額の両方を入れる
3が抜けると、単価表を3枚もらって終わりになります。単価が安くても、自社の動き方では高くつくことがあります。逆も起きます。
繁忙期の月も計算する
平常月だけでなく、いちばん量の多い月の見込みも出してもらいます。ここで差が開くことがあります。保管の場所が足りなくなる相手先は、その月だけ追加の費用が出ることがあります。
比較表の作り方
表の形は単純です。左に項目、右に各社を横に並べます。
| 列 | 中身 |
|---|---|
| 項目 | 費目。こちらが決めた順に並べる |
| 単位 | 個、パレット、行、個口 |
| 数量 | 自社の実績から当てはめた数 |
| A社・B社・C社 | 単価と金額 |
| 差額 | 最安との差 |
| 備考 | 条件の違い、含まれていないもの |
項目の並びは、こちらが決めます。相手の見積書の順に並べると、相手ごとに行がずれて比べられません。自分の表に転記する手間はかかりますが、そこが比較の作業そのものです。
備考の欄が判断を分ける
金額が同じでも、「資材費は別」「初回のマスタ登録は別」といった条件が入っていれば、実際の負担は変わります。備考の欄に書き出しておくと、あとで見返したときに理由が分かります。
見積りを依頼するときの文面
長い文章は要りません。条件の紙を添えて、次の4つを書けば足ります。
- 何の見積りが欲しいか(保管と出荷の委託、フォークリフトのリース、など)
- 条件は添付のとおり、と書く
- いつまでに返してほしいか
- 相見積であること
3の期限を書かないと、返ってくる時期がバラバラになります。そろわないと比べられないので、2週間なら2週間と書きます。急ぐ場合は、その理由も添えると調整してもらえることがあります。
質問が来たら、全社に同じ回答を送る
1社からの質問に答えた内容は、他社にも同じものを送ります。片方だけが詳しい条件を知っている状態だと、返ってくる見積りの前提がずれます。手間はかかりませんが、比較の公平さがここで決まります。
金額以外に見るところ
安いところを選んで失敗する形は、だいたい決まっています。金額のほかに4つ見ます。
| 軸 | 見るところ |
|---|---|
| 対応の範囲 | 返品、急ぎの出荷、流通加工に応じられるか |
| 締めの時刻 | 何時までの受注を当日出荷できるか |
| 立地 | 荷主や配送先との距離。運賃に効く |
| 実績と体制 | 同じような荷物の経験、担当者が付くか |
締めの時刻は、あとから効いてきます。15時締めと17時締めでは、受けられる注文の量が変わります。金額の差より、こちらのほうが売上に響くことがあります。
見学に行く
数字で並べたあと、候補の倉庫を実際に見に行くと分かることがあります。通路の片付き方、棚の表示、フォークリフトと人の分け方。現場の状態は、そのまま作業の精度に出ます。誤出荷の起きにくさは、見れば見当が付きます。
選んだ理由を残す
決めたら、なぜそこにしたかを1行書いて、比較表と一緒に残します。
- 次に取るときの土台になる(前回の条件と金額が分かる)
- 社内で説明するときにそのまま使える
- 途中で担当が代わっても、経緯が分かる
「いちばん安かったから」だけだと、1年後に見返したときに判断の材料が残りません。締めの時刻が1時間遅い、返品対応が入っている、といった理由まで書いておきます。
断る相手にも連絡する
見積りを出してもらった相手には、選ばなかったことを伝えます。次に頼むときの関係が変わります。理由まで詳しく伝える必要はありませんが、返事が無いまま終わるのは避けます。
倉庫の委託以外でも同じ形で使える
比較表の作り方は、相手が変わっても同じです。倉庫で相見積を取る場面は、委託先だけではありません。
| 場面 | そろえる条件の例 |
|---|---|
| フォークリフトの購入・リース | 機種、最大荷重、稼働時間、点検と検査が含まれるか |
| 棚・ラックの導入 | 間口の数、耐荷重、設置の工事、既存棚の撤去 |
| 資材(段ボール・ストレッチ) | 数量、納品の頻度、保管の場所 |
| 人材の派遣 | 時間帯、人数、必要な資格、繁忙期の増員 |
| システム | 初期費用、月額、データの移行、解約時のデータ |
フォークリフトのリースでは、年次の特定自主検査が料金に含まれるかどうかで金額が変わります。含まれていない見積りのほうが安く見えるので、比較表の項目に入れておきます。検査の扱いはフォークリフトの特定自主検査にまとめています。
資格を持つ人が必要な作業は、その条件も書く
派遣で人を頼むときは、フォークリフトの資格の区分まで書きます。「フォークリフトができる人」では、特別教育だけの人が来ることがあります。最大荷重を書いて、必要な区分を明記します。
比較表を使い回す
一度作った表は、次に取るときにそのまま使えます。項目の並びと、自社の実績の当てはめ方を残しておきます。
残しておくのは3つです。
| 残すもの | 使い道 |
|---|---|
| 項目の並び(空の表) | 次回はそのまま配れる |
| 前回の条件の紙 | 量だけ書き換えれば済む |
| 前回の金額と選んだ理由 | 値上げの妥当性を測れる |
前回の金額が残っていると、値上げの話が来たときに比べられます。「量が1.3倍になっているのに単価が同じ」なのか、「量は同じで単価だけ上がった」のかで、話の進め方が変わります。
表計算で作るときのコツ
紙でも作れますが、差額の計算と並べ替えが要るので表計算のほうが早く終わります。
| やること | 方法 |
|---|---|
| 最安を出す | =MIN(各社の金額の範囲) |
| 最安との差 | 各社の金額から最安を引く |
| 合計を出す | 費目の列を縦に合計する |
| 抜けを見つける | 空欄に色を付ける条件付き書式 |
空欄に色を付けておくと、出してもらえていない費目がひと目で分かります。合計だけを見ていると、空欄のまま安く見えている列に気づけません。
合計は「月額」と「年額」の両方を出す
初期費用は1回だけ、月額は12回。年額に直すと、初期費用の差が薄まります。逆に、1年で切り替える前提なら初期費用の重みが増します。どちらの見方もできるよう、両方の行を作っておきます。
安いほうを選ばない判断もある
比較表は、安いところを選ぶための道具ではありません。差額と、その差で何を買っているかを並べる道具です。
- 月1万円高いが、締めが2時間遅い → 受けられる注文が増える
- 月2万円高いが、返品対応が含まれる → 自社の手間が減る
- 月5千円安いが、在庫を見る画面が無い → 電話で聞くことになる
差額を「何に対して払うのか」に言い換えると、社内の説明が通ります。金額だけの表は、いちばん安い列を指さして終わる話になりがちです。
よくある質問
何社から取るのが適切ですか
3社が扱いやすい数です。2社だと比べる幅が出ず、5社を超えると条件をそろえる手間のほうが大きくなります。ただし、特殊な温度帯や危険物など、対応できる相手が限られる場合は、2社しか取れないこともあります。その場合は、無理に数を増やさず、条件の詰め方に時間を使います。
いちばん安い見積りが、抜けが多いと感じます
その相手に、抜けている費目を聞いて出し直してもらいます。悪意があるとは限らず、こちらの条件の伝え方が足りなかったこともあります。出し直してもらえば、同じ土俵で比べられます。それでもそろわない場合は、備考に「含まれない」と書いて比較表に残します。
相見積を取っていることを相手に伝えますか
伝える現場が多くあります。同じ条件で複数社に出していると分かれば、相手も条件を詰めてきます。隠して進めると、あとで分かったときの印象が悪くなります。ただし、他社の金額をそのまま見せる形は、値引きの交渉として使われるため、扱いに注意します。
既存の取引先にも見積りを出してもらうべきですか
出してもらうほうが、判断の材料がそろいます。長く付き合っているほど、条件が古いまま続いていることがあります。量が増えているのに単価が当時のまま、という形も起きます。関係を悪くしたくない場合は、「量が変わったので条件を見直したい」という形で依頼します。
見積りの有効期限はどう扱いますか
期限が書かれていることが一般的です。燃料費や資材費の影響で、期限を過ぎると金額が変わることがあります。比較に時間がかかりそうなときは、先にその旨を伝えておくと、期限の延長に応じてもらえることがあります。
見積りを取る時間がありません
全部の費目をそろえる時間が無いときは、金額の大きい順に3つだけそろえます。倉庫なら保管料・出庫料・配送料です。この3つで総額のほとんどが決まるので、残りは備考で確認する形でも判断できます。時間が無いことを理由に1社だけで決めると、あとから比べられなくなります。
社内で決裁が通りません
差額で何を買っているかを1行書くと通りやすくなります。「月1万円高いが、締めが2時間遅く、当日出荷できる注文が1日20件増える」という形です。金額だけの表は、いちばん安い列を指さす議論になります。判断の材料を、金額以外の列で用意します。
途中で条件が変わったら取り直しますか
量や作業の範囲が大きく変わるなら、条件の紙を直して出し直してもらうほうが確実です。小さな変更なら、備考に書いて口頭で確認します。変わった条件のまま古い見積りで契約すると、請求の段階で食い違います。
契約したあとに条件が違ったらどうしますか
見積りと契約書のどちらが優先されるかは、契約の内容によります。比較表に書いた条件が契約書に入っているかを、署名の前に確かめます。締めの時刻や、含まれる作業の範囲は、口頭の説明だけで契約書に書かれていないことがあります。
保管料の方式が相手ごとに違います
3期制と月極が混ざると、単価だけでは比べられません。自社の直近3か月の入出庫の実績を渡して、その実績なら1か月いくらになるかを、どちらの方式でも金額で出してもらいます。金額にそろえてしまえば、方式が違っても横に並べられます。しくみは保管料の記事にまとめています。
まとめ
見積比較表は、取ったあとに作る表ではなく、取る前の条件をそろえるための道具です。同じ紙を全社に渡し、自社の実績を当てはめた1か月の見込み金額まで出してもらいます。
倉庫と物流では費目が多いので、項目の並びはこちらが決めて、相手の見積書から転記します。保管料の方式、最低保管料、入出庫料、初期費用、契約の条件。ここがそろって、はじめて合計を比べられます。
そして、金額以外の4つ、対応の範囲・締めの時刻・立地・実績も並べます。選んだ理由を1行残しておけば、次に取るときの土台になります。