在庫異常の報告|気づいた人がその場で出す形
目次
棚に行ったら、あるはずの物が無い。その場では「あれ?」で終わり、棚卸のときに差異として出てくる。半年前の出来事を、数字だけ見て原因を探すことになります。気づいた時点で報告が出る形にすると、原因が分かるうちに追えます。
この記事では、在庫異常の報告を、気づく場面、書く項目、出しやすくする工夫、受けたあとの動き、集計の使い方の順に整理します。帳簿や決算に関わる処理は、社内の経理の担当に確かめてください。
結論:その場で出さないと、原因が分からなくなる
在庫の異常は、気づいた瞬間がいちばん原因に近い場所です。
理由は3つです。
1つ目は、直前の作業を覚えているからです。誰が、いつ、何をしたか。
2つ目は、周りを探せるからです。別の棚、台車の上、出荷準備の場所。
3つ目は、記録が残っているからです。伝票、端末の履歴。時間がたつと消えます。
棚卸まで待つと、3つとも失われます。数字のずれだけが残り、「なぜか合わない」で処理されます。その場で出す形を作ることが、原因を追える唯一の方法です。
気づく場面
在庫の異常は、決まった場面で気づきます。
多いのは4つです。
1つ目は、ピッキングのときです。あるはずの物が無い。
2つ目は、入荷のときです。数が合わない、違う物が入っている。
3つ目は、循環棚卸のときです。一部を数えたときのずれ。
4つ目は、システムを見たときです。マイナスの在庫、動いていない在庫。
1つ目がいちばん多く、いちばん報告されません。その場で他の棚を探して見つかれば、誰にも言わずに終わります。見つかったこと自体が情報なので、それも出してもらう形にしてください。
書く項目
報告は、短くないと出されません。項目を絞ります。
書くのは5つです。
1つ目は、日付と時刻です。
2つ目は、品番と場所です。棚番地まで。
3つ目は、システムの数と実際の数です。
4つ目は、気づいた場面です。ピッキング、入荷、棚卸。
5つ目は、その場でやったことです。探した範囲、見つかったかどうか。
5つ目が後で効きます。「隣の棚を探したが無かった」と書いてあれば、次に探す場所が絞れます。探した範囲が書かれていないと、同じ場所をもう一度探すことになります。
出しやすくする工夫
報告は、手間があると出ません。
工夫は4つです。
1つ目は、紙を現場に置くことです。棚のそば、端末の横。事務所まで取りに行かせない。
2つ目は、項目を5つに絞ることです。
3つ目は、責めないことです。報告した人が原因を問われる形にしない。
4つ目は、出した結果を返すことです。「あれはこうでした」と伝えます。
4つ目をやっている現場は少なくあります。出しても何も返ってこないと、出す意味が無いと思われます。月に1回、出た報告と結果をまとめて貼るだけで、次の月の件数が変わります。
受けたあとの動き
報告を受けたら、その日のうちに動きます。
動きは4段です。
1つ目は、探すことです。報告に書かれた範囲以外を探します。
2つ目は、履歴を見ることです。入出庫の記録、端末のログ。
3つ目は、原因を分けることです。数え間違い、入力漏れ、置き場違い、持ち出し、破損。
4つ目は、数を合わせることです。原因が分かってから直します。
4つ目を先にやらないでください。原因を調べずに数だけ合わせると、同じことが翌月も起きます。「合わせて終わり」にした差異は、必ず戻ってきます。
原因の5つの型
在庫が合わない理由は、だいたい決まっています。
型は5つです。
1つ目は、数え間違いです。棚卸やピッキングでの数え違い。
2つ目は、入力の漏れとミスです。入出庫の記録が抜けている。
3つ目は、置き場違いです。違う棚に入っている。探せば見つかります。
4つ目は、記録のない持ち出しです。サンプル、現場への持ち出し、社内使用。
5つ目は、破損と処分です。記録せずに捨てた。
4つ目がいちばん多く、いちばん見つけにくい形です。「ちょっと使うだけ」で持ち出したものは記録されません。持ち出しの手順を作ることが、在庫を合わせるいちばんの近道になります。
数を直すときの決めごと
在庫の数を直すことは、帳簿を直すことです。決めごとが要ります。
決めるのは4つです。
1つ目は、承認する人です。誰が直してよいか。
2つ目は、金額の線です。一定の金額を超えたら上長の承認、など。
3つ目は、理由を書く欄です。必ず書かせます。
4つ目は、記録の保存です。
3つ目を必須にしてください。理由の欄が空欄の修正が並んでいると、数字の信頼が無くなります。「棚卸差異」とだけ書かれた修正も同じです。原因の型のどれかを選ぶ形にしてください。
集計して手を打つ
報告を溜めると、どこに手を打つかが見えます。
見るのは4つです。
1つ目は、品番ごとの件数です。同じ品番で繰り返していないか。
2つ目は、場所ごとの件数です。特定の棚やエリアに集中していないか。
3つ目は、原因の型ごとの件数です。
4つ目は、金額です。件数が少なくても金額が大きいもの。
2つ目が対策に直結します。同じエリアで繰り返すなら、棚の作りか置き方に原因があります。似た品番が隣にある、表示が見えにくい、通路から手が届きにくい。現場を見ると分かります。
循環棚卸とつなげる
報告が出た品番は、循環棚卸の対象に入れます。
つなげ方は4つです。
1つ目は、報告が出た品番を次の週に数えることです。
2つ目は、繰り返す品番を高い頻度で数えることです。
3つ目は、金額の大きい品番を定期的に数えることです。
4つ目は、数えた結果を報告の記録に返すことです。
1つ目だけでも効果があります。異常が出た品番は、もう一度ずれる可能性が高いからです。翌週にもう一度数えて合っていれば、そこで安心できます。合っていなければ、原因がまだ残っています。
端末とシステムの履歴を使う
原因を探すとき、記録が残っている場所を知っていると速く終わります。
見るのは4つです。
1つ目は、入出庫の履歴です。いつ、誰が、いくつ動かしたか。
2つ目は、受注と出荷の記録です。引当てと出荷の指示。
3つ目は、棚移動の記録です。場所を変えた履歴。
4つ目は、修正の履歴です。過去に誰かが数を直していないか。
4つ目を見る習慣を持ってください。過去の修正が原因であることがあります。誰かが合わせた数が正しくなかった、という形です。修正の履歴が残る仕組みにしておくと、ここをたどれます。
報告の件数が減ったときの見方
報告の件数が減ったとき、良くなったとは限りません。
疑うのは4つです。
1つ目は、本当に異常が減った場合です。
2つ目は、報告されなくなった場合です。出しても返ってこない、責められる。
3つ目は、気づく場面が減った場合です。循環棚卸をやめた、検品を簡略にした。
4つ目は、担当が替わった場合です。新しい人が報告の仕組みを知らない。
2つ目と4つ目が多くあります。件数が減ったら、棚卸の差異も一緒に見てください。報告が減って差異が増えているなら、報告されていないだけです。2つの数字を並べて見ると、状態が分かります。
月に1回、まとめて見る日を作る
報告は、その場で出して、月に1回まとめて見ます。
やることは4つです。
1つ目は、件数を数えることです。前の月と比べます。
2つ目は、未決着のものを確かめることです。原因が分からないまま残っているもの。
3つ目は、繰り返しを探すことです。同じ品番、同じ場所。
4つ目は、次の月にやることを1つ決めることです。
4つ目を1つに絞ってください。全部を直そうとすると、何も進みません。いちばん件数の多い場所か品番を1つ選んで、その月はそこだけ手を打つ。翌月に効果を見る。この繰り返しのほうが、結果が出ます。
数字が合うことより、経路が分かること
在庫管理の目的は、数字を合わせることだけではありません。
分けて考えるのは3つです。
1つ目は、数字が合っていることです。帳簿と現物が一致している状態。
2つ目は、動きが追えることです。いつ、誰が、どこへ動かしたか。
3つ目は、ずれたときに原因が分かることです。
2つ目と3つ目が本体です。数字だけを合わせても、次の月にまたずれます。動きが追える形になっていれば、ずれても原因にたどり着けます。報告の仕組みは、この2つ目と3つ目のためにあります。
まとめ
在庫異常の報告は、気づいたその場で出すことに価値があります。
- 棚卸まで待つと、直前の作業も探す手がかりも記録も失われる
- 書くのは、日時・品番と場所・数の差・場面・その場でやったことの5つ
- 紙を現場に置き、項目を絞り、責めず、結果を返す
- 原因を調べずに数だけ合わせない。合わせて終わりにした差異は戻ってくる
- 原因でいちばん多いのは、記録のない持ち出し
帳簿や決算に関わる処理は、社内の経理の担当に確かめてください。
よくある質問
Q. 探して見つかった場合も報告しますか。 A. してください。見つかったこと自体が情報です。どこに紛れていたかが分かると、置き方の問題が見えます。報告を「異常が解決しなかったとき」に限ると、件数が出てきません。
Q. 報告の紙はどこに置きますか。 A. 棚のそばや端末の横です。事務所まで取りに行かせないでください。手間があると出されません。書いたものを入れる箱も、同じ場所に置きます。
Q. 原因が分からないときは、どうしますか。 A. 「不明」と書いて残してください。無理に理由を付けないことです。不明が続く品番や場所が見えると、そこに手を打つ判断ができます。
Q. 在庫の数を直す権限は誰に持たせますか。 A. 社内で決めてください。金額の線を引いて、一定を超えたら上長の承認という形が使われます。理由の欄を必須にすることも、あわせて決めてください。
Q. 「棚卸差異」とだけ書いた修正が並んでいます。 A. 原因の型を選ぶ形に変えてください。数え間違い、入力漏れ、置き場違い、持ち出し、破損。選ぶだけなら手間になりません。集計して手を打てるようになります。
Q. 持ち出しが記録されません。 A. 持ち出しの手順を作ってください。「ちょっと使うだけ」が記録されないことが、在庫が合わない最大の原因です。紙1枚か端末の操作1回で済む形にします。
Q. 報告を出しても何も変わりません。 A. 結果を返す仕組みを作ってください。月に1回、出た報告と結果をまとめて貼るだけで、次の月の件数が変わります。返ってこないと、出す意味が無いと思われます。
Q. 同じ棚で繰り返しずれます。 A. 棚の作りか置き方に原因があります。似た品番が隣にある、表示が見えにくい、手が届きにくい。現場を見に行ってください。記録だけでは分かりません。
Q. システムの在庫がマイナスになりました。 A. 出庫の記録が先に入って、入庫が入っていない形が多くあります。入荷の記録の流れを確かめてください。マイナスのまま放置すると、引当ての計算が狂います。
Q. 循環棚卸とどうつなげますか。 A. 報告が出た品番を、次の週に数えてください。異常が出た品番は、もう一度ずれる可能性が高いからです。合っていればそこで安心でき、合っていなければ原因が残っています。
Q. 金額の大きい差異が出ました。 A. 原因が分かるまで数を直さないでください。承認の手続きを踏み、調べた経過を記録に残します。決算に関わる場合は、社内の経理の担当に確かめてください。
Q. 報告の記録は何年残しますか。 A. 社内で決めてください。少なくとも1年は残すと、季節の傾向や繰り返しが見えます。集計した表は、それより長く残しておくと役に立ちます。
Q. 過去に誰かが数を直していました。 A. 修正の履歴が残る仕組みにしてください。過去の修正が原因であることがあります。誰がいつどんな理由で直したかが残っていれば、そこからたどれます。
Q. 報告の件数が減りました。良くなったのでしょうか。 A. 棚卸の差異も一緒に見てください。報告が減って差異が増えているなら、報告されていないだけです。2つの数字を並べると、状態が分かります。
Q. まとめて見る会議は、どのくらいの時間ですか。 A. 30分で足ります。件数、未決着、繰り返し、次にやること1つ。全部を直そうとすると何も進みません。いちばん多い場所を1つ選んで、その月はそこだけ手を打ってください。
Q. 異常の報告と棚卸差異は、同じものですか。 A. 別のものです。報告は気づいた時点のもの、差異は数えた結果です。両方を並べて見ると、報告されていない異常があるかが分かります。
Q. 数字が合っていれば、報告は要りませんか。 A. 要ります。合っているように見えて、プラスとマイナスが打ち消しあっていることがあります。動きが追える形になっているかどうかが、次の月に効きます。
Q. 報告の様式は紙と端末のどちらがよいですか。 A. 現場で書けるほうです。端末が手元にある作業なら端末、そうでなければ紙です。事務所へ戻らないと書けない形にしないでください。あとで書くことになり、細かいところが落ちます。
Q. 誰が受け取りますか。 A. 受け取る人を1人決めてください。「誰かが見る」にすると誰も見ません。その人が不在のときの代わりも決めておきます。
Q. 循環棚卸をやっていません。始めたほうがよいですか。 A. 始めると異常に気づく機会が増えます。全品を一度に数える必要はありません。金額の大きい品番と、報告が出た品番から始めてください。週に30分でも続きます。