使用実績の記録|発注の量を決める根拠になる
目次
いくつ発注するかを、前と同じ数で決めている。増やす理由も減らす理由も無いので、何年も同じです。使用実績を記録すると、実際に使っている量が分かり、持つ量と発注の量を数字で決められるようになります。
この記事では、使用実績を、記録する理由、書く項目、集計の仕方、発注への使い方、続ける工夫の順に整理します。帳簿や原価の扱いは、社内の経理の担当に確かめてください。
結論:使った量が分からないと、持つ量も決まらない
在庫の量は、使う量から決まります。
分からないと起きるのは3つです。
1つ目は、持ちすぎです。念のため多めに持ちます。
2つ目は、足りないことです。切らしてから慌てます。
3つ目は、判断できないことです。増やすか減らすかを決める根拠がありません。
3つ目がいちばん大きい問題です。「いま持っている量が適切かどうか」を、誰も判断できない状態が続きます。記録を取ると、はじめて議論ができるようになります。
何を記録するか
すべての品目を記録する必要はありません。絞ります。
絞るのは4つです。
1つ目は、金額の大きい品目です。持ちすぎの影響が大きい。
2つ目は、よく使う品目です。
3つ目は、切らすと困る品目です。
4つ目は、調達に時間がかかる品目です。
1つ目と3つ目から始めてください。この2つに当てはまる品目は、多くても20か30品番です。全品を記録しようとすると続きません。
書く項目
記録は、使った都度書くか、定期的に在庫を数えるかで方法が変わります。
書くのは5つです。
1つ目は、日付です。
2つ目は、品番です。
3つ目は、使った数量です。
4つ目は、使った場所か目的です。
5つ目は、使った人です。
4つ目があると、使い道が分かります。同じ品目でも、どの工程で、どの案件で使ったかが分かると、原価の話にもつながります。ただし項目が増えると続かないので、必要な品目に絞ってください。
出庫の記録から出す方法
新しく記録を始めなくても、既にある記録から出せることがあります。
見るのは4つです。
1つ目は、出庫の記録です。在庫から出した数量。
2つ目は、発注の記録です。買った数量。
3つ目は、棚卸の結果です。期首と期末の在庫。
4つ目は、計算です。期首 + 仕入 − 期末 = 使った量。
4つ目の計算で、おおよその量が出ます。新しい記録を始めなくても、棚卸と発注の記録があれば計算できます。まずこれで年間の使用量を出して、細かく追う品目を決めるという順番もあります。
集計の仕方
記録が溜まったら、期間ごとにまとめます。
まとめるのは4つです。
1つ目は、月ごとの使用量です。
2つ目は、年間の合計です。
3つ目は、月ごとのばらつきです。多い月と少ない月。
4つ目は、前の年との比較です。
3つ目が発注の量を決めます。平均だけ見ると、多い月に足りなくなります。いちばん多い月の量を見て、そこに耐えられる持ち方にするか、多い月の前に発注を増やすかを決めてください。
発注への使い方
使用実績が分かると、発注の3つの数字が決まります。
決まるのは4つです。
1つ目は、発注点です。残りいくつで発注するか。調達期間 × 1日あたりの使用量が目安です。
2つ目は、発注の量です。次の発注までに使う量。
3つ目は、安全在庫です。ばらつきに備える分。
4つ目は、発注の頻度です。
1つ目がいちばん効きます。「調達に10日かかり、1日に5個使う」なら、50個を切ったら発注です。これに安全在庫を足した数が、実際の発注点になります。計算は1品番5分です。
続ける工夫
記録は、手間があると続きません。
工夫は4つです。
1つ目は、品目を絞ることです。20品番まで。
2つ目は、既にある記録を使うことです。新しく書かせない。
3つ目は、集計を自動にすることです。表計算の式で。
4つ目は、使う場面を作ることです。発注のときに必ず見る。
4つ目が続くかどうかを決めます。記録を取っても誰も見ないと、そのうち止まります。発注のときに使用実績を見る手順にすれば、記録が生きます。見ない記録は、いずれ書かれなくなります。
増減の理由を見る
使用量が変わったときは、理由を確かめます。
見るのは4つです。
1つ目は、生産や出荷の量が変わったかです。
2つ目は、作り方や梱包が変わったかです。
3つ目は、無駄が増えていないかです。不良、やり直し。
4つ目は、記録の漏れです。
3つ目を疑ってください。出荷の量が変わっていないのに使用量だけ増えているなら、どこかで無駄が出ています。梱包の材料なら、包み方が変わったか、やり直しが増えたか。記録が原因を教えてくれます。
原価との関係
使用実績は、原価の計算にも使われます。
つながるのは4つです。
1つ目は、案件ごとの材料費です。
2つ目は、製品ごとの原価です。
3つ目は、期間ごとの費用です。
4つ目は、見積もりの根拠です。
4つ目に効きます。「この仕事には、この材料をこれだけ使う」という実績があると、見積もりの精度が上がります。感覚で見積もっていた部分が、数字になります。詳しい扱いは社内の経理の担当に確かめてください。
ABC分析とつなげる
使用実績が出ると、品目を金額と量で分けることができます。
やり方は4つです。
1つ目は、年間の使用金額を出すことです。単価 × 使用量。
2つ目は、大きい順に並べることです。
3つ目は、上位から順にA・B・Cに分けることです。
4つ目は、区分ごとに管理の仕方を変えることです。
4つ目が本体です。Aの品目は細かく追い、Cの品目はまとめて持つ。全品を同じ手間で管理するのは無理なので、手間をかける場所を決めるための分け方です。
現場に数字を返す
使用実績は、現場にも見せると効きます。
見せるのは4つです。
1つ目は、月ごとの使用量です。
2つ目は、前の月との差です。
3つ目は、増えている品目です。
4つ目は、金額です。
3つ目を見せると、現場から理由が出てきます。「今月テープの使用が2割増えた」と示すと、「梱包が変わったから」「やり直しが多かった」という答えが返ってきます。数字だけを見ていても、理由は分かりません。
棚卸とあわせて確かめる
使用実績の数字は、棚卸で確かめられます。
やることは4つです。
1つ目は、計算した使用量を出すことです。期首+仕入−期末。
2つ目は、記録から集計した使用量と比べることです。
3つ目は、差が出たら理由を探すことです。
4つ目は、次から精度を上げることです。
3つ目で見つかるのは、たいてい記録の漏れです。持ち出しが記録されていない、返却が入力されていない。差の大きい品目から確かめると、仕組みの穴が見つかります。
使う人が書く形にしない工夫
記録を現場に書かせると、続かないことがあります。
考えるのは4つです。
1つ目は、出庫の記録から自動で出すことです。
2つ目は、定期的に在庫を数える形にすることです。
3つ目は、補充の記録から逆算することです。
4つ目は、書く品目を絞ることです。
2つ目が現実的です。使うたびに書くのではなく、週に1回か月に1回、残りを数える。その差が使用量です。数える手間はかかりますが、毎回書かせるより続きます。
数字を見る会議を短くする
実績の数字は、見る場を作ると使われます。
作るのは4つです。
1つ目は、時間です。月に1回、30分。
2つ目は、見る項目です。使用量の増減、発注の予定、切らした件数。
3つ目は、出る人です。発注をする人と、現場の責任者。
4つ目は、決めることを1つに絞ることです。
4つ目を守ってください。30分で全部を決めようとすると、何も決まりません。「今月はこの品目の発注点を直す」と1つ決めて、翌月に効果を見る。この繰り返しのほうが進みます。
まとめ
使用実績の記録は、発注の量を決める根拠になります。
- 記録が無いと、持ちすぎと不足の両方が起きて、判断ができない
- 絞るのは、金額の大きい品目と切らすと困る品目。20から30品番で足りる
- 棚卸と発注の記録があれば計算できる。新しく書かせなくてもよい
- 発注点は、調達期間 × 1日あたりの使用量 + 安全在庫
- 見ない記録は書かれなくなる。発注のときに必ず見る手順にする
帳簿や原価の扱いは、社内の経理の担当に確かめてください。
よくある質問
Q. 全品目を記録する必要がありますか。 A. ありません。金額の大きい品目と、切らすと困る品目に絞ってください。多くても20から30品番です。全品を記録しようとすると続きません。
Q. 新しく記録を始めるのが大変です。 A. 既にある記録から計算できます。期首の在庫 + 仕入 − 期末の在庫 = 使った量。棚卸と発注の記録があれば出せます。まずこれで年間の量を出してください。
Q. 発注点はどう計算しますか。 A. 調達期間 × 1日あたりの使用量、これに安全在庫を足します。「調達に10日、1日に5個使う」なら50個+安全在庫です。1品番5分で計算できます。
Q. 月によって使う量が違います。 A. 平均だけ見ないでください。いちばん多い月の量を見て、そこに耐えられる持ち方にするか、多い月の前に発注を増やすかを決めます。
Q. 記録が続きません。 A. 発注のときに必ず見る手順にしてください。見ない記録は、そのうち書かれなくなります。使う場面があると続きます。品目を絞ることも効きます。
Q. 使用量が急に増えました。 A. 出荷の量が変わったか、作り方が変わったか、無駄が増えていないかを見てください。出荷が変わっていないのに増えているなら、どこかで無駄が出ています。
Q. 案件ごとに記録する必要はありますか。 A. 原価を案件ごとに出したいなら必要です。項目が増えると続かないので、必要な品目に絞ってください。すべての消耗品を案件に紐づける必要はありません。
Q. 集計は誰がやりますか。 A. 発注をする人です。月に1回、30分で足ります。表計算の式で自動に出るようにしておくと、入力だけで済みます。
Q. 安全在庫はどう決めますか。 A. 使用量のばらつきと、切らしたときの影響から決めます。多い月と平均の差が目安になります。切らすと止まる品目は、多めに持ってください。
Q. 見積もりに使えますか。 A. 使えます。「この仕事には、この材料をこれだけ使う」という実績があると、見積もりの精度が上がります。詳しい扱いは社内の経理の担当に確かめてください。
Q. 記録は何年残しますか。 A. 月ごとの集計は数年残してください。季節の波と、年ごとの傾向が見えます。日ごとの明細は1年で足りることが多くあります。
Q. 使っていない品目が見つかりました。 A. 不動在庫です。使わなくなった理由を確かめてください。仕様が変わった、取引が終わった。理由が分かれば、処分するか、まだ持つかを決められます。
Q. ABC分析とはどう違いますか。 A. 使用実績は、ABC分析の材料です。年間の使用金額(単価 × 使用量)で並べ替えて区分します。手間をかける品目を決めるための分け方です。
Q. 現場に数字を見せる意味はありますか。 A. あります。「今月テープの使用が2割増えた」と示すと、「梱包が変わったから」という理由が現場から出てきます。数字だけを見ていても理由は分かりません。
Q. 計算した使用量と、記録の使用量が合いません。 A. たいてい記録の漏れです。持ち出しが記録されていない、返却が入力されていない。差の大きい品目から確かめると、仕組みの穴が見つかります。
Q. 使うたびに書かせるのが難しいです。 A. 週に1回か月に1回、残りを数える形にしてください。その差が使用量です。毎回書かせるより続きます。数える手間はかかりますが、確実です。
Q. 数字を見る会議は、どのくらいの時間ですか。 A. 月に1回、30分です。決めることを1つに絞ってください。全部を決めようとすると何も決まりません。1つ決めて、翌月に効果を見る繰り返しが進みます。
Q. 記録の様式は紙と表計算のどちらがよいですか。 A. 集計する形なら表計算です。紙で書いて、月に1回だけ入力する形でも構いません。集計が自動で出るようにしておくと、見る会議の準備が要りません。
Q. 使用実績と在庫管理表は、別に作りますか。 A. 1枚にまとめられます。在庫の数と、月ごとの使用量を同じ表に並べると、発注の判断がその場でできます。列を足すだけで済みます。
Q. 前の年と比べると、使用量が減っていました。 A. 出荷が減ったのか、無駄が減ったのかを確かめてください。出荷が同じで使用量が減っているなら、改善の成果です。現場に伝えると、次の取り組みにつながります。
Q. 単価が変わると、金額での比較ができません。 A. 数量と金額の両方を並べてください。数量は変わらないのに金額が増えているなら、値上がりです。発注先を見直す判断の材料になります。
Q. 使用実績を取り始めて、最初に何が分かりますか。 A. 持ちすぎている品目です。「1年分の在庫がある」という品目が必ず出てきます。そこから発注を止めるだけで、置き場と資金に余裕ができます。
Q. 誰が記録を取りますか。 A. 出庫や補充をする人です。新しい作業を増やさないことが条件です。既にやっている作業に、数字を1つ足す形にしてください。