支給金型の管理|他社の資産を預かるときの記録
目次
客先から預かった金型が、倉庫の奥に何年も置かれている。どの客先の物か、まだ使うのか、誰も分からない。金型は自社の資産ではないので、勝手に処分できません。預かっている限り、管理の責任が続きます。
この記事では、支給金型の管理を、預かる意味、記録する項目、置き方と点検、使わなくなったときの扱い、返却と処分の順に整理します。資産の扱いや契約に関わる判断は、社内の経理や法務の担当と、取引先に確かめてください。
結論:他社の資産なので、勝手に動かせない
支給された金型は、客先の資産です。自社の物ではありません。
意味するのは3つです。
1つ目は、処分できないことです。使わなくなっても、勝手に捨てられません。
2つ目は、管理の責任があることです。壊れた、無くしたときの責任。
3つ目は、返す義務があることです。求められたら返します。
1つ目が倉庫を圧迫します。使わなくなった金型が置き場を占め続けます。捨てられないので、客先と話して返すか、保管の合意を取り直すしかありません。放置すると、10年前の金型が残ります。
記録する項目
金型の台帳は、1型1行で作ります。
書くのは5つです。
1つ目は、管理番号と金型の名称です。
2つ目は、所有者です。どの客先の物か。
3つ目は、預かった日と、根拠になる書類です。
4つ目は、置き場所です。
5つ目は、最後に使った日です。
5つ目がいちばん大事です。最後に使った日が分かると、いつから動いていないかが見えます。3年使っていない金型は、返すか保管を続けるかを客先と話す対象になります。
現物に表示を付ける
台帳だけでは、現物と結びつきません。
付けるのは4つです。
1つ目は、管理番号です。台帳と同じ番号。
2つ目は、所有者です。どの客先の物か。
3つ目は、品名か型番です。
4つ目は、取り扱いの注意です。重さ、吊り方。
2つ目を現物に書いておいてください。台帳が見つからなくても、現物を見れば持ち主が分かります。担当が替わったときや、急に返却を求められたときに効きます。金属のタグや、刻印で残す方法があります。
置き方
金型は重く、置き方を間違えると危険です。
決めるのは4つです。
1つ目は、床の強度です。重量に耐えられる場所か。
2つ目は、積み方です。段積みしてよいか、何段までか。
3つ目は、取り出しの動線です。奥に置くと、手前を全部どけることになります。
4つ目は、吊り具の準備です。クレーンかフォークリフトか。
3つ目で判断します。よく使う金型を手前に、使わない金型を奥に。ただし奥に置いた金型は、返却を求められたときに出すのが大変です。使わない金型ほど、返却の話を進めておくべきです。
点検とさび
金型は、置いておくだけで傷みます。
見るのは4つです。
1つ目は、さびです。湿気の多い場所では進みます。
2つ目は、防錆の処理です。油を塗る、包む。
3つ目は、変形や欠けです。
4つ目は、付属品です。部品が外れて無くなっていないか。
2つ目を決めておいてください。誰が、どのくらいの頻度で防錆の処理をするか。決まっていないと、何年も置かれた金型がさびて使えなくなります。使えなくなった責任は、預かっている側に問われます。
使わなくなったときの扱い
生産が終わっても、金型は残ります。
進め方は4段です。
1つ目は、最後に使った日を確かめることです。
2つ目は、客先に状況を伝えることです。「◯年使っていません」。
3つ目は、今後の扱いを決めることです。返す、保管を続ける、処分する。
4つ目は、決まったことを書面に残すことです。
2つ目を自分から出してください。客先も忘れていることがあります。「まだありますが、どうしますか」と聞くだけで、返却や処分の話が進みます。聞かなければ、10年でも置かれ続けます。
保管の費用を伝える
金型を預かることには、費用がかかっています。
出すのは4つです。
1つ目は、占める面積です。
2つ目は、面積あたりの年間の費用です。
3つ目は、防錆や点検の手間です。
4つ目は、預かっている年数です。
1つ目と2つ目の掛け算を出してみてください。金型1型あたり、年間いくらかかっているかが分かります。保管料をもらうかどうかの話をするときの根拠になります。契約の内容は、社内の経理や法務の担当に確かめてください。
返却と処分の手続き
返すときも処分するときも、記録を残します。
やることは4つです。
1つ目は、客先の指示を書面でもらうことです。
2つ目は、現物の状態を記録することです。写真を撮ります。
3つ目は、引き渡しか処分の記録です。日付、方法、相手。
4つ目は、台帳から外すことです。
1つ目を口頭で済ませないでください。処分したあとで「返してほしかった」と言われることがあります。指示をメールでもよいので書面に残し、処分の記録と一緒に保管してください。
棚卸で確かめる
金型も、棚卸の対象にします。
やることは4つです。
1つ目は、台帳と現物を突き合わせることです。
2つ目は、状態を確かめることです。さび、破損。
3つ目は、置き場所を更新することです。
4つ目は、客先ごとの一覧を出すことです。
4つ目を年に1回作ってください。客先ごとに「御社の金型をこれだけ預かっています」という一覧を渡すと、向こうでも把握できます。返却や処分の話も、その場で進みます。
受け入れるときに確かめる
金型を受け入れるときに、確かめておくことがあります。
確かめるのは4つです。
1つ目は、書面があるかです。貸与や支給の取り決め。
2つ目は、現物の状態です。受け入れた時点の状態を写真で。
3つ目は、付属品です。部品や工具が一緒に来ているか。
4つ目は、保管の条件です。温度や湿度の指定があるか。
2つ目を必ずやってください。受け入れた時点で既に傷んでいたことを示せないと、あとで自社の責任にされます。写真を撮って、日付とともに記録に残すだけです。
保険の扱いを確かめる
預かっている他社の資産は、保険の対象になるかが問題になります。
確かめるのは4つです。
1つ目は、自社の保険の対象かです。
2つ目は、客先が保険をかけているかです。
3つ目は、火災や水害のときの扱いです。
4つ目は、契約での取り決めです。
1つ目を確かめてください。自社の保険が自社の資産だけを対象にしている場合、預かり品は補償されません。金額の大きい金型を多く預かっているなら、社内の経理の担当に確かめてください。
客先ごとに一覧を作る
金型の台帳は、客先ごとに切り出せる形にしておきます。
作るのは4つです。
1つ目は、客先ごとの預かり数です。
2つ目は、型の名称と管理番号です。
3つ目は、最後に使った日です。
4つ目は、状態です。
この4つを1枚にして、年に1回渡してください。客先も自社の資産をどこに預けているか把握していないことがあります。一覧を渡すと、返却や処分の判断が向こうから出てくることがあります。話を切り出すきっかけとしても使えます。
型の履歴を残す
金型は、使った回数と手入れの履歴が価値を持ちます。
残すのは4つです。
1つ目は、使った回数か、作った数です。
2つ目は、手入れをした日と内容です。清掃、研磨、部品の交換。
3つ目は、不具合が出た記録です。
4つ目は、修理の履歴です。
1つ目を客先に伝えられると、関係が変わります。「この型はこれだけ打っています」という情報は、客先が更新の時期を判断する材料になります。預かっているだけでなく、状態を把握している取引先として見られます。
契約の期限を管理する
金型の貸与や支給には、契約の期限があることがあります。
見るのは4つです。
1つ目は、契約の期間です。
2つ目は、更新の時期です。
3つ目は、保管の義務の期間です。生産終了後◯年など。
4つ目は、期限が来たときの手続きです。
3つ目を一覧に入れてください。「生産終了後5年」と決まっているなら、その5年が終わる日が分かります。期限が来たら、返却か処分の話ができます。期限を知らないと、いつまでも持ち続けることになります。
まとめ
支給金型は、他社の資産を預かっているという前提で管理します。
- 勝手に処分できない。使わなくなっても置き場を占め続ける
- 台帳には、最後に使った日を必ず入れる
- 現物に所有者を表示する。台帳が無くても持ち主が分かる
- 防錆の処理を誰が、どのくらいの頻度でやるかを決める
- 「まだありますが、どうしますか」と自分から聞く。聞かなければ10年置かれる
資産の扱いや契約に関わる判断は、社内の経理や法務の担当と、取引先に確かめてください。
よくある質問
Q. 使わなくなった金型を処分できますか。 A. できません。客先の資産です。処分するには、客先の指示が要ります。書面でもらってください。口頭で済ませると、あとで「返してほしかった」と言われることがあります。
Q. 何年使っていない金型は、どう扱いますか。 A. 客先に状況を伝えてください。「◯年使っていません」と伝えるだけで、返却や処分の話が進みます。客先も忘れていることがあります。
Q. 現物に何を表示しますか。 A. 管理番号、所有者、品名、取り扱いの注意です。所有者を現物に書いておくと、台帳が見つからなくても持ち主が分かります。金属のタグや刻印が残ります。
Q. さびてしまいました。 A. 防錆の処理を誰がやるかを決めていないと起きます。使えなくなった責任は、預かっている側に問われます。頻度と担当を決めて、点検の記録を残してください。
Q. 保管料をもらえますか。 A. 契約によります。占める面積 × 面積あたりの年間費用を出すと、話す根拠になります。契約の内容は、社内の経理や法務の担当に確かめてください。
Q. 置き場所はどう決めますか。 A. 床の強度、積み方、取り出しの動線、吊り具です。よく使う金型を手前に置きます。ただし奥に置いた金型は、返却のときに出すのが大変になります。
Q. 棚卸で金型も数えますか。 A. 数えてください。台帳と現物を突き合わせ、状態を確かめ、置き場所を更新します。客先ごとの一覧を年に1回作って渡すと、向こうでも把握できます。
Q. 金型が壊れました。 A. すぐ客先に連絡してください。状態を写真で残します。修理の費用の負担は、契約と原因によります。社内の経理や法務の担当と確かめてください。
Q. 客先の担当が替わって、話が通じません。 A. 預かった日と、根拠になる書類を示してください。書面が残っていると話が早く進みます。残っていない場合は、こちらの台帳と写真を材料に、改めて確認を求めます。
Q. 金型以外の支給品も同じ扱いですか。 A. 同じ考え方です。治具、検査具、材料。他社の資産であるという点が共通です。台帳の形も同じで足ります。区分の欄を作って分けてください。
Q. 倉庫が狭くなってきました。 A. 使っていない金型から、客先と話してください。返却か処分の合意が取れれば、置き場が空きます。保管料の話も、その機会に持ち出せます。
Q. 記録は何年残しますか。 A. 返却や処分が終わったあとも、一定期間は残してください。引き渡しの記録は、あとで問われることがあります。保存の年数は社内の経理や法務の担当に確かめてください。
Q. 受け入れるときに何を確かめますか。 A. 書面、現物の状態、付属品、保管の条件の4つです。受け入れた時点の状態を写真で残してください。既に傷んでいたことを示せないと、あとで自社の責任にされます。
Q. 預かっている金型は保険の対象ですか。 A. 自社の保険が自社の資産だけを対象にしている場合、補償されません。金額の大きい金型を多く預かっているなら、社内の経理の担当に確かめてください。
Q. 客先ごとの一覧は、どのくらいの頻度で渡しますか。 A. 年に1回で足ります。棚卸のあとに出すと、数字が確かな状態で渡せます。客先も把握していないことがあるので、返却や処分の判断が向こうから出てくることがあります。
Q. 一覧を渡すと、返却を求められませんか。 A. 求められることがありますが、それが本来の姿です。置き場が空き、管理の手間も減ります。返却の費用の負担は、契約の内容によります。
Q. 使った回数を記録する意味はありますか。 A. あります。客先が型の更新の時期を判断する材料になります。預かっているだけでなく、状態を把握している取引先として見られます。手入れや修理の履歴も一緒に残してください。
Q. 契約の期限が分かりません。 A. 取り決めの書面を探してください。無い場合は、客先に確かめます。「生産終了後◯年」という形で保管の義務が定められていることがあります。台帳に期限の欄を作ってください。
Q. 金型の置き場が足りません。 A. 使っていない型から、客先と話してください。返却か処分の合意が取れれば空きます。保管料の話も、その機会に持ち出せます。年に1回の一覧が、話のきっかけになります。
Q. 支給された材料も同じ扱いですか。 A. 同じ考え方です。他社の資産である点が共通です。台帳の形も同じで足ります。区分の欄を作って、金型・治具・材料を分けてください。
Q. 客先が倒産しました。預かっている金型はどうなりますか。 A. 自社で判断せず、社内の法務や経理の担当に相談してください。勝手に処分できません。状況を記録に残し、指示を待つ形になります。