棚の移動とレイアウト変更|記録と手順の作り方
目次
棚を動かすと、そこにあった物の場所が変わります。システムの棚番地が古いままだと、ピッキングで探す時間が増え、在庫が合わなくなります。棚の移動は、荷物を運ぶ作業ではなく、情報を書き換える作業です。
この記事では、棚の移動を、起きる問題、進め方の順番、記録の残し方、移動中の運用、終わったあとの確認の順に整理します。ラックの解体や再設置には、製品ごとの手順があります。メーカーと、社内の安全の担当に確かめてください。
結論:物より、情報のほうが遅れる
棚を動かしたあとに起きるのは、情報のずれです。
起きるのは3つです。
1つ目は、棚番地が古いままになることです。システムを見て行くと、物がありません。
2つ目は、探す時間が増えることです。移動を知らない人が、前の場所を探します。
3つ目は、在庫が合わなくなることです。見つからない物が、欠品として扱われます。
荷物を動かすのは半日で終わっても、情報が追いつくのに1か月かかることがあります。動かす前に、情報をどう書き換えるかを決めてください。
進め方の順番
棚の移動は、順番を決めると事故が減ります。
順番は5段です。
1つ目は、新しい配置を決めることです。図面に書きます。
2つ目は、移動する物と移動しない物を分けることです。
3つ目は、移動の日と担当を決めることです。
4つ目は、実際に動かすことです。
5つ目は、情報を書き換えることです。
5つ目を4つ目と同じ日にやってください。「動かしてから、あとで直す」と、そのあいだに出荷が入ります。動かした棚から順に、その場で情報を直す形にすると、ずれが生まれません。
新しい配置の決め方
せっかく動かすなら、良くなる配置にします。
見るのは4つです。
1つ目は、出る頻度です。よく出る物を、出荷口の近くに。
2つ目は、重さです。重い物を下の段に。
3つ目は、大きさです。大きい物は取り出しやすい場所に。
4つ目は、一緒に出る物です。同じ注文でよく一緒に出る物は、近くに置きます。
1つ目と4つ目が、ピッキングの時間を変えます。よく出る物が奥にあると、毎回歩く距離が増えます。出荷の記録から、よく出る品番の一覧を出して配置を決めてください。
移動の日をどう選ぶか
棚の移動は、出荷を止めるかどうかで難しさが変わります。
選び方は4つです。
1つ目は、休みの日にやることです。いちばん安全ですが、人件費がかかります。
2つ目は、出荷の少ない日を選ぶことです。
3つ目は、区画ごとに分けてやることです。一度に全部を動かさない。
4つ目は、出荷の時間帯を避けることです。
3つ目がいちばん現実的です。倉庫全体を一度に動かすのは、準備も体力も足りません。A列だけ、次の週にB列。区画ごとに分ければ、出荷を止めずに進められます。
記録の残し方
移動の記録は、あとから追えることが目的です。
書くのは5つです。
1つ目は、移動した日です。
2つ目は、移動した品番です。
3つ目は、元の棚番地です。
4つ目は、新しい棚番地です。
5つ目は、作業した人です。
3つ目を残してください。新しい場所だけ書いていると、「あの品番は前どこにあったか」を確かめられません。移動のあとで見つからない物が出たとき、元の場所を探せます。
移動中の運用
移動の最中は、在庫の場所が不確かな状態になります。
決めるのは4つです。
1つ目は、その区画の出荷を止めるかです。
2つ目は、止めない場合の探し方です。元と新のどちらを見るか。
3つ目は、仮の表示です。「移動中」と貼ります。
4つ目は、終わったことを知らせる方法です。
3つ目を必ずやってください。移動中の棚に「◯◯へ移動中」と貼っておくと、探しに来た人が新しい場所へ行けます。貼り紙1枚で、聞いて回る時間が消えます。
システムの書き換え
棚番地の情報は、一括で書き換えられることがあります。
確かめるのは4つです。
1つ目は、一括で変更できるかです。1件ずつだと時間がかかります。
2つ目は、変更の履歴が残るかです。
3つ目は、変更のタイミングです。動かす前か、動かしたあとか。
4つ目は、間違えたときの戻し方です。
3つ目は「動かしたあと」が原則です。先に情報を変えると、まだ動かしていない物を新しい場所へ探しに行きます。動かした区画から順に、その場で変える形にしてください。
終わったあとの確認
移動が終わったら、合っているかを確かめます。
やることは4つです。
1つ目は、棚番地の表示を確かめることです。棚に貼ってある番地と、システムが合っているか。
2つ目は、抜き出して数えることです。いくつかの品番で、場所と数を確かめます。
3つ目は、ピッキングを1回やってみることです。実際に探せるか。
4つ目は、古い表示を剥がすことです。
4つ目が残ります。古い棚番地のシールが貼られたままだと、次の人が混乱します。移動の作業の最後に、古い表示を剥がす手順を入れてください。
図面を更新する
倉庫のレイアウト図は、移動のたびに古くなります。
やることは4つです。
1つ目は、図面を更新することです。
2つ目は、掲示している図面を差し替えることです。
3つ目は、更新した日を書くことです。
4つ目は、古い図面を回収することです。
2つ目と4つ目が抜けます。新しい図面を作っても、事務所や現場に古い図面が貼られたままになります。掲示している場所を一覧にしておくと、差し替えの漏れが防げます。
移動を減らす考え方
そもそも、移動しなくて済む配置にできると楽になります。
考えるのは4つです。
1つ目は、余裕を持った配置にすることです。品目が増えても入る形に。
2つ目は、固定しない棚を使うことです。可動の棚板、移動できるラック。
3つ目は、置き場を品目で固定しないことです。空いた場所に置くフリーロケーション。
4つ目は、出る頻度で区画を分けることです。
3つ目は、システムが対応していれば有力です。品目ごとに場所を固定しないので、品目が増えても棚を動かす必要がありません。ただし記録が命になるので、システムと運用が伴っている必要があります。
作業の前に人を集める
棚の移動は、複数の人が同時に動きます。始める前に集まります。
伝えるのは4つです。
1つ目は、今日やる範囲です。どの列からどの列まで。
2つ目は、役割です。降ろす人、運ぶ人、記録する人。
3つ目は、安全の注意です。通路、機械、荷物の高さ。
4つ目は、終わりの時刻です。
2つ目に記録する人を入れてください。全員が体を動かしていると、記録が後回しになります。1人を記録の担当にして、動かした都度その場で書く形にすると、あとの作業が消えます。
品目を絞って動かす日を作る
全部を動かさなくても、よく出る品目だけを動かすことで効果が出ます。
やり方は4つです。
1つ目は、出荷の記録から上位の品番を出すことです。
2つ目は、その品番が今どこにあるかを見ることです。
3つ目は、出荷口に近い場所へ移すことです。
4つ目は、移した前後で歩く距離を比べることです。
4つ目を測ってみてください。上位20品番を出荷口の近くに集めるだけで、1日の歩く距離が目に見えて減ることがあります。棚をすべて動かす前に、これだけ試す価値があります。
棚番地の付け方を決める
移動を機に、棚番地の付け方を見直すと効きます。
決めるのは4つです。
1つ目は、列・連・段の順番です。「A-03-2」のように。
2つ目は、番号の向きです。入口から奥へ増える、左から右へ増える。
3つ目は、桁数をそろえることです。「A-3」と「A-03」が混ざらないように。
4つ目は、表示の位置です。通路から見える高さ。
2つ目がピッキングの速さを変えます。番号の向きがばらばらだと、リストの順に回れません。入口から順に増える形にすると、リストの上から順に歩くだけで済みます。
移動のあとに教える
配置が変わったら、働く人に伝えます。
伝えるのは4つです。
1つ目は、変わった範囲です。どの列が変わったか。
2つ目は、新しい図面です。掲示と、手元の1枚。
3つ目は、よく出る品番がどこへ移ったかです。
4つ目は、分からないときの聞き先です。
3つ目だけでも伝えてください。毎日触る品番が10も20もあるわけではありません。よく出る上位の品番がどこへ移ったかが分かれば、当面は動けます。残りは図面で探せます。
まとめ
棚の移動は、荷物を運ぶ作業ではなく、情報を書き換える作業です。
- 起きるのは、棚番地のずれ・探す時間の増加・在庫のずれ
- 情報の書き換えは、動かしたその日に、動かした区画から順に
- 記録には、元の棚番地も残す。見つからない物を探すときに要る
- 移動中の棚に「◯◯へ移動中」と貼る。聞いて回る時間が消える
- 終わったら古い表示を剥がす。手順の最後に入れる
ラックの解体や再設置には、製品ごとの手順があります。メーカーと、社内の安全の担当に確かめてください。
よくある質問
Q. 情報の書き換えは、いつやりますか。 A. 動かしたあと、その日のうちです。先に情報を変えると、まだ動かしていない物を新しい場所へ探しに行きます。動かした区画から順に、その場で変えてください。
Q. 倉庫全体を一度に動かせません。 A. 区画ごとに分けてください。A列だけ、次の週にB列。一度に全部を動かすのは、準備も体力も足りません。出荷を止めずに進められます。
Q. 移動中に出荷が入ったらどうしますか。 A. 移動中の棚に「◯◯へ移動中」と貼ってください。探しに来た人が新しい場所へ行けます。貼り紙1枚で、聞いて回る時間が消えます。
Q. 元の棚番地を記録する意味はありますか。 A. あります。移動のあとで見つからない物が出たとき、元の場所を探せます。新しい場所だけ書いていると、「前どこにあったか」を確かめられません。
Q. 新しい配置は、どう決めますか。 A. 出る頻度、重さ、大きさ、一緒に出る物の4つです。出荷の記録から、よく出る品番の一覧を出して決めてください。よく出る物が奥にあると、毎回歩く距離が増えます。
Q. 古い棚番地のシールが残ります。 A. 剥がす手順を、作業の最後に入れてください。貼られたままだと、次の人が混乱します。新しいシールを貼るときに、古いものを剥がす形にします。
Q. レイアウト図が古いままです。 A. 掲示している場所を一覧にしておいてください。新しい図面を作っても、事務所や現場に古い図面が貼られたままになります。差し替えの漏れが防げます。
Q. 移動が終わったら、何を確かめますか。 A. 棚番地の表示とシステムが合っているか、抜き出して数えるか、実際にピッキングできるか、古い表示を剥がしたか。ピッキングを1回やってみるのがいちばん確実です。
Q. フリーロケーションにすれば、移動が減りますか。 A. 減ります。品目ごとに場所を固定しないので、品目が増えても棚を動かす必要がありません。ただし記録が命になります。システムと運用が伴っている必要があります。
Q. ラックの解体は自分たちでできますか。 A. 製品ごとに手順があります。倒れる危険があるので、メーカーか専門の業者に確かめてください。解体と再設置で、部材が使えなくなることもあります。
Q. 移動の作業で気をつけることは。 A. 荷物を降ろしてから動かすこと、通路を確保すること、人と機械の動きを分けることです。詳しくは社内の安全の担当に確かめてください。作業の前に手順を共有します。
Q. 移動のあと、在庫が合いません。 A. 移動の記録と突き合わせてください。元の場所と新しい場所の両方が記録されていれば、たどれます。記録が無いと、探す場所が絞れません。
Q. 作業の前に何を伝えますか。 A. 今日やる範囲、役割、安全の注意、終わりの時刻の4つです。役割に「記録する人」を入れてください。全員が体を動かしていると、記録が後回しになります。
Q. 全部は動かせません。 A. よく出る上位の品番だけを、出荷口の近くに集めてください。それだけで1日の歩く距離が目に見えて減ることがあります。棚をすべて動かす前に試せます。
Q. 棚番地の付け方に決まりはありますか。 A. 社内で決めれば構いませんが、番号の向きをそろえてください。入口から順に増える形にすると、ピッキングのリストの上から順に歩くだけで済みます。
Q. 配置が変わったことを、どう伝えますか。 A. 変わった範囲、新しい図面、よく出る品番がどこへ移ったか、聞き先の4つです。よく出る上位の品番の場所だけでも伝えれば、当面は動けます。
Q. 移動の日は、どのくらいの人数が要りますか。 A. 範囲と荷物の量によります。前回の実績を記録しておくと、次の見込みが立ちます。降ろす人、運ぶ人、記録する人の3つの役割が回る人数が最低です。
Q. 移動の途中で人手が足りなくなりました。 A. 動かした範囲までで区切って、情報の更新まで終わらせてから止めてください。中途半端な状態で終わると、どこまで動かしたか分からなくなります。
Q. 移動の記録はどのくらい残しますか。 A. 次の棚卸が終わるまでは残してください。差異が出たときに、移動が原因かどうかを確かめられます。それ以降は、レイアウト図があれば足ります。
Q. 移動のあと、歩く距離が減ったか測れますか。 A. 測れます。ピッキング1件あたりの時間を、移動の前後で比べてください。距離そのものを測らなくても、時間で差が出ます。