ラックの点検|ぶつけた跡と積載荷重の見方
目次
倉庫の棚は、倒れると人が下敷きになります。それでも、日常の点検の項目に入っていない現場が多くあります。フォークリフトがぶつけた支柱の曲がりは、少しずつ進み、ある日まとめて崩れます。見るところを決めておけば、日常の巡回で気づけます。
この記事では、ラックの点検を、倒れる原因、見るところ、積載荷重の確かめ方、傷んだときの扱い、記録の残し方の順に整理します。設置や補修の基準は製品と設置の条件で変わります。メーカーと、社内の安全の担当に確かめてください。
結論:ぶつけた跡と、載せすぎ。この2つで倒れる
ラックが倒れる原因は、大きく2つです。
1つ目は、部材の損傷です。フォークリフトがぶつけて、支柱や梁が曲がる。
2つ目は、載せすぎです。1段あたり、1連あたりの荷重を超える。
3つ目として、両方が重なる場合があります。傷んだ支柱に、重い荷物が載る。
1つ目は日常の点検で見つかります。ぶつけた跡は目で見えるからです。2つ目は表示と管理が要ります。何キロまで載せてよいかが分からなければ、誰も守れません。
見るところ
ラックの点検は、歩きながらでも見られます。
見るのは5つです。
1つ目は、支柱です。曲がり、へこみ、ふくらみ。下から1メートルまでがぶつかりやすい高さです。
2つ目は、梁です。たわみ、外れ、変形。
3つ目は、接合部です。ボルトの緩み、外れ、破損。
4つ目は、床との固定です。アンカーの緩み、浮き。
5つ目は、荷物の載り方です。はみ出し、偏り、崩れ。
1つ目がいちばん多く見つかります。フォークリフトのツメが当たる高さなので、ぶつけた跡が残ります。支柱の下のほうだけでも、毎日歩きながら見てください。
ぶつけた跡の見方
支柱の損傷は、程度によって扱いが変わります。
見るのは4つです。
1つ目は、へこみの深さです。浅い傷か、はっきり変形しているか。
2つ目は、曲がりの向きです。内側か外側か、ねじれているか。
3つ目は、塗装の剥がれです。新しい傷か、古い傷か。
4つ目は、同じ場所に繰り返しているかです。
4つ目が原因を教えてくれます。同じ支柱を何度もぶつけるなら、通路の幅か、旋回の場所に問題があります。部材を直しても、また同じことが起きます。ガードを付けるか、置き方を変えるかの判断が要ります。
積載荷重の確かめ方
何キロまで載せてよいかは、表示されていないと分かりません。
確かめるのは4つです。
1つ目は、1段あたりの荷重です。梁1組にいくつまで。
2つ目は、1連あたりの荷重です。支柱1組が支える合計。
3つ目は、表示があるかです。ラックに貼られているか。
4つ目は、実際に載っている重さです。荷物1つの重さ × 数。
3つ目が無い倉庫が多くあります。表示が無ければ、メーカーに問い合わせて確かめてください。型式と段数、梁の長さが分かれば、答えてもらえます。分かったら、ラックに貼ってください。
表示を貼る
荷重の表示は、現場で見える形にします。
貼るのは4つです。
1つ目は、1段あたりの荷重です。
2つ目は、1連あたりの荷重です。
3つ目は、貼る場所です。通路から見える高さ。
4つ目は、分かりやすい単位です。キログラムで。
4つ目に注意してください。「1000kg」と書いてあっても、荷物1つが何キロか分からなければ守れません。扱う品目の重さの目安を、あわせて貼っておくと判断できます。「このパレット1枚がおよそ300kg」という情報が要ります。
傷んだときの扱い
損傷を見つけたら、そのまま使い続けないことです。
動きは4段です。
1つ目は、荷物を降ろすことです。その段、その連から。
2つ目は、使用を止める表示をすることです。テープや札で。
3つ目は、判断を仰ぐことです。社内の安全の担当か、メーカーへ。
4つ目は、直すか交換するかを決めることです。
2つ目を必ずやってください。降ろしただけだと、次の人がまた載せます。「使用禁止」と書いた札を掛けるだけで防げます。札は現場に常備しておいてください。
補修の考え方
曲がった部材は、叩いて直せるとは限りません。
押さえるのは4つです。
1つ目は、部材の交換が基本だということです。曲がりが戻っても、強度は戻りません。
2つ目は、メーカーに相談することです。同じ型式の部材が手に入るか。
3つ目は、溶接や補強の可否です。製品によっては認められません。
4つ目は、直すまでの運用です。その段を空けたまま使うか、全体を止めるか。
1つ目を知らずに叩いて直している現場があります。見た目は戻っても、曲がった時点で強度は落ちています。判断はメーカーか、社内の安全の担当に確かめてください。
記録に残すこと
ラックの点検は、記録が残ると変化が見えます。
書くのは4つです。
1つ目は、点検した日と人です。
2つ目は、見つけた損傷の場所です。列と段。
3つ目は、程度です。軽い、要観察、使用停止。
4つ目は、その後の処置です。
2つ目を場所で書いてください。「A列3番の支柱、下から50cm」という書き方だと、次に見る人が同じ場所を確かめられます。「支柱に傷」だけでは、どこか分かりません。
頻度と担当を決める
点検は、やる日と人が決まっていないと続きません。
決めるのは4つです。
1つ目は、日常の点検です。歩きながら見る。毎日。
2つ目は、定期の点検です。月に1回、しっかり見る。
3つ目は、担当です。誰が見るか。
4つ目は、報告の先です。見つけたら誰に言うか。
1つ目を巡回のついでにしてください。専用の時間を取ると続きません。朝の見回りで支柱の下のほうを見るだけでも、大きな損傷は見つかります。月1回の定期のときに、上のほうや接合部を見ます。
フォークリフトの運転とつなげる
ラックの損傷は、フォークリフトの操作から生まれます。
つなげるのは4つです。
1つ目は、ぶつけたら報告することです。責めない形にします。
2つ目は、ぶつけた場所を集計することです。
3つ目は、通路の幅を見直すことです。
4つ目は、教育につなげることです。
1つ目を責めない形にしてください。ぶつけたことを言えないと、傷んだラックがそのまま使われます。報告した人を責めるより、報告が出てくるほうが安全です。この方針を、はっきり伝えてください。
ガードを付ける
同じ場所を繰り返しぶつけるなら、守る物を付けるという手があります。
考えるのは4つです。
1つ目は、支柱のガードです。下のほうに取り付けます。
2つ目は、通路の角のガードです。曲がるときに当たる場所。
3つ目は、床のラインです。通る位置を示すと、寄りすぎが減ります。
4つ目は、ミラーです。見えない角を見えるようにします。
3つ目は費用がかかりません。床にテープを貼って通る位置を示すだけで、支柱に寄りすぎることが減ります。ぶつけた場所を記録して、そこから優先して手を打ってください。
高い段の点検
上の段は、地上から見えません。別の見方が要ります。
やり方は4つです。
1つ目は、フォークリフトで上げて見ることです。定期の点検のときに。
2つ目は、下から双眼鏡や望遠で見ることです。
3つ目は、荷物を降ろすタイミングで見ることです。空になったときが機会です。
4つ目は、写真を撮って見ることです。
3つ目がいちばん現実的です。在庫が減って空いた段は、そのまま点検の機会になります。空になったら見る、と決めておくと、上の段も定期的に確かめられます。
荷物の載せ方も点検の対象
ラックそのものが無事でも、載せ方が悪いと崩れます。
見るのは4つです。
1つ目は、はみ出しです。通路側にはみ出していないか。
2つ目は、偏りです。片側だけに重さが寄っていないか。
3つ目は、積み上げの高さです。上に積みすぎていないか。
4つ目は、パレットの状態です。割れ、反り、釘の飛び出し。
4つ目が見落とされます。割れたパレットに載せると、フォークリフトで持ち上げたときに崩れます。入荷のときにパレットの状態を見て、傷んだものは使わない形にしてください。
まとめ
ラックの点検は、ぶつけた跡と載せすぎの2つを見ます。
- 支柱の下から1メートルが、いちばんぶつかる高さ
- 積載荷重の表示が無ければ、メーカーに問い合わせて貼る
- 荷重だけでなく、荷物1つの重さの目安もあわせて貼る
- 損傷を見つけたら、荷物を降ろして「使用禁止」の札を掛ける
- 曲がった部材は叩いて直しても強度は戻らない
設置や補修の基準は製品と設置の条件で変わります。メーカーと、社内の安全の担当に確かめてください。
よくある質問
Q. 積載荷重の表示がありません。 A. メーカーに問い合わせてください。型式と段数、梁の長さが分かれば答えてもらえます。分かったら、通路から見える高さに貼ってください。
Q. 荷重の表示があっても守られません。 A. 荷物1つの重さの目安もあわせて貼ってください。「1000kgまで」と書いてあっても、1つが何キロか分からなければ守れません。「このパレット1枚がおよそ300kg」という情報が要ります。
Q. 曲がった支柱は叩いて直せますか。 A. 見た目が戻っても、曲がった時点で強度は落ちています。部材の交換が基本です。判断はメーカーか、社内の安全の担当に確かめてください。
Q. 損傷を見つけたら、何からやりますか。 A. 荷物を降ろして、「使用禁止」の札を掛けてください。降ろしただけだと、次の人がまた載せます。札を現場に常備しておくと、その場で対応できます。
Q. 点検はどのくらいの頻度ですか。 A. 日常は巡回のついでに、定期は月に1回です。専用の時間を取ると続きません。朝の見回りで支柱の下のほうを見るだけでも、大きな損傷は見つかります。
Q. 同じ場所を何度もぶつけます。 A. 通路の幅か、旋回の場所に原因があります。部材を直しても、また同じことが起きます。ガードを付けるか、置き方を変えるかを検討してください。
Q. ぶつけたことを報告してもらえません。 A. 責めない方針をはっきり伝えてください。傷んだラックがそのまま使われるほうが危険です。報告した人を責めるより、報告が出てくるほうが安全です。
Q. 記録には何を書きますか。 A. 点検した日と人、損傷の場所、程度、その後の処置です。「A列3番の支柱、下から50cm」という書き方にすると、次に見る人が同じ場所を確かめられます。
Q. 床との固定も見ますか。 A. 見てください。アンカーの緩みや浮きは、倒れる直接の原因になります。日常では気づきにくいので、月1回の定期の点検の項目に入れてください。
Q. 荷物のはみ出しは、どのくらいまで許されますか。 A. 製品と設置の条件によります。通路にはみ出すと、フォークリフトがぶつける原因になります。はみ出さない大きさの荷物を置く形にするのが基本です。
Q. 地震への備えはどうしますか。 A. 床への固定、落下防止のバーやネット、上に軽い物を置く配置。社内の安全の担当と、メーカーに相談してください。倉庫の立地と建物の構造でも変わります。
Q. 中古のラックを買いました。 A. 型式と積載荷重を確かめてください。メーカーが分からないと、荷重も部材も分かりません。分からないラックは、余裕を持った使い方にするか、使わない判断もあります。
Q. ぶつける場所が決まっています。 A. 床にテープを貼って、通る位置を示してください。費用がかからず、寄りすぎが減ります。それでも続くなら、支柱のガードや角のガードを検討します。
Q. 上の段はどう点検しますか。 A. 荷物を降ろして空になったときが機会です。空になったら見る、と決めておくと、上の段も定期的に確かめられます。定期の点検ではフォークリフトで上げて見ます。
Q. 点検で何を「使用停止」にしますか。 A. 判断の基準を社内で決めておいてください。明らかな変形、ボルトの欠損、床から浮いているものは止めます。迷うものはメーカーか社内の安全の担当に確かめます。
Q. ガードの費用が出ません。 A. ぶつけた回数と、部材を交換した費用を数えて示してください。交換の費用のほうが大きいことがあります。床のテープから始める方法もあります。
Q. パレットの状態も見ますか。 A. 見てください。割れや反りのあるパレットに載せると、持ち上げたときに崩れます。入荷のときに状態を見て、傷んだものは使わない形にしてください。
Q. 積み上げの高さに決まりはありますか。 A. ラックの段の高さと、荷物の安定で決まります。上に積みすぎると、取り出すときに崩れます。社内で目安を決めて、表示しておいてください。
Q. 点検の記録は誰が見ますか。 A. 社内の安全の担当と、現場の責任者です。使用停止にしたラックが放置されていないかを確かめる人が要ります。月に1回、未処理のものを見る形にしてください。
Q. ラックの耐用年数はありますか。 A. 製品と使い方によります。年数より、損傷の積み重ねで判断します。同じラックで損傷が増えているなら、部分の交換ではなく入れ替えを検討してください。
Q. 屋外にあるラックも同じですか。 A. さびと固定の緩みを、より頻繁に見てください。雨風で進み方が早くなります。塗装の剥がれからさびが広がるので、見つけたら早めに手を打ちます。
Q. 使用停止の札は、誰が外しますか。 A. 直したことを確かめた人です。現場の判断で外さない形にしてください。外す人を決めておかないと、直っていないのに使われることがあります。