危険予知(KY)のやり方|倉庫での進め方
目次
危険予知は、作業を始める前に「今日、どこが危ないか」を出し合う活動です。建設の現場では定着していますが、倉庫では形だけになりやすいところがあります。毎日同じ場所で同じ作業をしていると、出てくる危険も毎日同じになり、読み上げるだけの時間になります。
この記事では、危険予知を、目的、倉庫での進め方、マンネリを避ける形、記録の残し方、作業計画との関係の順に整理します。作業の内容で必要なことは変わるため、自社の現場に置き換えて読んでください。
危険予知は何のためにやるか
危険予知の目的は、その日の作業で起きうることを、作業の前に言葉にしておくことです。言葉にしておくと、その場面に来たときに気づけます。
倉庫の作業は毎日似ていますが、その日だけの条件が必ずあります。大口の入荷がある、新しい人が入っている、雨で床が濡れている、通路に仮置きがある、いつもと違う荷姿の荷物が来る。これらは前日とは違う危険を生みます。
「今日は何が違うか」を1つ挙げるだけでも、危険予知として成立します。何も違わない日は、実はそれほど多くありません。
倉庫での進め方
朝礼の中で、5分から10分で行う形が一般的です。全員が集まる時間があるなら、そこに入れます。
進め方は、その日の作業を確認し、危ないと思う場面を出し合い、どうするかを決め、全員で確認する、という流れです。出すのは1つか2つで足ります。たくさん出しても覚えられません。
決めごとは、その日の行動として言える形にします。「気をつける」ではなく、「A通路は仮置きがあるので、フォークリフトは入らない」という形です。誰が、どこで、何をするかが分かる言葉にします。
司会は持ち回りにするのがおすすめです。同じ人が毎日進めると、出てくる項目が固定されます。その日の作業に一番近い人が進めると、内容が具体的になります。
短くする
長いと続きません。5分で終わる形にします。項目を1つに絞り、決めごとを1つ出して、全員で復唱する。これで5分かかりません。時間が長くなるほど、参加している人の集中が落ちます。
マンネリを避ける
危険予知が形だけになるのは、毎日同じことを言っているからです。ここを変える方法はいくつかあります。
1つ目は、場所を変えることです。朝礼の場所ではなく、実際にその日の作業をする場所で行います。目の前に現物があると、具体的な危険が出てきます。仮置きされた荷物、濡れた床、傾いた棚。見ながら話すと、言葉が変わります。
2つ目は、その日の条件から始めることです。「今日はどこが違うか」を最初の問いにします。新しい人がいる、大口が入る、いつもと違う機械を使う。違いから入ると、毎日違う話になります。
3つ目は、前日のヒヤリハットを使うことです。昨日「危なかった」と報告があった場所を、その日の題材にします。現実に起きたことなので、全員が想像できます。ヒヤリハットの集め方は倉庫の安全対策にまとめています。
4つ目は、若い人や新しい人に聞くことです。慣れていない人ほど、慣れた人が見落としている危険に気づきます。「初めて見て、どこが危なそうですか」と聞くと、思わぬ指摘が出ます。
倉庫で出やすい題材
何を題材にするか迷うときのために、倉庫でよく出るものを挙げておきます。その日の条件に当てはまるものを1つ選ぶ使い方をします。
フォークリフトと人が交わる場所。荷を積んだときの視界。高い段からの取り出し。濡れた床と段差。重い荷物の持ち上げ。荷役の場所での車の動き。仮置きされた荷物。新しく入った人の動線。いつもと違う荷姿の荷物。暑さと水分の補給。
このなかで、その日に当てはまるものを1つ選びます。大口の入荷がある日なら荷役の場所、雨の日なら濡れた床、新しい人が入った日ならその人の動線。条件から題材を選ぶと、毎日違う話になります。
季節でも変わります。夏は暑さ、冬は凍結と暗さ、繁忙期は急ぎによる無理。季節の入り口で、その時期の題材を一覧にしておくと、司会が迷いません。
指差しと呼称を組み合わせる
危険予知で決めた行動を、実際の作業のなかで思い出すための仕掛けが要ります。指差しと呼称は、そのための道具です。
交差点で一時停止するときに指を差して「右よし、左よし」と言う。荷を積む前にフォークの高さを見て「高さよし」と言う。目と手と口の3つを使うと、流し見になりにくくなります。
最初は照れがあって続きません。全員でやる形にするのと、管理する立場の人が率先してやることで定着します。決めた行動を1つだけにして、それだけを徹底するほうが、5つ決めて全部が曖昧になるより効きます。
危険予知で決めた行動と、指差しの対象を合わせておきます。朝に「A通路は徐行」と決めたなら、その日はA通路の入口で速度を確認する。決めたことと、実際の動作がつながっている形にします。
出てきた危険をどうするか
出し合って終わりにすると、翌日も同じ話になります。出た危険のうち、物で直せるものは直します。
「A通路の仮置きが危ない」と出たなら、仮置き場を作る。「床が滑る」と出たなら、拭く道具を近くに置く。「棚の表示が読めない」と出たなら、貼り直す。その日のうちに直せるものは、その日に直します。
すぐに直せないものは、一覧に残して、担当と期限を付けます。棚の配置を変える、設備を入れる、といったものです。一覧が溜まっていくだけになると、出す意味が無くなります。月に1回、一覧を見る日を決めておきます。
直した結果は、朝礼で共有します。「先週出た仮置きの件、置き場を作りました」と伝えるだけで、出せば直るということが伝わります。これが、次の指摘を引き出します。
新しい人が入った日
人が入れ替わる職場では、新しい人が入った日そのものが、危険の条件になります。その人が何を知らないかを、周りが知らないという状態が生まれるためです。
その日の危険予知は、新しい人の動線を題材にします。どこを歩くか、どの機械の近くを通るか、立ち入ってはいけない場所はどこか。歩いて見せながら話すのがいちばん伝わります。
そのうえで、周りの人にも役割を伝えます。「今日は新しい人がいるので、フォークリフトは交差点で必ず止まる」といった形です。新しい人に気をつけてもらうのではなく、周りが合わせるほうが確実に効きます。
止めてよい、聞いてよい、と最初に伝えることも忘れないようにします。迷ったときに止められるかどうかで、事故になるかどうかが分かれます。「聞くと迷惑をかける」と思われると、分からないまま進めます。
記録に残す
記録は、簡単なもので足ります。日付、作業の内容、出た危険、決めた行動、参加した人。用紙に5つの欄があれば十分です。
記録があると、3つのことができます。1つ目は、同じ危険が繰り返し出ていないかを見ること。繰り返しているなら、手当てが効いていません。2つ目は、教育を行った証拠になること。3つ目は、事故が起きたときに、事前にどう認識していたかを示せることです。
参加した人の欄は、名前を書いてもらう形にします。読み上げを聞いただけの人と、実際に参加した人を区別できます。休んでいた人には、後から内容を伝える形も決めておきます。
記録は、月にまとめて見返します。出てきた危険を場所別に並べると、どのエリアが危ないと感じられているかが見えます。ヒヤリハットや事故の記録と重ねると、実際の発生と、感じている危険がずれている場所も分かります。
作業計画との関係
フォークリフトを使う作業では、法令にもとづく作業計画を定めることが求められています。危険予知は、その計画を日々の作業に落とす場になります。
作業計画には、運行経路と作業の方法が書かれています。危険予知では、その日の条件を足します。「今日は計画どおりの経路が使えないので、こう回る」といった形です。計画と、その日の実際をつなぐのが危険予知という位置づけになります。
危険予知で「計画のこの部分が現場と合っていない」と出てきたら、計画そのものを見直す合図です。レイアウトが変わった、荷物が変わった、人の動線が変わった。計画の改訂は、現場からの指摘で始まるのが自然な形です。作業計画の作り方はフォークリフトの作業計画にまとめています。
誰が何をするかまで決める
危険予知で出た決めごとは、主語を入れて言い切ります。「A通路は徐行する」だけだと、誰がやるのかが曖昧になります。「フォークリフトに乗る人は、A通路に入る前で一度止まる」まで言うと、行動が決まります。
役割が分かれている作業では、それぞれに1つずつ決めごとを出すこともあります。積む人、運ぶ人、記録する人。自分に関係のある決めごとが1つあると、当事者として聞けます。関係の無い話ばかりだと、聞き流されます。
決めたことは、その日の終わりに短く振り返ります。守れたか、守れなかったか、守れなかったなら何が邪魔だったか。守れなかった理由のほうが、次の手当てにつながります。「忙しくて通れなかった」なら、決めごとではなく通路の作りに問題があります。
続けるための工夫
危険予知は、始めるのは簡単で、3か月続けるのが難しい活動です。止まる理由は、時間が長い、内容が同じ、出しても何も変わらない、の3つです。
時間は5分以内にします。長引いたら司会が切ると決めておきます。内容は、条件から始める形にすれば自然に変わります。出したものへの手当ては、その日に直せるものを1つでも直して見せます。
続いているかどうかは、記録の枚数で分かります。毎日やる形にしたなら、月の営業日数と枚数が合っているはずです。抜けている日が続いていれば、形が重すぎます。量を減らして、続く形に戻します。
年に1回は、やり方そのものを見直します。司会の回し方、題材の選び方、記録の様式。現場から「こうしたい」が出てくるなら、それがいちばん続く形になります。
荷主や元請から求められることもある
委託で倉庫を運営している場合、危険予知の実施を求められることがあります。記録の提出を条件にしている取引もあります。
求められる形は相手によって違いますが、日付、参加者、出た危険、決めた行動が残っていれば、たいていの求めに応えられます。様式を相手に合わせる必要があるかは、契約の段階で確かめます。あとから様式を変えると、過去の記録と形が揃わなくなります。
監査や巡視が入るときは、記録の枚数と中身の両方が見られます。毎日同じ内容が並んでいる記録は、形だけだと判断されます。条件から始める形にしておけば、中身が自然に変わるので、この点でも有利になります。
自社の安全のためにやっていることが、そのまま取引の条件も満たす。二重に作らない形にしておくのが、続けるうえでも大事になります。
よくある質問
人数が少なくて朝礼ができません
2人でも成立します。その日の作業で危ないところを1つ確認して、どうするかを決める。形式より、言葉にすることに意味があります。1人の場合は、作業の前に紙に1行書く形でも構いません。書くことで、その場面に来たときに気づけます。
出てくる危険が毎日同じです
条件から始めていないことがほとんどです。「今日はどこが違うか」を最初に聞きます。それでも出ないときは、場所を変えて、実際の現場に立って話します。目の前に現物があると、出てくる言葉が変わります。
派遣や短期の人も参加させますか
その場所で働く人には、危険を伝える必要があります。短期の人ほど、その現場の危ないところを知りません。参加してもらったうえで、立入禁止の場所と、機械の近くの決めごとだけは、歩いて見せます。
記録はどのくらい残しますか
教育や安全の活動の記録として、1年から3年残している現場が多くあります。事故が起きたときに、事前にどう認識していたかを示す資料にもなります。保存の条件が社内規程や契約で定められている場合は、それに従います。
「気をつける」以外の決めごとが出てきません
決めごとを、行動の形にして言い直す練習をします。「気をつける」→「A通路は徐行する」「積む前に足元の荷物をどかす」。誰が、どこで、何をするかが言えれば、行動の形になっています。司会が言い直す役をすると、少しずつ揃ってきます。
事務や管理の人も参加しますか
倉庫に入る人は全員が対象です。事務所から倉庫へ荷物を取りに行くだけでも、フォークリフトの動線を横切ります。毎日参加できない場合は、月に1回でも参加してもらうと、倉庫の危険を知ってもらえます。来客や業者が入るときの案内も、その知識があるかどうかで変わります。
危険予知と作業手順書はどう違いますか
作業手順書は、その作業のやり方を決めた文書です。危険予知は、その日の条件に合わせて、手順書に書かれていない危険を拾う活動です。手順書があるから危険予知が要らない、ということにはなりません。逆に、危険予知で繰り返し出る項目は、手順書に書き足します。
危険予知の記録が溜まるだけで使われていません
月に1回、場所別に並べて見る日を決めます。同じ場所が何度も出ていれば、そこに手を入れます。見返さない記録は、書く側にも意味が伝わりません。件数を数えるだけでも、続いているかどうかが分かります。溜まった記録は、年に1回、安全の活動を振り返るときの材料にもなります。
危険予知の様式は決まった形がありますか
法令で様式が定められているものではありません。日付、作業の内容、出た危険、決めた行動、参加者の5つが残る形であれば足ります。市販の用紙や、配布されている様式を使っても構いません。大事なのは、書く欄が多すぎないことです。欄が多いと、埋めるのが目的になります。
まとめ
危険予知は、その日の作業で起きうることを、作業の前に言葉にしておく活動です。言葉にしておくと、その場面に来たときに気づけます。
倉庫で形だけになりやすいのは、毎日同じことを言っているためです。「今日はどこが違うか」から始める、実際の作業場所で行う、前日のヒヤリハットを使う、新しい人に聞く。この4つで中身が変わります。
そして、出てきた危険のうち、物で直せるものはその日に直します。出せば直ると分かれば、次の指摘が出てきます。出し合って終わりにすると、翌日も同じ話になります。