荷役と安全実務2026.09.16 公開AN-02

危険予知(KY)のやり方|倉庫での進め方

目次

危険予知は、作業を始める前に「今日、どこが危ないか」を出し合う活動です。建設の現場では定着していますが、倉庫では形だけになりやすいところがあります。毎日同じ場所で同じ作業をしていると、出てくる危険も毎日同じになり、読み上げるだけの時間になります。

この記事では、危険予知を、目的倉庫での進め方マンネリを避ける形記録の残し方作業計画との関係の順に整理します。作業の内容で必要なことは変わるため、自社の現場に置き換えて読んでください。

危険予知の記録を残す様式が配られています。

危険予知は何のためにやるか

危険予知の目的は、その日の作業で起きうることを、作業の前に言葉にしておくことです。言葉にしておくと、その場面に来たときに気づけます。

倉庫の作業は毎日似ていますが、その日だけの条件が必ずあります。大口の入荷がある、新しい人が入っている、雨で床が濡れている、通路に仮置きがある、いつもと違う荷姿の荷物が来る。これらは前日とは違う危険を生みます。

「今日は何が違うか」を1つ挙げるだけでも、危険予知として成立します。何も違わない日は、実はそれほど多くありません。

今日だけの条件を見つける大口の入荷新しい人がいる雨で床が濡れた通路に仮置き今日は何が違うか
今日だけの条件を見つける

倉庫での進め方

朝礼の中で、5分から10分で行う形が一般的です。全員が集まる時間があるなら、そこに入れます。

進め方は、その日の作業を確認し、危ないと思う場面を出し合い、どうするかを決め、全員で確認する、という流れです。出すのは1つか2つで足ります。たくさん出しても覚えられません。

決めごとは、その日の行動として言える形にします。「気をつける」ではなく、「A通路は仮置きがあるので、フォークリフトは入らない」という形です。誰が、どこで、何をするかが分かる言葉にします。

司会は持ち回りにするのがおすすめです。同じ人が毎日進めると、出てくる項目が固定されます。その日の作業に一番近い人が進めると、内容が具体的になります。

短くする

長いと続きません。5分で終わる形にします。項目を1つに絞り、決めごとを1つ出して、全員で復唱する。これで5分かかりません。時間が長くなるほど、参加している人の集中が落ちます。

5分で終わる形にする1条件今日は何が違う2危険1つか2つ3決める行動の形で4復唱全員で
5分で終わる形にする

マンネリを避ける

危険予知が形だけになるのは、毎日同じことを言っているからです。ここを変える方法はいくつかあります。

1つ目は、場所を変えることです。朝礼の場所ではなく、実際にその日の作業をする場所で行います。目の前に現物があると、具体的な危険が出てきます。仮置きされた荷物、濡れた床、傾いた棚。見ながら話すと、言葉が変わります。

2つ目は、その日の条件から始めることです。「今日はどこが違うか」を最初の問いにします。新しい人がいる、大口が入る、いつもと違う機械を使う。違いから入ると、毎日違う話になります。

3つ目は、前日のヒヤリハットを使うことです。昨日「危なかった」と報告があった場所を、その日の題材にします。現実に起きたことなので、全員が想像できます。ヒヤリハットの集め方は倉庫の安全対策にまとめています。

4つ目は、若い人や新しい人に聞くことです。慣れていない人ほど、慣れた人が見落としている危険に気づきます。「初めて見て、どこが危なそうですか」と聞くと、思わぬ指摘が出ます。

マンネリを避ける4つの方法やること効き方作業する場所でやる現物を見ると言葉が変わる今日の条件から始める毎日違う話になる前日のヒヤリハット全員が想像できる新しい人に聞く慣れた人の見落としが出る
マンネリを避ける4つの方法

倉庫で出やすい題材

何を題材にするか迷うときのために、倉庫でよく出るものを挙げておきます。その日の条件に当てはまるものを1つ選ぶ使い方をします。

フォークリフトと人が交わる場所。荷を積んだときの視界。高い段からの取り出し。濡れた床と段差。重い荷物の持ち上げ。荷役の場所での車の動き。仮置きされた荷物。新しく入った人の動線。いつもと違う荷姿の荷物。暑さと水分の補給。

このなかで、その日に当てはまるものを1つ選びます。大口の入荷がある日なら荷役の場所、雨の日なら濡れた床、新しい人が入った日ならその人の動線。条件から題材を選ぶと、毎日違う話になります。

季節でも変わります。夏は暑さ、冬は凍結と暗さ、繁忙期は急ぎによる無理。季節の入り口で、その時期の題材を一覧にしておくと、司会が迷いません。

その日の条件から題材を選ぶ新しい人がいる日動線と立入禁止通常の作業交わる場所の確認大口の入荷荷役の場所と車床と通路濡れ、段差、仮置き人に関わる ↑物に関わる ↓← いつもどおりいつもと違う →
その日の条件から題材を選ぶ

指差しと呼称を組み合わせる

危険予知で決めた行動を、実際の作業のなかで思い出すための仕掛けが要ります。指差しと呼称は、そのための道具です。

交差点で一時停止するときに指を差して「右よし、左よし」と言う。荷を積む前にフォークの高さを見て「高さよし」と言う。目と手と口の3つを使うと、流し見になりにくくなります。

最初は照れがあって続きません。全員でやる形にするのと、管理する立場の人が率先してやることで定着します。決めた行動を1つだけにして、それだけを徹底するほうが、5つ決めて全部が曖昧になるより効きます。

危険予知で決めた行動と、指差しの対象を合わせておきます。朝に「A通路は徐行」と決めたなら、その日はA通路の入口で速度を確認する。決めたことと、実際の動作がつながっている形にします。

出てきた危険をどうするか

出し合って終わりにすると、翌日も同じ話になります。出た危険のうち、物で直せるものは直します。

「A通路の仮置きが危ない」と出たなら、仮置き場を作る。「床が滑る」と出たなら、拭く道具を近くに置く。「棚の表示が読めない」と出たなら、貼り直す。その日のうちに直せるものは、その日に直します。

すぐに直せないものは、一覧に残して、担当と期限を付けます。棚の配置を変える、設備を入れる、といったものです。一覧が溜まっていくだけになると、出す意味が無くなります。月に1回、一覧を見る日を決めておきます。

直した結果は、朝礼で共有します。「先週出た仮置きの件、置き場を作りました」と伝えるだけで、出せば直るということが伝わります。これが、次の指摘を引き出します。

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実際に使える様式が必要な方へ

『危険予知記録』の様式が、点検板で配られています。そのまま使えるExcelです。

この様式をひらく

新しい人が入った日

人が入れ替わる職場では、新しい人が入った日そのものが、危険の条件になります。その人が何を知らないかを、周りが知らないという状態が生まれるためです。

その日の危険予知は、新しい人の動線を題材にします。どこを歩くか、どの機械の近くを通るか、立ち入ってはいけない場所はどこか。歩いて見せながら話すのがいちばん伝わります。

そのうえで、周りの人にも役割を伝えます。「今日は新しい人がいるので、フォークリフトは交差点で必ず止まる」といった形です。新しい人に気をつけてもらうのではなく、周りが合わせるほうが確実に効きます。

止めてよい、聞いてよい、と最初に伝えることも忘れないようにします。迷ったときに止められるかどうかで、事故になるかどうかが分かれます。「聞くと迷惑をかける」と思われると、分からないまま進めます。

新しい人がいる日は周りが合わせる本人に気をつけさせる知らないことが分からない聞きにくい立場説明だけでは届かない周りが合わせる交差点で必ず止まる動線を歩いて見せる止めてよいと最初に伝える
新しい人がいる日は周りが合わせる

記録に残す

記録は、簡単なもので足ります。日付、作業の内容、出た危険、決めた行動、参加した人。用紙に5つの欄があれば十分です。

記録があると、3つのことができます。1つ目は、同じ危険が繰り返し出ていないかを見ること。繰り返しているなら、手当てが効いていません。2つ目は、教育を行った証拠になること。3つ目は、事故が起きたときに、事前にどう認識していたかを示せることです。

参加した人の欄は、名前を書いてもらう形にします。読み上げを聞いただけの人と、実際に参加した人を区別できます。休んでいた人には、後から内容を伝える形も決めておきます。

記録は、月にまとめて見返します。出てきた危険を場所別に並べると、どのエリアが危ないと感じられているかが見えます。ヒヤリハットや事故の記録と重ねると、実際の発生と、感じている危険がずれている場所も分かります。

記録に残す5つの欄危険予知記録日付作業の内容危険出たこと行動決めたこと参加者名前を書く結果守れたか欄が多いと埋めるのが目的に月1回、場所別に見教育の記録にもなる
記録に残す5つの欄

作業計画との関係

フォークリフトを使う作業では、法令にもとづく作業計画を定めることが求められています。危険予知は、その計画を日々の作業に落とす場になります。

作業計画には、運行経路と作業の方法が書かれています。危険予知では、その日の条件を足します。「今日は計画どおりの経路が使えないので、こう回る」といった形です。計画と、その日の実際をつなぐのが危険予知という位置づけになります。

危険予知で「計画のこの部分が現場と合っていない」と出てきたら、計画そのものを見直す合図です。レイアウトが変わった、荷物が変わった、人の動線が変わった。計画の改訂は、現場からの指摘で始まるのが自然な形です。作業計画の作り方はフォークリフトの作業計画にまとめています。

誰が何をするかまで決める

危険予知で出た決めごとは、主語を入れて言い切ります。「A通路は徐行する」だけだと、誰がやるのかが曖昧になります。「フォークリフトに乗る人は、A通路に入る前で一度止まる」まで言うと、行動が決まります。

役割が分かれている作業では、それぞれに1つずつ決めごとを出すこともあります。積む人、運ぶ人、記録する人。自分に関係のある決めごとが1つあると、当事者として聞けます。関係の無い話ばかりだと、聞き流されます。

決めたことは、その日の終わりに短く振り返ります。守れたか、守れなかったか、守れなかったなら何が邪魔だったか。守れなかった理由のほうが、次の手当てにつながります。「忙しくて通れなかった」なら、決めごとではなく通路の作りに問題があります。

続けるための工夫

危険予知は、始めるのは簡単で、3か月続けるのが難しい活動です。止まる理由は、時間が長い、内容が同じ、出しても何も変わらない、の3つです。

時間は5分以内にします。長引いたら司会が切ると決めておきます。内容は、条件から始める形にすれば自然に変わります。出したものへの手当ては、その日に直せるものを1つでも直して見せます。

続いているかどうかは、記録の枚数で分かります。毎日やる形にしたなら、月の営業日数と枚数が合っているはずです。抜けている日が続いていれば、形が重すぎます。量を減らして、続く形に戻します。

年に1回は、やり方そのものを見直します。司会の回し方、題材の選び方、記録の様式。現場から「こうしたい」が出てくるなら、それがいちばん続く形になります。

荷主や元請から求められることもある

委託で倉庫を運営している場合、危険予知の実施を求められることがあります。記録の提出を条件にしている取引もあります。

求められる形は相手によって違いますが、日付、参加者、出た危険、決めた行動が残っていれば、たいていの求めに応えられます。様式を相手に合わせる必要があるかは、契約の段階で確かめます。あとから様式を変えると、過去の記録と形が揃わなくなります。

監査や巡視が入るときは、記録の枚数と中身の両方が見られます。毎日同じ内容が並んでいる記録は、形だけだと判断されます。条件から始める形にしておけば、中身が自然に変わるので、この点でも有利になります。

自社の安全のためにやっていることが、そのまま取引の条件も満たす。二重に作らない形にしておくのが、続けるうえでも大事になります。

よくある質問

人数が少なくて朝礼ができません

2人でも成立します。その日の作業で危ないところを1つ確認して、どうするかを決める。形式より、言葉にすることに意味があります。1人の場合は、作業の前に紙に1行書く形でも構いません。書くことで、その場面に来たときに気づけます。

出てくる危険が毎日同じです

条件から始めていないことがほとんどです。「今日はどこが違うか」を最初に聞きます。それでも出ないときは、場所を変えて、実際の現場に立って話します。目の前に現物があると、出てくる言葉が変わります。

派遣や短期の人も参加させますか

その場所で働く人には、危険を伝える必要があります。短期の人ほど、その現場の危ないところを知りません。参加してもらったうえで、立入禁止の場所と、機械の近くの決めごとだけは、歩いて見せます。

記録はどのくらい残しますか

教育や安全の活動の記録として、1年から3年残している現場が多くあります。事故が起きたときに、事前にどう認識していたかを示す資料にもなります。保存の条件が社内規程や契約で定められている場合は、それに従います。

「気をつける」以外の決めごとが出てきません

決めごとを、行動の形にして言い直す練習をします。「気をつける」→「A通路は徐行する」「積む前に足元の荷物をどかす」。誰が、どこで、何をするかが言えれば、行動の形になっています。司会が言い直す役をすると、少しずつ揃ってきます。

事務や管理の人も参加しますか

倉庫に入る人は全員が対象です。事務所から倉庫へ荷物を取りに行くだけでも、フォークリフトの動線を横切ります。毎日参加できない場合は、月に1回でも参加してもらうと、倉庫の危険を知ってもらえます。来客や業者が入るときの案内も、その知識があるかどうかで変わります。

危険予知と作業手順書はどう違いますか

作業手順書は、その作業のやり方を決めた文書です。危険予知は、その日の条件に合わせて、手順書に書かれていない危険を拾う活動です。手順書があるから危険予知が要らない、ということにはなりません。逆に、危険予知で繰り返し出る項目は、手順書に書き足します。

危険予知の記録が溜まるだけで使われていません

月に1回、場所別に並べて見る日を決めます。同じ場所が何度も出ていれば、そこに手を入れます。見返さない記録は、書く側にも意味が伝わりません。件数を数えるだけでも、続いているかどうかが分かります。溜まった記録は、年に1回、安全の活動を振り返るときの材料にもなります。

危険予知の様式は決まった形がありますか

法令で様式が定められているものではありません。日付、作業の内容、出た危険、決めた行動、参加者の5つが残る形であれば足ります。市販の用紙や、配布されている様式を使っても構いません。大事なのは、書く欄が多すぎないことです。欄が多いと、埋めるのが目的になります。

まとめ

危険予知は、その日の作業で起きうることを、作業の前に言葉にしておく活動です。言葉にしておくと、その場面に来たときに気づけます。

倉庫で形だけになりやすいのは、毎日同じことを言っているためです。「今日はどこが違うか」から始める、実際の作業場所で行う、前日のヒヤリハットを使う、新しい人に聞く。この4つで中身が変わります。

そして、出てきた危険のうち、物で直せるものはその日に直します。出せば直ると分かれば、次の指摘が出てきます。出し合って終わりにすると、翌日も同じ話になります。

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