出荷を間違えない実務2026.07.21 公開AZ-05

サンプルの貸出|返ってこない物をどう減らすか

目次

営業が客先へ持って行ったサンプルが、そのまま返ってこない。在庫からは減っているが、記録には残っていない。棚卸のときに差異として出てきて、原因が分からないまま処理されます。貸出の記録を取ると、この差異が消えます。

この記事では、サンプルの貸出を、返ってこない理由記録する項目期限の決め方督促の仕方返却と在庫の扱いの順に整理します。帳簿や資産の扱いは、社内の経理の担当に確かめてください。

サンプルや工具の貸出の様式そのものを探している場合は、在庫板にそろっています。

結論:記録が無いと、誰も探さない

サンプルが返ってこないのは、誰も追っていないからです。

理由は3つです。

1つ目は、記録が無いことです。貸したこと自体が残っていません。

2つ目は、期限が無いことです。いつまでという約束が無いと、返す動機が生まれません。

3つ目は、督促する人がいないことです。気づいた人が言うだけでは続きません。

3つが足りない記録貸したこと自体が残らない期限返す動機が生まれない督促する人気づいた人だけでは続かない
記録・期限・督促する人という3つの不足を並べた層の図

3つとも、仕組みで埋まります。記録の紙を1枚作って、期限の欄を入れて、月に1回一覧を見る担当を決める。これだけで返却率が変わります。

記録する項目

記録は、貸す人がその場で書ける形にします。

書くのは5つです。

1つ目は、日付と借りる人です。社内の誰が。

2つ目は、品番と数量です。

3つ目は、持って行く先です。客先の名前。

4つ目は、返す期限です。日付で書きます。

5つ目は、返却の予定と実際です。返ったら日付を書きます。

記録する5つサンプル貸出日付日付と借りる人品番品番と数量行き先客先の名前期限必ず日付で書く返却返った日「しばらく」では期限が来ない日付があれば督促のきっかけになる
日付と借りる人・品番と数量・持って行く先・期限・返却という5つの記載事項を並べた表

4つ目を必ず日付で書いてください。「しばらく」「終わったら」では、期限が来ません。2週間後でも1か月後でもよいので、日付を入れます。日付があれば、督促のきっかけができます。

期限の決め方

期限は、用途によって変えます。

決め方は4つです。

1つ目は、見せるだけなら短くすることです。1週間。

2つ目は、試してもらうなら中くらいです。1か月。

3つ目は、長期の評価なら長くすることです。3か月。

4つ目は、延長の手続きを決めることです。期限が来たら延長するか、返してもらうか。

期限の4つの決め方用途目安見せるだけ1週間試してもらう1か月長期の評価3か月延長手続きを決めておく
見せるだけ・試す・長期の評価・延長という4つの期限の決め方を並べた表

4つ目が無いと、期限が形だけになります。期限が来たときに延長の連絡を入れる形にすれば、そのつど状況が分かります。延長の記録が残れば、いつまで貸しているかも見えます。

客先に渡す場合

社内の人が持って行くだけでなく、客先に置いてくることがあります。

決めるのは4つです。

1つ目は、預けるのか、渡すのかです。返してもらうか、そのまま差し上げるか。

2つ目は、客先の誰が受け取ったかです。名前を残します。

3つ目は、返す方法です。取りに行くか、送ってもらうか。

4つ目は、費用です。送料をどちらが持つか。

客先に渡す場合の4つ決めること中身預けるか渡すか最初に決める受け取った人名前を控える返す方法取りに行くか送ってもらうか費用送料をどちらが持つか
預けるか渡すか・受け取った人・返す方法・費用という4つの決めごとを並べた表
点検表テンプレート
目録をひらく

この業務の記事をまとめて読む

貸出の記録と在庫の様式を探しているなら、在庫板のものが近道です。

この様式をひらく

1つ目を最初に決めてください。「貸す」つもりが、客先では「もらった」と思われていることがあります。書面に残すか、少なくとも受け取った人の名前を控えてください。高額な物なら、書面が要ります。

在庫の扱い

貸し出した物は、在庫としてどう扱うかを決めます。

決めるのは4つです。

1つ目は、在庫から減らすかです。貸出中という状態にするか。

2つ目は、受注に引き当てられないようにすることです。

3つ目は、棚卸での扱いです。貸出中の物をどう数えるか。

4つ目は、返ってきたときの検品です。

2つ目が事故になります。貸出中なのに在庫に残っていると、受注に引き当てられます。出荷の指示が出て、探しても無い、という形になります。貸したらその場で状態を変えてください。

督促の仕方

期限が来ても、自動では返ってきません。

やり方は4つです。

1つ目は、一覧を月に1回見ることです。期限を過ぎているものを抜き出します。

2つ目は、借りた人に連絡することです。まず社内の人へ。

3つ目は、状況を聞くことです。返せるのか、延長か、戻らないのか。

4つ目は、戻らないものを処理することです。

4つ目を決めておいてください。客先で使ってしまった、紛失した。返ってこないと分かった時点で、在庫から落とす手続きが要ります。そのままにすると、いつまでも一覧に残り、督促の意味が薄れます。

戻らないものの扱い

返ってこないと決まったら、処理します。

進め方は4段です。

1つ目は、理由を確かめることです。使った、紛失した、客先が購入する。

2つ目は、費用の扱いを決めることです。売上にするか、費用にするか。

3つ目は、承認を取ることです。金額によって、決める人が変わります。

4つ目は、記録に残して在庫から落とすことです。

1つ目で「客先が購入する」なら、いちばん良い形です。サンプルがそのまま売上になります。営業に聞くと、そのつもりだったということがあります。落とす前に確かめてください。

返ってきたときにやること

返却されたら、そのまま棚に戻さないことです。

やることは4つです。

1つ目は、検品です。キズ、汚れ、欠品。

2つ目は、良品として戻せるか判断することです。

3つ目は、戻せない場合の扱いです。サンプル用として別に持つか、処分するか。

4つ目は、記録に返却の日を書くことです。

2つ目を判断する人を決めてください。客先で使われた物は、新品として出せないことがあります。そのまま棚に戻すと、次の出荷で客先から指摘されます。サンプル専用の置き場を作る方法もあります。

サンプル専用の在庫を持つ

貸出が多い品目は、サンプル専用の在庫を分けると管理が楽になります。

やり方は4つです。

1つ目は、品目を絞ることです。よく貸す物だけ。

2つ目は、置き場を分けることです。販売用と混ぜない。

3つ目は、表示を付けることです。「サンプル」と書いておきます。

4つ目は、状態の扱いを決めることです。多少のキズは許容する。

2つ目を分けると、棚卸が楽になります。販売用の在庫と混ざっていると、貸出中の分を差し引いて数えることになります。分けておけば、それぞれを数えるだけで済みます。

記録を集計して見る

貸出の記録が溜まったら、傾向を見ます。

見るのは4つです。

1つ目は、返却率です。貸した数のうち、返ってきた数。

2つ目は、品番ごとの件数です。よく貸す物。

3つ目は、借りる人ごとの件数と返却率です。

4つ目は、期限を過ぎている日数です。

3つ目は伝え方に気をつけてください。個人を責める形にすると、記録を書かずに持ち出すようになります。「返却率が低い人がいる」ではなく、「返す手順が面倒ではないか」という聞き方にすると、原因が出てきます。

貸出と持ち出しを分ける

似ていますが、扱いが違います。

分けるのは4つです。

1つ目は、貸出です。客先に見せるか試してもらう。返ってくる前提。

2つ目は、持ち出しです。社内で使う、現場で使う。

3つ目は、支給です。客先に渡してしまう。返りません。

4つ目は、販売です。売上になります。

4つに分ける区分中身貸出返ってくる前提持ち出し社内や現場で使う支給客先に渡す。返らない販売売上になる
貸出・持ち出し・支給・販売という4つの区分を並べた表

3つ目と4つ目を、貸出の一覧に混ぜないでください。返ってこないものが一覧に残り続けると、督促の意味が薄れます。渡すと決まった時点で、貸出の一覧から外して別の処理に回します。

営業に協力してもらう

サンプルを持ち出すのは、多くの場合営業です。

伝えるのは4つです。

1つ目は、なぜ記録が要るかです。棚卸の差異になること。

2つ目は、書く手間が少ないことです。5項目だけ。

3つ目は、期限が来たら連絡が行くことです。

4つ目は、返せない場合の相談先です。

1つ目を伝えてください。「決まりだから」ではなく、「記録が無いと在庫が合わなくなる」と説明すると、協力してもらいやすくなります。実際に差異が出た例を1つ示すと、さらに伝わります。

一覧を1枚にして貼る

貸出の一覧は、見える場所に貼ると効きます。

作るのは4つです。

1つ目は、貸出中のものだけを並べることです。返ったものは消します。

2つ目は、期限の近い順に並べることです。

3つ目は、期限を過ぎたものに印を付けることです。

4つ目は、更新の頻度を決めることです。週に1回。

3つ目の印があると、督促しなくても返ってきます。自分の名前が期限切れの欄に載っていることが見えると、多くの人は自分で動きます。督促の手間が減ります。

棚卸の前に一覧を見る

棚卸の差異を減らすには、事前に貸出の一覧を見るのがいちばん速い方法です。

やることは4つです。

1つ目は、棚卸の前に一覧を出すことです。

2つ目は、返せるものを返してもらうことです。棚卸の前に戻れば、差異になりません。

3つ目は、返らないものを数に入れる形を決めることです。

4つ目は、棚卸のあとに突き合わせることです。

棚卸の前の4段1一覧を出す貸出中のものを2返却の依頼2週間前に声をかける3数え方の決返らない分の扱い4突き合わせ棚卸のあと
一覧を出す・返却の依頼・数え方の決定・突き合わせという4段のフロー

2つ目がいちばん効きます。棚卸の2週間前に「棚卸なので一度返してください」と声をかけるだけで、戻ってくる物があります。そのぶん差異が減り、原因を探す時間も減ります。

まとめ

サンプルの貸出は、記録・期限・督促する人の3つで決まります。

  • 返ってこないのは、誰も追っていないから
  • 記録するのは、日付と借りる人・品番と数量・持って行く先・期限・返却の5つ
  • 期限は必ず日付で書く。「しばらく」では期限が来ない
  • 貸したらその場で受注に引き当てられない状態にする
  • 返ってきた物を、そのまま棚に戻さない。検品して判断する

帳簿や資産の扱いは、社内の経理の担当に確かめてください。

点検表テンプレート
目録をひらく

この業務の記事をまとめて読む

貸出の記録と在庫の様式をまとめて整えるなら、在庫板が近道です。

この様式をひらく

よくある質問

Q. 記録を書かずに持ち出されます。 A. 書く手間を減らしてください。置き場のそばに紙を置き、項目を5つに絞る。書かないと持ち出せない仕組みにするより、書きやすくするほうが続きます。

Q. 期限はどのくらいにしますか。 A. 用途によります。見せるだけなら1週間、試してもらうなら1か月、長期の評価なら3か月。必ず日付で書いてください。「しばらく」では期限が来ません。

Q. 客先に置いてきた物が返りません。 A. 預けたのか渡したのかを、最初に決めておいてください。「貸す」つもりが、客先では「もらった」と思われていることがあります。受け取った人の名前を控えておきます。

Q. 貸出中の物が受注に引き当てられました。 A. 貸したその場で、在庫の状態を変えてください。在庫に残っていると引き当てられます。出荷の指示が出て、探しても無いという形になります。

Q. 返ってきた物を棚に戻してよいですか。 A. 検品してから判断してください。客先で使われた物は、新品として出せないことがあります。そのまま戻すと、次の出荷で指摘されます。サンプル専用の置き場を作る方法もあります。

Q. 督促は誰がやりますか。 A. 一覧を見る担当を1人決めてください。月に1回、期限を過ぎているものを抜き出して連絡するだけです。気づいた人が言う形では続きません。

Q. 返ってこないと決まった場合、どうしますか。 A. 理由を確かめて、費用の扱いを決め、承認を取って、在庫から落とします。「客先が購入する」なら売上になります。落とす前に営業に確かめてください。

Q. 高額なサンプルはどう扱いますか。 A. 書面で貸出の記録を残してください。受け取った人の署名があると確実です。返却の期限と、戻らなかった場合の扱いも書いておきます。

Q. サンプル専用の在庫を持つべきですか。 A. よく貸す品目だけ分けてください。販売用と混ざっていると、棚卸で貸出中の分を差し引くことになります。分けておけば、それぞれを数えるだけで済みます。

Q. 返却率が低い人がいます。 A. 個人を責めないでください。記録を書かずに持ち出すようになります。「返す手順が面倒ではないか」という聞き方にすると、原因が出てきます。

Q. 棚卸で差異が出ました。貸出が原因でしょうか。 A. 可能性があります。貸出の一覧と、差異の出た品番を突き合わせてください。貸出中の物が在庫に残ったままなら、そこが原因です。

Q. 工具の貸出と同じ仕組みにできますか。 A. できます。記録の項目も、期限の考え方も同じです。同じ様式を使うと、書く側も覚えやすくなります。置き場と一覧だけ分けておけば足ります。

Q. 貸出と持ち出しは分けますか。 A. 分けてください。貸出は返ってくる前提、持ち出しは社内での使用です。支給や販売は、貸出の一覧に混ぜないでください。返らないものが残ると、督促の意味が薄れます。

Q. 営業が協力してくれません。 A. 「記録が無いと在庫が合わなくなる」と説明してください。実際に差異が出た例を1つ示すと伝わります。書く手間が5項目だけであることも、あわせて伝えます。

Q. 一覧はどこに貼りますか。 A. 営業の事務所と、サンプルの置き場です。期限を過ぎたものに印を付けてください。自分の名前が期限切れの欄に載っていると、多くの人は自分で動きます。

Q. 更新はどのくらいの頻度ですか。 A. 週に1回で足ります。貸出中のものだけを並べ、期限の近い順にします。返ったものは消してください。一覧が長くなると読まれません。

Q. 棚卸の前にやることはありますか。 A. 貸出の一覧を出して、返せるものを返してもらってください。棚卸の2週間前に声をかけるだけで、戻ってくる物があります。そのぶん差異が減ります。

Q. 貸し出した物が壊れて返ってきました。 A. 検品で記録して、扱いを決めてください。修理するか、サンプル用として使うか、処分するか。費用の負担は、貸出のときの取り決めによります。

Q. 貸出の記録は何年残しますか。 A. 社内で決めてください。返却が済んだものも1年は残すと、繰り返しの傾向が見えます。返らなかったものの記録は、在庫を落とした根拠になるので長めに残します。