サンプルの貸出|返ってこない物をどう減らすか
目次
営業が客先へ持って行ったサンプルが、そのまま返ってこない。在庫からは減っているが、記録には残っていない。棚卸のときに差異として出てきて、原因が分からないまま処理されます。貸出の記録を取ると、この差異が消えます。
この記事では、サンプルの貸出を、返ってこない理由、記録する項目、期限の決め方、督促の仕方、返却と在庫の扱いの順に整理します。帳簿や資産の扱いは、社内の経理の担当に確かめてください。
結論:記録が無いと、誰も探さない
サンプルが返ってこないのは、誰も追っていないからです。
理由は3つです。
1つ目は、記録が無いことです。貸したこと自体が残っていません。
2つ目は、期限が無いことです。いつまでという約束が無いと、返す動機が生まれません。
3つ目は、督促する人がいないことです。気づいた人が言うだけでは続きません。
3つとも、仕組みで埋まります。記録の紙を1枚作って、期限の欄を入れて、月に1回一覧を見る担当を決める。これだけで返却率が変わります。
記録する項目
記録は、貸す人がその場で書ける形にします。
書くのは5つです。
1つ目は、日付と借りる人です。社内の誰が。
2つ目は、品番と数量です。
3つ目は、持って行く先です。客先の名前。
4つ目は、返す期限です。日付で書きます。
5つ目は、返却の予定と実際です。返ったら日付を書きます。
4つ目を必ず日付で書いてください。「しばらく」「終わったら」では、期限が来ません。2週間後でも1か月後でもよいので、日付を入れます。日付があれば、督促のきっかけができます。
期限の決め方
期限は、用途によって変えます。
決め方は4つです。
1つ目は、見せるだけなら短くすることです。1週間。
2つ目は、試してもらうなら中くらいです。1か月。
3つ目は、長期の評価なら長くすることです。3か月。
4つ目は、延長の手続きを決めることです。期限が来たら延長するか、返してもらうか。
4つ目が無いと、期限が形だけになります。期限が来たときに延長の連絡を入れる形にすれば、そのつど状況が分かります。延長の記録が残れば、いつまで貸しているかも見えます。
客先に渡す場合
社内の人が持って行くだけでなく、客先に置いてくることがあります。
決めるのは4つです。
1つ目は、預けるのか、渡すのかです。返してもらうか、そのまま差し上げるか。
2つ目は、客先の誰が受け取ったかです。名前を残します。
3つ目は、返す方法です。取りに行くか、送ってもらうか。
4つ目は、費用です。送料をどちらが持つか。
1つ目を最初に決めてください。「貸す」つもりが、客先では「もらった」と思われていることがあります。書面に残すか、少なくとも受け取った人の名前を控えてください。高額な物なら、書面が要ります。
在庫の扱い
貸し出した物は、在庫としてどう扱うかを決めます。
決めるのは4つです。
1つ目は、在庫から減らすかです。貸出中という状態にするか。
2つ目は、受注に引き当てられないようにすることです。
3つ目は、棚卸での扱いです。貸出中の物をどう数えるか。
4つ目は、返ってきたときの検品です。
2つ目が事故になります。貸出中なのに在庫に残っていると、受注に引き当てられます。出荷の指示が出て、探しても無い、という形になります。貸したらその場で状態を変えてください。
督促の仕方
期限が来ても、自動では返ってきません。
やり方は4つです。
1つ目は、一覧を月に1回見ることです。期限を過ぎているものを抜き出します。
2つ目は、借りた人に連絡することです。まず社内の人へ。
3つ目は、状況を聞くことです。返せるのか、延長か、戻らないのか。
4つ目は、戻らないものを処理することです。
4つ目を決めておいてください。客先で使ってしまった、紛失した。返ってこないと分かった時点で、在庫から落とす手続きが要ります。そのままにすると、いつまでも一覧に残り、督促の意味が薄れます。
戻らないものの扱い
返ってこないと決まったら、処理します。
進め方は4段です。
1つ目は、理由を確かめることです。使った、紛失した、客先が購入する。
2つ目は、費用の扱いを決めることです。売上にするか、費用にするか。
3つ目は、承認を取ることです。金額によって、決める人が変わります。
4つ目は、記録に残して在庫から落とすことです。
1つ目で「客先が購入する」なら、いちばん良い形です。サンプルがそのまま売上になります。営業に聞くと、そのつもりだったということがあります。落とす前に確かめてください。
返ってきたときにやること
返却されたら、そのまま棚に戻さないことです。
やることは4つです。
1つ目は、検品です。キズ、汚れ、欠品。
2つ目は、良品として戻せるか判断することです。
3つ目は、戻せない場合の扱いです。サンプル用として別に持つか、処分するか。
4つ目は、記録に返却の日を書くことです。
2つ目を判断する人を決めてください。客先で使われた物は、新品として出せないことがあります。そのまま棚に戻すと、次の出荷で客先から指摘されます。サンプル専用の置き場を作る方法もあります。
サンプル専用の在庫を持つ
貸出が多い品目は、サンプル専用の在庫を分けると管理が楽になります。
やり方は4つです。
1つ目は、品目を絞ることです。よく貸す物だけ。
2つ目は、置き場を分けることです。販売用と混ぜない。
3つ目は、表示を付けることです。「サンプル」と書いておきます。
4つ目は、状態の扱いを決めることです。多少のキズは許容する。
2つ目を分けると、棚卸が楽になります。販売用の在庫と混ざっていると、貸出中の分を差し引いて数えることになります。分けておけば、それぞれを数えるだけで済みます。
記録を集計して見る
貸出の記録が溜まったら、傾向を見ます。
見るのは4つです。
1つ目は、返却率です。貸した数のうち、返ってきた数。
2つ目は、品番ごとの件数です。よく貸す物。
3つ目は、借りる人ごとの件数と返却率です。
4つ目は、期限を過ぎている日数です。
3つ目は伝え方に気をつけてください。個人を責める形にすると、記録を書かずに持ち出すようになります。「返却率が低い人がいる」ではなく、「返す手順が面倒ではないか」という聞き方にすると、原因が出てきます。
貸出と持ち出しを分ける
似ていますが、扱いが違います。
分けるのは4つです。
1つ目は、貸出です。客先に見せるか試してもらう。返ってくる前提。
2つ目は、持ち出しです。社内で使う、現場で使う。
3つ目は、支給です。客先に渡してしまう。返りません。
4つ目は、販売です。売上になります。
3つ目と4つ目を、貸出の一覧に混ぜないでください。返ってこないものが一覧に残り続けると、督促の意味が薄れます。渡すと決まった時点で、貸出の一覧から外して別の処理に回します。
営業に協力してもらう
サンプルを持ち出すのは、多くの場合営業です。
伝えるのは4つです。
1つ目は、なぜ記録が要るかです。棚卸の差異になること。
2つ目は、書く手間が少ないことです。5項目だけ。
3つ目は、期限が来たら連絡が行くことです。
4つ目は、返せない場合の相談先です。
1つ目を伝えてください。「決まりだから」ではなく、「記録が無いと在庫が合わなくなる」と説明すると、協力してもらいやすくなります。実際に差異が出た例を1つ示すと、さらに伝わります。
一覧を1枚にして貼る
貸出の一覧は、見える場所に貼ると効きます。
作るのは4つです。
1つ目は、貸出中のものだけを並べることです。返ったものは消します。
2つ目は、期限の近い順に並べることです。
3つ目は、期限を過ぎたものに印を付けることです。
4つ目は、更新の頻度を決めることです。週に1回。
3つ目の印があると、督促しなくても返ってきます。自分の名前が期限切れの欄に載っていることが見えると、多くの人は自分で動きます。督促の手間が減ります。
棚卸の前に一覧を見る
棚卸の差異を減らすには、事前に貸出の一覧を見るのがいちばん速い方法です。
やることは4つです。
1つ目は、棚卸の前に一覧を出すことです。
2つ目は、返せるものを返してもらうことです。棚卸の前に戻れば、差異になりません。
3つ目は、返らないものを数に入れる形を決めることです。
4つ目は、棚卸のあとに突き合わせることです。
2つ目がいちばん効きます。棚卸の2週間前に「棚卸なので一度返してください」と声をかけるだけで、戻ってくる物があります。そのぶん差異が減り、原因を探す時間も減ります。
まとめ
サンプルの貸出は、記録・期限・督促する人の3つで決まります。
- 返ってこないのは、誰も追っていないから
- 記録するのは、日付と借りる人・品番と数量・持って行く先・期限・返却の5つ
- 期限は必ず日付で書く。「しばらく」では期限が来ない
- 貸したらその場で受注に引き当てられない状態にする
- 返ってきた物を、そのまま棚に戻さない。検品して判断する
帳簿や資産の扱いは、社内の経理の担当に確かめてください。
よくある質問
Q. 記録を書かずに持ち出されます。 A. 書く手間を減らしてください。置き場のそばに紙を置き、項目を5つに絞る。書かないと持ち出せない仕組みにするより、書きやすくするほうが続きます。
Q. 期限はどのくらいにしますか。 A. 用途によります。見せるだけなら1週間、試してもらうなら1か月、長期の評価なら3か月。必ず日付で書いてください。「しばらく」では期限が来ません。
Q. 客先に置いてきた物が返りません。 A. 預けたのか渡したのかを、最初に決めておいてください。「貸す」つもりが、客先では「もらった」と思われていることがあります。受け取った人の名前を控えておきます。
Q. 貸出中の物が受注に引き当てられました。 A. 貸したその場で、在庫の状態を変えてください。在庫に残っていると引き当てられます。出荷の指示が出て、探しても無いという形になります。
Q. 返ってきた物を棚に戻してよいですか。 A. 検品してから判断してください。客先で使われた物は、新品として出せないことがあります。そのまま戻すと、次の出荷で指摘されます。サンプル専用の置き場を作る方法もあります。
Q. 督促は誰がやりますか。 A. 一覧を見る担当を1人決めてください。月に1回、期限を過ぎているものを抜き出して連絡するだけです。気づいた人が言う形では続きません。
Q. 返ってこないと決まった場合、どうしますか。 A. 理由を確かめて、費用の扱いを決め、承認を取って、在庫から落とします。「客先が購入する」なら売上になります。落とす前に営業に確かめてください。
Q. 高額なサンプルはどう扱いますか。 A. 書面で貸出の記録を残してください。受け取った人の署名があると確実です。返却の期限と、戻らなかった場合の扱いも書いておきます。
Q. サンプル専用の在庫を持つべきですか。 A. よく貸す品目だけ分けてください。販売用と混ざっていると、棚卸で貸出中の分を差し引くことになります。分けておけば、それぞれを数えるだけで済みます。
Q. 返却率が低い人がいます。 A. 個人を責めないでください。記録を書かずに持ち出すようになります。「返す手順が面倒ではないか」という聞き方にすると、原因が出てきます。
Q. 棚卸で差異が出ました。貸出が原因でしょうか。 A. 可能性があります。貸出の一覧と、差異の出た品番を突き合わせてください。貸出中の物が在庫に残ったままなら、そこが原因です。
Q. 工具の貸出と同じ仕組みにできますか。 A. できます。記録の項目も、期限の考え方も同じです。同じ様式を使うと、書く側も覚えやすくなります。置き場と一覧だけ分けておけば足ります。
Q. 貸出と持ち出しは分けますか。 A. 分けてください。貸出は返ってくる前提、持ち出しは社内での使用です。支給や販売は、貸出の一覧に混ぜないでください。返らないものが残ると、督促の意味が薄れます。
Q. 営業が協力してくれません。 A. 「記録が無いと在庫が合わなくなる」と説明してください。実際に差異が出た例を1つ示すと伝わります。書く手間が5項目だけであることも、あわせて伝えます。
Q. 一覧はどこに貼りますか。 A. 営業の事務所と、サンプルの置き場です。期限を過ぎたものに印を付けてください。自分の名前が期限切れの欄に載っていると、多くの人は自分で動きます。
Q. 更新はどのくらいの頻度ですか。 A. 週に1回で足ります。貸出中のものだけを並べ、期限の近い順にします。返ったものは消してください。一覧が長くなると読まれません。
Q. 棚卸の前にやることはありますか。 A. 貸出の一覧を出して、返せるものを返してもらってください。棚卸の2週間前に声をかけるだけで、戻ってくる物があります。そのぶん差異が減ります。
Q. 貸し出した物が壊れて返ってきました。 A. 検品で記録して、扱いを決めてください。修理するか、サンプル用として使うか、処分するか。費用の負担は、貸出のときの取り決めによります。
Q. 貸出の記録は何年残しますか。 A. 社内で決めてください。返却が済んだものも1年は残すと、繰り返しの傾向が見えます。返らなかったものの記録は、在庫を落とした根拠になるので長めに残します。