緊急手配の記録|何度も起きる品番を見つける
目次
「今すぐ要る」という連絡が入る。その場をしのぐことに全力を使って、記録は残りません。同じ品番で何度も起きていても、誰も気づかないまま1年が過ぎます。緊急手配は、記録を取ると在庫の設定の問題が見えてきます。
この記事では、緊急手配を、記録を取る理由、書く項目、その場の動き方、費用の扱い、繰り返しを減らす方法の順に整理します。取引の条件や費用の負担は契約で決まります。社内の営業と、取引先に確かめてください。
結論:その場をしのぐだけでは、来月も起きる
緊急手配は、起きた原因が残ったままだと繰り返します。
原因は3つに分かれます。
1つ目は、在庫の設定です。安全在庫が少ない、発注点が低い。
2つ目は、需要の読み違いです。急に増えた、季節の波を見ていない。
3つ目は、情報の遅れです。注文の連絡が遅い、予定が伝わっていない。
1つ目は自社で直せます。記録を取って、どの品番で何回起きたかを数えると、設定を直す品番が決まります。数えていないと、「よく起きる」という感覚のまま何も変わりません。
記録を取る理由
その場では、記録を取る余裕がありません。それでも取る理由があります。
理由は4つです。
1つ目は、繰り返しを見つけるためです。同じ品番、同じ客先。
2つ目は、費用を把握するためです。急便、割増、残業。
3つ目は、原因に手を打つためです。
4つ目は、次に同じことが起きたときに速く動くためです。前回どうしたかが分かります。
2つ目が経営に効きます。緊急の手配には必ず追加の費用がかかります。年間でいくら使っているかを出すと、在庫を増やす判断の材料になります。
書く項目
その場で書けるよう、項目を絞ります。
書くのは5つです。
1つ目は、日付と時刻です。連絡を受けた時刻。
2つ目は、品番と数量です。
3つ目は、なぜ緊急かです。客先の都合、在庫切れ、破損。
4つ目は、どう手配したかです。在庫から、他の拠点から、仕入先から、急便で。
5つ目は、かかった費用です。分かる範囲で。
3つ目を必ず書いてください。「客先が急に言ってきた」のか「うちの在庫が切れていた」のかで、手を打つ場所がまったく違います。理由を書かないと、集計しても原因が分かりません。
その場の動き方
緊急の連絡を受けたら、確かめる順番があります。
順番は4段です。
1つ目は、いつまでに要るかを確かめることです。今日中か、明日の朝か。「急ぎ」の中身を数字にします。
2つ目は、自社の在庫を探すことです。別の棚、別の拠点。
3つ目は、仕入先に聞くことです。在庫があるか、いつ出せるか。
4つ目は、代替品を検討することです。
1つ目を飛ばさないでください。「急ぎ」と言われると、全部を最短で手配しようとします。実は明日の朝で間に合うなら、通常の便で送れます。確かめるだけで、費用が大きく変わります。
費用の扱い
緊急の手配には、費用がかかります。誰が持つかを決めます。
決めるのは4つです。
1つ目は、急便の費用です。
2つ目は、仕入先への割増です。
3つ目は、残業や休日出勤の費用です。
4つ目は、誰が負担するかです。自社か、客先か、仕入先か。
4つ目を原因で分けてください。客先の都合なら客先、自社の在庫切れなら自社、仕入先の遅れなら仕入先。原因ごとに決めておくと、その場で話せます。決めていないと、全部が自社の持ち出しになります。
繰り返しを減らす
記録が溜まったら、手を打つ品番を決めます。
見るのは4つです。
1つ目は、品番ごとの件数です。
2つ目は、理由ごとの件数です。在庫切れが多いのか、客先の都合が多いのか。
3つ目は、費用の合計です。
4つ目は、客先ごとの件数です。
1つ目と2つ目を掛け合わせてください。「この品番で、在庫切れによる緊急手配が年8回」なら、安全在庫を増やす判断ができます。増やす費用と、緊急手配の費用を比べれば、答えが出ます。
在庫の設定を直す
在庫切れが原因なら、設定を直します。
直すのは4つです。
1つ目は、安全在庫の数です。
2つ目は、発注点です。残りいくつで発注するか。
3つ目は、発注の量です。
4つ目は、見直しの頻度です。
2つ目がずれていることが多くあります。調達に2週間かかる品目の発注点が、1週間分しかないという形です。調達期間と使う量から計算し直してください。1品番につき5分で済みます。
客先と話す
客先の都合で緊急が続く場合、話す材料が要ります。
持っていくのは4つです。
1つ目は、件数です。この1年で何回あったか。
2つ目は、かかった費用です。
3つ目は、通常の納期です。何日前に注文をもらえれば通常の便で出せるか。
4つ目は、提案です。在庫を持つ、定期の注文にする、予定を早めに共有してもらう。
4つ目に「在庫を持つ」を入れてください。客先の分をあらかじめ持っておく代わりに、費用の一部を負担してもらうという形があります。緊急の費用より安く済むことがあります。
社内の連絡の形を決める
緊急の連絡が、担当者1人に入る形だと止まります。
決めるのは4つです。
1つ目は、受ける窓口です。電話が誰に入るか。
2つ目は、不在のときの流れです。
3つ目は、判断する人です。費用をかけてよいかを決める人。
4つ目は、共有の方法です。関係する人に速く伝える形。
3つ目を現場が持てる形にしてください。一定の金額までは現場の判断で急便を使ってよい、と決めておくと、承認を待つ時間が消えます。金額の線を1つ引くだけです。
他の拠点との融通
複数の拠点がある会社では、拠点間で回すことが緊急手配の第一手になります。
決めるのは4つです。
1つ目は、在庫が見える形にすることです。他の拠点の在庫を確かめられるか。
2つ目は、頼む手順です。誰に、どう連絡するか。
3つ目は、送る費用の扱いです。どちらの拠点が持つか。
4つ目は、記録です。回した側の在庫が減ります。
4つ目が抜けやすい部分です。緊急のときほど、送り出した記録が残りません。回した拠点で在庫が合わなくなり、棚卸の差異として出てきます。送る側が記録を残す形を、手順に入れてください。
緊急の連絡をいつ受けるか
緊急の連絡は、時間帯を問わず入ります。受ける形を決めます。
決めるのは4つです。
1つ目は、受ける時間帯です。営業時間内か、時間外も受けるか。
2つ目は、時間外の連絡先です。携帯か、留守番電話か。
3つ目は、時間外に動ける範囲です。在庫を出せるか、出荷までできるか。
4つ目は、客先に伝えておくことです。
4つ目を先に伝えておいてください。「18時以降の連絡は翌日の対応になります」とあらかじめ伝えておくと、そのつもりで連絡が来ます。伝えていないと、夜に連絡して返事が無いことが不満になります。
起きた日の振り返りを1行残す
緊急手配が終わったあと、1行だけ振り返りを書きます。
書くのは4つです。
1つ目は、うまくいったことです。どの手が効いたか。
2つ目は、時間がかかったところです。
3つ目は、次に同じことが起きたらどうするかです。
4つ目は、直すべき仕組みです。
3つ目が次回の速さを決めます。「あの拠点に在庫があった」「あの仕入先は即日出せる」という情報が残ると、次は最初からそこへ当たれます。1行で足ります。記録の備考欄に書いてください。
予防に回す時間を作る
緊急手配の対応に追われると、予防に手が回りません。
作るのは4つです。
1つ目は、月に1回の集計の時間です。30分。
2つ目は、直す品番を1つ決める時間です。
3つ目は、直したあとに効果を見る時間です。
4つ目は、それを繰り返すことです。
1品番ずつで構いません。毎月1品番の設定を直せば、1年で12品番が改善します。全部を一度に直そうとすると着手できず、結果として何も変わりません。
出荷の優先順位を決めておく
緊急の案件が入ると、通常の出荷が押し出されます。優先の考え方を決めておきます。
決めるのは4つです。
1つ目は、当日の締め切りがあるものです。便の時刻が決まっている出荷。
2つ目は、緊急の案件です。
3つ目は、通常の出荷です。
4つ目は、押し出したものの扱いです。翌日に回すなら、客先に伝えます。
4つ目を忘れないでください。緊急に対応したせいで、別の客先の出荷が翌日になったことを誰も伝えないと、そちらで問題になります。押し出したものを一覧にして、連絡する担当を決めてください。
まとめ
緊急手配は、記録を取ると在庫の設定の問題が見えます。
- 原因は、在庫の設定・需要の読み違い・情報の遅れの3つ。1つ目は自社で直せる
- 書くのは、日時・品番と数量・理由・手配の方法・費用の5つ
- 「急ぎ」の中身を数字にする。明日の朝で間に合うなら通常の便で送れる
- 費用の負担は原因ごとに決める。決めていないと全部が自社の持ち出しになる
- 調達期間と発注点がずれていることが多い。1品番5分で計算し直せる
取引の条件や費用の負担は契約で決まります。社内の営業と、取引先に確かめてください。
よくある質問
Q. その場で記録を取る余裕がありません。 A. 項目を5つに絞ってください。日時、品番と数量、理由、手配の方法、費用。その場で書けなければ、当日中に書く形にします。翌日になると理由が曖昧になります。
Q. 「急ぎ」と言われたら、最短で手配しますか。 A. まず「いつまでに要るか」を確かめてください。明日の朝で間に合うなら、通常の便で送れます。確かめるだけで費用が大きく変わります。
Q. 費用は誰が持ちますか。 A. 原因ごとに決めてください。客先の都合なら客先、自社の在庫切れなら自社、仕入先の遅れなら仕入先。決めていないと、全部が自社の持ち出しになります。
Q. 承認を待つあいだに時間が過ぎます。 A. 金額の線を引いてください。一定の金額までは現場の判断で急便を使ってよいと決めておけば、待つ時間が消えます。線を超えるものだけ上げる形にします。
Q. 同じ品番で何度も起きます。 A. 在庫の設定を直してください。発注点が調達期間に合っていないことが多くあります。調達に2週間かかるのに、発注点が1週間分しかないという形です。
Q. 安全在庫を増やす判断は、どうしますか。 A. 増やす費用と、緊急手配の費用を比べてください。「この品番で年8回、費用は合計いくら」という数字が出れば、判断できます。記録が無いと比べられません。
Q. 客先の都合で緊急が続きます。 A. 件数と費用、通常の納期、提案を持って話してください。「何日前に注文をもらえれば通常の便で出せる」という具体が効きます。在庫を持つ代わりに費用を分担する形もあります。
Q. 理由を書く欄は、選択式でもよいですか。 A. 選択式のほうが書かれます。客先の都合、在庫切れ、破損、仕入先の遅れ、その他。丸を付けるだけなら、その場でも書けます。その他だけ一言添えてもらいます。
Q. 他の拠点から回す場合の記録は。 A. 拠点間の移動として記録してください。回した側の在庫が減ります。記録が無いと、回した拠点で在庫が合わなくなります。緊急のときほど、ここが抜けます。
Q. 集計はどのくらいの頻度でやりますか。 A. 月に1回で足ります。品番ごと、理由ごとの件数を数えるだけです。30分で終わります。半年分たまると、手を打つ品番がはっきりします。
Q. 緊急手配が減ったかどうか、どう見ますか。 A. 件数と費用の両方を見てください。件数が減っても、1件あたりの費用が上がっていることがあります。2つの数字を並べると、状態が分かります。
Q. 仕入先に無理を言い続けています。 A. 件数を数えて、仕入先と話してください。継続的に無理を頼む関係は、いつか断られます。通常の発注を早める、定期の発注に変えるといった提案を一緒に出すと、関係が続きます。
Q. 他の拠点から回したとき、記録が残りません。 A. 送る側が記録を残す形を手順に入れてください。緊急のときほど抜けます。回した拠点で在庫が合わなくなり、棚卸の差異として出てきます。
Q. 時間外の緊急連絡をどうしますか。 A. 受ける時間帯と、時間外に動ける範囲を決めて、客先に先に伝えてください。「18時以降は翌日の対応」と伝えておけば、そのつもりで連絡が来ます。
Q. 振り返りに時間をかけられません。 A. 1行で足ります。「次に同じことが起きたらどうするか」だけ書いてください。「あの拠点に在庫があった」という情報が残ると、次は最初からそこへ当たれます。
Q. 予防に手が回りません。 A. 月に30分だけ取ってください。集計して、直す品番を1つ決める。毎月1品番でも、1年で12品番が改善します。全部を一度に直そうとすると、何も変わりません。
Q. 緊急手配の記録が続きません。 A. 選択式にして、項目を5つに絞ってください。その場で丸を付けるだけなら書けます。費用は分かる範囲で、あとから足す形でも構いません。
Q. 集計した結果を、誰に見せますか。 A. 在庫の設定を決める人と、経営です。年間の費用の合計は、在庫を増やす判断の材料になります。件数だけでは動きませんが、金額が出ると動きます。
Q. 緊急に対応すると、通常の出荷が遅れます。 A. 押し出したものを一覧にして、客先へ連絡してください。黙って翌日に回すと、そちらで問題になります。優先の考え方を決めておくと、その場で判断できます。